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IS《インフィニット・ストラトス》~鉄と血と華と~

作者:白さん
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第七話 重なる掌

試合終了、勝者は三日月となりクラス代表決定戦は幕を閉じた。


「はぁ、疲れた」

「戻ってきて早々の一言がそれか。まあよくやった、想像してたよりも良いものを見れたぞ」


織斑先生が普通に褒めた!?と真耶が驚くと脇腹を千冬に小突かれうずくまる。


「酷いです、織斑先生……」

「ふん……おい、オーガス何処にいく」

「まだ何してもらうか言ってないから言いに行ってくる」

「は?ちょっとま――」


彼女の制止を聞かず、三日月はピットから居なくなってしまった。


「何なんだ……心当たりあるか?」


そう箒に問いかけるが、首を横に振り


「あいつの考えはあまり読めませんよ、昔からそうでしたから……」

「そう、だな……そうだ篠ノ之、少し話がある、付き合え」

「え?は、はい……」







「負ける……とは思いませんでしたわ」


誰もいない更衣室に、負けたことにより、火が鎮火したかのように冷静になったセシリアが独り言を呟く。自分よりも格下だと、一方的に勝てるとそう考えていた。

そんな考えを容易く、文字通り叩き潰した男……三日月・オーガスの事に言われた言葉を思い出す。


――こんなの動かせるなんて、あんた凄いな


なんてことのない言葉だが、彼女の心に強く印象が残っていた。出来て当然、適正があるのだから。そう考えられて来たことにより、今までIS技術に関してそう言葉を送られたことはない。

三日月のあの言葉は本心からくるものだと感じられる。上部ではない、本当にすごいと思ったからそう口から出てきた。自分は彼を見下し、罵倒し続けたが……


「凄いのは貴方ですわ……あんな戦法、普通に思い付くものですか」

「そう?普通に思い付いたけど」

「!?」


跳ね上がるように立ち上がるセシリア。声を掛けられるまで三日月の存在に気づかなかったようだ。


「此処に居たんだ、ちょっと探した」

「……何の御用で?私を笑いに来たのですか?」


違う、本当はそう言いたいんじゃない。今彼に言いたいのは、こんな自分を褒めてくれた事の感謝とその斬新な戦法を賞賛。素直に慣れないセシリアは自分の性格を呪った。


「いや、そうじゃないけど。ほら、俺が勝った時の事、言ってなかったじゃん」

「あ……」


そんなことを戦う前に言っていたような気がする。


「な、何が御目当てでしょうか?も、もしかして……」


男に偏見を持つセシリアはよからぬ想像に傾くが


「あんた頭いいから勉強できるんでしょ?」

「へ?」


その想像とは全く違ったものであった。


「だから、勉強できるんでしょ、あんた」

「えーと……まあ勉学に関してはある程度自信は御座いますが……」

「なら俺に勉強教えてくれないかな?」


予想していなかった提案にきょとんと彼女は目を丸くする。


「そんな事でよろしいんですか?」

「うん」


縦に三日月は首を振る。


「けど、どうして……」

「俺、頭悪いからさ、やれることなんてたかが知れてる。だから少しでも勉強すればきっと今よりやれることが多くなって、先に進める」


自分の右手を眺めてそのまま握る。


「俺はもっと強くならなくちゃいけないんだ。だからあんたの力を貸してほしい、ダメかな?」


真っ直ぐ、彼女の瞳を見つめながら三日月は言う。セシリアはこの時、何故自分が負けたのか少し理解できた。自分は常に下を見つけて見下すだけだった。この男違う、何時も上を見ている、目指すべき強さの為に貪欲に、向上心の差だ。

セシリアはこくりと頷き


「私で……良ければ」

「そっか、良い答えが聞けてよかった」

「あと……」


彼女は深々と頭を下げる。


「今までごめんなさい、貴方にずっと酷いことを言って……」

「別に気にしてないよ……えっと、何だっけ」


まさか此処まで来て自分の名前を覚えられてないと思ってなかったが、セシリアは自然と笑み


「セシリア・オルコットですわ、三日月さん……もっと早く貴方という殿方に出会っていればあんな風に言わなかったかも知れませんわね……」


右手を差し出すセシリア。


「あの、握手を……しませんか?これから一緒に励むという意味でも貴方とは良い関係でいたいので……」


頬を赤く染めてセシリアはちょっと三日月から視線を反らす。


「うん、よろしく。セシリア」

「はい!」


固く握手を交わす二人であった。







夕暮れ時、箒と三日月が寮へ帰宅している最中だ。


「腹へった」

「お前は何時もそれだな、だが確かに腹がへった」


そう言えば、と箒は三日月の方を向き


「オルコットに勝ったからお前がクラス代表だな」

「あ」


いきなり立ち止まり口を開けたまま


「まさか……忘れてたのか?」

「うん、けどめんどうだな、そう言うの。箒、代わらない?」

「やらん、男だったら潔く受け入れろ」

「柄じゃ無いと思うんだけどな」


再び三日月は歩き出すと、次に箒が足を止め


「大変なら、わ、私が支えてやる……だからその……頑張れ」


もじもじと箒は顔を赤らめる。


「……箒がそう言うなら頑張ってみようかな」

「ああ……!」


笑顔になり彼の横に並ぶ。


「……」

「……」

「……何?」


ジーと三日月の事を見ていた箒。彼は視線だけそちらに向けて言う。


「もし……もしなのだが、記憶が戻ったらどうする?」

「記憶が?」


彼はんーと考えたが


「どうもしないかな、戻ったら戻ったでラッキーだけど、記憶が戻ることで今の三日月(おれ)が居なくなるのは少し寂しいかな」



何処か悲しげに言う三日月に、箒は返す言葉がなく


「……そうか」


そう言うしかなかった……


 
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