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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~激昂~



「じゃあ今日の訓練は模擬戦。最初にスターズの二人、次にライトニングの二人ね」

「「「「はい!」」」」



今日は模擬戦

なのは相手にスターズとライトニングに別れて一対二で、なのはに一撃みまえば合格。


そしてなのはが言った通り、最初はスターズの二人、ティアナとスバルだ。



「やるわよ、スバル」

「うん。でも、大丈夫かなぁ・・・・」

「大丈夫よ。成功さえさせれば良いんだから」

「そうだね・・・うん、失敗すること考えてもしょうがないよね!」

「ええ・・・・そうよ。失敗は・・・・・しない」



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「始まったか」

「みてーだな。どれくらいやれると思う?」

三人が戦っているエリアから離れた訓練場内のビルの屋上。
そこでフェイト、ヴィータ、次に模擬戦を控えたエリオ、キャロ、そしてなぜか呆れ顔の蒔風が模擬戦を観戦していた。


(あーあ。あの顔、あのまま寝ずに戦略練ってたな。ま、あとはなのはのお手並み拝見ってところだな)

ティアナの顔を見てそんなことを考えながら、ヴィータの問いに答える蒔風。


「どこまでやるかってなぁ?ティアナは明らかに無茶をしてきている。今までは本人の立ち回りで大事に放っていないが・・・たぶん今日、瓦解するだろうな」

「?・・・・・舜、それってどういう・・・・」

「さんざ周りの声に耳を傾けずに来たツケを払うってことさ。なのはならうまく落としてくれんだろ」

「え?」

「お!スバルがしかけた!!・・・・・・なんかおかしーな」


フェイトが蒔風に聞こうとするが、ヴィータの気になる一言に止まる。








スバルの機動はいつものものとは違っていた。

ウイングロードで走り回るまでは良い。
それでなのはに向かい、当然なのはが魔力スフィアを数弾迎撃で放つ。

しかしその際スバルは、しっかりと足を止めてではなく走りながらバリアを張って、強引に、力任せに押し切ってなのはに攻撃したのだ。






「あれをやるならスバルじゃまだ無理だ。突破出来ても、その後の攻撃に身が入らん。ほれ」

ビルの上で蒔風が解説する通り、スバルの拳となのはの魔法陣バリアがぶつかり、程なくしてスバルの身体が大きく弾かれた。
非常に危険なところでなんとか着地したが、下手をしたら大怪我になる動きだ。



「スバル、あんなあぶねーことすると思うか?」

「いいや。スバルがあんな無茶自分からするとは思えない。あいつは良くも悪くも一直線だけど、強引にはいかないはずだ。目の前にある障害をキチンと破壊してからやるだろ」

「だよな」

「するなら後ろに流したり、紙一重でかわす、もしくはティアナのフェイクシルエットで奇襲を狙うべきだが・・・・・・」

「今のスバルにそのスキルはねぇし、そんなこともやってねえ。あれはフェイクじゃない」

「わかってんのか?あいつ。今どれだけ危険な事をやったのか」


蒔風たちが話してる間にも攻防は進み、なのはがスバルに注意するが、「必ず避けるから大丈夫です」と言ってなおも続けようとする。
その言葉になのはが注意しようとするが、ティアナの照準がなのはを狙い、その行動に気を取られてしまう。



「ティアナが・・・・砲撃!?」

「おい、アホ言うな。ありゃ幻影だ」

「え?」


なのはが幻影のティアナが狙う照準に気を取られている間に、スバルがどこにいるかもわからないティアナと念話で話し、連携をとる。

そしてスバルがなのはに向かって走り出す。
狙う標的はなのは。

しかも、またさっきと同じようになのはの攻撃を強引に押し切りながら。



なのはが厳しい顔をしながらその弾丸のようなスバルの拳をバリアで受け、流石の威力にウイングロードの上に立ってそれを受け止める。




「・・・・・・・・・・・・」

「はあああああああああああああ!!!!(ティア!!早く!!!)」



押し合うなのはとスバル。
なのはの魔法陣のバリアからは桜色の魔法光が火花のように散っていた。

と、同時になのはを狙っていたティアナの姿が消える。
蒔風の言う通り、それが幻影であった証拠だ。




「ほ、本当だ・・・・・・」

「じゃあ、本物のティアさんはどこに!?」


「(フゥ・・・・・)・・・・・・あそこ」



蒔風が呆れてものも言えないと言った感じでなのはの真上を通るウイングロードを指さす。
そこには壁走りのように一気に駆けあがり、なのはの真上に到達したティアナがいた。

その手に握られているのはクロスミラージュ・ワンハンドモード

しかし銃でありながらも、その銃口からはオレンジの魔力刃が飛び出しており、さながら短刀のようになっている。
そして逆さまにジャンプして、頭上からなのはを狙って飛び出した。



「まさか・・・・あれでなのはのバリアを引き裂いて!?」

「無茶だな・・・・・この距離なら、バリアは張れないな!!ってか?」






ドォン!!!!!!!!





ティアナがなのはに到達した瞬間、その衝撃で粉塵が上がる。
フェイトやヴィータ、エリオにキャロが心配そうにそれを眺める。

そんな中、蒔風だけはゴキゴキと首を回し、肩を波のように揺らして「はぁ~~・・・・・」とイライラした感情のこもった声を出していた。




そして粉塵が晴れる。

そこにいたのは




レイジングハートを待機モードに戻し、素手でスバルの拳と、ティアナの刃を受け止めているなのはがいた。





「ねえ・・・・なんでこんな・・・・無茶するのかな?」


その姿に、スバルのティアナも目を見開いて恐れた。
なんという人だ、と。

自分たちの攻撃は非殺傷設定とはいえ、威力だけは通るはずだ。

それを素手で受け止めると言う事。
言うほど簡単なことではない。


全くの素手で掴むから、その衝撃は身体を走るだろうし、現にティアナの刃を掴んでいる右掌からは血が滴り落ちていた。



「頑張ってるのはわかるけど、模擬戦は、ケンカじゃないんだよ?」



スバルは後悔する。
これが無茶をやった代償なんだ、と。

なのはは受け止められたからいいだろう。
しかし、これが自分たちだったらどうなっていたのか。

自分たちでは、無茶をやった代償を受け止められないかもしれない。


目の前にある恐ろしいものは、そういうものなんだと、体で感じ、全身が硬直した。



「練習のときだけ言う事聞いて、本番にこんな無茶するなら、練習の意味、ないじゃない・・・・・・練習通りやろうよ。私の訓練、そんなに間違ってる?」



そしてティアナもそれは同様だった。

しかし、彼女はまだ終われない。
終わるわけにはいかない。




だって、まだ証明してないから。
だって、まだ得てもないから。

大切だった人が、魔法(モノ)が、もういなくなるのは、無駄だといわれるのは怖いから。
それを失いたくないから。




だから





クロスミラージュの刃が解除され、ティアナが後ろに大きく飛んでウイングロードの上に着地して叫んだ。




「私は!!!もう誰も傷つけたくないから!!!無くしたくないから!!!!だから!!!!」




そう、だから

そうならないために、自分は精一杯のことをやってきた。
皆との訓練、スバルとの訓練、更に、自分一人での自己訓練。


それが否定されたら、私はどうすればいいの?
私は・・・私は・・・・・・ただ、なくさないために、失わないために!!!!



「強く!!なりたいんですッッッ!!!!!!!!」




クロスミラージュの銃口前に、ティアナの魔力が充填されていく。
それに対し、なのはも魔力を溜めこんで、周囲にスフィアを展開する。


そしてティアナを指さし、狙いを定める。


その様子を見て

「え、なのは」

「マジか、あいつもキレてんぞ!?」

「おいまさか・・なのはお前よォ・・・・!!」

フェイト、ヴィータが言葉を漏らし、蒔風が飛び出した。







「ちょっと・・・頭冷やそうか・・・・」

「ティアッ!!!なのはさん!!!!!」

スバルの叫びがこだまする。




しかし



「あああああああああああああああああ!!!!!!!ファントムブレイ・・・・・・」

「シュート」





ティアナの砲撃が放たれるよりも早く、なのはのスフィアが打ち出された。
そしてそれがティアナに命中すると、誰もが思った。



そこに、彼がいなければ



ゴォウ!!!ジュボアッ!!!!!!




真っ赤に燃える炎の砲撃に、なのはの攻撃と、一歩遅れて放たれたティアナの砲撃が掻き消える。





「なのは!!!」


そこに向かって、怒気をの籠もった声が向けられた。
その方向を見ると蒔風が真っ直ぐに飛んできて、その手にはチリチリと獄炎砲を撃った形跡があった。


そして


バギィ!!!!!!!

「アぐっ!!!ああああああああああああああああ!!!!!!!」


蒔風が拳を握り、ティアナの顔面にそれを叩き込んだ。
ティアナの身体が足場のウイングロードを突き抜け、ビルの側面に当たり、スーパーボールのように跳ね回って地面に落ちる。


人の身体とは思えないほどビルを跳ねまわり、そのあとを転々と残していくティアナの身体。

地面に落ち、訓練場のプレートにひびでも入ったのか、ティアナの周りが無機質な青いプレートに変わる。





「ティ、ティアァ!!!!!!」

スバルが悲痛な声を上げ、なのはが蒔風を睨みつける。
その目には、明確な敵意が込められていた。




「どういうことかな?舜君。これは私の教導なんだよ?邪魔・・・・しないでくれるかな?」


なのはの敵意がこもった視線。
あまりにも恐ろしいその眼光に、蒔風が虚仮にしたような笑みを浮かべて高い位置から見下していた。


「そういうわけにはいかねえな。あのバカは再三の忠告を無視したからな・・・・スバルァ!!!てめえもだ!!!踊らされてんじゃねえぞ!!!とっととそのバカ連れてフェイトんとこいけや!!!」

「え・・・・あ・・・・・」


だがスバルは現状についていけてない。


無理もないことだ。
なのはに怒られ、ティアナが撃ち落とされそうになっただけでなく、突如として蒔風にぶん殴られて叩き落とされ、しかもその蒔風は異常なまでの敵意を撒き散らしてなのはを見ているのだから、身体はもとより、声もうまく出ない。


その時、スバルが感じたストレートな感想は「蒔風舜は、確かに味方だ。だが、時に「味方であることが間違っている」と思えるような、そんな気配がどこかにある」という物だった。
自分は本当に、この人を信じていいのか、と疑ってしまう。


最初は気のいいお兄さんだった。
その後、凄い人だってわかった。

しかし、それ以上の付き合いをすると―――――どうだろうか。それ以上知るのが、あまりにも恐ろしいと思えてしまう。



「おい・・・・・ボケッとしてんじゃねぇよ・・・・・・とっとと行けっつってんだろォが!!!!顔面剥いで標本にすんぞテメェ!!!とっとと退けェ!!!!!!」

「は、はいィ!!!!!」



その言葉にスバルの背筋を凍りつかせる。
恐怖、戦慄、怖気、なんでもいい。そんな感情が一気に噴き出した。

そして「死にたくない」と言う思いから、必死になってティアナを担いでフェイトの元に連れていった。






「最近順調に歪みも出ず、安定していられたってのにこれだ・・・久々にキレたよ」

そんなことをつぶやきながら、眼下のなのはをにらみつける蒔風。

「ティアナもティアナだが、お前もお前だなのは。あいつはあれでチャラだ。次はお前だ」

「私?私に?」

「そうだ。ティアナはお前の意志を聞きながらも、あんな無茶しやがった。あれだけ想われながらやかましいと、考慮もせずに一蹴しやがった。それはお前の想いを踏みにじる行為だ」

「じゃあ・・・・なんで・・・・」

「てめえも同罪だからだよ、なのは。お前、ティアナとちゃんと話したか?ん?話してねえだろ?だからだよ」

「どういう事?・・・・・・・・・私、今とっても怒ってるんだけど」

「わからねえのか?こいつはとんだバカ野郎だな。お前・・・・・大人数の教導だけやってて良かったな。小人数相手にやったらすぐにこれだ。被害者がティアナだけってのはバカの中に救いだなぁ、おい!!!!!」








「・・・・・・舜君・・・そこまで言って・・・無事に済むと思ってんの?」

「はぁ?今からてめえとやり合うっつってんだよ。わからねえのか?バカ!!!」

「バカバカと・・・・人の事を・・・・・・・」


一気に罵詈雑言の言葉を吐きかける蒔風に、なのはが完全にキレる。
それに対し、蒔風が落ち着き、そして冷たく、どこまでもつまらない物を見るような冷えた目で、なのはを見ていった。



「お前が怒ってるのを止めるためじゃない。お前の暴走を止めるためじゃない。ましてティアナを助けるとか、庇うとかそんなくだらないことでもない。互いの想いを、知りながらもその状況に甘んじ――そして結果無視した。てめぇとティアナへの断罪だ」




瞬間、蒔風の姿が消え、なのはが背中に何かを感じる。
振り向くとそこにはなにもなく、蒔風が元の位置に戻っていた。

しかし、変化はすぐに訪れた。
全身に魔力が回ってくるのだ。

どういう事かと、なのはが蒔風を睨む。


「言い訳されちゃ面倒だからな。お前にかかっていた制約、解かせてもらった」

そう言いながら蒔風が手でクルクルと奇妙な形の短刀をいじっていた。
稲妻のように幾重にも折れ曲がったそれの名は「破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)」

かの世界の魔術師の力を借りて投影したものだ。



「これでお前はランクS+だ。うまくやってそこだけ解いてやったよ」

「これは・・・・余裕のつもりなのかな・・・・・・・?」


「いいやぁ?これはな・・・・・・・・・・・・・・・」





蒔風が髪を掻き上げ、怒りに満ちた顔をして言い放った。






「お前が死なないためにだよ」








to be continued
 
 

 
後書き

アリス
「ついに蒔風キレましたね」

蒔風の乱入は普通のとは違います。
大抵はなのはのやり過ぎを止めたりする場面になるのですが、そんなことはありません。

なのはに非がなければ、あのままいいぞ、もっとやれ、ってなってました。


アリス
「つまりなのはさんにも非はあると?」

YES





アリス
「次回、初対戦、なのはVS蒔風」

ではまた次回















少し、頭冷やそうか 
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