| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

機動戦士ガンダム0091宇宙の念

作者:むらたく
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

宇宙編
月決戦編
  第42話 真実

 
前書き
スピカ・ラムザロス准将

参謀本部の若き将校。
グラフィー事件の真実を知るため、行動を起こす。
 

 
「失礼します」
ここは地球連邦宇宙軍指令室。
かつてソロモンと呼ばれた連邦宇宙軍の拠点、コンペイトウに彼、スピカ・ラムザロスはいた。
「参謀本部より参りました、ディエゴ中将、お話があります」
ゆっくり視線をこちらに向け、近づくディエゴ。
「これはスピカ中佐。いや、今は二階級特進で准将だったな?」
毅然とした態度を崩さない彼には、少し尻込みしたくなる。
「行こう、聞かれたい話ではあるまい」
連れられたのは、会議室。
と言っても人気はなく、静まり返っていた。
ディエゴ中将が腰掛けるのを見て、連れのものを退出させ中将の正面に座った。
「聞かせていただけませんか、この一連の〝グラフィー事件″について。現在の地球連邦宇宙軍のほぼ全指揮権を握るあなたならご存知のはずですね?」
「ふふ、それは参謀本部が君に命令を下してのことか?あの煙草臭いモグラが君に聞いてこいと言ったのかね?」
「いや…これは私の個人的なことです。…確かに参謀本部としてのコンペイトウ視察任務ですが、こうして中将を訪ねているのは完全な私情で…」
「まあいい」
中将は手を顔の前に差し出して言葉を遮った。
「どうも歳を重ねると若い者を苛めたくなるようでね。訪ねてきたのが君で無ければ家に帰るのがあと数ヶ月遅れていただろうが…いいだろう。君にはかつての借りもある。全てを話そう」
少し唾を飲み込み、背筋を正した。
「グラフィーは、堕ちたのではない。あれは譲渡されたのだよ…」






「フーバー、お前の動きは手に取るようにわかるさ‼︎」
ライフルの光弾を華麗に躱すグレイブス。
「どうしてだ‼︎なんであんたがこんな真似をッ‼︎」
「知りたいのか?だったら力尽くで試してみろよ‼︎」
ドーベン・ウルフのビームカノンが、リゲルグのシールドを直撃した。
「くっ‼︎」
機体を上昇させ、上を取る。
機動性で勝るリゲルグ。
動き回って的をずらす他、あの火器の嵐を凌ぐ術はない。
軍人の性。
反射的にスラスターを焚き、重いGが体を左右に押し潰した。
しかし、拭いきれない違和感を感じたフーバーは、不意に機体を静止させた。
「お前は大局的に事を判断できていないだけだ。隊長をやったからって、俺に言わせりゃまだまだ子供だ」
戦場のMS同士の戦い…というよりは、教官との模擬戦闘に見える。
「くそっ…!」
「どうした?」
二機の動きが止まる。
ライフルを突きつけたリゲルグのコックピットの中で、フーバーは涙していた。
「どうした、撃てよ」
フーバーは気づいていた。
ドーベン・ウルフのビームカノンが、模擬戦闘用の威力に絞られて発射されていたことに。
リゲルグのシールドは、少し焼け爛れた程度にしか損傷していなかった。
「教官…教えてください。俺がどうしたらいいのか…」
フーバーが抱えていた意地、見栄、虚勢はもう崩れ去っていた。
アイラはグワンバンに戻らなかったのだから…
「お前は、お前には人なんか殺せねぇと思ってたよ。違うんだな。殺せなかったお前を、殺せるようにしちまった…悪かったな…。お前のことを、誰も守ってやれなくて」
ノーマルスーツでコックピットを出たグレイブスが、モニターに映る。
リゲルグのコックピットに触れたグレイブスの声が、フーバーの脳に響く。
「俺はガデットに反旗を翻そうが、お前らの味方だ…。アクシズで一緒に暮らした仲だろうが…お前を殺せるものかよ…」
彼の言葉の最後が潤んで聞こえたフーバーは、その鉄の扉を開き、久しぶりに彼の顔を見た気がした。 
 

 
後書き
なんとか時間が出来たので、更新できました。
次回に続きますが、遅れると思うのでご了承ください。
twitterの方は更新していきます。
→yasu@5072 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧