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機動戦士ガンダム SEED C.E71 連合兵戦記(仮)

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第1話 欧州の片隅で

 
前書き
(注)最初に2ちゃんねるに投稿された作品とは少し記述、描写が異なる部分があります。
また、本編作品とは微妙に世界情勢、勢力の設定が違いますのでご注意を 

 
C.E 70年 6月18日 ヨーロッパ某所



都市の郊外の針葉樹の林の奥に隠れるように、数両の戦闘車両が停車していた。

その周囲には漆黒のボディアーマーに身を包んだ歩兵が10名周囲に展開している。

戦闘車両の内の1両・・・・・・指揮車両の中で、指揮官用シートに腰掛ける男は、部下からの連絡を待っていた・・・その男は、眼鼻や顔立ちは、容姿は、典型的な白人系であったが、髪と眼の色は、東洋人に多い黒である。

年齢は20代後半だったが、彼を一目見る者は、そう思わないだろう。
そう思わせるのは、顔の傷と顎の無精髭である。
だが、その顔に刻まれた傷と無精髭は、彼が幾つもの死線を潜り抜けてきたベテランである証左だった。

・・・…そして地球連合軍の軍服に身を包んだ彼の胸元には、地球連合軍大尉の階級章と青い秋桜の徽章があった。

「A地区にジンを確認、数は2・・・いえ3機です」

部下からの連絡が入った。

「わかった。こちらからも確認する・・・」

指揮車両のハッチを開け、車外に乗り出した男・・・…大西洋連邦軍 パワードスーツ部隊指揮官のハンス・ブラウン大尉は赤外線双眼鏡を覗いた。

彼の目に映るのは針葉樹の緑・・・空を覆う重苦しい鉛色の雲・・・NJによるエネルギー危機で放棄された都市のくすんだ灰色の廃墟 ・・・…そしてその中に力強く佇む18メートルの鋼鉄の巨人達だった。

甲冑の如き鋼鉄の体と翼、赤く光る単眼を持つその巨人の名はZGMF-1017 ジン

遥か古代のアラビア半島の伝説上の魔神の名を持つそれは、 遺伝子操作により身体能力を強化されたコーディネイターの工業スペースコロニー群 プラントが、 建設に出資した国家……大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国といったプラント理事国から独立する為に結成した政治結社 黄道同盟(通称ザフト)が 従来から宇宙開発、軍事、果ては老人介護に使用されることもあったパワードスーツと機動兵器 モビルアーマー(MA)の技術を参考にして開発した 人類初の人型汎用機動兵器 モビルスーツ(MS)の量産型であった。

そしてプラントの秘密工場で最初の1機が、開発されたこの18㎡の巨人達は、C.E 69年、プラント周辺宙域での理事国艦隊のMA部隊との戦闘を1:10の戦力差がありながら圧倒的勝利を収めたのを皮切りに、持ち前の汎用性と四肢を利用した機動性、火力で宇宙は元より、スペースコロニー、月面、海中、空中、地上で縦横無尽に活躍し、現在最強の兵器の座に君臨している。

プラント理事国が中心となって結成された地球連合軍のMAや艦船、戦闘機、戦車といった従来兵器では、NJ下の電波障害と核分裂が抑制される等の悪条件も重なり、宇宙と地上で敗退を重ねた。
開戦前は、切り札と目されていた最新鋭宇宙戦闘MA  TS-MA2 メビウスでさえ、ジンの前に1:5~10という悲惨なキルレシオで戦わなければならなかったほどだった。

最近は、対MS戦術が確立されたこと等で宇宙でも地上でも何とか膠着状態持ち込みつつあるが、それでも流石に限界で地球連合軍は未だに苦戦し続けていた。

地球連合も大西洋連邦所属第8艦隊司令長官 デュエイン・ハルバートン准将の派閥と反コーディネイター団体 ブルーコスモスとの関係も深い事で知られるアズラエル財団傘下の大西洋連邦のデトロイトに本拠を置く軍事企業が中心となって地球連合製MSの開発を進めていた。


・・・…だが、その計画はいずれも思わぬ壁にぶち当たってしまった。

ハードの面では、ジンを上回るMSを開発することも地球連合の国力と技術力をもってすれば、決して不可能事ではない。

問題は、ソフトであるMSを動かす為のコンピュータのOSであった。

当時、ジン等のザフト軍のMSのOSは複雑で、コーディネイターに能力で劣るナチュラルには手に余るものであったのだ。

それは、地球連合が初めてジンを鹵獲した際、MAのエースパイロットでさえ、まともにまっすぐ歩かせることすら出来なかったほどである。

地球連合内のコーディネイター、ナチュラルを問わず、多数の技術者等が全力でOSの改良に昼夜の別無く苦闘しているが、未だにわずかな操縦経験のナチュラルがでも操縦できるMSのOS開発は達成されていなかった。

この厄介な問題が解決しない現状では、宇宙では、MAの加速性能を生かした集団での一撃離脱戦法、地上ではこのような地形を生かしたパワードスーツ等による決死の作戦や数にまかせた物量作戦で対抗するしかない・・・というのが地球連合軍の非情な現実であった。


「おまえら!行くぞ!あの宇宙の化け物共に地球の恐ろしさを刻み付けてやれ!」

ハンスは、双眼鏡を下すと、足元に置かれた有線通信機の受話器を掴み、部下達に向かって叫んだ。

この大型の通信機は、CE以前の再構築戦争期のもので、博物館レベルの骨董品である。

何故、このような旧式の通信機を彼が使用しているのか? それには理由がある。


現在地球上では、プラントが会戦初頭にばら撒いた自由中性子の運動を阻害することで核分裂を抑制する機械、ニュートロンジャマー(NJ)は、 北欧のスカンディナヴィア王国や太平洋のオーブ連合首長国といった核エネルギーにあまり依存していなかった地域以外の全地球規模の深刻なエネルギー危機を齎した。

だが、他にもNJには、電波を攪乱する効果があった。

この効果により、軍用高性能レーダーから携帯電話を初めとする携帯通信端末や無線といった通信さえ儘ならない為に地球連合もザフト軍も、このように有線式の通信機や信号弾、手旗信号といったアナログな技術を使用することでNJ下の戦闘に対応しようとしていたのである。

「蒼き清浄なる世界のために!」
「「「「「「了解!」」」」」」」


周囲の廃墟に潜む部下の兵士たちが復唱した……彼らの多くが、プラントにより投下されたNJ災害による被害とザフト軍の侵攻で同僚を、友人を、そして家族を奪われていた。


「(蒼き清浄なる世界のために…か)」

ハンス大尉は、自らの胸ポケットの蒼い徽章を見つめた…それは、現在、地球上で爆発的に支持者を拡大している反コーディネイター団体 ブルーコスモスのスローガンであった。



ブルーコスモスは、C.E 10年に大西洋連邦のニューヨークで結成された環境保護団体である。

この当時、C.E 1年に終結した再構築戦争の現赤道連合領カシミールへの核攻撃に代表される大規模な戦争や遺伝子操作した生物を用いたバイオテロの影響による環境の悪化が懸念され始めた時期だった。

蒼き清浄なる世界のために と言う後の時代では、コーディネイター排斥の代名詞として恐れられることになるこのスローガンも、戦争で荒廃した地球を、元の生命溢れる楽園に戻そうという理念を象徴する至極真っ当なものであった。

…しかしそれが変貌することになる事件がC.E 15年に起きる…一人の男の告白によって…



 
 

 
後書き
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