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没ストーリー倉庫

作者:海戦型
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御使いのいる家 ぱ~と6

 
前書き
ぱ~と5を書いてたら書きすぎたので分割して6にしました。
個人的にはベター止まりの出来栄えかな……。 

 
 不思議なことに――ミツルのいるこの世界には異世界からの来訪者が多い。
 その先では本来交わるはずのなかった人々が交わることもあれば、再会を果たす者もいる。
 今宵、とある居酒屋で3人のコスプレ人間的な何かが再会を果たしていた。

「我等イディクスの幹部が再び一同に会するとはなんと目立たいことか!」
「それもめでたいけどさぁ、むしろアタシらが肩並べてお酒飲んでるって状況がおかしくない?」
「まぁ良いではないか。以前はそれどころではなかったからな」

 彼らは上から順にうっかりのイスペイル、なんやかんやで優しいヴェリニー、そして本来なら誰かに憑りつかないとよくわかんない混沌の塊になってしまうという説のあるガズムという。そして彼らは「イディクス」の幹部だったという経歴がある。

 イディクス――それは2000年前によく分からん思念体が爆発四散し、どっこい生きてた思念体が世界に散らばった自分の欠片を集めて復活するために創り出した組織である。割と幹部同士の仲は良く、どこぞの出現=宇宙滅亡なトンデモ存在とは似ても似つかないくらい威厳がないことでも有名だ。

 なお、その組織は地球人と異星人の連合的な部隊に潰されて現在は存在しない。
 これもまた諸行無常。一応沢山の惑星を滅ぼした凄い組織なのだが、もう誰もそんなこと覚えていないしこっちの世界だと「中学時代に考えたオリジナル小説ですか?」と鼻で笑われるレベルの話だ。

「しかしイスペイル、あんた随分見た目スッキリしたわね?前はメカメカしかったのに急に人間みたいなボディになってどうしたの?ライ〇ップ?」
「せんわ!というかラ〇ザップで無機物が収縮するかッ!ブライシンクロンシステムのちょっとした応用なら出来るかもしれないかなッ!」
「というかもうそのヘルメットがなかったらイスペイルかどうか判別がつかんぞ」
「いや声で分かれ!2000年一緒に仕事してきただろッ!!」

 もともとのイスペイルはザ・メカ怪人といった感じにゴテゴテのメカメカだったのだが、現在のイスペイルは顔だけゴテメカヘルメットを被って他は建築業やってそうなマッチョ野郎になっている。イスペイルは思念体に生み出された下位思念体でありその中核は研究者などインテリ連中の負の感情の筈なのだが、見事に肉体がキャラ付けと逆行していた。

「で、結局なんでよ?」
「実はこの体、シエロってオッサンに限りなく人間に近い形に改造されたんだよ……あれは今から数年前だったかな……」

 連合的な部隊の空気が読めない男に倒されて意識を失ったイスペイルは、気が付けば多元世界なる場所にいたらしい。そこで今にも完全に壊れそうなところを『ビーター・サービス』のシエロという暑苦しいオッサンに拾われたという。

 そこでイスペイルは意識をアンドロイドに移植され、今の体を手に入れた。
 ちなみにこの体、恐ろしい事に機械を用いながらも恐ろしい精度で人間を再現しているのでほとんど人間と違いがないという。シエロの暑苦しくてガテン系な雰囲気がものすごく嫌だったイスペイルだが、この技術力に度肝を抜かれて技術を盗むためにシエロに弟子入り。
 その後なんやかんやあって次元修復の光に巻き込まれてここに辿り着くまでずっと協力していたそうだ。途中で地球が滅びそうになったり、地球の時間が停止しそうになったり、地球が征服されたり、地球が滅びそうになったりの波乱万丈大活劇だったという。

「結局あの技術の出どころはシエロのおやっさんではなくエーデルとかいう謎のおっさんだったようだが、研究者としては割と有意義な経験だったな。うん、数十回は死ぬかと思ったが充実した日々だったぞ」
「アンタの周囲おっさんしかいないわね……アタシムサいの嫌い~」
「何だとぉ?そんなこと言う奴にはヒートスマイルかますぞ!!喰らえ、ヒートスマイルッ!!」
 
 キラッキラに輝いた目とサムズアップ、そして筋肉を全面的に強調した全力でムサいスマイルが発動した瞬間、店内の気温が11度、湿度が33%上昇するほどの暑苦しさが吹き荒れた。

「ぎゃああああああ!!やめろ暑苦しい!!夏だぞ!今は夏なんだぞ!!」
「ちょ、悪かったわよ!!悪かったからもうやめてぇぇぇぇ~~~~ッ!!」
「分かればよろしい!じゃ、生ビール追加お願いしまーす!!」

 キンッキンに冷えた生ビールをCMかというほど美味しそうにグビグビ飲むイスペイル。その姿にかつて悪の幹部だった頃の面影も、研究者的な面影も全く存在しない。唯のコスプレ系ガテン男である。
 ……なお、この店は最近サクリファイとカリ・ユガが飲み交わした店であり、二人が現れてからというもの変な人が出没することで周囲に有名になっているので既に店員は何も言わない。言わずもがな、今日の変な人はイディクス3人衆だ。

「大体人の事を色々言うが、俺的にはお前らの現在も気になるぞ。特にガズム!お前、俺たちが思念体だから辛うじて理解できたものの今は誰の体を使ってるんだ?」

 ガズムは常に誰かに憑依して活動しているが、イスペイルの記憶が正しければ前のガズムは冴えないサラリーマンみたいなオッサンに憑りついて……いや、幼女だったか?とにかく今とは違う体に憑依していたと記憶している。

 しかし現在のガズムは……ガズムは……誰?って感じの銀髪イケメンになっている。
 イスペイルの問いに、ガズムは困ったように首を傾げた。

「それがな、俺も良くは覚えておらんのだ」
「は?」
「え?」
「取り合えず、あの忌々しいアトリーム人に負けた俺は気が付いたら宇宙空間に漂っていた。この体はそこで調達したんだ。バルシェム・シリーズという人造人間らしい。中に魂が入っていないものだから勝手に失敬させてもらったものだ」
「はぁ……それから?」
「それなんだ。せっかく体を手に入れたのだからル=コボル様(←イディクスを作った思念体で三幹部の親とも言える存在。もちろん滅んだ)復活に動こうとした……」
「動こうとしたら?」
「宇宙が終わりかけててそれどころじゃなかった……」
「「ファッ!?」」

 ガズム曰く、そこはル=コボル全盛期レベルかそれ以上の野郎が二つもせめぎ合ってる上に地球戦力が(笑)レベルの銀河級戦力が大集合しているというとんでもなくカオスな戦況のド真ん中だったそうだ。とにかく生き延びるために銀河中心殴り込み艦隊とかいうのの味方のフリして戦ってたら逃げ場もなくなり必死こいて宇宙怪獣と戦うしかなくなり、ブラックホールに飲み込まれ、そして今ここに至るとのこと。

「アンタら二人とも人生波乱万丈すぎでしょ……」
「しかし、なんだ。生と死の狭間に於いて志を共にする仲間がいるというのは素晴らしいな……ああ、バッフ・クランやゼントラーディの連中は未来を掴めたかな……?」
「お、おいガズム?なんか遠い目してるぞ?昔の陰湿で陰険でル=コボル様復活しか考えていなかった頃のお前はどうした!?」
「ああ……色々と拘りはあったからな。言いたいことはわかる。でもこれからは楽に行こう。宇宙は希望に満ちてるからな――」
「ヤバイ……これヤバイよイスペイル!悟り開いてるよ!!」
「何があった!?お前のいた銀河でいったい何があったんだ!?」

 何故か彼の後ろに青髪でモミアゲが特徴的なオッサンのスタンドが見える程に彼はなにかヤバかった。放っておいたらそのまま魂だけ次の宇宙に流れていきそうである。

「ま、まぁ飲め!せっかくだから飲まなきゃ損損!」
「ん?そうだな……せっかく集合したのだからもっと飲むか。清酒いっぱい追加で!」
「しかしヴェリニーよ。俺たちは随分変わったのにお前は全く見た目が変わっておらんな……」

 ヴェリニーは簡単に言うと褐色肌でワイルドな獣耳女である。そして体が変ってしまった二人と違ってその外見は全く変わっていないように見える。

「まぁアタシはアンタらと違って激動の時代を生きてねーし。ちょっとソーディアンとかいう宇宙船に住んでる『修羅王』っていう超カッコよくて超強くて超優しい人にお世話になってただけだし」

 他の二人と同じく空気の読めないアトリーム人に倒されたヴェリニーは気が付けば『修羅』という集団の住む船の中で倒れており、集団のトップらしい赤髪の青年の世話になっていたそうだ。

 最初はプライドの事もあって修羅をぶちのめして支配したろうと考えたヴェリニーだったが、この修羅という集団は全員サイボーグなのかと疑いたくなるくらい戦闘能力が高かったのですぐに断念。詳しい所を伏せつつ事情を話すと親身になって応じてくれ、テレポート装置や次元転移に使えそうなものを色々と与えてくれたという。
 しかも修羅王は修羅の王だけあって修羅最強。襲撃してきたヴェリニーに丁寧に機神拳なる拳法を教えてくれたりもするし、とにかく修羅王すごい。修羅王イケメン。修羅王ホレる。……とのこと。

「お前ル=コボル様LOVEとか言ってなかったっけ?」
「アタシ気付いたの……ル=コボル様への愛は言わば『大人になったらパパのお嫁さんになる~!』とか言っちゃう小娘の妄言で、真実の愛は別の所にあると……それに転移装置を使えばいつでもソーディアンに戻れるから遠距離恋愛ドンと来い!あ~ん修羅王様ぁ~♪」
「おいどうするガズム。ヴェリニーが完全にアホの子になってしまったぞ」
「それなんだがなイスペイル。俺ら変化以前に大変重要なことを忘れてる気がするんだ」

 忘れている事とは、彼らの存在意義である目的でもあるル=コボルの復活のことである(直球)。
 ル=コボルは自身の欠片と幹部たちを吸収することで復活する存在。なので幹部が揃ったら普通その話をするべきだ。彼らもそのために2000年間ノリノリで惑星を破壊してきた筈だ。

 ところが彼らは余りに刺激的な体験をし過ぎたせいで肝心のル=コボル復活どころか自分たちが全員同じ相手に倒されていることさえすっかり興味をなくしている。哀れル=コボル。君の出番はもうない。

「まぁ忘れるぐらいだから急ぎの事ではあるまい。んぐっ……美味い!!人間どもめこんな美味いものを日常的に飲み食いしてるのか!羨ましいことこの上なし!!」
「同感だ。こんなことなら俺も機械じゃなくて肉の躰で活動してればよかった。店員さんゴボウの天ぷらとゲソ揚げ、それと手羽先ー!」
「修羅王様はアサクサという土地に執心のご様子……今度の休みはアサクサ行ってお土産買いまくるわよー♪」

 こうして悪の三幹部は見事に世俗に染まり切ったままこの街で暮らしている。




「………ところで、イスペイル。俺はこっちに来て日が浅いから金が余りないのだが、会計はいまいくらぐらいだ?」
「何だお前そうだったのか?まぁ代金は俺が立てておくさ」
「すまん、世話になる」
「それより、今アドヴェントという男が俺達のような人材を集めて会社を作ってるんだ。お前行ってみたらどうだ?」



 住民ナンバー03,「イスペイル」

 マスクマンとして近所の子供たちから妙に人気がある元イディクス幹部。
 何気にル=コボルから謎の独立を果たし万々歳で人間生活を謳歌中。
 地元のリフォーム会社で爆発的に出世中で、将来は社長。
 密かに自分の被っているマスクを量産して売る計画を立てている。

 住民ナンバー04,「ガズム」

 謎のイケメン肉体を手に入れ、使命もすっかり忘れた元イディクス幹部。
 終焉の銀河で何かステキなものを見たのか、若干悟りが入っている。
 後日、アドヴェントの僕になって色々活動を開始する予定。
 ぶっちゃけ三幹部の中で一番影が薄い。

 住民ナンバー05,「ヴェリニー」

 ケモ耳なのにいまいち萌えないと評判の元イディクス幹部。
 獣は強いオスに惹かれるので、スパロボ界で一番生身が強そうな人にホレた。
 今では修羅の一人としてカウントされており、偵察活動の名目でこの世界に来ている。
 地元のツンデレメイド喫茶で就労中。ニッチなファン多数。

 備考
 3人は仲良し。結局浅草にも3人で行ったらしい。
  
 

 
後書き
イスペイルがたどり着いたのはスパロボZの世界です。あそこは入り込む余地幾らでもあるし。本編では見えないところで自分が滅びない未来のために超頑張ってた模様です。

ガズムがたどり着いたのは第三次αのラスト付近のパラレルですね。この世界では原作正規ルートと違っていくつか重要なファクターが抜けたために最後の最後でイデが中途半端に発動し、ガズムがアレなことになっています。

また、ヴェリニーが出会った修羅王様は厳密にはOG外伝後の修羅王とはほぼ同じだけど微妙に異なるパラレルワールドの存在です。ほかの人達も大体そんな感じで納得してください(適当)。 
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