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飛ぶからこそ

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第三章

「彼がそうしたいのならな」
「ではこのままですか」
「軍事施設や軍需工場だけを狙うということで」
「そのまま許しますか」
「そうされますか」
「確かに我が軍もこの戦争では民間施設も攻撃している」
 チャーチル自身も知っていることだ、夜間爆撃でそれを行っているのだ。
「この戦争は総力戦だ、民間の活力を奪うこともだ」
「勝利への道ですね」
「民間の物資や産業も破壊することも」
「相手の国力を徹底的に奪う」
「軍事力だけでなく」
「だから我が軍もそうしている」
 アメリカ軍の様にというのだ。
「有益なやり方だがな、だが」
「それでもですか」
「ウッズ中将の様なやり方でもいい」
「それでもですか」
「構わないのですか」
「彼がそうしたいのならだ」
 それならばというのだ。
「そうさせるんだ」
「このままですか」
「そうさせますか」
「彼については」
「彼のやり方でやってもらいますか」
「そうだ、少なくとも軍需関連にはダメージを与えている」
 確実にとだ、チャーチルは言った。
「ならばそれでいい」
「ですか、では」
「このままでいかれますか」
「ウッズ中将については」
「その様に」
「若し彼が実績を出していないのなら更迭する」
 司令官として爆撃でそれを出していないのなら、というのだ。
「ドイツの軍需産業にダメージを与えていないのならな、だが」
「はい、彼は実績は出しています」
「彼の基地の爆撃隊は的確にドイツの軍需産業を破壊しています」
「敵が守りを薄くしているポイントを見付け出しそこから侵入させ爆撃を行っています」
「その采配は的確です」
「ならいい」
 それで、とだ。チャーチルは灰皿の上に置いていた葉巻に手をやって言った。
「彼が実績を出しているのならな」
「結果が出ているのならいい」
「実績をですね」
「それを」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「それならいい、彼は優秀な軍人だ」
「だからこそこのままですか」
「司令としますか」
「このままで」
「そうだ、このままな」
 こう言って実際にだった、チャーチルは彼をそのまま基地司令にしていた。そしてこうしたことも言ったのだった。
「彼の様な軍人がいてもいいではないか」
「騎士道を守った軍人もですか」
「それも頑ななまでに」
「騎士道は嫌いではない」
 イギリス人、それもかつて軍にいた者としての言葉だ。チャーチルは海軍大臣だったこともあるし陸軍士官学校にいたのだ。
「むしろ結構なことではないか」
「確かに、騎士道は我々も好きです」
「誇りとすべきものです」
「その点はウッズ中将に賛成します」
「彼は極端にしても」
「そうした軍人がまだいてもいい、それにだ」
 チャーチルはこうも言った。 
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