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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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東馬の過去 神那島編その2

 
前書き
遅ればせながら。新年、明けましておめでとうございます。

今年で何とかストライカーズまでは行きたいです。

と言っている割には過去編なんですが……というわけで、今回は神那島編その2、どうぞ! 

 
伊藤誠梧。彼の経歴を一言で語るならば、異常という一言に尽きる。

というのも、彼は家からも分かる通り極々普通の一般人だ。にも関わらず。彼はこの島の舵取りをしていると言っても過言ではない内海家で相談役としての地位を獲得している。

そんな人物と東馬は今、テーブルを挟んで座り、ホットミルクをちびちびと飲んでいる。

「ごめんね、今日急な用が入って迎えにも行けなくて」

「いえ、それは構わないんですが……あの、どうやって師匠とお知り合いに?」

そう、そこが東馬の疑問だった。

目の前の人物は暗殺者として、というか所謂何でも屋をしている自身の師匠との接点がどこにも見受けられないのだ。

「ああ、その事ね。ちょっとした事があって知り合ったんだ。というか、知り合いになりに来たっていうか……」

「え?あの師匠が?」

傲岸不遜などの言葉が似合うであろう師匠が誠梧に会うために来ている場面を想像しようとして……東馬はそこで止めてしまった。どうしても想像出来ないのだ。

「ちょっと前にその……裏関係の仕事、みたいな物であの人がこの街に来たんだよ」

「う、裏関係って……その、こ、殺し……とかですか?」

「え?ああ、いや。違う違う。そういう物騒な事じゃないよ……そうだね、実際に見てもらった方が早いし……よし、明日は何も予定がないし、東馬君」

「あ、はい」

「明日、ちょっと学校に行ってみようか」

「…………はい?」

唐突なその言葉に東馬は戸惑いながら、とりあえず首肯しておいた。













翌日。昨夜のホットミルクのおかげかぐっすりと眠っている東馬。

「東馬君、朝だよ」

そんな全を起こそうとエプロンを着けた誠梧が東馬の眠る部屋に入ってきた。

「う、うぅん…………うゅ……あしゃ?」

「そう、朝。ごはんとパン、どっちがいい?」

「………………ごぁん……」

「ん、了解」

誠吾はそれだけ聞くと、部屋を後にする。

麻子から東馬の現在の状況は聞いている為、あまり過度な干渉はしない事にしているのだ。

それにあまり過度に干渉しなくても、この島にいれば彼は変わる事が出来ると誠梧は信じている。

かつての自分がそうだったのだから。

「おにぃ、笑いながら包丁持たないで。というか徘徊しないで」

「もうちょっとお兄ちゃんに対する言葉の配慮をしてくれないかな、美琴!?」

締まらない所もまた、誠梧らしい。





「ふわぁ…………ん、いい匂いがする…………」

言葉で激しく罵倒してきた美琴に何となく悲しみを覚えて料理をしていた誠梧。軽く塩味がするかもしれないが気にしない事にしている。

そして、料理が終盤に差し掛かった頃、寝ぼけ眼を擦りながら東馬がリビングにやってきた。

「おはよう、東馬君。よく眠れた?」

「あぃ……眠れました……」

「そっか、それならよかった。顔、洗ってくれば?」

「そうします…………」

擦りながらも何とか洗面台まで行く東馬。

その間にも手早く配膳を済ませていく誠梧。東馬が顔を洗って戻ってくる頃には全ての支度が終わっていた。

「あ、終わってる……」

「支度は出来てるよ。ほら、早く座る座る」

「……手伝いたかったな」

「………………っ」

手伝いたかった…………その一言を聞いて、誠梧は一瞬目を見開くと

「うっ……ひぐっ……」

と、なぜか泣きじゃくり始めた。

「って、どうしたんですか誠梧さん!?」

「いや、うちの妹はあまり手伝いたいとか言い出さないからその、嬉しくってな……」

「…………………」

誠梧の言葉を聞いて、東馬は改めて食卓に並ぶ朝食を見る。

鮭の塩焼きにほうれん草のおひたし。納豆も置いてあり、卵も置いてある。恐らく卵はお好みでという事だろう。割られずにそのまま置いてある。味噌汁の具材は大根と人参、そしてネギ。ご飯も炊きたてなのか湯気が立ち込めている。

しかし、極め付けは中心に置いてある鶏肉の煮付けだろう。とても香ばしい匂いを醸し出している。

「…………………」

ここまで一人で難なく出来るから手伝おうにも手伝えないんじゃ、とは口が裂けても言えない東馬だった。














朝食を食べ終え、誠梧と東馬は家を後にした。昨夜話していた学校に行くという用事を済ませる為だ。

「これから向かう場所は神那学院っていう学校でな。俺の母校なんだ」

「へぇ、そうなんですか」

「ああ、俺は元々こっちじゃなくて東京の方に住んでたんだけどな」

そして学校に向かう最中、東馬は様々な事を聞かされた。

東京からこちらに引っ越してきた事。引っ越してきたら妹がなぜかツンツンし始めてしまっていた事。学院に転入してからのドタバタな日々。

いつしか誠梧の話に東馬は引き込まれていった。

「っと、着いたよ。ここが神那学院」

「ここが……何だか古き良きって感じですね」

それが東馬が神那学院を見て最初に思った感想だった。木造の校舎に広い敷地。確かに古き良き学校というものだろう。

「ははっ。まあ、今では笑い話だけど当時は結構大変だったんだぞ?色々と、ね」

「???」

色々と、の所に誠梧はなぜか感慨深いというような表情をしていたのが東馬には不思議だった。

「この学院な、一度()()()()()()()()()()なんだ」

「え…………」

廃校が決定した学院?だというのに今でもこうやって存続している。これは一体どういう事なのか。

「ど、どういう事なんですか……?」

「……実は、それが麻子さんと知り合う切っ掛けになったんだけどな」

それから誠梧は話の続きを話してくれた。

学院が廃校になると聞き、誠梧の友人である藤堂春樹、阿部久志、服部彩の三人を中心とした反対運動。しかし、それは妨害され、しかもその際に藤堂春樹は重傷を負ってしまう。

阿部久志は自身を責め、それでもと抗い続ける服部彩。そして自身を叱咤してくれた篠原聖良と、もう一人。

「加納、佳代子?」

「ああ、彼女との出会いが始まる切っ掛けだったんだろうな。おっ、噂をすれば」

「え?」

東馬が前を見ると、黒髪ロングの美女が白い袴を着てその手には竹刀が握られている。恐らく剣道部の顧問なのだろう彼女こそ、加納佳代子。

「佳代子」

「うん?あ、誠梧」

「済まん。練習中だったか?」

「いや、別に構わない。休息を取っていた所だったからな」

東馬はバレないように誠梧の後ろに隠れる。やはり対人恐怖症はまだ完全には治っていないようだ。

「うん?その子は?」

「ああ、昨日から家で世話する事になった上月東馬君だ」

「そうか。初めまして、加納佳代子だ」

「は、初めまして……」

おずおずといった形で差し出された手を握る東馬。

「……っ!誠梧、この子」

「佳代子、何も言わないでくれ」

「誠梧……わかった」

「???」

その後交わされたやり取りの意味が分からず、東馬は首を傾げていたが。

その後、休憩中に悪いという事で佳代子と別れた誠梧と東馬は歩き回りながらその後の話をした。

廃校の話に不審な点が多すぎるという点から誠梧は彩、聖良、佳代子と共に反対運動に参加。と言っても大々的にやるのではなく、地下活動……つまり十分な準備を整えてから、表立って活動するという事をしていた。

その際に久志、美琴、静奈、藍子、清美、優喜の六人を含めた計十人からなる「神那島クルセイダーズ」が発足した。

その後、この廃校問題を影から操っていた黒幕の存在が分かる。

「有馬……?」

「その男はそう名乗った。そして俺たちに対して宣戦布告紛いの事をしてきたのさ」

所謂、どこからでもかかってこい。いつでも相手になってあげよう、という余裕綽々な態度だったらしい。

しかし東馬の頭の中は驚きで一杯だった。

(あ、有馬って確か……裏の世界でも有名な商売人……この人たちはそんな人たちと戦ったっていうのか……?)

東馬は裏の世界で関わってはいけない人間として有馬の名前を双覇から聞かされていた。

曰く「あの野郎は自分で戦場に立たず、戦いに勝利する。それくらい奴には強力な策がいくつもある。あいつほど敵に回すと厄介な敵はいない」だとか。

改めて、誠梧達は凄いと東馬は思った。

その後も話は続く。何度も挫折しそうになるも仲間たちの力を借りながらそれらを潜り抜け、誠梧達は学院という自分たちの居場所を取り戻す事が出来た。

「っていうのが、俺たちの物語、かな。その後はまあドタバタとした日常を送って学院を卒業。内海家に就職させられて、有馬に打ち勝ったっていう話をどっかで聞きつけてきたのか、麻子さんがいきなりやってきてっていうのが麻子さんと知り合った経緯だな」

「す、凄いですね。そんな経験を……」

「まあでも。俺一人じゃどうしようもなかったよ。皆がいたから出来た。誰か一人欠けてたら多分、こんな光景を見ることは叶わなかったと思う」

誠梧はそう言って、学院を見つめる。校舎内を歩く生徒達。グラウンドで野球をしている少年達。彼らの顔には笑顔が溢れていた。

「だから、俺は今でも皆に感謝しているんだ。こんな光景を見せてくれてありがとうってな……」

「……僕にも、そんな事を考えれる日が来るんでしょうか……?」

誠梧の言葉を聞き、東馬はそんな不安にかられる。あの一件以降、他の人間……特に大人という人種が恐ろしくて堪らなくなっている東馬はこれからの未来、今の誠梧のような言葉を呟けるようになるのか。それが東馬には怖くて仕方なかった。

「来るよ」

「え?」

小さな声で呟いた筈の東馬の言葉に誠梧ははっきりと出来るという。

「大切な仲間が出来れば、必ず」

そう言った、誠梧の顔を見て…………この人と、そしてこの人が信頼しているその神那島クルセイダーズの人達なら信頼しても裏切られない。

なぜか、そんな確信めいた何かが東馬の中に優しく溶けていった。




































「見つけたぞ、伊藤誠梧!さあ、昨日の件に関してもう少しじっくりと話を!」

「うわぁぁぁぁ!!!なんでこんな所にいるんだよ、まっちゃん!!」

「まっちゃんって呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

その後、家に帰る道中どこからともなく現れた三木真智子により何かを尋問させられそうになり逃げる誠梧とそれにトボトボとついていく東馬の姿が学院のすぐ外で目撃されたとか。 
 

 
後書き
ちなみに昨日の件とは、という話になるのですが、ぶっちゃけ言うと昨日は真智子との本土デートの日だったんですね。でも誠梧君は急な予定が入ってしまいそれで連絡を怠り、追いかけまわされているという事です。学院に来たのもまっちゃんから逃げる為だけっていうwww

さらにぶっちゃけると……この世界の誠梧君、ヒロイン全員と付き合ってます。もう一度、言います。全員と付き合ってます。ここ、忘れないように。 
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