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機動戦士ガンダム・インフィニットG

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第二話「MS学園」

 
前書き
アムロ達がMS学園に行きます。 

 
「どうして……?」
どうしてこうなった? そう僕は何度も自分に問い尋ねていた。周りは全員MSパイロットや整備士、オペレーターを目指す若者たちが席に座っている。その中で例外の中の例外である僕は呆然と席に座り続けていた。
僕がここ、MS学園へ来る三日前……

「マジで行くの!?」
僕は父さんの一言に呆然としていた。父さんはガンダムについてとその後の予定を説明した。
「私がお前にしたあのガンダムの指紋登録は、一定期間内のものだった。しかし、何故かガンダムはお前を正式パイロットとして登録してしまった。つまり、ガンダムがお前を選んでしまったということだ」
「MSが人を選ぶの!?」
「ああ、一般人は知らんようだがMSにはISよりも遥かに精密なコアが格納されている。生命体のように判断し、分析する感情を持ち合わせているのだ」
「MSってまるで生き物だな?」
「生き物のように感情はそこまで豊かではないがな」
「つまり、人間のような考えで状況を見る事が出来るんだな?」
「まぁ、人間よりかは機会寄りだが」
「どっちだよ?」
「つまり、優れた分析能力と解析能力を持った人工頭脳だということだ!」
「最初からそう言えばいいのに……」

と、こういったことがあって今僕はこうして席に座っていたのだ。
「みなさん入学おめでとうございます!」
そう言って教室へはいって来たのはまだ幼さの残る可愛い女の子だ……え、もしかして教師なの?
「私が今日から皆さんの副担任を務めさせてもらいますオペレーターコース担当のノエル・アンダーソンです♪」
「ヒュー! 可愛いお譲さんが副担任とはねぇ?」
該は口笛と共にそう呟く。正直、僕も見とれていたが……何故か、背後から強い視線でこちらをにらんでくる明沙がいるからそれほど見つめることはできない。っていうかどうしてお前が怒るんだよ!?
「よし! 集まったようだな?」
すると、ノエルの次に教卓へ若い男性教員が現れた。あの人は……マット中尉!?
「どうも、俺が今日から君らの担任を務めるマット・ヒーリィだ。君たちを優秀なMS乗りと整備士、オペレーターへ育て上げるから大船に乗ったつもりでいてくれ? それと、わからない事は恥ずかしがらずに俺かノエルの元へ訪ねに来ればいい。変な見栄張ろうとするな? わからない事はわかるまで何回も聞け? いいね?」
そう親しく優しげに言うマット先生。こういう先生が担任なら僕も少しは肩の力を抜けることができるだろう。
その後、クラスで自己紹介が始まった。皆それぞれ自分をアピールした事を言ってくるので正直ウザいと思った。ちなみに僕と隼人、該、一夏の四人はパイロットコースで、明砂はオペレーターコースである。
「はぁ……眠い」
僕は自己紹介を聞くにつれて眠くなり、ついには机に伏せてしまったが、
「……君! 嶺君!?」
「……?」
僕は顔を挙げると、そこには何度も僕の名を呼ぶノエル先生の姿と、彼女の隣でクスクス笑みを浮かべるマット先生が居た。僕は慌てて立ち上がる。
「あ、はい……!」
「ごめんね? 今、「ア」から始まってちょうど「レ」の嶺君の番なの、自己紹介お願いできるかな?」
苦笑いで言うノエル先生に僕はしぶしぶと自己紹介をする。
「れ、嶺アムロです。趣味と特技はこれ言ってありませんが……宜しくお願いします」
そう僕は顔を赤くして席に戻った。
「はい、じゃあ次の人?」
そういって次の人が次々と自己紹介していく。僕は、伏せていたことに少し恥じらいを持った。考えてみれば、ここは大方軍人が取り仕切っている学校だ。マット先生だって中尉何だし怒らせないよう僕は気を引き締めることにした。
「はぁ……席に座るだけでも緊張する。っていうか精神的に辛いよ?」
「仕方ないよ? 教員って軍人が大方だから緊張するよな?」
と、隼人。
「でもよ? さっきのノエルっていう服担任の先生さ? 調べた結果十七歳だってよ?」
そう言ったのは該だ。コイツはどこからそんな個人情報をくすねて来たのかわからないが、とりあえず、僕らは驚いて見せた。
「そうなのか? 十七歳って……もしかして飛び級!?」
隼人は尋ね、該は続ける
「かもしれねぇな……」」
「へぇ……」
僕はそう呟く。軍での本職と学校での教員業務、これら両方を演じるとはたまったものじゃない。しかし、
「学園に居る連中は元軍人だ。本職を抜けて学園での教員職へ移ったんだとよ? あの後、マット先生もこっちに移って来たらしいしな?」
「そうなんだ……でもお前、どこでそんな情報を仕入れたんだ?」
「ダチが出来てな? 確か「シャングリア」とかいう多国籍国家から来た奴から教えてもらったのさ?」
「シャングリア? ああ……近年建国した反IS国家とかいうアレ?」
僕は前に見たニュースの記憶を引っ張り出した。しかし、その国は発展国なのだが貧富の差が激しく、貧乏な人達がたくさんいるらしい。
「しかもそいつ、凄いことにアムロや一夏と同じガンダム乗りだとよ?」
「え、ガンダム乗り!? 凄いな……」
隼人は僕とそのシャングリアのを比較しているようだが、ハッキリ言って迷惑だ。
「よしてくれよ隼人? 僕はガンダム乗りって言っても素人だよ。っていうか好きで乗ったわけじゃないんだし……」
「ほら、授業が始まるぞ?」
すると、教室にマット先生が入ってきて、僕らは一時間目の最初の授業を受けた。しかし、MSの理論について僕はチンプンカンプンである。
「えっと、わからないところはありませんか?」
一様、一時間目の授業はノエル先生が担当してくれているようで、マット先生は用事があると職員室へ向かって、この場は彼女に任せたようだ。
「「あの……」」
すると、僕と一夏が同時に手を挙げた。
「はい、まずは一夏君?」
「全部わかりません!」
その直後、全員はずっこけた。
「わ、わからないって……? あの、参考書は?」
そう苦笑いを浮かべてノエルが言うと、一夏は。
「古い電話帳と間違えて捨てました」
さらに周囲はずっこける、僕を除いては。
「じゃ、じゃあ後で発行しておきますので今度からは大切に管理してくださいね? じゃあ、アムロ君は?」
「全部わかりません!」
一夏に続いて僕の非常識さに是認はさらにずり落ちる。
「……参考書は?」
疲れた声でノエルが言うと、
「ちり紙交換に出しちゃいました」
今まで以上にずっこけた! 僕は頭をかきまわして困ったように笑っていると、どうしようもないヘタレを目の前に「いい加減にしろ!」という熱血じみた声が飛んできた。
「お前! ふざけているのか!?」
「は?」
すると、青い髪をした男子が立ちあがって僕へ指をさして怒号を挙げてくる。
「な、なに……?」
僕は指を刺されて戸惑う。
「ちり紙交換!? 古い電話帳!? お前達、やる気があるのかって聞いてんだよ!?」
「別にふざけてはいないけど……」
そう一夏が言い訳をするも、
「そんなの言い訳になるか!? お前たちのような奴が居るから……お前たちのような奴が居るから女尊男卑は続くんだ!!」
「そんなこと言われても……僕だってISは嫌いだから」
「その態度が気に入らないって言ってんだよ!?」
「……どうしよう」
僕らはよくわからないが、この男子を怒らせてしまったようだ。どうすればいいのか戸惑うと、ここで一夏が……
「あ、もしかしてカミーユ・ビダン? 名簿で見たけどお前って男子だったのか?」
すると、辺りはシンマリ静まり返ってカミーユという男子は手を震わせている。
「今何て言った……!」
すると、席から離れてカミーユは一夏へドス黒いオーラと共に歩み寄って来た。それに気付かない一夏は僕よりも鈍いかもしれない。
「え?」
「俺は男だぁ!!」
そういってカミーユは拳を一夏へ振った。
「!?」
殴られることを寸前に気づいた一夏は目を瞑るのだが、
「おいおい? 止めろって!」
「誰だ! お前は!?」
一夏を殴ろうとしたカミーユの拳はもう一人の男子に掴まれていた。
「入学早々、喧嘩は止せよ? クラスメイトなんだし仲良くしようぜ?」
「ジュドー! 気を付けろよ? そいつ空手とか習っていてメチャクチャ強いって話だぜ?」
そうクラスの一人がジュドーというこの少年へ忠告した。
「わかっているよ、ビーチャ」
そう返したジュドーはカミーユの方へ目を向ける。カミーユは興奮したままジュドーを睨みつけた。
「お前もコイツを庇うのか!?」
「だから、俺は喧嘩を止めようとして……」
「うるさいっ!」
そういってジュドーの手を振り払ったカミーユはもう一度叫ぶ。
「カミーユが男の名で何が悪い!?」
「だから、別にお前の名前なんて一言も言っていないだろ?」
「何しているんだ?」
「「!?」」
ジュドーとカミーユが教卓へ振り向くと、そこにはノエルに呼ばれてマット先生が駆けつてきた。マット先生はため息をしてカミーユへ言う。
「カミーユ、またお前か?」
「先生! コイツらが、俺のことをバカにしたんです!!」
そう一夏とジュドーへ指をさすカミーユだが、またかと言わんばかりのあきれ顔でマット先生は、こう言う。
「……また名前のことで何か言われたのか?」
「うぅ……」
図星のような顔をするカミーユにマットは更にため息をついた。
「さっきも三年生のジェリドと喧嘩したばかりだろ? 名前のことなんて一々気にしたらキリがないぞ? 俺なんて学生の頃もっと酷い事言われたんだから……」
「自分の過去と俺のコンプレックスを一緒にしないでください!」
「お、おい! 俺はお前のことを思ってだな?」
「喧嘩の発端はコイツだ! コイツのせいで……」
「え、僕なの?」
すると、カミーユは再び僕へ指を差してきた。
「アムロが?」
マット先生は僕に分けを聞き出そうとするが、僕は首を横に振って。
「あの、僕には何が何だか……」
「しらばっくれるな! こうなったら俺と勝負しろ!? どちらのガンダムがより優れているか決闘しろ!!」
「決闘って……そんな困るよ?」
「逃げるのか? フン! データを見たが、お前のガンダムって案外しょぼいんだな?」
「な、何だって……!?」
父さんが作った究極のMSがしょぼいだって? もう一度言ってみろ!このオンナ男!!
「デザインだって地味だし弱そうじゃないか?」
「い、言ったなぁ……! いいよ、そこまで言うなら相手になってやる!!」
僕は挑発に乗せられてカミーユの決闘を受けて立った。
「アムロ! こんな女みたいな名前の奴に負けるんじゃないぞ!?」
と、隼人。ってかお前は余計なこと言うな!!
「そうだ! アムロ、こんな女みたいな名前の奴なんてお前のガンダムで軽くひねってやれ!!」
と、一夏……お前ら、僕に何の恨みがある!?
「お前達……重ね重ねぇ!!」
やばい、カミーユちゃんが切れた! これって八つ当たり的な感じで鉄拳が僕に飛んでくるかもしれない……
「い、いや……僕は別に君の名前のことは……」
「修正してやるぅ!!」
ベキッ!
「へぶぅっ!」
その後、カミーユは反省文を書かされ、僕は昼休憩にて屋上で弁当を食べながら明沙から手当てを受けていた。
「痛ててっ……」
「ほら? 我慢する」
ジンジンに晴れた僕の頬へ消毒を塗りながら明沙が寄り添う。
「もっと上手くやれよ……」
「でも、久しぶりに見たな? アムロの泣き顔」
「うるさい!」
僕は恥ずかしくなって彼女から目をそむけた。あのとき、カミーユに殴られて僕は泣いてしまった。全く、僕の軟弱ぶりは誰にも知られたくなかったのに……
「昔の頃を思い出すね? よく近所の公園で虐められて泣いていたアムロを良く私が助けてさ?」
「うるさい! 黙れ!!」
当時、僕は彼女の言うようにいじめられっ子だった。それも保育園の頃から始まり、参観日に父さんが来ないからそれが原因でよく虐められたな? あの頃は情けないくらいに女々しく、小学校の頃はよくクラスから孤立たり、一時は不登校にもなった。
そんな恥ずかしすぎる過去を明沙は容赦なく挙げてくる。
「それでね? 私が泣いたアムロを抱きしめると胸の中で寝ちゃってさ? 担いで家まで運ぶの一苦労何だよ? ほんっとに可愛かったな?あのときのショタアムロ……」
「もうコイツ、シカトしよ……」
そうしていると、僕らの元へ一人の女子生徒が来た。彼女は僕の傷を心配し、
「あの、お怪我の具合は大丈夫ですか?」
「あ、うん……一様大丈夫ですけど?」
「うん、腫れはひいたしね?」
すると明砂は消毒をしまった。女子生徒は僕らへ深々と頭を下げて謝罪を申した。
「本当にごめんなさい! 実はカミーユは私の幼馴染で……後で引っ叩いておいたから」
「あ、大丈夫だから……」
焦りながら僕に謝罪するので僕は気を使ってしまう。
「へぇ? あなたって、カミーユ君の幼馴染? 私もアムロの幼馴染なのよ?」
「明沙、お前は少し黙ってろ……」
「でも、カミーユはああ見えても根は優しいからあまり嫌わないでね? ああ見てもカミーユって結構友達が少ないの」
――ああ……言われてみれば確かに少なそうだな?
僕はそう思い納得した。
「あとでカミーユが謝りに来るから、別に出来るだけでいいけど……許してあげて?」
「え、アイツを~!?」
僕は嫌そうな顔をするが、明砂はそんな僕の尻を摘んだ。
「うん、そうさせるわ? じゃあね……えっと、お名前は?」
「ファよ? ファ・ユイリィ」
「じゃあファさん、後でね?」
「ファでいいわ? 後で会いましょう?」
そういってファは屋上を後にした。それから午後の授業が始まって放課後になった。僕と明砂はファに呼び出されて屋上へ呼び出される。そこにはモジモジさせるカミーユと、ちゃんと詫びれと言わんばかりにしているファの姿があった。
「その……悪かったな? 殴ったりして」
「う、うん……別に」
「あと、お前のガンダムもバカにして悪かったな? すこし地味って言うかシンプルっていうか……」
「は……?」
そのとき、僕は再びカチンときた。結局僕のガンダムをしょぼいと認めているじゃないか? コイツ、やっぱ反省していないな?
「……別に、僕は気にしちゃいないよ? それより僕の方こそ怒らせるような態度を取ってごめんね? ``カミーユさん``」
「は……?」
すると、今度はカミーユもカチンと来た。
「おい……俺は男子何だぞ? 呼び捨てか君付けで言えよ」
「ごめ~ん、つい……」
「……お前、わざとだろ?」
「別にぃ~? ところでぇ……``カミーユさん``」
「お前なぁ!!」
和解するはずが、何故か僕らは再び言い争いを始めてしまった。
「ちょっとカミーユ! やめなさい!!」
「アムロもそれいじょう言わないで!?」
二人の幼馴染が割り込んで僕らを止めるも、男の喧嘩に女が入ったところで彼女たちに止められるわけがない。
「うるさい! 男の喧嘩に女が入るな!?」
「明沙は引っ込んでろよ!」
二人の喧嘩は激化するばかり、そして……
「こうなったら決闘でお前を完全に修正してやる!! 俺の愛機ゼータガンダムでな!?」
「こっちこそ! 僕のガンダムで返り討ちにしてやるさ!!」
「あっちゃ~……」
明沙は呆れて僕の背を見つめていた。
そのあと、僕は闘志を燃やして遼へ戻った。決闘は来週の月曜日、それまで訓練に励まないとな! なにせカミーユは反IS国家グリーンノアの代表生パイロットだし、代表候補生なんかとは格が違いすぎる。
「さて……」
僕は与えられた遼の部屋へと入り、扉を開けた。ちなみに僕の相部屋の相手は誰だろう?隼人だったらいいな……?
「……」
ガチャと戸を開けて遼へと入った。室内はボロくもなければ高級感もない。どこにでもあるごく普通のマンションの一室である。そもそも、IS学園が税金を一人占めしているらしく、MS学園の施設は普通の学校と変わらないデザインだ。遼は普通のマンションであるが、風呂は下の大浴場で疲れをいやすらしい。だからこの部屋にシャワーや浴室なんてないし、大浴場があるから必要もない。だから、普通部屋のように見えて僕は少し気が楽になった。
「IS学園の連中は本当に贅沢三昧だな……」
たぶん、奴らだったらこの部屋を見て結構文句を言うかもしれない。女共なんて図に乗れば贅沢を言いたい放題言ってくるからたまったものじゃない。
僕は荷物をおろして、早速大浴場へ向かおうとしたとき……
「あ、アムロ!?」
突如背後から明砂の声が聞こえた。僕は思わず振り向くと……
「あ、明沙!?」
彼女は下着姿で別の部屋から出て来た。明砂は悲鳴を上げ、僕は慌てて後ろを向いた。
「……ど、どうしてお前が俺と同じ部屋に?」
「し、仕方ないよ……寮長が指定した部屋だし」
寮長カレン・ジョシュワは明砂がアムロの幼馴染だということに首を突っ込んで彼女の気持ちを悟ったらしく、それを踏まえて部屋を変更したそうな?
「へ、部屋から出ていくから着替え終わったら教えろよ?」
「いいよ? 後ろ向いてくれるだけで。すぐ終わるから待っていてね?」
「あ、ああ……」
しばらくして明砂はパジャマに着替え終え、僕はトランクスとランニングになった。
「もう! ちゃんとパジャマ持ってきてって言ったのに……」
顔を赤くして明砂は僕から眼をそらす。
「別にいいだろ? 動きやすいんだから」
「でも下着よ? 下着!」
「お前だってさっきまで下着だけだったろ?」
「アムロが来るなんて予測していなかったの!?」
「いい訳かよ……」
「もうアムロったら……!」
すると、明砂は不貞寝してしまった。僕は別に気にせずに自分のベッドへと横たわる。
「ZZz……」
根音と静かないびきを立てて僕は眠っているのだが、突然僕の体をベッドから起き上がって僕の元へ明砂が頬をヒトヒト突っついてきた。
「……何だよ?」
「一緒に寝ていい?」
「無理」
「そ、そんなぁ……せっかく二人きりになれたのに……」
「俺はイチャイチャするのが死ぬほど嫌いなの。バカップルは即死ね、リア充は爆死しろ」
そう言い残して僕は再び寝息を出して眠りだす。
「アムロってば~!!」
「ZZz~……」
「ぐすんっ……」
明砂もようやく眠りについたようであり、僕と彼女は夢の中へ……

「アムロ……?」
夢の中、暗い空間で明砂は目の前で女性と抱き合う彼を目に唖然としていた。
「アムロ……アムロ……!」
女性は金髪で年上の美人。そんな彼女がアムロと激しく抱き合ってイチャイチャしていたのだ。それを長馴染みの思い人である明砂が見て見ぬふりするわけがない。
「ちょっとアムロ!さっきまでバカップル即死ねとかリア中爆死しろとかいったくせに!?」
「すごい……アムロ……ああ、アムロぉ!!」
「セイラさん……! ああ、セイラさーん!!」
「誰よ! セイラって!? アムロぉ!?」
「いいわ……アムロ? そろそろ、発進して!?」
「あ、アムロいきまーす!」
「いやあぁ~!!」

「いやあぁ!!!」
ガバっと起き上がった明砂は息を荒くしながら汗だくになっていた。
「何よ……何なのよ? あの不吉すぎる予知夢のような悪夢は?」
「ZZz~……」
すると、明砂が隣へ目を向けると、気持ちよくベッドで寝ているアムロの姿が、きっと自分と同じ夢でも見ていたかのような気がして、腹が立った明砂はポカポカとアムロを叩き始めた。
「アムロのバカバカバカバカ~!!」
「い、いたたっ! な、何するんだよ!?」
「もう知らないっ!」
そういって彼女は布団にもぐってしまった。全く! 僕が何をしたって言うんだよ? どうせ僕が意地悪する夢でも見ていたんだろうさ? それに比べて僕の夢は最高だったね? 綺麗な金髪の美女を抱いてベッドへGO! した夢だったんだから。
「さて、着替えるか?」
起きないと遅刻するぞ? と言わずに、僕は制服を着て明砂をスルーしながら部屋を先に出た。案の定、明砂は十分の遅刻で後から駆けて来たらしい。
「……アムロとカミーユは午後の授業は受けなくていいから午後からMSの模擬練習をしてくれ? それと、誰か二人にサポートしてくれるオペレーターコースの子はいないか?」
マット先生にそう言われて、僕とコイツは昼休憩が終わった後にアリーナへと向かった。
アリーナは今では古いサッカードームを移転してもらって使わせてもらっている。その内一つを貸し切りで練習できるのだ。
「ったく、何でお前が来るんだよ?」
「だってアムロの知っているオペレーターって私しかいないでしょ?」
「そうだけど……」
明沙は僕について来て練習のサポートをすることになった。ちなみにカミーユのオペレーターもファらしい。
「まずはMSを展開して? MSに触れた瞬間から展開が始まるから」
「こう……か?」
俺は適当にガンダムへ触れる。すると、四秒後にガンダムは展開して僕の体は数秒でガンダムの装甲を装着した。
「遅いよ? 最低でも0.3秒じゃなくちゃ?」
「そうなのか?」
「ISでも0.数秒だよ?」
「むむっ……」
ISと比較されると僕は何だか腹が立ち、何度も展開の練習を繰り返した。
「1.5秒……まだまだだね?」
「そんな……」
「気持ちを切り替えて次は移動操作をしよ?」
「移動……こうか?」
僕はガンダムを初めて装着した時を思い出して、手足を動かした。お、これは思い通りに動かせる。まるで自分の手足を動かしているかのようだ。
「MSはISよりもパイロットと融合するパワードスーツだし、一体化になった感じだから動いたりするのは誰でもできるわ? ただ、問題なのはこの後のダッシュ操作と飛行操作よね?」
「それなら奇襲されたときに無意識で動かしていたけど?」
「でもアムロが装着しているそのガンダムはアムロのお父さんが言ったとおり他のMSとは操縦法が違うらしいの。そのほかのMSだったらアムロも多少は操縦できるかもしれないけど、乗機がガンダムだから他のMSと違って操縦が細かいし使いこなすには少し時間がいるんだって?」
「けど、僕はそのガンダムを咄嗟に飛ばしたりしたけど?」
「私もそこまではわからない。ガンダムのマニュアルを見ただけで、どうしてあんなに使いこなせたんだろうって?」
「とりあえず飛んでみる……」
僕はバーニアを噴出してゆっくりとだが離陸した。操縦法はあの時頭にしっかりと染み付いている。それが間違っていなければいいんだけど……!
「と、飛んだ!?」
明砂は驚いてサポートするベンチから飛び出して頭上を見上げる。
「今思えば凄いな……宙に浮くなんて」
そのとき、僕のそばを突如高速で飛行する物体が凄い速さで横切った。その風にあおられそうになるが、僕はどうにか態勢を整える。
「へぇ? 初めてにしては中々やるな?」
その声はカミーユだった。カミーユのガンダムは飛行形態となって僕の周りを飛び交っている。というよりも……人型からどうやってああなった? 常識的にMSは人体を電気的に分解して融合するパワードスーツなのだが、人が入っていると思うと、中の人は大丈夫なの? と思ってしまう。
「変形MSは、パイロットを電気分解をして機体と融合するんだから、外見はああいう形をしているけど、結局一体化しているから驚くことではないよ?」
と、明沙。けど、変形して飛ぶなんて……すごいな!
「カミーユのガンダムは、「ゼータガンダム」って言ってグリーンノアに属しているMS企業「エゥーゴ」が開発した世界初の変形MSなんだって? 変形時の「ウェーブライダー」は通常よりも倍の機動力を誇り、さらにそのガンダムには特殊な力が搭載されているらしいの。気を付けてね?」
「特殊な力か……一体どういう力だろう?」
気になるものの、僕は引き続きガンダムの操縦の練習を続けた。
「ふぅ……疲れたな?」
練習を終えて、汗だくになった僕はガンダムを脱ぎ捨てる。
「お疲れ様!はい、これ」
そういって明砂は僕にスポーツドリンクを手渡す。丁度のどが渇いていたし受け取るとしよう。
「どうも、気がきくな?」
そう言いながらストローに口を付けて飲む僕に明砂は、
「だってアムロの御嫁さんになる人だし? 私」
「ブッー……!」
僕は勢いよく口に含んだドリンクをふきだした。
「へ、変なこと言うな!?」
「それよりも、もう夕暮だし早く食堂へ行ってご飯食べよ?」
「あ、ああ……って、そうじゃなくて?」
「ほらほら、早く! 早く!」
「ちょ、ちょっと……!」
明砂はそんな僕の手を引いて食堂へ駆けて行った。
「はぁ……明砂は僕の事を何だと思っているんだ?」
明砂から距離を取って僕は食堂で定食を食べている隼人と該、一夏の席に座ってそう呟いた。
「明砂はお前の幼馴染だろ? いわば大切友達じゃないか?」
そういう隼人。それに他の二人も強く頷く。
「どうして頷くんだよ?」
「いや、アムロと明沙って何だかいい関係になっているような気がしてさ?」
一夏がにやにやしながら言うと、僕は立ち上がって否定した。
「ち、ちがう! 僕とアイツはただの幼馴染で……」
「あ、幼馴染ってこと認めたんだ?」
と、該。え、どうして? どうして僕が認めたんだろう? 無意識に? そんなバカな!?
「ま、いいじゃないか? そのほうがお前らしくていいよ?これからも明沙と仲良くな?」
「隼人、お前黙れ」
僕は早く食事を済ませようとすると、僕の隣に明砂が割り込んできた。
「あ、何の話しているの?」
「じゃあ、俺たちはこの辺で?」
そう言うと一夏達は席をはずしてとっとと出て行ってしまった。
「そ、そんな……!」
僕は仕方なく明砂と食事を取るはめになってしまった……

一方、先に遼へ戻った一夏は棚の上に置いてあるケータイがなっているのに気づいた。ちなみに、相部屋の相手は該である。
「一夏、電話だぜ?」
と、ベッドに横たわってケータイゲームをしている該が呟いた。
「ああ……」
ケータイを手にとって一夏は電話に出た。
「はい、もしもし?」
『ヤッホー♪イッ君?』
「……」
一夏はケータイをパタッと閉じてベッドに寝転んだ。数秒後、またケータイが鳴りだす。
「一夏、そのケータイ黙らせろよ?」
該がそう言うので、一夏はケータイを睨んで部屋の外でケータイを開いた。
『イッ君~! 速攻切るなんて酷いよ~……』
「何の用ですか……?」
一夏は不愛想にそう尋ねた。電話の相手はこの世界を歪めた張本人「篠ノ之束」である。
『そうそう! あのね? 今イッ君何処に居るの? 当ててみよっか?』
「ええ、どうぞ……?」
『IS学園~!!』
「外れです」
『……ッ!?』
束は一夏がIS学園へ入学すると百パーセント思っていたようだが、それは彼の一言の返答で裏切られた。
『……どこ!? 今どこにいるのっ!?』
「MS学園ですけど何か?」
『そんな~! あんなところに行くなんてイッ君じゃないよ?』
「普通だと思いますが……?」
『そんな!? イッ君あんなところに行くなんて非常識すぎるよ~!!』
「俺、男ですけど? 逆にIS学園に行く方が非常識だと思いますが?」
『うぅ……』
束は少し唸って返す言葉を考えた。
「もう用がないなら切りますよ?」
『ちょっとまってよ!? 今日はイッ君がIS学園に行ったと思ってせっかくイッ君の専用機を作ってあげたんだよ!?』
「俺の? 言っておきますが、男でISは使えません……」
『だけどイッ君なら使えるかもしれないの!!』
「だから使えませんって……」
『白式っていうの! こんな凄い専用機どこにもないよ!?』
「そうですか、凄いですね……」
『だ~か~ら~……?』
「ですけど俺は乗れませんので」
『イッ君! MSなんかどこがいいの!? あんな着ぐるみモドキ全然凄くないのに~!』
「話はそれだけですか? 切りますよ?」
『あ、待ってイッく……プツン』
一夏は戸惑いなくケータイを閉じた。あとで電話番号とメアドを変えておこうと。
「よう? 誰と話してたんだ? 結構声がでかかったけど?」
部屋に戻ると該が訪ねて来たが、一夏は適当に良いわけでもしておいた。
「ああ、間違い電話。結構しつこかったよ? 何度言っても相手がわかってくれなくて」
「そいつぁ面倒だな」
「そうだ、該? 俺このあとメアドと電話番号変えるから、後でメール送るな?」
「おう」

それから数日後、決闘を前日に控える日曜、僕は明砂と相変わらずの練習をしていた。上空ではカミーユがウェーブライダーで空中戦を演習している。
「あんな空高くまで僕のガンダムは飛べるかな?」
いくらガンダムでもあんな高度では流石に限界がありそうに聞こえる。
「大丈夫! ガンダムの性能なら宇宙まで行っちゃうんだって?」
「そんなに凄いのか?」
「大丈夫! だってアムロのお父さんって世界的に有名な科学者なのよ?」
「親父が?」
「うん、知らなかったの?」
「親父の噂なんて知らないからな……」
何時も僕は家に閉じこもってゲームや漫画をぱらぱらめくったりしていることぐらいやることがないから外へ出たことはあまりない。僕がそう思いながら上空を見上げた。






 
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