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堕ちた政治家

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第二章

 鱒弐はエラが張っていてやや吊り目で出っ歯である、眉は細く髪の毛は今はあるが将来は薄くなりそうな感じだ、そうしたお世辞にも男前と言えない顔であるがだ。
「あいつももてるが」
「女癖は相当悪いぞ」
「金と女だな」
「この問題があるからな」
「どうなるか」
「頭は抜群にいいがな」
 しかしというのだ、鱒弐を知る者はこのことが問題だった。
 だがだ、鱒弐はその頭脳を使い大学助手としても実績を重ね二十代のうちに博士号を習得してだった。
 雑誌でも文章を書きそちらでも評判となりだった。
 テレビにも出る様になり知識と頭の回転の速さを活かした論説でお茶の間の人気者となった、それでだった。
 一般の知名度も得て収入も鰻登りとなった、准教授にもなり。
「やがてはだ」
「はい、教授ですね」
 大学の総長に呼ばれこうした話をした。国立大学の総長室には確かな歴史と権威が色濃く感じられた。
「法学部の」
「そうなってもらうよ」
「わかりました」
「最近君の評判はいい」
「論文だけでなくですね」
「論文にだよ」
 それに加えてというのだ。
「雑誌の文章も評判で」
「テレビでもですか」
「そう、君は最近テレビにもよく出ているが」 
 そちらでもというのだ。
「極めて評判がいい」
「実は今日も収録がありまして」
 鱒弐は笑ってだ、総長に話した。
「講義の後で車の中で論文を書きながら収録に向かいます」
「ははは、多忙だね」
「楽しい多忙です」
 総長に笑ったまま答える。
「収入も増えましたし」
「そうか、それは何よりだ」
「これからもどれにも励んでいきます」
「頑張ってくれ給え、そういえばだ」
 ここで教授は話題を変えた、その話題はというと。
「結婚したそうだね」
「はい、先日」
「では身を固めてだね」
「これからも精進していきます」
「いいことだ、ではだ」
「教授もですね」
「目指し給え」
 こう彼に言う、そしてだった。
 鱒弐は教授にもなった、だが。
 その結婚した妻とは離婚したがだ、ここで彼を知る者はまた話をした。
「浮気か」
「どうもあいつがそうしたらしいな」
「女癖の悪い奴だが」
「それが出たな」
「すぐに別の奥さんを見付けるというが」
「大丈夫か」
 その女癖がというのだ。
「奥さんとの間に子供がいてな」
「浮気相手との間にもいるらしいな」
「認知して慰謝料も支払うというが」
「その慰謝料も弁護士に言ってケチったらしいな」
「せこいことをするな」
「あれだけテレビに出て本も売れてるのにな」
「別荘も買ったんだろ」
 それだけの資産が既にあるのに、というのだ。
「それで慰謝料はケチるか」
「何か小さいな」
「テレビとか本では立派なこと言うがな」
「責任をはっきりだの公私は分けろだの」
「立派なことを強く言うが」
「慰謝料はケチるか」
「金あるんだから払えるだろ」
「それでもか」
 多くの者がここで鱒弐にあるものを見た。 
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