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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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ほっぽと鯉のぼり・終わり


「成る程ねぇ、俺の料理があんまりにも美味いんで、お姉ちゃん達にも食べさせたくなった。そういう事か?」

「ウン……ゴメンナサイ。」

 シュンと俯いたほっぽちゃん。しかし、その両手は粽を掴んでおり、しっかり食べてます。案外ちゃっかりしてますね。

「まぁ、パクったお飾り返してくれたのは有り難いが、その時に腹が減ったからと食い物代わりにかっぱらっちゃ意味ねぇわな。」

「なんというか……理由を知ると子供らしくて可愛らしいのぉ。」

「お姉ちゃん思いで、那珂ちゃんはいい子だと思うなー?」

「けど、理由はどうあれ盗みは盗みですから。手段は褒められた物では無いですよ。」

 利根さんや那珂ちゃんはほっぽちゃんを庇おうと発言しますが、冷静沈着な霧島さんがバッサリ。流石は艦隊の頭脳、冷静ですね。

「……で、どないすんねんなこの子。」

「よし、とりあえず……」

 ゴチーーン!提督さんの拳骨がほっぽちゃんの脳天を襲います。

「うっわぁ、火花出そうな音でしたよ……」

「け、けど深海棲艦に提督の拳骨が効くのかしら?」

「イターーーーイ!!」

 火が着いたように泣き始めるほっぽちゃん。

「おいおい、効いてるぞ……。」

「提督の拳骨は私ですら痛かったからな、当然だ。」

 思い出したように脳天を撫でる武蔵さん。





「姉思いなのは感心だが、盗みはいかん。拳骨はその分だ……反省しなさい。」

「ウウ……ハイ。」

「さて、と。鳳翔に間宮……粽と柏餅の材料、まだあったよな?」

「え、えぇまぁ。何をするおつもりですか?」

「いやなに、材料余しても無駄になるからな。どれだけ作れるか解らんが、それなら持たせても問題ねぇだろ。」

「エ……?ドウイウコト?」

「だぁから、今後盗んだりしないと約束できるならお土産用の料理、今から作るがどうする?」

「ウン!ヤクソクスル!ダカラオネガイ!」

「よしよし、いい返事だ。……んじゃ、もう一仕事と行きますかね。」

 提督さん、ニッと笑ってほっぽちゃんの頭を撫でると立ち上がります。

「私達もお手伝いしますよ提督。」

「鳳翔……これは重大な軍規違反だぞ?始末書書くのは責任者の俺だけでいい。それにこれは俺の我儘みたいなモンで……」

「あら、それなら大丈夫ですよ。私も我儘で手伝うんですから♪」

「すまんな、助かる。」




「て、提督……これは敵に塩を送る行為では?」

 そんなやり取りを聞いて狼狽えているのは大和さん。生真面目ですからね、こういう心の機微の理解は難しいかも。

「食い物じゃあ相手を攻撃できないだろ?(一部を除いて)それに……」

「それに?」

「話を聞けばほとんどまともな料理を食えないらしいじゃねぇか。可哀想だろ?」

 提督の発言にポカンとする艦娘一同。しかし、ざわざわと笑いが広がっていきます。

「参ったな、我らが提督は柏餅の餡よりも甘いぞ?」

 と武蔵さん。

「その甘々なのがご主人様の良いところなんですけどねーw」

 と漣ちゃんが返します。

「あの~、因みに私達と子供たちの分は……?」

「心配すんな、烹炊所に準備してある。取ってきてガキ共に食わせててくれ。」

「やった!行ってきます!」

 そう言って真っ先に走り出したのはニ航戦のコンビ。あの食いしん坊はブレませんねぇ、まったく。

「アリガトウ!ホントウニアリガトウ!」

 そして……

「あ、甘くて美味いぞこれは!」

「な、なんちゅうモンを……なんちゅうモンを食わせてくれたんや…!」

「うまうまうまうま~♪」

 ル級、ヲ級、レ級は夢中で食べています。ほっぽちゃんは無事に帰り着き、みんなに提督から貰った料理を配り歩いています。



「……というのが、今回の一連の騒動の顛末ですね。報告は以上です。」

「そう、手間をかけたわねソ級。下がっていいわ。」

 そう言って中間棲姫が潜水艦のソ級を下がらせます。ほっぽちゃんが飛び出して行った後、ほっぽちゃんの姉のような存在である姫達が、監視と偵察の為にソ級を尾けさせたのです。

「成る程ね、変わり者の提督だとは聞いていたけど、ブルネイのあの提督がそんな事を……。」

 ほっぽちゃんから貰った粽と柏餅の詰め合わせをしげしげと眺める戦艦棲姫。

「ほんと変人よねぇ。まぁ、ほっぽちゃんが無事で何よりだけど。」

 そう言いながら柏餅にかぶりつく飛行場姫。

「けど、私達の分まで準備してあるとは。オマケにこれ、持ち運べるように防水仕様の袋入りですよこれ。」

 個包装された粽をつまみ上げて手触りを確かめる装甲空母姫。

「といってもすぐに食べちゃったら無意味ですけどねー。」

 そう言いながらガサガサと包みを剥がして粽をかじる駆逐棲姫。

「後でヒッキーのりっちゃん(離島棲姫)と、なんぽちゃん(南方棲姫)と、新入りの……重巡棲姫だっけ?にも持っていってあげなきゃね。」

 残った柏餅と粽を何個か取り分ける空母棲姫。おかんポジのようです。

「けど……どうしましょう?こんなに頂いてしまって。何かお返しをした方が良いのでは?」

 少し困惑気味の顔の港湾棲姫。

「とは言ってもねぇ……何を送ればいいやら。」

 いつも艦娘達と熾烈な戦いを繰り広げる姫達も、誠意の意味は理解しているようです。

『プレゼント……そうだ!』

 姫達の会話を盗み聞きしていた深海棲艦が一人。


~数日後~

「なぁ長門、説明してくれ。こりゃ一体どういう事だ?」

 ブルネイの鎮守府、執務室。そこには険しい顔の提督と、呆然といった顔の出撃していた艦娘達。

「いや、実はな……帰投中にこの巨大なプレゼント箱を発見してな。送り先はこの鎮守府になっていたので回収してきたのだ。」

 と、長門さん。

「えぇ、間違いないわ。もしかしたらほっぽちゃんからのお礼かな~と思って。」

 と、苦笑いしている陸奥さん。

「少し重かったし、危険物の可能性もあったが、一応鎮守府宛だったのでな。ここまで持ってくるまでは未開封だった。」

 真面目な顔で艤装を展開したままの武蔵さん。

「……そうか、これは夢か。はたまたどっきりか?あぁ、ジョークという可能性も…」

「すいません提督、紛れもない現実です。認めたくないかも知れませんが。」

 現実逃避をしようとする提督を、大和さんが引き戻します。

「……で、どうします提督?」

「どうします?って言われてもなぁ。」

「一応これはプレゼントで良いのでしょうか?これは。」

 一航戦の二人を含め、7人の視線の先……プレゼント箱の中にあった、否、『居た』のは……

「戦艦レ級です!宜しくお願いします!」

 満面の笑みを浮かべた戦艦レ級が入ってました。わけがわからないよ……

「悪いがややこしくなりそうだから帰ってくれ。」

「え~、なんでだよぉ。ここに置いてよぉ。提督の美味しい料理もっと食べたい~~!」

「お礼じゃなくて結局目的それじゃねぇか!カエレッ!」

 レ級は無事(?)送り返され、更に数日後鎮守府に蟹が大量に送り届けられたのは、また別の話。
 
 

 
後書き
いかがでしたでしょうか?いつもの提督主観ではなく、第三者の視点から地の文を書くように注意して書いてました。そして大オチで全てをかっさらっていったレ級……ほっぽちゃん主役の筈だったんですが(´Д`;) 
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