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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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second contact
  ep.033 特攻軍師

 
前書き
いよいよ戦闘が始まります。
題名から誰が何をやらかすのかなんとなく分かる人もいるのではないでしょうか?

ちなみにobjectの本拠地のイメージは"ロワール城"という城になっています。
興味があれば調べてみて下さい。 

 
object本拠地にてー
敵大将の叶瀬 叶(かなせ かの)はモニタールームで情報を分析しながら目の前に将棋盤を置いて駒をいじくりまわしていた。

この叶にとってのルーティンに近いものを見て比屋定 時雨(ひやじょう しぐれ)は声を掛ける。

「叶ってオールジャンルでゲームできるのに決まって思考回路を回しまくるような奴を好むわよね?」

objectの頭脳を担当している時雨からすれば、叶がそのように頭を使うゲームを好むのが不思議だった。
普段から血の気の多い戦闘狂のような性格なのは時雨含むobject全員が知っていることだが、叶の好むゲームが先手を読んで行うようなゲームばかりだというのは意外と知られていない事実だった。

そんな時雨の質問に対して叶は手に持っている将棋の駒を指先で弄びながら答える。

「そうだなぁ。 1つは『馬鹿にならないため』で、2つ目は.......。」

ズドォォォォオオオオンッ!!

突如、モニタールームの外で破壊音が響く。
明らかに館の天井をぶち抜いたような音だった。
いくら人質を保持しているという有利な状態とはいえ、臨戦態勢の極度の空気感から誰しも臆病になる。

「叶ッ! 奇襲よ!」

時雨が突然の事態に慌てふためく。
しかし、叶の反応はそれとは全く逆だ。
薄っすらと微笑む。

「まぁ落ち着けよ時雨。」

『2つ目は...ぶっ飛んだ天才(ばか)が考えてることを少しでも理解するためだよ。』

指先で弄んでいた将棋の駒をぐっと握る。
こうして唐突に戦闘の火蓋が切られた。

◆◆◆◆◆◆◆◆

数分前ー
連合はobjectの本拠地を前にいよいよ気を引き締めて戦闘態勢に入ろうとしていた。
すると、その張り詰めた空気に水をさすように1人の男が作戦を実行し始める。

「う〜ん....風向きは少々向かい風ってとこかな?」

子規が人差し指を咥え、少し濡らして空気に当てる。
次に先ほど飛鳥と確認した拠点の内部構造から『あるポイント』を推測する。

「...............よし。」

子規の中でコースが確定した。
すると今度は悠持を呼んでくる。

「軌道は修正するから思いっきりよろしく。」

子規の反応に悠持は若干の戸惑いを覚える。
しかし、『仲間を信じる』という体において悠持ほど義理や友情に厚い奴もそう多くないだろう。

悠持が覚悟を決めると、子規が人ひとりが乗れるくらいの大きなケースを地面に対して斜めに設置する。
まるで即席のカタパルトのように見えた。

「嫌々だが仕方ない。 行ってこい!!」

悠持が助走を付けて走り、大きなケースを蹴る。
その瞬間、能力で自身の足に発生する力を何倍、何十倍に増加させ、映画のように子規はケースごと宙を舞い、目標地点目掛けて飛んでいってしまった。

◆◆◆◆◆◆◆◆

object本拠地の上空にてー
悠持に発射された子規はケースの上に乗り、風向きに合わせて微妙な軌道修正をしていた。
そして、あるポイントの真上に到達する。

「組織単位で戦闘をするなら、最初にインパクトのある登場をしないとね。」

子規の狙いは『度肝を抜くような奇襲』だった。
何においても重要なのは『第一印象』。 
相手を驚愕させるほどの印象を植え付ければ、それだけで戦闘の流れが変化するだろう。
そして......。

『ついでに敵の本拠地の一部を奪い取る!』

ズドォォォォオオオオンッ!!
子規を乗せた巨大なケースはobjectの本拠地の天井を打ち破って見事に館に侵入した。
しかし、ここで子規の予想はハズレる。

『玄関ルームに人影なし......か。 百発百中と誇れるほどのセンスじゃないからなぁ....。』

子規の『未来を見通す数式(Future Of Mathematical)』はあくまでの能力者の能力ではないため、機械的なまでの確実性は存在しない。
その的中率は良くて95%というところだ。

「よりにもよって10分の1もない確率を引くとか....。」

しかし、相手陣地から一部を奪ったのは確かだ。
すると僅かだが機械系の音が聞こえた。
子規はなんとなくマズイ予感がして顔を横にずらす。
無音で何かが子規の頬をかすめて通り過ぎる。
頬には細い傷ができ、赤い血がゆっくりと頬をつたう。

『これは銃弾。』

モニタールームで叶が子規を見る。
子規が持ってきた巨大なケースが気になるが、とりあえず子規を作戦にはめることには成功した。

「お前はでき過ぎるからな。 適当で丁度いい。」

建物に張り巡らされている放送設備のスピーカーから叶の声が聞こえる。

「ようこそ。 おもてなしとして、これからお前を数十万発の弾丸が30分間に渡って襲い続ける。 弾切れまで保たせるか、蜂の巣になるか楽しみにしてるぞ。」

放送が切れた。
子規は静かに集中状態に入る。 
 

 
後書き
いきなり大ピンチで始まりました。
子規の見せ場はある意味今回が初めてではないでしょうか?
次回もお楽しみに。 
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