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提督はBarにいる。

作者:ごません
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オトコ持ちのから騒ぎ!?・その1

 
前書き
 今回は恋人や旦那持ちの艦娘達のノロケをぶっちゃけちゃう回です。今回はまだノロケませんが、ブラックコーヒー等を準備しておきましょう。 

 
 とある日、鎮守府内に設置された茶室にてーーー。まぁ、茶室とは名ばかりの昭和の香り漂う畳張りの居間のような部屋なのだが、そこで蠢く人影が1つ。

「ふぅ……準備はこんな物デスかね~?」

何やらガチャガチャと準備していたのはこの鎮守府の提督の嫁である金剛だ。部屋の中央にある円いちゃぶ台の周りに座布団を置いていく。その数、5つ。今日は金剛が主催のお茶会なのである。普段は紅茶のイメージが強い金剛ではあるが、提督の妻であるという立場上、客人をもてなす為に緑茶やコーヒー等の淹れ方も学んでいた。流石にお茶を立てる事までは出来ないが、いつかは学んでみたいというのが密かな野望だったりする。

「金剛さ~ん、いるー?」

 部屋の外に今回のお茶会の参加者がやって来たらしい。

「ハーイ、どうぞ~」

 金剛の返答に応じる形で、襖が開けられた。

「や~、どもども。今日はお招きありがとうね」

 手を振り振り入ってきたのは鈴谷だ。

「でも珍しいですね、金剛さんのお茶会と言ったら紅茶かと思っていましたが……」

「私だって紅茶ばかり飲んでるワケじゃないんデスよー?」

 そんな事を言っているのは妙高だ。結婚してから掛け続けているという、夫とお揃いのデザインらしい眼鏡が眩しい。

「でも珍しいメンバーよねぇ、どういう集まりなのかしら」

 腕を組んで首を傾げているのは妙高の妹である足柄だ。

「何となくですが、私は解りましたよ」

 意味ありげな微笑を浮かべているのは金剛の妹である霧島だ。最近新居を見つけたらしく、引っ越したばかりだ。

「ここに居るのは全員結婚するか、恋人がいると公になっている面々ですね?お姉様」

「フフフ、流石は霧島デース!今日のティータイムはspecialなティータイムね!お互いの恋人やdarlingの話をしながら盛り上がるのデース!」

 まぁ、要するに金剛が他のカップルのイチャラブ生活の中身が気になってしまったのが、今回の騒ぎのきっかけであるのだ。



「さぁさぁ、お好きな席に座ってくだサーイ!」

 金剛に急かされる形で、ちゃぶ台の周りに敷かれた座布団に座っていくお茶会の参加者達。

「お茶は皆煎茶でOK?」

「お任せでー」

 ユルい鈴谷の返答に少しクスリとなりながら、じゃあ淹れて来ますね、と立ち上がる金剛。ふと、お茶菓子は何が良いかを聞くのを忘れたと思い直し、急湯室から顔を覗かせる。

「お茶菓子は何がいいデスかね~?4種類位作ったんですけど」

「え、金剛さん和菓子とか作れるの!?女子力で負けたぁ~!」

 そう言って悔しがるのは足柄だ。ここにいる面子は誰もが女子力高いと思うのだが、まぁそれは置いておこう。

『実を言うと、darlingに教わりながら作ったんデスけどね~……』

 と、心の中で呟いている主催者を含め。




        ~お茶会の前日~

「は?簡単に出来る和菓子を教えろって?」

「いきなりのお願いなのはわかってるネ……でも、明日のティータイムには和菓子を出したいノ!」

 お願い!と両手を合わせて頭を下げる金剛に、不満げな様子の提督。時刻は夕暮れ、いつも通りなら執務を切り上げて店の開店準備に入る時間だ。しかし今日は金剛の急遽の願いで準備が出来ていない。

 提督は面倒臭そうに頭をボリボリと掻くと、スマホを取り出してどこかに電話を始める。

「早霜か?おぅ、俺だ。すまんが今晩は臨時休業だ……たまには姉ちゃん達と遊んでこい。あぁ、また明日な」

 電話を終えた提督は、チェーンの付いたプレートを金剛に差し出した。そこには『臨時休業』と書かれている。

「とっととドアにぶら下げて来い、飲兵衛の連中が来ちまうだろうが」

「うん!」

 何だかんだとぞんざいに扱っているように見えて、提督も惚れた女にゃ弱いのである。金剛がドアにプレートを掛けている間に、執務室の内装を料理教室モードに変形させる。

白い軍服を脱ぎ、ラフなTシャツと短パン、それに前掛け姿になれば、提督の準備は完了だ。金剛も自らが作る為にエプロンを持ってきていた。

「さてやるか。メニューとしては『緑茶に合う菓子』……で良いんだよな?」

「That's right!それに簡単だったらもっと嬉しいネ」

 ふむ、と提督はしばし思案に入る。金剛の言う緑茶とは恐らくは煎茶の事だろう。旨味が強く、渋味も程よく感じられる旨いお茶だ。それに合わせるならあまり味の濃い菓子は茶の良さを殺してしまう。とは言えお菓子の出る場所は女子会らしい、煎餅等ではなく、甘くて柔らかく食べやすい物が良いだろう。

「よし、和菓子を2種類と洋菓子を2種類作るぞ」

「え、洋菓子ってケーキとか?でも緑茶には合わないんじゃ……」

「まぁまぁ、出来たら試食させてやっからよ」

 提督の言葉に半信半疑ながらも、金剛は教わりつつお菓子作りをスタートさせた。

《意外と簡単!手作りどら焼》※分量5個分くらい

・薄力粉:50g

・ベーキングパウダー

・卵:1個

・砂糖:30g

・みりん:小さじ1

・はちみつ:小さじ1

・醤油:小さじ1/2以下

・牛乳:25ml

・あんこ(つぶあんでもこしあんでも):100~150

「さて、作っていくぞ。まずはどら焼からだが……薄力粉とベーキングパウダーを混ぜてふるいにかける」

「OK……ホットケーキミックスじゃダメなの?」

「ダメだな。大概のホットケーキミックスにゃバニラエッセンスとかの香料が入ってる。和菓子の素朴で豊かな香りが邪魔されちまう」

 金剛が粉をふるっている間に、提督が卵と砂糖をハンドミキサーで混ぜ合わせて泡立てている。白っぽくなってきた所で回転を弱め、キメ細やかな泡にしていく。

「この卵液に、みりん、はちみつ、醤油、牛乳の順で材料を入れていく。新たな材料を入れる度に、低速で混ぜるのを忘れずにな」

「何でみりんとかお醤油とか、料理に入れる物を入れてるの?」

「みりんは和食でも甘味を付けるのに使うし、何より生地を焼いた時にいい色に焼き上がる。醤油は隠し味だが、塩気を入れる事で甘味をくどくなく、且つ際立たせる為だ」

 成る程、と金剛は納得していた。以前鳳翔が北方任務帰りのメンバーに甘酒を振る舞う為の支度を手伝った時に、塩をほんの少し入れていたのを思い出したのだ。『こうすると更に甘く感じるんですよ』と言っていたっけ。

「卵液が出来たら金剛がふるっておいた粉を卵液に加えて、練らないようにサックリと混ぜる。出来たらラップをかけて、30分冷蔵庫で寝かせる」

        ~30分後~

「生地の準備が出来たらホットプレートを加熱して、サラダ油を引く。温度はホットケーキを焼くのと同じ温度でいい」

 フライパンで焼くなら中火と弱火の中間位でな、と提督がフォローを入れる。

「余分なサラダ油を拭き取り、お玉で生地をホットプレートに流していくぞ。今回の分量だと5つ分……10枚分になるように分けてくれ」

「了解デース!……ひっくり返すタイミングはどうするの?」

「大体ホットケーキと一緒だな。表面に泡がフツフツと出てきたらひっくり返して焼く」

 形を丸く整え、しばらくすると表面にホットケーキを焼いている時と同じ様な泡が立ってきた。フライ返しを差し込み、手首のスナップを使ってクルリと返す。返した焼き目は店で売られているようなこんがりとした茶色で、とても美味しそうだ。

「後はホットケーキ同様、焼きすぎないように注意しながら焼いておく。……んで、焼き上がったらバットの上にラップを敷いておいて上からもラップをかけて挟んで、乾かないようにして冷ます」

「後はあんこを挟んだら完成だネ!……ヘイdarling、次は何を作るの?」

「次は……わらび餅を作るぞ」 
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