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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~約束~



各自の訓練や強化を終えて




機動六課のメンバーは一向に動きを見せないスカリエッティにピリピリしていた。


しかしそれはなにも機動六課に限った話ではない。



その不穏な空気は、地上本部が完全に崩壊し、未だ復興の目処が立たない管理局全体を覆い尽くしていた。
だがそんな中でも人々は決して諦めるなんてことはなかった。


スカリエッティのアジトの捜索、武装局員による警備強化、管理局内の暗部



特に地上本部の崩壊から、多くの事がわかってきた。
一つは瓦礫と化した地上本部跡地から発見された「最高評議会室」にあったのは人間ではなかったという事。
彼らはその身を失い、生体ポットの中に浮かぶ脳だけの存在になって、管理局を裏から見守り続けていたのだ。



そして二つ目は、その評議会の三人がどうやら秘密裏にスカリエッティと繋がっていたという事。
これに関しては確実な物証はないものの、状況証拠は完全にそうであることを示しており、まず間違いないというのが結論だ。

そしてそれは、彼らと懇意であったレジアス中将もおそらくスカリエッティのバックボーンだったであろうことを示していた。
こちらにもまだ確かな物証がないために身柄の拘束はできないものの、レジアスは実質チェックメイト状態だ。

仮にそうでないとしても、予言を無視し、地上本部をここまで壊滅させてしまった責任は重い。
おそらく、管理局にはもういられないだろう。


そして三つ目


それは・・・・・・・






「ヴィヴィオが聖王のクローン?」

「そう。かつての古代ベルカの偉大な王さま、聖王オリヴィエの遺伝子から作られた、人造魔導師。それがヴィヴィオや」



定期的にアースラ内で開かれる報告会議。

そこではやてが告げたのはヴィヴィオの正体とでも言うべき内容だった。


「聖王って確か・・・聖王教会の聖王か?」

「古代ベルカの王、オリヴィエ。伝承によれば、永く続いた古代ベルカの戦乱の世を終結に導いた強き王だったそうだ」


蒔風の質問に、聖王教会に顔を出すことの多いシグナムが答える。
それを一応の説明とし、はやてが話を先に進めた。




事の発端は十年前。
教会で聖王の遺物「聖遺物」を管理する司祭が、その聖骸布を持ちだした事が始まりだ。

その結果、遺伝子情報は教会外にばらまかれ、それを用いた研究の唯一の成功例がヴィヴィオだそうだ。


つまり、結局スカリエッティは天才だったというわけだ。
惜しむらくはその才能の矛先を間違えたという事か。



しかし、その天才性はあまりにも異常だ。



「スカリエッティは・・・・なんでそんなにまで出来るんでしょう・・・・」

「今の技術を軽く超えてますよね・・・・」



そう、あまりにも出来すぎる。
それはもはや天才としての域を超えていた。


そしてその答えも、まだ推測の域に過ぎないが、はやては得ていた。



「スカリエッティは・・・・・伝説の時代を生きた人間やったからや」

「え?」

「はやてちゃん、それっていったい・・・・」


困惑する一同。
だが、ひとりだけ納得の言った顔をして、蒔風が発言した。


「戦闘機人、人造魔導師。そのどちらもが古代ベルカ、否、下手をしたらもっと昔、伝説の時代・アルハザードに存在したロストテクノロジーだ・・・・・まさか・・・・」

「そう、ジェイル・スカリエッティは・・・・・あのその時代を生きた人間の遺伝子を元に作られた・・・・クローンや」



その言葉に全員が驚愕する。
確かに、その説明ならあれほどの頭脳も納得がいく。

しかし、一体誰が?なんのために?




「つまり、それの黒幕が評議会の連中だったという事か」

「そう。管理局はいつだって力が足りへん。有史以来、魔導師の数は増えたと言ってもまだまだ少ないし、管理できてない世界も多い。だから、さらなる力を求め、世界を平和に導くために・・・・」

「その身を捨てて脳味噌にまでなって、世界の行く末を見ていこうとしたわけか・・・・・その結果が|無限の欲望(アンミリデット・デザイア)」



管理局評議会によって、技術の発展やさらなる平和のために生み出された科学者、ジェイル・スカリエッティ。
その身をひたすら研究に費やさせるために、探究心や好奇心を増幅させて成長させられてきた。


しかし、そんな偏りで人間がどうにかならないわけがない。
いつしか彼の暴走した探究心は誰にも止められなくなり、ついには希代の犯罪者として今、世界を騒がせている。




「・・・・・・そんなことがあったのか」

「うん・・・・でも」

「そうや。だからと言って、許されるわけなんかあらへん。うちらは、どうやってでもあのバカを止めるんや」

「そして、もしあいつがなにも知らないなら・・・・」




フェイトの目が少し、本当に少しだけ憐れみに染まる。
彼もまた、誰かの都合に取って作られた存在だった。

そのつらさは、自分がよく知っている。


しかし、その思いを砕くかのように、会議室に声が響いた。








『自分の出生なんて、私はとっくに知っているよ』









「ッ!?」

「おまえは・・・・」


「ジェイル・・・・スカリエッティ・・・・!!!!」



フェイトが鋭い目つきでモニターに映る男を睨む。
しかしそのような感情には興味がないかのように、スカリエッティが笑い声をあげた。


『あっはははははは!!!何を感傷に浸ってるんだい!?そんな生まれなんて関係ないねぇ・・・私はただ!!知りたいだけだ!!!そのために行動してるし、評議会の連中ももういらなかったから「彼」に頼んで消してもらった!!!自分の生まれなんて最初に調べて知った事項だよ?まぁ、もしかしたらこの「知りたい」という感情も埋め込まれたものかもしれないのだが・・・・どうでもいいな』




いきなり現れてベラベラと喋るスカリエッティに、フェイトが歯ぎしりをする。
目の前にいる凶悪犯罪者は、やはりどうあっても凶悪犯罪者だったのかと。


『おやぁ?なんて顔をしているんだい?何を思っていたのかは知らないが、勝手に思い込んで勝手に裏切られた顔をされても困るよ。一方的な感情は迷惑だよ』

「スカリエッティ!!!」



フェイトの激昂。
そこにもはや意味のある言葉などはなかった。
ただ目の前に標的を絶対に捕まえてやるという殺気じみたフェイトの声が、会議室に響いた。


そのフェイトの肩に手を当て、落ち着いておけと蒔風が後ろに下がらせて前に出る。


「よくもまぁ、このアースラに直で通信入れてきたもんだな。ばれんぞ?」

『おっと、これはこれは翼人くん。心配をどうも。しかしね、どうやら君たちの仲間みたいな二人が私のアジトを見つけたようだよ?そろそろ通信が行くんじゃないかな?』

「は?」



と、スカリエッティの言葉の直後、はやてに連絡が入る。
アコース査察官とシスター・シャッハがスカリエッティのアジトを発見したのだそうだ。


しかし中から無数に湧いてくるガジェットに内部調査を諦めて一時撤退、現在はアジトの入り口である洞窟の前で出てくるガジェットと交戦中らしい。



「なるほど・・・・・それでもその余裕・・・っちゅうことは、そっちの準備ができたってことなんやな?」

『理解が速くて助かるよ、部隊長殿。それで、いろいろとなじみのある君たちに招待状だ。私はアジトの奥にいるよ。捕まえたくば来るがいい。まぁ、来るだけの暇があればだが』

「どういうつもりだ!!」

『どうもこうもないよ。こっちでの話は終わりだ。後は管理局全体に話がしたいのでね。一旦こちらとの交信は切らせてもらうよ』

「待て!!!」

『ではまた後ほど(プツン)』



そこまで言って、通信が言ったん途切れる。


しかし、またすぐに映像が立ち上がり、スカリエッティの宣戦布告が始まった。




それは管理局すべてに対する宣言だった。






地鳴りが響き、大地を押しのけて、地の底から黄金の戦艦が出現する。





                 聖王のゆりかご





古代ベルカの戦乱の時代。
聖王が所持していた超巨大空中戦艦。
その武装には魔力兵器だけでなく、質量兵器も装備される「失われし脅威・ロストロギア」

かつて聖王の元、世界を席巻して破壊したとされる最悪の兵器。



そして





『ママァ!!!ママァーーーーーーーー!!!!!!助けてぇ・・・パパァーーーーーー!!!!』

「・・・・チッ」

「ヴィ、ヴィヴィオ・・・・ヴィヴィオッ・・・・・!!!!!」




ゆりかごの起動キーとして利用され、聖王の間の玉座にしばりつけられた状態で苦しそうに叫び、助けを求めるヴィヴィオの姿が、スカリエッティの映像から流された。


その姿にその場の全員の顔が歪み、モニターを睨みつける。



『さあ!!挑んでくるもどうするかも!!すべてキミタチ次第だよ!!!?君たちが忌避し、封印し続けてきた最悪の力を前に、一体どうすると言うのかね!?』




と、そこでさらに管理局内の通信が全局員に通達される。
内容は至極単純だった。




《戦闘機人、総数七体と謎の巨獣三体によって、地上防衛用巨大魔力攻撃兵器「アインヘリアル」全三機が大破》とのこと。





「な!?」

「戦闘機人・・・全七体!?」

「どういう事・・・・・なの?」





なのは達が困惑する。
スカリエッティの元に残ったナンバーズは残り五体のはず。

チンクの話だとさらに作り出すだけの上質な個体はいなかったそうだから急増したとは考えにくい。



ではなぜか。




「あの野郎・・・やりやがったな・・・・」

「舜さん?」

「大体の見当は付いている・・・・やっと来たか。あの野郎・・・・・」

「舜君・・・・・まさか!?」





蒔風がその正体を理解する。


その元凶は、彼が今まで、幾度となく戦ってきた相手だった。




「間違いない。「奴」だ」











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『ふふふ・・・・いなくなったナンバーズの穴を埋めてくれるとはありがたかったよ』

「いや、こちらとしても、できるだけあっちの戦力は削ってもらいたいからな」



暗い空間で二人の声が聞こえる。
一人はこの場から聞こえる声だが、もう一方は通信によるものだ。


通信の方――スカリエッティが宣戦布告の傍ら、「奴」にモニターを繋げて礼を言っていた。


『まさか彼女らの「存在の記憶」まで操れるとはね』

「それが俺の特権だ。あのナンバーズ達は自ら「兵器」である自分を捨て、新たな自分として生きることを決心した。だから俺はその「兵器としての彼女たち」を生み出したにすぎん。実物よりもパワーは勝るが、戦力は低いぞ?」

『構わないさ!!私は「あれ」さえ潰せればいいのだから』

「「あんな瓦礫」に何があるんだい?」

『見ていてくれたまえ。そっちも早く終わるといいね』

「こっちの戦力はできるだけ貸すから、後は勝手にやっててくれ。こっちは仕上げに入りたいんだ」

『おっとすまない。ではこのへんで』




そこでスカリエッティが通信を切り、「奴」が再び計算の仕上げに戻る。



「スカリエッティ・・・・・おまえは負ける。どんなに頑張ろうとも、策を巡らせようとも、おまえは負けるんだ。原典がそれを証明している。オレの貸した戦力があろうとも、蒔風に対抗できるのは俺くらいなもの。プラマイゼロだ。だが・・・その先に何があるかは、まだまだお楽しみだな」








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アースラ内になおもヴィヴィオの鳴き声が響き渡る。




それになのはが自分の肩を抱き、頭を振ってしゃがみこんでしまった。
その様子を見て、フェイトがなのはを抱え、蒔風がおもむろに通信を切った。


「まったく・・・・ガキの泣き声はうるさくてかなわん」

「舜・・・・君?」

「だから・・・・・泣き止ませに行かないとな。ガキに泣き顔は似合わん。それに・・・・・俺はパパじゃないっての」


「うん!!」






アースラのモニターに移るのは三つ。



周囲に大量のガジェットを撒き散らして宙に浮く巨大戦艦「聖王のゆりかご」
地上本部跡に駆ける、「奴」の「欠片」に「記憶」を練り込まれた数体のレプリカナンバーズ。



そして、泣き叫ぶヴィヴィオ。




それを見て涙しなかった者はいない。
蒔風ですら、その目に悔しさが溜まっていた。




だが、そのようなものはもうすでにない。




目に宿るのは、一つの決意。




今まで何度も口にしてきた。
今まで何度も胸に抱いた。




しかし今一度、もう一度言おう。



それは・・・・・世界に絶対などなくとも、その想いの存在だけは、何者にも否定されない「絶対」のものだという証明。







「必ず助ける。この身に変えても」

「舜君・・・・・」



彼の脳裏に蘇るのは、前にヴィヴィオに告げた言葉。






【此処にいるみんなは、お前を一人にしないし、呼べばすぐに駆けつけてやる】





「約束は果たされなければならない」

「うん・・・・そうだね」


「全員、準備はいいか!!!」


『はい!!!!』




「行くぞ・・・・待ってろよ、|世界の理不尽(スカリエッティ)・・・・・今度は負けん。三度目の正直か、二度ある事は三度あるか・・・・・勝負だ。もう、やらせない」






翼人の、蒔風舜の




三度目にして最後の










この世界へのリベンジが始まった。






to be continued
 
 

 
後書き

アリス
「次回、各隊出動!!!」

ではまた次回












パンツめく・・・・・あ、これ違うや

ア「違うでしょう」
 
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