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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  176 “トム・リドルの日記”


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

クリスマス休暇もそろそろ終わる頃。今現在バジリスクが猛威を奮っている状況下なので、当然実家に帰る生徒も沢山いた。それ故、ただでさえ広いホグワーツの大広間が余計に広く感じられる。

……ちなみに、意外な事にアニーは従兄弟のダドリーからクリスマスのプレゼントが届いていたらしく、それに驚いたのかアニーは槍でも降ってくると思ったのだろう──慌てて自分の頭上を〝盾の呪文〟で防御していた。

閑話休題。

〝スリザリンの継承者うんぬん〟については、目星をジニーに付けてから一週間ほど経過したが、俺達はジニーに対して特別なアプローチは掛けていなかった。

……云うまでもなく、今現在、〝ジニーは〝スリザリンの継承者〟に操られているかもしれない〟と云う──まだ推論の域を出ない状況なので、俺達に出来る事といったらマートルが居る三階の女子トイレでジニー(?)を待ち伏せる事だけだった。

「クリスマスだけど、なんか暇になったね」

「休暇だからなぁ…。しかも今日(こんにち)のホグワーツでのご時世からしてマグル生まれは我先にと特急に乗ったから──と云うのあるんじゃないのか」

もはや──あくまで、誰も居ないと判っている前提で忍び込む事に馴れてしまった女子トイレで、手持ちぶさたな状況に堪えきれなくなったのか、アニーがそんな事を呟く。

確かに最近はすっかり襲撃も無くなっていて、ここに来るのも、(むし)ろ〝マートルと(よしみ)を深めるため〟と云う側面が強くなっていってるのも無きにしもあらずだ。

……()く俺もマートルと幾らか仲良くなり、マートルから秋波を送られる様になって──それをアニーとハーマイオニーに茶化されたり。

閑話休題。

(……そろそろなんだろうけどなぁ…)

虎視眈々と、女子トイレに足を運びながら俺が待っているのは“トム・リドルの日記”である。

……〝それ〟がマートルの住み着いている女子トイレに打ち捨てられているのを発見する十日前の事だった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……っ」

今日も今日とていつもの三人で仲良く──俺はパーシーなどにバレないようにしながら女子トイレ忍び込もうとした時。……ジニーといつも共に存在していた〝それ〟が女子トイレに捨てられたのだと感覚的にだが判った。

……神聖であるべき学舎には似つかわしくない──闇の魔術の気配だ。

(……やっとか…)

ほくそ笑みそうになるが、顔面に力を込めてポーカーフェイスに努める。……云うまでもなく、〝ニヤニヤしながら女子トイレに入る男子〟なんて客観的に想像しただけでおぞ気が走るからだ。

……尤もながら、アニーとハーマイオニー以外には女子トイレに俺が入り浸っているなんてバレていないと思うが、少なからず向けられているだろう二人からの信用失いたくない。

閑話休題。

トイレに忍び込むと、いつもとは(おもむき)が違っている事に気付く。……女子トイレの戸を開けたのはいつもと同じ時間帯なので本来ならマートルがどこからともなく喜色ばんだ笑みで湧いてくるはずなのに、今日はそうではなかった。

<ごめんなさい、今日は楽しくおしゃべり出来そうにないわ…>

マートルの様子を見る限り、マートルは明らかに憤慨していた。それに気付いたアニーがマートルに心配の声を掛ける。

「……どうしたの? ……またピーブズに嫌な事でも言われたの?」

<それもあるわ──でも私それよりもっと許せない事があるの!>

………。

……。

…。

<はぁはぁ…っ…。……ふぅ…。叫んでたら何だかすっきりしちゃった。愚痴を聞いてくれてありがとう>

「………」「………」

マートルの怒声、ピーブズや〝その下手人〟に対する罵詈雑言(ばりぞうごん)は15分くらいしたところで漸く治まりをみせるが、アニーとハーマイオニーの顔からは──特にアニーの顔からは生気が抜けていた。律儀にちゃんとマートルの愚痴を聴こうとしていたのだろう、マンガとかでよくある〝ちーん〟が幻視できる。

(……これなら、〝知識〟に差異は無しだな)

マートルの話を簡単に掻いつまめば、マートルがトイレのU字講のところで〝死〟について考えている時に冊子が投げ込まれたので、主にそれについて憤慨しているのだとか。

……ちなみ俺は並列思考(マルチタスク)のサブの思考をマートルの話の相槌に割り振り、メインの思考を、これから手に入るであろう〝“トム・リドルの日記”の処断方〟について頭を(めぐ)らしていたのてそこまで暇ではなかった。並列思考(マルチタスク)万歳。

<……で、あれが私に向かって投げられた本よ。マートルの鼻に当たれば50点~♪>

マートルは、今度は落ち着いてそうおどけながらトイレのある個室の前の足元を指す。……そこにあったのはびしょ濡れの、黒いカバーの無骨な本──みたいなもの見付ける。……〝カップ〟や〝ロケット〟と同じ〝嫌な気配〟がするあたり、〝日記〟と断定しておく。

「……これは…日記、かしら…? あら、名前が書いてあるわね。……何々[T・M・リドル]──」

まずは俺達の中で一番知的好奇心が旺盛なハーマイオニーが〝日記を〟杖でつつきながら検分する。……(やが)て持ち主の名前らしきものを見付け、そして、それを読み上げた途端、ハーマイオニーは〝全身金縛りの術〟を掛けられたみたいに硬直する。

アニーの様子をみれば、アニーも同様だった。……アニーもまた、〝このタイミングで〟この日記が女子トイレにあると云う危険性を正しく理解してしまったのだろう。

開口一番にアニー。

「……急いで校長先生に届けよう」

「そうしましょう、私達が持ってても危険だわ」

「俺的には焚書(ふんしょ)しておきたいんだがなぁ、今この場所で。……なんとなくクィレルに引っ付いていた〝アレ〟と似たような気配がある様に感じるし…」

「それも良いかもしれないけれど、やっぱりアニーの云う通りダンブルドア校長先生に提出するべきよ。私達の判断で勝手に行動した結果、取り返しのつかない事になったら大変だもの。……きっとダンブルドア校長先生なら悪く扱わないわ」

この日記で〝試しておきたいこと〟があったので焚書する様にと進言してみるが、〝〝(ホウ)(レン)(ソウ)〟は大事だ〟とハーマイオニーの正論に叩き潰される。

……確かにダンブルドア校長なら巧くやるのは俺も判っているので、ここで二の句を続けてしまえば、それは俺がダンブルドア校長を信用していないと云う事になる。

(……まぁ、〝分霊箱(ホークラックス)〟なら何でも良いから、この後〝在ったり無かったり部屋〟にでも行って〝髪飾り〟あたりで試せば良いか)

「行きましょう」

「行こうか」

「……俺以外がな」

〝日記〟──“トム・リドルの日記”が発見されたのは女子トイレなので、俺がそこに居たと云う設定はちゃんちゃらおかしい。なので俺はここらで別行動をとる事に。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


SIDE アニー・リリー・ポッター

「〝レモン・キャンデー〟」

マクゴナガル先生がそう言うと、ガーゴイル像が動きだし、恐らくは校長先生の部屋に続くであろう階段が現れる。

……マクゴナガル先生にダンブルドア校長先生への取り継ぎを頼みに行った当初、マクゴナガル先生から(いぶか)しがられたが、要約しつつ〝〝名前をいってはいけない例のあの人〟の学生時代の持ち物が三階の女子トイレで見付かった〟と言ったらマクゴナガル先生は大人しくダンブルドア校長先生の取り継ぎを引き受けてくれた。

「……わぁ…」

校長室に入る。するとすぐ、ハーマイオニーが感嘆の息をこぼした。初めて入る校長室は、興味深い小物であふれていて──〝ザ・魔法使いの家〟みたいな風情だったので、ハーマイオニーの感嘆には同意だ。

机をの方を見やれば、座っていたダンブルドア校長と目が合う。

「こんにちは、アニー、ハーマイオニー」

「こんにちは、校長先生」

「こ、こんにちは」

「そういえば君達二人にミスター・ロナルド・ウィーズリーを加えた三人に礼を言うのをすっかり忘れておったの」

(ん…? ……ああ、バジリスクのことか)

一瞬ダンブルドア校長が何について言っているかが判らなかったが、視界の端でマクゴナガル先生が顔を背けているのが見えて、そんな風に納得する。……そして、「グリフィンドールに加点するのはマンドレイク薬で石になってしもうた方々が治るまで待ってもらおうかの」と続けては更に話を続ける。

「で、今日はどんな用で儂の部屋を訪れたか()いてもいいかな?」

「はい。……でも口頭で説明するのは難しいので、まずは〝これ〟を見てください」

ボクはそう〝リドルの日記〟を机の上に置く。ダンブルドア校長は日記を検分しては〝ふむ〟と頷いてみせる。

「ほう、〝トム・リドルの日記〟かの──これを発見した場所が何処だったか教えてもらってもかまわぬかの?」

「……50年前、ある少女が死んだ──三階の女子トイレです」

「……これは驚いた、50年前についても調べていたとは…」

「……アルバス?」

ダンブルドア校長は面食らった様な表情で、そんなダンブルドア校長をマクゴナガル先生は訝りながら見ている。

「ミネルバ、50年前──儂がまだ〝変身術〟で教鞭(きょうべん)を執っていた頃、三階の女子トイレでとある女子生徒が不審死する事件が起こった。……それで、確かに儂も疑問じゃったのじゃ。……50年前の事件と似ていると思ったのは儂もじゃよ。……して、それに思い至ったのはどちらかな?」

「……最初に50年前について調べ始めたのはロンです。ロンは〝バジリスクが居たのなら死者いてもおかしくない〟と、ホグワーツで出た死者について調べ始めたそうです。そして記述を見付けたマートル──ミス・エリザベス・ウォーレンの遺体に外傷らしい外傷が無かった手前、ロンもミス・エリザベス・ウォーレンがバジリスクに睨み殺されてしまった可能性が高いと言ってました」

漸く戻ってきたハーマイオニーがボクに続き、そこまで述べる。すると、ダンブルドア校長は感心したように口を開く。

「……よくぞ、そこまで調べ上げてくれた」

「……先に見せたロンは〝出来ればすぐに燃やしたい〟と言っていましたが…」

「……ミスター・ウィーズリーもこの日記について知っているのかの?」

「は、はい。……でも、ロンは〝〝日記〟が見付かった場所が場所がだから俺は行かない方がいいだろう〟とは言ってましたが」

「……ミスター・ウィーズリーには他に何か?」

「えっと確か──〝クィレルに引っ付いていた〝アレ〟と同じ気配がする〟と言っていました」

「……そうじゃったか…」

ボクからハーマイオニーに提起していた〝打ち合わせ〟の通り、ロンもまたこの日記に──少しだけだが絡んでいる事を仄めかせば、いきなりダンブルドア校長は目を細める。……それも数秒ほどの事で、(やが)ていつもの好好爺めいた笑みを浮かべる。

「……二人はミスター・ウィーズリーのその感受性について、どれほど信頼しているかの?」

「はい」「はい」

「ロンの勘は、よくボク達の指標になったりしてます」

「私も、ロンの勘には助けられた事があります」

思わずハーマイオニーと口を揃えてしまうといった結果になってしまうも、気にせずに続ける。

「そうか、いや──気を悪くしたならすまなんだ。……儂もミスター・ウィーズリーの直感をバカにしとる訳でない──(むし)ろその正確さに舌を巻いているところじゃ」

ボクは、ロンが〝この世界〟について大なり小なりの〝知識〟があるのは知っていて──ボクも〝知識(それ)〟を持っていて、かつロンに望んで封印してもらったのは覚えているので、ダンブルドア校長の云う〝直感〟とは少し違うのを知っているが、ボクは敢えてみなまでは語らないし、ロン──真人君にそれを語らせようとはしない。

ボクは升田 真人の──ロナルド・ランスロー・ウィーズリーの描く未来に賭けたのだ、要は。

……それはきっと、〝〝原作知識持ち〟転生者〟な真人君が──そしてそれを語らせようとしないボクが背負うべき罪咎(ざいきゅう)なのだろう。

閑話休題。

「……さて、もうすぐ夕飯の頃合いじゃ」

いつの間にやら長時間校長室に居座ってしまっていたようでダンブルドア校長から咳払いの後にそう声を掛けられる。

「……ミネルバ、送っておやり──あ、そうそう、二人のお陰でヴォルデモート卿がこれ以上暗躍するのを防げた事に対して礼をするのを忘れておったわい。……迅速かつ的確な判断を下してくれた二人に対して──一人につき30点ずつ与えよう」

「やったわ、アニー!」

「そうだねハーマイオニー」

今の加点で、対抗杯レースでは現在1位のスリザリンと、クィディッチ分のディスアドバンテージがほぼ埋まり──更に、これから〝バジリスクの究明について〟の件で、少なくない点数が加点されると思われるので、ハーマイオニーは大喜びだ。

その後はダンブルドア校長へと〝日記〟を燃やしてもらうように頼み、グリフィンドールの二連覇がほとんど確定したからか──どこか嬉しげマクゴナガル先生の後に続いて校長室から退室した。

SIDE END 
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