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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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ほっぽVSながもん


「ねぇ長門姉ぇ、ホントにこっちにいるの?」

「間違いない、私のチビッ子への愛がそう囁いている!」

「はぁ……。何なのよそれは。」

 ほっぽちゃんを探すように言われた長門さんと陸奥さんは、長門さんの執念とも言えそうな直感で、烹炊所に真っ直ぐ向かっていました。

「ん?あの娘は何をしているんだ?」

「え、どの娘?」

「あれだ、烹炊所から今出てきた。」

 長門さんが指差す方向……そこには、挙動不審に辺りをキョロキョロしながらそろりそろりと外に出てくる小さな女の子の姿が。頭には変装のつもりか、新聞紙で作られた兜を被っています。

「あのきめ細かく純白の肌!絹のビロードのような長い銀髪!あどけなさを残した紅く輝く瞳!どう見たってほっぽちゃんだ!」

「う~ん、そうかしら。誰か小さくて悪戯好きな……そう、卯月ちゃんとかがコスプレしてるんじゃないの?」

 実際にこの鎮守府のうーちゃんこと卯月ちゃんは、以前行われたハロウィンのイベントでほっぽちゃんの仮装をして『不謹慎だ』と怒られた前科がありました。

「何を言う!この長門、駆逐艦の体臭をかぎ分ける等造作もない!あの娘からはうーちゃんの大好物である人参の香りが全くしない。そして髪から仄かに香る磯の香りとミルクのような体臭のマリアージュ……あれは間違いなくほっぽちゃんだ!」

「長門姉ぇ、私貴女を憲兵さんに突き出すべきか本気で悩んでるわ……。」

 陸奥さん、既に呆れるというよりも己の姉に絶望しているようにさえ見えます。

「よし、後を尾けるぞ。」

 二人は怪しい女の子に気付かれないように尾行します。




「ヨシ、ココマデクレバアトハ……。」

「はいはいストーップ!」

 怪しい女の子の前に、陸奥さんが飛び出します。

「ヒッ!ナ、ナニ……?」

 女の子は突然目の前に飛び出してきた陸奥さんにおどろいたようで、ビクビクしています。

「荷物運びご苦労様だな。大方提督に頼まれたのだろうが、ただ、ちょっと顔を確認させて貰えるか?」

「カ、カクニン……?」

 女の子はビクビクしながら小刻みに震え、大きな瞳からは今にも大粒の涙が零れ落ちそうです。その姿を見て長門さんがハァハァ言ってます。断言しましょう、どう見ても変態です。そんな長門さんに対して、陸奥さんは怯えさせないように優しく話しかけます。

「そうそう、大丈夫よー。ちょっとその兜を取ってお顔を見るだけだからね……っと!」

 陸奥さんが兜を取ると、

「あらっ!」

「やはりっ!」

 間違いなく北方棲姫……ほっぽちゃんがそこにはいました。

「ヤダ!カエシテ!」

 ほっぽちゃんは兜を取り返そうとピョンピョン飛び跳ねますが届きません。




「あっ、あらあら。ごめんなさいねー……ところで、あなた誰だったかしら?」

「エッ!?」

『む、陸奥!?』

『いいから、合わせて長門姉ぇ!』

 今長門さんと陸奥さんは、ほっぽちゃんを挟むような形で立っています。陸奥さんの台詞にギョッとしたのはほっぽちゃんだけでなく長門さんまで驚いています。どうやら陸奥さん、ほっぽちゃんを安心させて捕まえるつもりのようです。

「い、いや失礼。ただその仮装のせいでちょっと誰だか見分けがつかなくてな。」

「そうなの。だからちょっと教えてくれると嬉しいかなー?」

 二人はほっぽちゃんを怯えさせないよう、ニコニコと笑顔で話しかけます。

「エ、エーット……ソノ…。」

「ウ、ウヅキ!クチクカンノウヅキダピョン!」

 目を泳がせていたほっぽちゃん、咄嗟に出した名前は駆逐艦の卯月ちゃんの名前でした。

「卯、月ちゃん……?」

 陸奥さん、あまりの予想外な答えでポカンとしてます。

「ソ、ソウダピョン。イマ、テイトクニニモツハコビタノマレテルンダピョン!」

 ほっぽちゃん、必死に卯月ちゃんを演じようとしています。

「そっか卯月ちゃん、ごめんなさいね。提督の頼まれ事の邪魔しちゃって。」

「ダ、ダイジョウブ。ヘイキダピョン。」

 ばれていないと思っているのか、あからさまにホッとした顔のほっぽちゃん。

「じゃあ、そんな偉い卯月ちゃんにお姉ちゃんがプレゼントあげちゃおっかな~?」

「プ、プレゼント!?」

「うん、じゃあ後ろを向いて?」

「ウシロ?」

 ほっぽちゃん、素直に後ろを向くと顔にムニュッと柔らかい感触が。そしてガッチリホールドされます。

「ぱんぱかぱーん!確保完了~♪」

「そして、この袋は……柏餅に粽ですか。なんとも可愛らしい泥棒さんですこと。」

「ウソ、ウソツキ!ハナセー!」

「はいは~い、大人しくしましょーねー♪」

 愛宕さん、ほっぽちゃんを肩に担ぎ上げてホールドしています。普段はホンワカしたお姉さんですが、実はパワフルお姉さんです。

「くっ、すまないほっぽちゃん……。騙す形になってしまった…!」

 長門さんはガックリと膝をついてポロポロ涙を溢しています。

「まぁ、姉があんなんだから貴女達を秘匿回線で呼んだんだけどね。」

「確かに、長門さんだと逃がしちゃいそうですもんね……。」

 陸奥さんと高雄さん、お互いに苦笑いを交わしています。
 
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