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真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~

作者:navi
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28部分:第二十四話 心ノ在処


第二十三話です
ではどうぞ〜
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第二十四話 心ノ在処


京side


「この場所は何の意味があるんだ?」


今なんて言った?


「遊びたければ家でもいいだろう」


家でもいい?


「わざわざこんな所に集まる意味がわからないぞ」


こんな所?集まる意味が無い?


「少なくとも、建設的な行為ではない。このような廃ビルはさっさと取り壊すべきだな」


取り壊せ?

なんでお前にそんな事を言われなければいけない?

……あぁそうか。コイツは敵なんだ。今までみんな優しくしたのに自分の物差しでこの世界を壊そうとする、危険因子なんだ。

そんな奴は
仲間なんかじゃない

コイツハ『敵』ナンダ。





悠里side


「お前死ねよ」


クリスの言った後、蠢くような声で京は言った。その声は普段冷静な京が見せることの無い本気の怒りの声で、部屋全体の温度が一気に下がるのがわかった。


「っ!?」


京から向けられた目にクリスは気圧される。自身に向けられたのが純粋な殺気であることに気付いたのだろう。俺やモモが見ていても、今の京はクリスを殺しかねない殺気を放っていた。


「よくも……よくも好き放題言ってくれたなぁぁぁ!!」

「やめろ!京!」


クリスに襲いかかろうとする京を俺とモモが押さえて止めた。けど、今の京の怒りがこれで収まる訳がない。


「分からないだろ!お前には!この場所が!この空間が!どれだけっ!どれだけ大切なのか!!」


怒りと悲しみが混じった声。今の京の心を表しているような叫びが基地内に響いた。クリスは何故京がこんなに怒るのかわからずに、ついていけない。


「だからこんな新参者を入れるなて嫌だったんだ!壊すべき?よくもそんな事をこの場所で言ってくれたな!?何様だと思ってやがる!」


京にとって許せないのはこの言葉だ。自分の為に作ってくれたこの時間を、この基地の存在を否定された。
確かに今のクリスの意見は自分の物差しでしか考えられてないものだ。予感してたとはいえ、行き過ぎたこの正義は俺達にとってはもう、悪でしかないのだから。


「み、京。待て、話を……」

「さっさと帰れ!お前なんか仲間でもな———」

「京!!!」


流石にそれ以上は言ってはいけない。そう直感した俺は京を抱き締めてやめさせた。


「落ち着け」

「悠里……だって、だってこいつ!この場所を侮辱した!否定したんだ!ゆ、許せないよ……!」

「わかってる。わかってるから」

京の背中を優しく撫でてやると、京の声は怒りから悲しみに変わっていった。今は怒りより悲しみの方が強いだろうし、こういうのは全部吐き出させた方がいい。


「悠里、もっと強く抱き締めてやれ」

「ああ。京、もういいから」

「う……うぅ……ううぅぅぅううう」


京はそのまま俺にしがみついて呻き声を上げて泣いた。
その場は再び静寂に包まれる。
その光景を見てクリスとまゆっちはどうしていいかわからず、ただ立ち尽くすだけだった。他のメンバーは京の気持ちが分かっているため、何も言わなかった。


「な……何だ。何が気に障った。自分は正しいことを言ったはずだが……」


……何が正しいことだ。この場において自分の非をまだ認識出来ていない。こいつはどうしようもない箱入り娘だ。
きっと、自分の意見を否定されずに生きてきたんだろう。


「クリス、やっぱりそれが正しいと思ってるの?」

「あ、ああ」

「じゃあ、本当にさよならだね」
「え?」

「ちょっと残念だけど仲間にはなれなかったね。でも学校では普通に話そうよ!それじゃあ気を付けて帰ってね〜」


呆然とするクリスにモロは容赦なく言葉をぶつける。最初はモロがキレた事に俺は驚いたが、それが何故なのかはすぐにわかった。モロは仲間の絆を大事にする。だからこの場所を否定したことではなく、京を傷つけたことをわかっていないクリスに怒っているのだ。


「理由を言ってくれ!納得できない!」


自分は正しいことを言ったのに何故、拒絶されるのか。それがクリスには理解できないでいるのだろう。しかし俺達は誰一人として口を開こうとしなかった。


「……モモ、説明してやってくれるか?」

「ああ、わかった」


俺はモモに聞くと、モモは頷いてクリスを真っ直ぐに見据える。クリスもそれに答えてモモを真っ直ぐに見据えると、モモが口を開いた。


「クリ、お前ウザいぞ」

「え……?」

「意味がないってのも、建設的じゃないってのも、全部お前の物差しだろうが。私達は理屈じゃなく、好きでここに集まってるんだ。誰に指図されようがやめる気はないぞ」


モモに言われてクリスは視線を彷徨わせる。漸く自分が傷付けた事をおぼろげに理解したようだった。


「自分はただ……」

「もうよせ、クリス。ここではお前が悪い」

「悪い……自分が悪だと!?」


クリスは大和の『悪い』という言葉に反応した。いや、大和はあえてその言葉を選んだんだろうな。


「この周囲の空気がわからないのか?」

「悪などでは断じてない!確かに自分の物差しではあるが自分以外も普通この意見の筈だ!それがなぜ悪になるのかわからないな!」


そうだろうな。確かに危ないし、普通の意見だろう。
けど、それは今この場に置いては違う。なにより、悪の対義語は善だ。正義ではない。
正義ってのは社会における物および人に関する固有の秩序のことだ。それぞれに正義の定義は違ってくる。それを別に否定はしないけど、今のクリスは押し付けだ。そこには正義はない。


「お前さぁ、なんて言うか固すぎる。いい機会だから少し反省しろ」

「お前に説教されたくないな。いい機会と言うなら自分も言おう。大和の作戦の数々、策と言えば聞こえはいいが、お前はただ“セコい”だけではないか」

「ああ、セコいしズルいし卑怯だぜ。でも俺には褒め言葉に過ぎないなクリス。俺は勝てればそれでいい、それだけだ」

「見下げ果てたな。それを肯定するとは」


クリスの指摘に大和は飄々と答えて、そんな大和をクリスは侮辱した。それがまだ自分の物差しで言ってることに気付いていない。


「大和は仲間がなるべく無傷になるように策を出してくれてるんだよ。俺達はそれを知ってるし、コイツを信用してるから背中を預けられるんだ」

「ま、基本セコいってのも確かにあるがな」

咎めるようにクリスに俺が言うと、モモはそれに付け足すように大和に向けて言った。


「仲間のために?……今一つ理解できない」

「お前はドラマの見過ぎだ。もっと歴史を読め」


念のためにクリスに一言言っておく。
策がセコいと言うのは綺麗事だ。クリスは策の本質を理解していない。
誰しもがドラマのように一騎当千の力を持っているわけじゃない。今川軍に挑んだ信長しかり、三国志での赤壁の戦いだってそうだ。圧倒的な数や力を相手にする時はどうしても犠牲が出る。それを少なくし、確実に勝つために策は用いるものだ。


「あのっ……自分ごときが口を挟んで恐縮ですが!そ、その、あまり怒らないで、落ち着いて、その」

「お前もだよまゆっち。そろそろ怒るぞ」

「えっ!?」

「後輩はお前しかいないから丁寧に喋るのはいいよ、けどな……一々私ごとき、とか言うな。いい加減不快だぞ」

「だな、悠里の言うとおりだぜ。お前キャップがいった事理解してねーだろ。さっき俺様も思った。人の顔色うかがいすぎだ。度が過ぎると俺様といえども不快だぜ」

「す、すみません、すみませんっ!!」

「……さっきから意味不明だ」


クリスはまだ理解できてないようすで苛立たしげに呟いた。


「さっきの何が意味不明だ、馬鹿娘。クリス、お前の大切な持ち物を言ってみろ」

「持ち物?」

「何でもいいから言ってみろ。物理的なものだぞ」

「……親からもらった、ぬいぐるみなどか」

「俺は、ぬいぐるみの良さなんて分からないな。部屋がかさばるから、捨てちまえよ」

「貴様!!!」


クリスは凄い迫力で大和に詰め寄った。だが大和も負けじと睨み返す。


「お前のさっきの行動のモノマネだ、馬鹿!お前のぬいぐるみが俺達にとってこの場所なんだ。誰が何を大事にしてるかなんて人それぞれだろそれを侮辱していいはずがない」

「……!」


大和の発言にクリスは息を呑んだ。ようやく自分がどんな事を言ってしまったのか理解したようだ。


「……そうか。それだけ大事な場所だったんだな……自分の今の怒りと同じ気持ちとすればさぞ、先ほどの発言は腹が立っただろう……椎名京。皆。謝罪する。すまなかった」


クリスは自分の発言の意味を理解して、ふかぶかと頭を下げた。


「そ、その……私もすみませんでしたっ!まだまだ勉強不足です!そ、それでも!それでもまだ私は皆さんと一緒にいたいですっっ!!!!」

「自分も……今のような発言はしない事を誓う。だから、ここにいさせて欲しい」


2人と言いたいことを言ったし、これでまず二人への鬱憤も無いだろう。するとそこへ、扉が勢いよく開いてキャップが登場する。


「おっーーーす!いやいやいや聞け聞けお前達!俺の運たるや、まさに豪運と言っていい領域だぜ?ガラガラ回しまくって豪華景品GETだぜ!ささ、寿司の残りをつまみつつも皆で俺の偉大さを祝ってくれ!まぁ今日はネタ卵だらけだがな!……ってあれ、なんだこの空気?ずるいぞうみんな!俺のいない間に何青春っぽい気まずい雰囲気になってるんだよ!!」

「くくく……」


その場の雰囲気なんてなんのその。キャップの登場でシリアスな雰囲気は一瞬で吹っ飛んだ。なんて『シリアスブレイカー』だキャップ。ちなみに俺はその横で隠れて笑っていた。





「ふーん。なるほどねー。ってか、話もう全部解決してんじゃん。クリスもまゆっちも謝ったから終わりじゃね?」

「ん、まぁな」

「ま、一回ぐらいこういうの、仕方ないわな」

「寛大な処置だなキャップ。同意見だ」


その後、キャップに事の顛末を説明するとキャップは特におこがめ無しと言う事で合意した


「……つーん」

「機嫌直せ京。ほら、一つ食べさせてやるから」

「……わかった」


京にあ〜んをする事でとりあえず機嫌を取る。その際にモモはこちらを睨んだような気がしたがとりあえずスルーで。


「とりあえずどう皆。今ちょっと気まずい思いをした関係を修復する意味で、連休旅行に行かねーか?」

「いきなり発言したなお前」

「つかどうやって手に入れた?」

「ふふ。商店街の抽選で見事引き当てて来たのだ。じゃーん!2泊3日箱根旅行団体様招待券!」

「な、何ぃ!?んなもん当てたのか!」

「それ何位?」

「2位。ちなみに他はティッシュでしょんぼり」

「いや、十分だろ」


というわけで、3日から5日までの三日間を箱根で過ごす事となった。この後はみんなで寿司パーティーとなった。
明日から箱根か……3月に京都行ったときは箱根越えしただけだしな……
楽しみだ
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リアル鬼ごっこが今度はレンタル3部作になるそうです。
6には仮面ライダーディケイドのモヤシでお馴染みの井上正広さん。
アクションがどのように再現されるか楽しみですね。
あと、アメリカやフランスからリメイク権の要望が殺到しているらしいですね。

ちなみに自分は映画全部みました。


 
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