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提督はBarにいる。

作者:ごません
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提督と艦娘達の夏休み~縁日デートは危険な香り編・2~

 
前書き

 今回は趣向を変えて、場面毎にサブタイを付けるショート・ショート風で行きたいと思います。 

 
~提督さんはロリコンさん?~

 さて、3人の美少女を侍らせて縁日の会場に突入したワケだが。どうにも周囲からの刺すような視線が痛い。特に、女の子を連れていない独り身の野郎からの視線が。しかも、

『リア充死ね』『ロリコン乙』『滅べ』『呪ってやる』『援交かな?』『いやいや、ヤーさんと親分の娘とかでしょ』

なんて不穏な会話も聞こえて来ている。俺はヤーさんでもなんでもないんだが。強面なのは自覚してるが、幾らなんでもヒドくないだろうか?

「提督、大丈夫かい?」

 そう言いながら更に時雨がギュッと抱き付いて(何とは言わないが)押し付けてくる。正に「当ててんのよ」状態だ。嬉しい感触だが、そのせいで勘違いされてるんだからね?ギュッとされた瞬間、周りの怨みがましい視線が強くなったし。




~青いツナギの店員さん~

 引っ付いている3人を引き剥がしつつ、屋台を見て回る。……てかコレ、縁日デートって言うより『親戚の姪っ子を縁日に連れてきたオッサン』て絵面だよな、どう考えても。
まぁいいか。そんなことを考えていると、

「あ、フルーツ飴!」

 前方にあった屋台に白露が反応した。それに引き摺られるようにズルズルと、後ろの4人もついていく。

「いらっしゃい、どれにするんだい?」

 そこはフルーツ飴とチョコバナナを売っている屋台だった。フルーツ飴はリンゴにあんず、それに半分にカットされた缶詰のパイナップルの3種類に、チョコバナナの方は丸々一本の立派なバナナにたっぷりとチョコがかかったなんとも美味そうなチョコバナナだ。

『……ん?何か妙な視線を感じる』

 視線の先には、屋台のオヤジがいた。30代位の男で、何故か服装は青いツナギ。胸元を少しはだけさせて、こちらに熱視線を送ってきている。それを感じた瞬間、背筋に寒気が走った。ウホッ♂な趣味は勘弁だ。

「私パイン飴!」

「夕立はアンズ飴にするっぽい~♪」

「じゃあ僕はリンゴ飴にしようかな」

 村雨以外の3人は欲しい物が決まったらしい。村雨は最後まで、ん~……と悩んでいたが

「決めた、私チョコバナナ!」

「お嬢ちゃんお目が高いねぇ。……ウチのバナナを見てくれ、こいつをどう思う?」

「え?えっと……す、凄く…///……大きいです……////」

 何を言わせてやがるんだこのオヤジは。何で照れてたのかは解らんが、赤面してはずかしがりながら喋る村雨は可愛い上に少しエロかった。心のなかでGJを贈っておこう。勿論、欲しがっていた物は全て俺の奢りで購入した。




~意外な再会~

「アリャ、テートク~!こっちこっち!」

 白露達が甘味を満喫しながら歩いていると、なんだかすごく聞き覚えのあるがなり声がする。声の方に引き寄せられていくと、

「お、オバチャン!何やってんのこんなトコで?」

 以前金剛と街でデートした時に連れていったタイ料理屋のオバチャンが、グリーンカレーの屋台を出していた。

「ナニって、商売だよ~。それより、テートクは彼女クラガエか?」

 ニヤニヤと茶化すように笑うオバチャン。否定しておこうとしたら、

「そーなんですよ~♪」

「3人皆彼女っぽい~♪」

「い、いずれは結婚する予定だよ」

 おいこら、事実を捏造すんな。……というか時雨、お前の言ってる結婚はガチの方だろ、絶対。そして白露はこっちを睨むな、視線が痛い。

「アイヤー、テートクモテモテだね~!」

 おい、オバチャンもタイ人じゃなくて中国人ぽくなってんぞ。違うからと否定しながら、オバチャンから5人分のグリーンカレーを購入した。どこか座れそうな場所を見つけて食べよう。




~射的で艦娘と勝負とか負けるに決まってるじゃん~

「うぅ……いったぁ~い」

「冗談だったのにぃ~……」

「酷いや、傷が残ったらどうするんだい?」

 悪ふざけが過ぎた3人に、お仕置きのデコピンをしておいた。赤くなってヒリヒリと痛そうだが、傷にはならんだろう。

「次やったら拳骨だからな?」

「「「はぁ~い……」」」

 これで少しは大人しくなってくれるだろう。白露はそんな3人を見てクスクスと笑っている。普段から迷惑かけられっぱなしらしいから、少しは目を瞑っておいてやろう。

「お、射的とか懐かしいな。勝負してみるか?」

勝負、という言葉に過敏に反応する4人。

「勝ったらお店でタダ食い1回!」

とは白露の要望。

「夜戦(意味深)をーー」

「既成事実を!」

「提督の赤ちゃんをーー」

「却下だ」

 白露以外はよほど拳骨が欲しいらしい。結局、1番大きな景品を落とした奴が勝ち、賞品は店での食事を1回奢る、という事で落ち着いた。というかどこぞの空母連中みたいになってるから自重して欲しい。

「いらっしゃい、300円で弾は10発だよ」

「5人分だ」

 あからさまにチンピラっぽいスキンヘッドの店員に代金を支払い、空気銃の先にコルクを詰める。まぁ、勝てないとは思うが善処しよう。




~よくあるネタですが昔は実際あったらしいです~

 おかしい。絶対におかしい。違和感を感じたのは2、3発弾を当てた後だ。まずは小手調べと小さいキャラメルの箱を狙って当てた。1発で倒れると確信していたが、キャラメルは位置がズレる事もなく微動だにしない。

「あれぇ~?」

「なんでー?」

「おかしいっぽい~!」

他の連中も違和感に気付いたらしい。

『おい時雨、キャラメルの左上の角だけ狙い撃ちできるか?』

『解った、任せてよ』

 隣に陣取っていた時雨に耳打ちし、俺が撃っていたキャラメルの箱の隅を狙わせる。

ポン!といういい音と共に発射されたコルクは、見事に箱の隅を捉え、キャラメルの箱をクルリと一回転させた。途端にヤバイ、という顔になるチンピラ。逃げ出そうとしたそいつの襟首を掴み、ズカズカと屋台の中へ。

「てっ、テメェ何勝手に入ってきてやがんだ!営業妨害で警察にーー」

「ほーぅ、営業妨害ねぇ。それならお前さんは詐欺か何かで捕まえてもらわねぇと……なっ!」

 時雨が狙撃したキャラメルの箱を持ち上げる。やはりその中心には、固定させる為の釘が、景品棚の裏から打ち付けてあった。よくもまぁこんな古典的な手を。

「何?イカサマ?」「景品が固定してあったんだってよ」

といい具合にギャラリーも騒ぎ始めた。

「夕立、その辺を警官が巡回してるハズだ。連れてきてくれ」

「うん、わかった!」

 いい返事で駆け出していく夕立。馴れない下駄なんだからコケないようにしろよ、と言おうとしたが既に視界には居なかった。

「さてとニィちゃん、ちょっと面貸しな」

 ニコッと威嚇しないように笑ったのだが、チンピラの顔がひきつっている。失礼な。




~世間は意外と狭いのです~

「テメェいい度胸だな!俺に手ェ出したらどうなるかわかってんのか!?」

「さぁてなぁ。こわ~いお兄さんに目ェつけられんのか?」

 屋台の裏手に連れていった所で男が怒鳴り始めた。どうやらバックにはヤクザでも付いているのか、かなり強気だ。

「そうだ!今から呼んでやるから待ってろよ!」

 そう言ってスキンヘッドは携帯を取り出し、どこかに電話をかけている。数分後、いかにもなスーツを着た連中がゾロゾロとやって来た。

「こいつか?」

「は、ハイ!こいつがシノギの邪魔を……」

 スキンヘッドが上司らしい白スーツの男に事情を説明している。俺はその間は静観していた。

「もうそろそろいいんじゃねぇか?代貸しよぉ」

「いやぁすいませんね、ウチの若い衆がご迷惑を……」

 俺が白スーツに声を掛けると、白スーツは平身低頭謝り始めた。スキンヘッドはポカンとしている。

「ア、アニキこの野郎と知り合いなんで?」

「バカ野郎!この方はなぁ、ウチの組のお得意様だよ!しかも小汚ねぇシノギしやがって……このっ!」

 白スーツの男のケンカキックがスキンヘッドの顔面を襲う。吹っ飛ぶスキンヘッド。どうやらこの屋台のイカサマは、このスキンヘッド一人の仕業だったらしい。

「いやぁすいませんね、コイツはたった今破門にしましたんで。警察に突き出すなりなんなりと……」

「あああああアニキ!そりゃねぇですよ!」

「うるせぇ!お前はもうウチの組には関係ねぇんだ、近寄るな!」

 白スーツに一喝されて、ヘナヘナと座り込むスキンヘッド。やがてやって来た警官が男を引きずっていった。

「て、提督。今のって……」

「あ?あぁ、仕事の取引相手だよ」

 どんな取引かって?それは言えねぇな。少し怯えた様子の村雨の頭を撫でてやり、縁日の雑踏に戻る。世間は狭いというが、狭すぎだろ。 
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