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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第二十四話 ホテルアグスタ 4

なだれ込むガジェット。

苦戦する機動六課メンバー。

奮闘する中、シグナムからの緊急通信が来る。





魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





ティアナside

強化されたのは機動力だけじゃなかった。

レーザーの威力も上がっているし、何よりAMFが強化されている。

アタシのヴァリアブル・バレットが通用しないなんて!

「くそ!やっかいな!」

アスカも中々手が出ない中、それでもバリアを射出して間合いを詰められないようにしている。

スバル、エリオが縦横無尽に動いてガジェットに迫るけど、接近を押さえるのがやっとの状態だ。

ダメだ、このままじゃ…考えろ!この状況を打破する方法を!

「どうすんだ!」

アスカが振り返らずに聞いてくる。

「そのまま!」

アタシはそう言って魔力弾を撃つが、AMFに防御されてしまう。

ホント、厄介ね。とにかく、今は持ちこたえさせないと。

「キャロ!エリオに攻撃ブースト!スバルとアスカは時間を稼いで!」

今のアタシの攻撃力じゃ、援護射撃にもならない。

エリオの機動力でガジェットをかき乱して、隙を作るしかない。

「軽く言いやがって、スバル!」「おう!」

アスカとスバルが矢面に出る。

「そら!」

アスカの三重にしたバリアがAMFと激しくぶつかる。その隙にスバルが、ガジェットに肉薄するが、それも避けられてしまう。

でも、それで隙ができたので、キャロがエリオにブーストをかけた。

みんなが動いている中、アタシだけが何もできていない。

ダメだ……このままじゃ今までと同じだ!

このまま敵を退けても、アタシは埋もれてしまう!何も変わらない!

どうすれば……どうすれば!

『フォワード誰か!271へのフォローに来れないか!』

緊急通信?

シグナム副隊長からの念話が全員に届いた。

何かあったのだろうか?副隊長にしては珍しく切羽詰まった声だ。

『すまない。ガジェットが大量に押し込んできて、私とザフィーラだけでは抑えきれん!ヴィータも途中で足止めを食らって身動きが取れないらしい。271の連中も頑張ってはいるが、このままでは……』

陸士271部隊はホテルの右翼を中心に守っていた筈だ。

左翼は湖があるので、ルートは正面か右翼だけ。その右翼が崩れかけているのか。

この状況なら!

「ならアタシが!」

この状況をひっくり返せば、アタシは認めてもらえる!

歴戦の勇者の中で埋もれずにすむ!

『イヤ、アスカ、お前が来い!お前ならAMFを無効化できるだろう!』

「な………!」

シグナム副隊長の言葉に、アタシの頭は真っ白になる。

アタシじゃ……ダメ?

ギリッ!

唇を噛みしめたアタシは、睨むようにアスカを見る。

「ご指名はありがとうございます!何番テーブルですか!?」

アタシの視線に気づかないアスカは、そんな軽口を叩いた。

それが余計に癇に障る。

『いいですか、シャマル先生?』

『うん、お願い。対AMFの使用を許可します。気をつけてね、アスカ君』

共通回線を使った念話でシャマル先生の了承を得たアスカは、ランダムにバリアを飛ばしまくった。

そのバリアを避けるガジェット。そこに隙ができる。

「みんな、ここを頼むぞ!ティアナ、みんなを頼む!」

こっちの答えを聞かずに、アスカはエリアルダッシュで離脱して行く。

「ここは任せてください!」「頑張ります!」「すぐに片づけて応援に行くよ!」

エリオ、キャロ、スバルがアスカの背中に答えた。

でも、アタシはそれができなかった。

アタシより、アスカの方が認められている…

何で?何で?何で!何でアイツなの!

アタシはお守りじゃない!何で!何で!何で!





アスカside。





マジかよ、これ。

ホテル右翼側へ進むにつれて、ガジェットの気配が尋常じゃなく溢れかえっている。

所々で271部隊が頑張っているけど、この数はハンパない。

だけど、動きは自動操縦っぽい、機械的な動きだ。

六課のフォワードが相手をしているような、厄介な相手じゃない。

そこでふと疑問が出る。

なんで正面側と右翼側でこんなに数と動きが違う?

試されてる?誰に……スカリエッティ?

っと、考えてる場合じゃない。

AMFに慣れてない271の連中が総崩れになりかけている。

まずはそれを何とかしないとな!

『シグナム副隊長、アスカです!今、どこにいますか?』

すぐに返事が返って来る。そうとう切羽詰まってるな。

『ホテルから山側に1キロ離れた地点だ!私とザフィーラで大半を抑えているが、かなりの数がそちらに向かっている!防衛、頼むぞ!』

ほんと、軽く言うなぁ…

まあ、それだけ信頼されていると考えますか。

オレはラピを構えて、苦戦している271部隊員に近づく。

「くそ!射撃が通らない!」

271部隊のほとんどがミッド式の射撃型。そりゃ、苦労するわな。

「そのまま撃ち続けろ!」

根を上げかけている隊員にオレはカツを入れる。

「なにぃ?お前、六課の若造か!AMFがあるのに無駄だろ!通じねぇんだよ!」

二十歳そこそこの若造が怒鳴ってきやがった。まだまだ元気じゃねぇか!

「てめぇらも伊達に訓練はしてねぇだろうが!AMFはオレが何とかするから、撃ち続けろ!」

怒鳴りつけてから、オレはラピを頭上にかざす。

「ラピ、やるぞ!」

《はい、マスター》

リンカーコアから超加速でラピに魔力が流れる。

それに+イオンを絡ませて、さらにデバイス内部で極限まで加速させ、放つ!

(カウンター)AMF!」

放射線状フィールドエフェクトを形成させたオレは、そのままガジェットの群の中に飛び込む。

そして、対AMFを炸裂させた!

放射線状のエフェクトを射出した途端、AMFが消えて魔力弾が直撃する。

「え…AMFが消えた!?」

さっきの若造だけじゃなく、271部隊員全員が驚いているようだ。

「分かったか!AMFはオレに任せろ!アンタらはとにかく撃ちまくれ!」

カードリッジをロードして、オレはさらに対AMFを撃つ。

撃って撃って撃ちまくる!

そうやって射撃をオレの周囲に集中させる。

よし!次々とガジェットが破壊されていく。

ただ一つ誤算があったのは…

「うお!かすったぞ!いま!」

オレに射撃が集中するから、気をつけないと当たっちまう事だよ!

もうやだ~!!!





outside






アスカが現れた事により、271部隊は崩れかけていた防衛ラインを立て直す事ができた。

そのアスカを見つめる一人の女性がいた。

「あの少年…まさか?」

271部隊長、ロザリー・ゲーニッツ三佐である。

「……今朝だぞ、局報で対AMFができそうだと報じられたのは。なのに、六課では既に実戦配備されている?」

金髪をオールバックにし、凛とした表情にサングラスを掛けた271部隊長は、アスカの動きをジッと食い入るように見ていた。





アスカside






なーんでよ!ガジェットの攻撃を避けながら対AMF撃って、今度は味方の弾避けてって、なんのバツゲームだ!

頑張ってるよ!オレ!輝いてるよ!オレ!

などとバカな事を考えてないとやってられない状況だったが、なんとか態勢を立て直す事ができたようだ。

徐々にだが、ガジェットを押し返している。

そして、やっと来てくれましたよ。勝利の女神が。

「待たせたな、アスカ」

いつもの落ち着いた口調で、シグナム副隊長光臨!

マジ!シグナム副隊長マジ女神!

「待ってましたよ!副隊長!」

「よく支えてくれた。後は任せろ」

シグナム副隊長は、炎に包まれたレヴァンティンさんを構え、一気に振り抜いた!

「紫電一閃!」

次々と連鎖爆発するガジェット。

………さっきまで必死でやってたオレらって何よ?楽できたからいいけどね!

「やれやれ、だ。ザフィーラさんは一緒じゃないんですか?」

「ザフィーラは残りのガジェットを片づけている。すぐに合流できるだろう」

そう言いながらも、副隊長は手を止めない。

ドンドンガジェットの残骸が増えていく。

これ、後で片づけなきゃダメだよね?オレ達がやるのか?

「……それまで休んでようかな…」

後のことを考えて鬱になっていたら、

『アスカさん!戻ってこれませんか!』

エリオ?緊急回線で念話だと?

『どうしたんだ、エリオ!何があった?』

オレは不安を押し殺して念話を返す。

『ティアさんが…前に出て防衛ラインを維持する事ができません!』

「ティアナが前にって…『待ってろ、すぐ行く!』シグナム副隊長!」

「行け!ここはもう大丈夫だ!」

同じ念話を傍受していた副隊長が許可をくれた。

「お願いします!」

オレはエリアルダッシュで再びホテル正面に向かって走り出す。

頼む、間に合ってくれ!





outside






時間は少し遡る。

アスカが抜けて、4人での防衛となったフォワードメンバー。

一進一退の攻防を繰り広げる。

「エリオ、スバルのフォロー!キャロ、バリア!」

指示を出しながら自らも魔力弾を撃つティアナ。だが、ガジェットはそれを難なく躱す。

それどころか、ミサイルポッドから誘導ミサイルで反撃にでるガジェット。

「くっ!」

ティアナは魔力弾で全てのミサイルを撃ち落とす。

だが、ホッとする間もない。

「ティアさん!」

キャロの声に反応したティアナが、後方に回り込んだガジェットのレーザーを避ける。

再びクロスミラージュで反撃するが、魔力弾は全てAMFに防がれた。

攻め込まれはしないが、こちら側も攻め込む事ができないシーソーゲームが繰り広げられている。

「防衛ライン、もう少し持ちこたえててね!ヴィータ副隊長がすぐに戻ってくるから!」

シャマルがそう励ますが、ティアナには逆効果だった。

(それじゃ意味が無い!アタシがこの状況を打破してみせる!)

ガジェットを牽制しつつ、ティアナが前に出る。

「守ってばかりじゃ行き詰まります!ちゃんと全機落とします!」

その言葉にシャーリーが慌てた。

『ティ、ティアナ、大丈夫?無茶しないで!』

「大丈夫です!毎日毎晩練習してきたんですから!」

『そ、そういう事じゃなくて!』

シャーリーの心配をよそに、ティアナはエリオに指示を出した。

「エリオ、センターに下がって。アタシとスバルのツートップで行く!」

「え?ツートップって…」

その指示に戸惑うエリオ。練習でも模擬戦でも、ティアナが前に出た事はなかったからだ。

ティアナはエリオの返事を待たずに行動に出る。

「スバル、クロスシフトA、行くわよ!」「おう!」

阿吽の呼吸でスバルが答える。

「クロスシフトAって、この混戦じゃ無理です!下がってください、ティアさん!」

エリオが止める間もなく、ティアナはスバルとのコンビネーションに入ってしまった。

「マズイ!キャロ、バリアブーストお願い!」

「う、うん!」

キャロはエリオにバリアブーストを掛けた。

本来なら、スピードブーストを掛けて敵を翻弄するのがエリオの仕事だったが、それではキャロを守る者がいなくなってしまう。

「…!分断する!」

キャロを守る為、その場に留まるエリオ。

だが、その為にスターズとの距離が離れてしまった。

「アスカさん、戻ってきてください!このままじゃ、全滅します!」





エリオは足を止めてキャロの護衛に徹する。

反撃は主にフリードのブラストフレアだが、ガジェットには当たらない。

「ティアさん、どうして…」

エリオはガジェットのレーザーをストラーダで叩き落とす。

ライトニングの二人にはティアナの行動が理解できなかった。

「エリオ君、防衛ラインを下げようよ!態勢を立て直さないと反撃に移れないよ!」

「ダメだよ。前線を上げてティアさんが下がらないと総崩れになっちゃう。せめてアスカさんがいてくれたら…」

だが、頼みのアスカはいない。その時だった。

「エリオ、キャロ!」

駆けつけたアスカが二人の前にバリアを張る。

「「アスカさん!」」

「待たせ…って、ティアナのヤツ、何をやってんだ!」

その現状を見て、アスカは思わず叫んだ。

センターガードが普段ではありえないぐらい前にティアナがいるのだ。

「キャロ、エリオを指揮して戦線を維持してくれ。オレはティアナを下げさせる!」

そう言うが早いか、アスカはバリアを射出してガジェットを追い払う。

「わ、私がですか!?」

「難しく考えるな!危ないと思った事をエリオに教えるんだ!エリオ、キャロを守ってくれ!」

「「は、はい!」」

ガジェットを牽制しつつ、アスカは二人に指示を出す。

そして、その返事を聞くと、ティアナに向かって走り出した。

「このバカ野郎!」

エリアルダッシュでティアナに接近するアスカ。

「下がれティアナ!何をやってる!」

「うるさい!邪魔しないで!」

アスカの言葉も、今のティアナには届かない。

「エリオ達をほったらかして何をやってんだよ!この混戦でクロスシフトAなんて無茶だ!」

「できるわよ!スバルとだったらね!」

「この…」

さらに何かを言おうとしたアスカだったが、ガジェットのレーザーが襲ってきたのでバリアで防いだ。

(防御に専念しないとマズイ!)

只でさえ崩れかかっている戦線、ここでもしティアナが落とされる事でもあれば敗北は必至である。

アスカは自分と、足を止めているティアナを守るようにバリアを展開する。

「スバル!」「わかってる!」

アスカを無視して二人は作戦を実行した。

スバルがウイングロードの上を走り、ガジェットの注意を引く。

(証明するんだ…特別な才能や凄い魔力が無くたって、一流の隊長達のいる部隊でだって、どんな危険な戦いだって!)

ガジェットの動きを目で追いつつ、ティアナは4発のカードリッジを消費した。

(アタシは、ランスターの弾丸はちゃんと撃ち抜けるんだって!)

「無茶だ!4発ロードは、お前もクロスミラージュも潰れるぞ!」

どう見ても限界を越えたロードだった。

異常な魔力がクロスミラージュから漏れ出てくる。

「撃てる!黙って見てて!」

スバルに注意が向いているガジェットに狙いを定めるティアナ。

クロスファイヤーの体勢。

だが、普段のクロスファイヤーが3発に対し、今回は12発の魔力弾。その全てが多重弾核だ。

「クロスファイヤー!」

「やめろ!」

「シュウゥゥゥゥト!」

アスカの制止を振り切り、ティアナは引き金を引いた。

12発の魔力弾がガジェットに襲いかかる!

「ラピ、弾丸の軌道計算!フラッシュムーブスタンバイ!」

射撃と同時にアスカはラピッドガーディアンの命令を出す。

その間にも、ティアナの魔力弾はガジェットを次々と破壊していく。

(やっぱり!弾丸の軌道が少しずつズレてきている!)

ラピッドガーディアンからの情報がアスカの頭に流れ込んでくる。

ティアナの魔力弾は、確かにガジェットを破壊している。

だが、初弾に比べ後ろの方になるにつれて、ガジェットの中心に当たっていた魔力弾は外側へ逸れるようになり、一部を破壊しても行動不能のは至らなくなる。

そして、最後の1発は大きく逸れてしまった。

逸れた魔力弾の先には、ガジェットの注意を引いているスバルの背中があった。

気配を感じたスバルが振り返ると同時に、魔力弾を目視する。

「あ!」

避けられない!

アスカの判断は早かった。

「フラッシュムーブ!」

スバルが振り向いたと同時くらいに、アスカ最速の魔法が発動する。

瞬時にスバルと魔力弾の間にアスカが滑り込む。

だが……

(バリア……間に合わない!肩!)

アスカはバリア展開が出来ないと判断するや否や、右のショルダーアーマーで魔力弾を受け止めた。





ヴィータside





アタシはその瞬間を見ていた。

絡みつくように追いかけてくるガジェット共をなんとか蹴散らして、新人達と合流する為にフルスピードで飛んでいた。

助ける為に速攻で来たのに、そこで目したのは、ティアナが無茶な魔法を使いスバルに誤射した所。

そして、スバルを守る為にアスカが身体を盾にした所だった。

血の気が引くのが自分で分かる。

8年前の…あの情景とダブる……

「アスカァァァァ!」





スバルside。

振り向いた時には、もう遅かった。防ぐ事も避ける事も出来ない距離だ。

私は直撃する事を覚悟する。ほんの一瞬の判断だった。

でも、目の前に影ができた。

分からなかった。その影が何なのか。

最初は何が起きたのか分からなかった。

激しい激突音がして、その影がウイングロードに叩きつけられて初めてそれがアスカだという事に気づいた。

アスカの身体は滑るようにウイングロードから落下していく…

右肩のアーマーが無惨に砕け散って…

「ア…アスカ!」

手を伸ばしても、届かなかった。





アスカside

魔力弾 

肩 

激痛 

逸れた 

ウイングロード 

落下 

地面 

ガジェット 

レーザー…





outside

地面に叩きつけられるアスカ。

その彼に、ガジェットが照準を定める。

「くそ!」

ヴィータが鉄球を出すが間に合わない。

ガジェットのレーザーがアスカを襲う。

「…ミドル…プロテクション!」

間一髪の所で、アスカはバリアを展開してレーザーを防ぐ。

右腕をダラリと垂らしながら立ち上がる。

「アスカ、動くな!」

ヴィータが鉄球で周囲のガジェットを破壊する。

「エリオ、キャロ!ガジェットを引きつけてくれ!」

ヴィータが二人に指示を出し、アスカに駆け寄る。

「おい!大丈夫か!」

普段の不機嫌そうな彼女では無かった。焦りと心配がヴィータの顔に出ている。

「うっ…ラピ、身体スキャン。右肩は折れてるか、外れてるだけか?」

《脱臼です。戦線離脱をしてください》

ラピッドガーディアンがアスカの状態を報告する。

それを聞いたヴィータの顔は、一瞬安堵し、そして、怒りに変わった。

そして、その怒りの原因になった人物を睨みつける。

「は…い、イヤ…ち、違……」

視線の先には、目を見開いて呆然としているティアナがいた。

誤射したせいでショック状態になっている。

その態度が余計にヴィータを怒らせた。

「ティアナ!このバカ!」

ヴィータが怒鳴りつける。

「無茶やった上に味方撃って 「ジャケットリリース!」 なに!」

ヴィータの言葉を遮るように、アスカはアーマードジャケットを解除した。

「ヴィータ副隊長、手伝ってください」

アスカはそう言ってしゃがみ、右肩を指した。

「脱臼です。入れてください」

「お前…」

ヴィータは脱臼でズレているアスカの右肩を見る。

「……1、2、3で入れるからな。力抜けよ」

注意深く、ヴィータがアスカの肩を掴む。

その僅かな接触でも痛みが走る。だがアスカは怯まない。

「はい、お願いします」

苦痛に顔を歪め、痛みに耐える。

「よし…1!」

ゴキッ!

「~~~~!!!!」

最初の一呼吸目でヴィータは肩を入れた。

「……ヴィータ副隊長…映画やドラマでも、一呼吸目は置きますよ?」

涙目で抗議するアスカ。

「それだと警戒するだろうが」

そんなアスカをみて苦笑するヴィータ。だが、すぐに真顔に戻る。

「やるつもりか?」

ヴィータの問いに、アスカは頷く。

この場で肩を入れさせたのは、まだ戦線離脱する意志がないからだ。

「ラピ、ジャケット再展開。ただし、右腕は完全固定。デバイスはシングルレフトハンドモード」

アーマードジャケットを再度身に纏って、アスカは臨戦態勢を整える。

「攻撃は無理です。オレがガジェットを引きつけるんで、副隊長が沈めてください」

痛みはまだ治まっていない。だが、アスカは引く気がない。

「そうか、なら最後までやって見せろよ!」

ヴィータは、アスカがバリアを張り始めたの見て再び空中に浮かぶ。

そして、呆然としているスバルとティアナに目を向けた。

「お前等は下がれ」

一言、冷たく言い放つ。

「え?あ…で、でも!」

「でもじゃねぇ!邪魔だから下がれ!!」

スバルに一喝し、ヴィータはガジェット掃討に意識を向けた。

もう、かまってられないという態度だ。

「スバル、ティアナを連れて戦線離脱するんだ。理由は…言う必要はないだろ」

振り返らずにアスカは言った。

バリアにレーザーが当たる度に、衝撃が右肩を襲う。それでもアスカは立ち続けた。

スバルは黙ったまま、その場を離れるしかなかった。 
 

 
後書き
はい、まだ終わりません。上手くまとめる事ができなくて申し訳ありません。

今回、ついにティアナが誤射りました。
色々な、なのは小説では、このシーンは結構パターンがありますよね。私は主人公に負傷してもらいました。
これにより、ティアナは更に追い詰められ、アスカも空回りし始めます。
アスカは仲間思いかもしれませんが不器用な所があるので、ティアナがどれだけ苦しんでいるかを理解するのに時間がかかります。
自分がアスカに求めたのは、未熟な面を出す所ですね。未完成な人間、それがアスカというイメージです。
若干16歳ですから、至らない所があって当たり前だと考えています。
ただ、それによりティアナが傷つき、アスカ自身も傷ついてしまいます。
…やだなぁ、書きたくないよ。

でも、こんな文章でも見てくれる人がいるので、精一杯書いていきますので、よろしくお願いします。 
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