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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~襲撃~



「いきなりですが、やってきました。地上本部」

「舜君、誰に言ってるの?」

「いや、なんかな・・・・」




蒔風たちが今いるのは、地上本部の中。

地上何階だろうか。
窓を覗けば下にミッドの街が広がるほどに高い階で、なのは、フェイトと共に内部警備に当たっていた。




彼らだけではない。
一階のロビー、そしてその周辺、内部、近、管制室から扉の一つ一つに至るまで完璧に警備が敷かれている。


これを見て凄いと言わない人間はそうはいないだろう。





「でもよ、なにもこんなに大仰に・・・・そうか、予言か」

「うん。やっぱり本局の方は危険視しててね」

「それに管理局の偉い人たちもたくさん来てる」


「狙うには絶好のチャンス、ってことか」





現在はやて、シグナムは会議室で陳述会に参加中。

フォワードの五人とヴィータ、リィンは地上で警備をしている。


なお、内部にデバイスの持ち込みは禁止とされているため、彼らになのは達のデバイスは預けられている。





「そう考えると舜君の武器って便利だよね」

「そうだねぇ・・・・いつでも俺の意思で出し入れできるから」

「いざとなったら舜君頼みだね♪」

「おいおい・・・・ま、頑張るさ」




そんなことを話しながら、時間はゆっくりと過ぎていく。







「舜から見て、戦闘機人ってどれくらい強いの?」

「ふふん、オレにしてみりゃあんなんどーってことはない」

「やっぱり?」



「って、言いたいところなんだけど」

「え?」


「実際、あいつらは相当の実力を持っている。俺たちとの交戦記録も、おそらく全員が共有し経験値として溜めてるだろうし、各人のISとか言う特殊能力は厄介だ。しかも肉体レベルが底上げされてるし、武器も天才というだけあって用意してるのはどれも一級品。相手にできて余裕だと言えるのはせいぜい五人までだ。八人になったらキツイ。十人だったらまともにぶつかれん」


「まともには?どういうこと?」

「真っ向じゃなくて、背後を取って後ろからグサリ、とかなら出来るってこと」


「それじゃ暗殺みたいだよ・・・・」

「俺の得意分野がそこなんだから仕方ないだろ」

「そうだったの?」

「そ。あんまり好きじゃないんだけどね・・・・ありゃ、コーヒーなくなっちまった。お前らもなんかいるか?買ってくるぞ」


蒔風が手に持っていた紙コップをヒラヒラさせて空である事を示すように振る。

その申し出になのはは今はいいや、と断ろうとするが


「あ、私は別に・・「じゃあコーヒーでお願いね?」フェイトちゃん?」


フェイトがそれをさえぎってコーヒーを頼んだ。
だが蒔風は聞こえてなかったのかワザとなのか、恐ろしいものを持ってこようとしていた。







「たしかゴーヤジュースがあったからそれにミルクをたっぷりかけたものを・・・・」

「「コーヒーで」」

「ははっ、りょーかい。ではでは~~~~」





蒔風が少し離れた自販機コーナーに足を運ぶ。
それを見送って、なのはがフェイトを問い詰め始めた。





「どうしたの?フェイトちゃん」

「うん・・・なのは、。舜の事、どう思ってる?」

「どうって?」

「ほら、気になるとかさ」



フェイトの目はなんだか生き生きとしている。
その眼に若干押されながら、なのはが答えた。



「うーーん。舜君はずっと憧れの人だったからなぁ・・・ヘリを助けてもらった時も、胸が熱くなったくらいだし・・・・」

「なのは、それ本当?」

「うん・・・ってフェイトちゃん、なんでそんなに顔近いの?鼻息荒いの?怖いよ!?」


「(はやてが言ってた「面白い」ってこういうことだったんだ・・・)胸が熱くなるって、どんなふうに?」

「背中を見てね、安心したんだ。「この人がいれば大丈夫」って。それで何かこみ上げるように熱くなって・・・・フェイトちゃんどうしたの!?プルプル震えてるけど!?」



「な、なんでもないよ・・・・・・」

(こ、恋だーーーーー!!!なのはが恋してるーーーー!!!しかも本人自覚なし!!!これは面白い!!)




なんだか心の中で暴走しているフェイトさん。
ちなみに彼女にとって蒔風は「いつでも頼れるお兄さん」だそうだ。歳は同じだけど。




「なのは、それは・・・・・」

「ん?」



フェイトがついに自覚させようとする。




「それはね、こ・・・・・・」






ドォン!!!!





だが、その言葉の先は突然の轟音にかき消されてしまった。
地上本部の巨大な塔が、大きく揺さぶられるほどの轟音に、その階にいる全員が思わず膝を突いてしまう。





「な、なに!?」



なのはとフェイトがその事態に通信を繋げて現状報告を聞いていく。



「ぼ、防衛管理室と、動力炉が破壊されました!!!」

「な!?」



「防壁は!?」



「バリア自体は別動力なので展開されてはいますが、ガジェットが張り付いていてこちらの身動きが・・・・・」

「こちらに増援で向かってきている武装局員の部隊が、戦闘機人とみられる敵二体と交戦!!壊滅状態です!!」

「さらに内部のシステムに侵入され現状、緊急で降りたシャッターで各フロアが分断され、救援に向かえません!!!」





そうした報告を聞いて、二人の顔が青ざめた。


このままでは予言の通りに・・・・・・



今までの報告だって、ここ五分以内の出来事だ。

だったらこれ以上、一体何が起こってしまうのか、見当もつかない。





ドォン!!!ドォン!!!!


断続的に聞こえてくる爆発音。
なんとかしたいが、今の自分たちはデバイスもないのだ。


「しゅ、舜君は!?」

「舜!!いないの!?」


なのはとフェイトが蒔風を思い出してその場を探し始める。
だがその姿は全く見当たらず、周りの局員にも聞いてみた。すると・・・・・



「え?あ、その人だったら俺らにも飲み物いるかって聞いてきたけど・・・・・」

「は?俺だって聞かれたぞ?」

「わ、私も聞かれたけど・・・・」



二人が聞くとそのフロアにいたほとんどの人間の飲み物(全部コーヒー)を買いに行っているようだ。



何やってんだあいつ。




「と、とにかく新人たちと合流しないと!!」

「うん、確か合流場所は、地下!!!」





そう言って何人かの人に協力を仰いでエレベーターの扉をこじ開けようとする。

そこから一気に下まで降り、そこで合流してデバイスを受け取るという考えだ。





「んっ!!んぐぐぐぐぐ・・・・」

「かーたーいーーーーー!!!!」




だがやはりそこは地上本部。
外敵からの攻撃を受けた今、そのような通路が簡単に開くわけもない。


一旦手を放し、交代でやってここを開けよう、と提案され皆が「おう!!」と勢いよく返事をしたところで、あの男がやってきた。





「戻ったぞ!!!なんだよこのありさまは!?」


「舜!!」

「舜・・・・く・・・ん・・・・?」




そこにいた蒔風は、人数分のコーヒーをしっかり確保してきていた。


紙コップは重ねて一本にし、中身のコーヒーは圧水で水球にしてプカプカと浮かせている。




そうして蒔風がみんなにコップを配り始めた。




「えっと・・・ヴォルフさんに一個、サクラティスさんに一個、ピンゼンさんに一個・・・・・・・」


律義に頼まれた順に渡していく蒔風。

その蒔風に、その場の全員が声をそろえて叫んだ。




「「「「「何やってんだあんた!?!?」」」」」




その声に若干ビビり、紙コップをバラバラと落としてしまい、それを床につくよりも早く何とかキャッチする蒔風。
そして「なんだよぅ」と言いながら置いてあったテーブルにコップを一つ一つ置き、均等にコーヒーを入れていく。




「あそこに置いといたから勝手に取ってってくださいね?っと・・・・・・・・・・まったく、どういった現状だ?」



なのはとフェイトがかいつまんで現状を伝える。
というか、お前通信機持ってないのか?




「なるほど・・・・・やっぱ用意しといて正解だったってわけだ(パチン!!)」


蒔風が指を鳴らす。

なのはが「用意って何!?」と聞く前に、その現象は始まった。




地上本部の地面から上空を結界が覆う。
周囲三点に設置された獅子天麟を起点に展開されたものだ。

それがバリアにへばりついたガジェットを押し出し、引き離す。
ホテル・アグスタの時と同じものだ。


「これで幾分かバリアも持つだろ。地上本部が焼け落ちる、なんてことはないな」

「よ、よかった・・・・」

「それで、獅子から伝言。フォワードたちが合流のために地下へと潜っていったらしい」

「じゃあ私たちも!!」

「行こうか。どれ、そこ通してくれよ・・・っトォ!!!!!」




蒔風がケンカキックでエレベーターの真ん中に蹴りを入れる。
すると真ん中の開く隙間に足が突き刺さり、足の周辺だけ丸く変形してしまった。



「「嘘ぉ!?」」


「こんくらいで驚くなよ今さら・・・っと」



さらに足を引っこ抜き、そこに手を入れて強引にエレベーターを開く蒔風。

これで進路は開けた。



「行くぞ!!お前ら!!!(ガシッ!!)」

「え?行くぞって」

「一体何を・・・」



「紐なしバンジーーーーー!!!!」


「「キャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」」








どうするのか、という二人の肩を掴んで、蒔風がエレベーターの竪穴に飛び降りていった。
完全にいきなりの事で、なのはとフェイトがさすがにビビる。


そりゃそうだ。
デバイスも無く、こんな狭い竪穴に三人も同時に飛びこんだら悲鳴も上げる。



暗い穴を落ちていく三人。
そうして一番下に到達したところで






ボゥワ!!!!ズゴォオオオオッ!!!!!








蒔風が二人を掴んで開翼し、その勢いを完全に殺す。

そして同じようにエレベーターの扉を開け、その階に到着した。




「着いたな」

「「なにしてんの!?死ぬかと思ったよ!?」」

「悪い、その感覚はオレにわからん」





肩で息をする二人にシレッ、と返す蒔風。

そこで周囲を見渡し、状況を見た。




「ライフラインは完全に閉ざされてるな。空気は緊急時でも動くようになってるみたいだからいいとして・・・・これじゃまるっきりダンジョンと変わらん。とりあえず合流ポイントへ・・・・」

地下という事も相まって、非常灯の明かりしかないこの階はこの状況下ではおどろおどろしい雰囲気しか表していない。



「とりあえずはフォワードたちと合流して・・・・・待て、誰か来るぞ」


蒔風が暗がりに向かって目を凝らす。
その先からやってきたのは、息を荒くしたシスターシャッハだ。


「シャッハさん!!どーしたんですか!?」

「す、すごい音と悲鳴が聞こえて・・・・何があったんですか?」

「「ああーーーーー・・・・・」」


なのはとフェイトが視線を蒔風に向ける。
なぜかそれだけでなんとなくわかってしまったシャッハが、話を本題に移した。

会議室の扉自体は有志達によって何とかこじ開けられている。
だがその会議室内にはいまだに高官たちが残っていて、はやてとシグナム、カリムも彼らへの説明のために残っているらしい。




「レジアスっておっちゃんは?」

「少し顔色が悪かったですね・・・・」

「ま、そりゃそうか。オレも見たけど、結構なセキュリティだったもんな」

「そこを崩してくるとは・・・一体どれほどの力を・・・・・」


シャッハの言葉に、蒔風はいいや、と首をふる。


「確かにあいつらは強力な戦闘能力を持っているが、たったあれだけの力押しではこうはならん。多分、先天的固有技能、ISとか言うのがかなり特殊なんでしょうな。地面に潜ったり幻術見せてきたりとそれはもう多彩な」

「地面や幻術・・・・・それじゃあ・・・・」

「ガチガチに固めた鉄壁も、小さな策一つで簡単に崩れる。これはいい例だな。うん」



腕を組んで感心する蒔風をよそに、シャッハがなのはとフェイトにこれからどうするかを聞いた。



「今こっちに新人たちがデバイスを持って向かっています」

「今のところはそこで合流の予定です・・・・え?」


と、そこでフェイトに通信が入る。
なのはにも入ったようで、蒔風が置いてけぼりになる。


「なにがあった?」

「舜君、端末もらってないの!?」

「すまん。コーヒーまとめてる時にポチャンした」


「「本当に何やってんの!?」」


というかあれって落とすようなものなのだろうか?見たことないけど。



「それより現状!!!」

「う、うん・・・・六課隊舎が・・・・・・襲撃中・・・・!!!」

「なんだと・・・・・?」


「今はシャマルとザフィーラを中心に残ったメンバーが何とか防衛線を築いているみたいだけど・・・・」

「・・・・・戦闘機人は何体いる?」

「わからない・・・・今交戦中なのは一人みたいだけど・・・・」


「一人でその威力か・・・・・・ふむ、考えてみよう」

蒔風が悠長にも人差し指を上げ、まるで講義でもするかのように話しだした。



「空の武装局員を潰すのに、おそらくあいつらなら二人もいれば十分だ。動力炉に一人、監視室に一人、遠距離砲撃もあったみたいだからそっちに一人。それからハッキングを行ったものが一人。スカリエッティが身の回りを守るために一人。最後に内部制圧のために二人だとして・・・・予想総勢人数は十人だから・・・・あっちにはそいつしかいないか?」



「でも戦闘機人はあのとき十人だっただけで、今は増えてるかも・・・・・」

「かもしれん。というかそうだろうな。一人が外から攻め、その間に六課に侵入、か。狙いは保管されたレリックにヴィヴィオだ」

「そんな!!!」



「おい、お前ら。俺は先に行く。デバイス受け取り次第すぐに・・・・」




蒔風がその場から急いで六課へと向かおうとする。

そこにちょうどいいタイミングでフォワードたちが到着、スバルが血相変えて叫んできた。



「ぎ、ギン姉が!!!今戦闘機人と交戦中だって!!!」

「なに?」




スバルの話によればギンガは襲撃のあった時、みんなと離れて裏手にまわっていたらしい。
地下で合流するつもりだったのだが、こっちの方も二体の戦闘機人に行く手を阻まれ、やっとの事で撒いてきたのだそうだ。




「なのはさん!!ギン姉を!!!」

「わかってるよ、スバル。スターズは今からギンガのもとに」

「ライトニングは六課隊舎の増援に向かうよ!」


「「「「はい!!」」」」


「シスターシャッハはデバイスをはやてちゃんとシグナムさんに渡してきてください」

「わかりました。お任せください」


「で、舜君は?」



「えーーーだーーーうーーーー・・・・どうするどうする~~~?」





蒔風は悩んでいた。


六課がヤバい。
かと言って、ギンガが一人で戦闘機人を相手にできる保証もない。更にスバルたちが交戦したという二体もそっちに向かっていたら非常に危険だ。


しかし獅子天麟の三体はこの場から動かせないし、他の四体はどこから機人が来るかもわからない以上、なるべく自分から放したくなかった。







考えて、考え始めて数秒後、あっさりした顔をして蒔風が考えをまとめた。




「ソッコーでギンガを助けてタイツ共捕まえて六課に飛ぶ!!!」

「飛ぶって・・・・かなり距離あるよ?」


「うっせ!!今はそんなこと言ってる暇はない!今こうしてる間にも結構ヤバいかもしれんしな。一気にカタをつける!!!」

「じゃあ・・・・・」



「まずは近場のギンガからだ!!スバル、ギンガの場所を教えろ。今から俺が先に行く。後からついてこい!!」


「はい!!」



「フェイト!!俺が行くまで六課を任せた!!!」


「うん、任せて!!」

「あそこは私たちの居場所です・・・だから」

「絶対に守ります!!!」



「よろしい!!先に行くぞ!!加速開翼(ブーストオン)!!!!」





蒔風が加速開翼し、翼からのブースターで一気に超高速移動を行ってギンガの元へと向かう。


その後を各自が各々の戦場へと飛んでいった。










先に言っておこう。








物語はここから大きく歪み始める。








to be continued
 
 

 
後書き

アリス
「作者曰く、今回の話は考えるのが大変だった。各戦闘にどうやって絡ませるかは考えてたけど、戦場から戦場への移動をどうやって動かすかが考えてなかった。アニメ三回くらい見てマジで悩みました、とのこと」

ちなみに今回はなのはさんたちと一緒でしたが、案としては「はやてと一緒」「ギンガと一緒」「フォワードと一緒」もあったそうです。







アリス
「次回、選択肢の有無」

ではまた次回












さぁ、始めようか!!!!(襲撃開始時、スカさん) 
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