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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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second contact
  ep.037 彼女には刺がある

鈴菜は拳を構えると一直線に突き進む。
彼女の戦闘手段は基本が『殴る』という可憐な彼女には似合わない手段だ。
しかし、それでも彼女が武器を使わないのには理由があった。

それは殺傷性の問題だった。
操作などは刀を使うため、戦闘中に相手を殺傷してしまう可能性が大いにある。
そのため鈴菜は拳で戦うのだ。

宗嗣はベルトに装着した透明な液体の入った試験管を取り出して今度はコルクを抜いてから液体を撒く。
鈴菜はその仕草から液体が激薬であると判断する。
直進する体に足で強引にブレーキを掛けて止まる。
そのまま後方に下がり観察する。

『やっぱり箱部さんが相手では分が悪い。』

操作はそう判断して腰に差した鈴花(すずばな)を抜こうとするが鈴菜がそれを止める。

「操作様.....。」

操作はそう呼ばれて動きを止める。
鈴菜は振り向いて優しく微笑んで見せる。
この2人に関しては通じ合うのに言葉はいらない。
操作は抜こうとした鈴花を戻す。

「ありがとうございます。」

そして、鈴菜は覚悟を決める。
どうあってもこの宗嗣との戦いは負けられない。
たとえリスクがある一手でも踏むしかない。
鈴菜は構えると地を蹴った。

宗嗣は再び透明な液体の入った試験管を取り出し、今度は地面に叩き付けて液体を撒き散らす。
それを能力で操り、今度は礫のようにして鈴菜に打ち続ける。

「さぁ、この液体は果たして安全なのか激薬なのか恐れずに突っ込んで来いよ!!」

宗嗣は脅すように言葉を放つ。
激薬を礫のようにして連射しているなら鈴菜の能力でただの液体に戻してもそのまま体に付着してしまう。
たが鈴菜は惑うことなく突き進む。

鈴菜は礫を前に能力を使うことなくただ真っ直ぐに突撃する。
礫は鈴菜の肌を掠め、所々から出血を起こす。

「ハハハッ!! 無様なイノシシ女が、真っ直ぐに突っ込むこと以外に脳がないのか?」

宗嗣の煽りを気にせず鈴菜は接近する。
すると突然めまいが起こる。
液体は薬品だったのだ。

「俺特製の幻覚剤だ。 その傷口からしてそれなりの量は体内に入ったと見える。」

景色が何重にも重なって(もや)になる。
グラグラと視界が揺れ、それに連れて足元が揺らぐ。
次第にその場から動けなくなってしまう。

「てっきりレベル6なんだからどんな戦闘するのか楽しみにしてたってのにこれじゃ消化不良もいいとこだ。」

宗嗣は鈴菜に手をかざす。
すると鈴菜の体の傷口から血がじんわりと出て行く。
宗嗣は鈴菜から血を抜き取ろうとしていた。

『だめ......血がなくなって....体...が.........。』

このままでは出血多量で呆気なく終わってしまう。
しかし、操作は動こうとしない。
それは鈴菜の勝利を信じているからだ。

すると、もう一歩も動けないはずの鈴菜がジリジリと向かってくる。
その執念のようなものからは恐怖すら感じる。

「はぁ....はぁ....アナタは....(ひと)を甘く見過ぎです。」

宗嗣はこの得体の知れない漠然とした恐怖から離れようとしつつも体が動かなかった。
まるで重力に押さえつけられてるのかのようだ。

「人の死を....軽視したアナタのその行いは......同じ人として見過ごせません。」

気力で意識が元通りになっていく。
霞んでいた視界は固定され、足に地を踏みしめる力が戻ってくる。
そして、宗嗣の目の前に辿り着いた。

「アナタには何発も拳はいりません....一撃で勝負を決めさせて頂きます。」

鈴菜は軽く拳を構えて宗嗣の腹部にそれを当てた。
そして鈴菜は宗嗣から立ち退いた。
宗嗣は気を失った。

無力撃・終の型(むりょくげき・おわりのかた)。」

鋭く研ぎ澄ました気に近いものを相手にぶつけてあたかも瀕死の一撃を受けたかのように脳に知らせる。
脳は体のダメージと体感ダメージの差で混乱を起こし、情報処理が追い付かず気を失う。

この業は悠持や操作もできない。
他者を物理的に傷付けない彼女が編み出した完全オリジナルの業である。

鈴菜はそのまま操作の元に戻った。
操作は能力で宗嗣に奪われた血液や出血した分を回収し、鈴菜に再度投入した。
同時に傷口を止血し、体力を回復させた。

「はぁ...はぁ....操作様...ありがとうござ....。」

鈴菜の口を操作が手で押さえる。
これ以上、無駄に体力を使わせてはいけない。

「箱部さんは頑張ったんだ。 少し休んでて。」

操作の能力で少しずつ眠気を感じ瞼が重くなる。
視界には穏やかな表情で見守る操作がいた。
そして鈴菜の瞼が完全に閉じると、そのまま彼女を抱きかかえて操作はあとのメンバーを追い掛けた。
 
 

 
後書き
思っていた以上にネタが膨らみませんでした。
次回もお楽しみに。 
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