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提督はBarにいる。

作者:ごません
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心ばかりの豆腐尽くし・3

 辛い豆腐料理とくれば、中華の大人気メニュー・麻婆豆腐だろう。今回は刺激的な本格四川風ではなく、日本人向けにアレンジしたご飯も進むし酒肴にもなる……そんな麻婆豆腐を作ろうと思う。

《タレが重要!麻婆豆腐》※分量2人分

・木綿豆腐:500g

・豚挽き肉: 100g

・長ねぎ :1/2本

・ニラ: 1束

・にんにく:1片

・しょうが :1片

・水 :300cc
・ごま油:大さじ1

・赤味噌:大さじ1

・酒:大さじ1

・オイスターソース :大さじ1

・片栗粉:大さじ1/2

・豆板醤 大さじ1/2

・醤油:小さじ1

・砂糖:小さじ1

・酢 :小さじ1

(仕上げ用)
・塩:適量

・黒いりごま:適量

・花椒(ホアジャオ) :適量

 豆腐はパックから出してザルなどに載せて水気を切っておく。その間に味の要である麻婆だれを作る。このたれは流石に春雨には合わないが、茄子等との相性は抜群だ。覚えると麻婆系の料理は格段に美味くなる。

 まずはネギ、ニラ、にんにく、生姜をみじん切りに。これは混ぜずによけておいてくれ。

 次に合わせ調味料を作る。赤味噌と砂糖をボウルに入れ、よく練り合わせる。こうすると砂糖と味噌が互いに焦げ目が付き易くなって香ばしさとコク、それに甘味に深みが増す。味噌と砂糖が練り上がったらそこに酒とオイスターソースを加えて更に練る。ムラが無くなるまで混ざったら、仕上げ用以外の調味料と片栗粉、水を入れて片栗粉のダマが出来ないようによく混ぜて溶かしておく。こうする事で、とろみを付ける段階での失敗をかなり減らす事が出来る。

 合わせ調味料と香味野菜の準備が出来たら炒めていくぞ。中華鍋(またはフライパン)にごま油を熱し、にんにくと生姜を炒めて香りを出していく。香りが立ってきたらネギを加えて更に炒める。にんにくと同時に入れなかったのはどうしてもネギが焦げやすい為だ。焦がしてしまうと苦味が出てしまうから注意しろよ。ネギの香りも油に移ったら豚挽き肉を投入し、色が変わるまで炒める。ニラにも火を通したいなら豚挽き肉の色が変わった辺りで加えよう。俺は食感を残したいから、仕上げ前に加えてるがな。

 豚挽き肉の色が変わったら合わせ調味料を入れる。一煮立ちさせて軽くとろみが付いてきたらここで俺はニラを投入している。ニラを入れてかき混ぜたら、ここで一旦味見。塩気が足りないと思ったら塩で、辛味が足りなければ花椒を加えて調整。花椒(ホアジャオ)ってのは中国原産の山椒の一種でな、辛味が特徴の四川料理には欠かせない食材だ。辣(ラー)……つまり痺れるような辛味を生み出す。辛いのが得意じゃなかったり、花椒が手に入らなければ市販の山椒でも代用できるし、辛味もマイルドだ。しかし今宵は辛い物が好きそうなアイオワの歓迎会だ、奮発して花椒は多めにしておこう。

 味が決まったら香り付けの黒いりごまを加えて、水気を切っておいた豆腐を手で大きく崩しながら加える。賽の目にカットして加えてもいいんだが、断面が粗い方がたれとの絡みがいい。豆腐も温まったら完成だ。

「ホイきた、『提督特製・麻婆豆腐』だ。辛いし熱いから気を付けて食べろよ?」

 アイオワはレンゲを手にして目をキラキラさせて麻婆豆腐に挑みかかる。レンゲに山になるように掬い上げ、大きく口を開けて一口で全てを放り込む。

「あっふ!」

 だから熱いと言ったろうに。そのアメリカンダイナマイトなバストがブルン、と揺れる程悶えている。ハフハフと涙目で口の中の熱気を逃がしているが、未だに顔が真っ赤だ。口の中を冷やすには、やはりビールだろう。俺は2人分のジョッキを支度してスーパードライを注いでやる。アイオワの隣では金剛が、フゥフゥと慎重に匙の中を吹いて、冷ましてから頬張ってはいるが、熱々の豆腐は中々冷めない。

「あふぉふ!」

 アイオワに負けず劣らず変な声を上げている。……どれ、俺も冷めない内に味わうとしよう。俺の分のスーパードライを準備して、行儀は悪いが直接鍋から掬い上げて食べる。

『成る程、こりゃ熱がるワケだ』

 豆腐は中に熱気を閉じ込めており、それを助長するようにたれもとろみのせいで冷めにくい。豆板醤がチリチリと舌を刺激して来るのも熱さへの援護射撃になっている。…しかし、あれだけ入れた花椒が全く効いてこない。分量が足りなかったか?

「熱いけど、そんなに辛くなっーー!」

 辛くない、とアイオワが言いかけた時だった。3人同時に、口の中で花椒が『炸裂』した。最早辛いというより、痛い。辛味は痛覚だと科学の実験で証明されていて知ってはいたが、まさかこれほどとは。3人がそれぞれジョッキを引っ掴み、ゴッゴッゴッと喉を鳴らしてスーパードライを煽る。キリッと冷えた黄金色の液体が、その痛みを洗い流していく。一気に飲み干した3人がジョッキを置いた所で、俺が口を開いた。

「すまん、いくらなんでも辛くし過ぎた」

「らいじょうぶ、かりゃいけどおいひいわ」

 アイオワはまだ舌が痺れているのか、呂律が上手く回っていない。その隣の金剛はカウンターに突っ伏して撃沈している。




 ヒィヒィ言いながら麻婆豆腐を平らげた後、アイオワから次なるリクエストが飛んできた。

「ねぇ、トウフでボリュームのある物って出来るのかしら?」

「勿論。任せてくれ」

「で、出来たら辛くない物をお願いシマス……」

 未だにカウンターに突っ伏したままの金剛が、それだけ絞り出した。

「解ったよ、辛くない奴な」

 苦笑いしながらも請け負った。辛くなくてボリュームのある物……肉と豆腐を使った揚げ物2種類でいくか。まずは鶏挽き肉と豆腐を使った、ヘルシーチキンナゲットといこう。

《豆腐でボリュームUP!ヘルシーチキンナゲット》

・鶏挽き肉:425g(大体でOK)

・木綿豆腐:400g

・おろしにんにく:小さじ2

・おろし生姜:小さじ2

・マヨネーズ:大さじ4

・塩コショウ:小さじ1

・片栗粉:大さじ3

(なんちゃってバーベキューソース)

・ケチャップ:大さじ2

・中濃ソース:大さじ1

・粒マスタード:小さじ2

 まずは豆腐をパックから取り出し、両手で包み込むようにしてしっかりと水気を搾ってボウルへ。そこに鶏挽き肉を加えてよく混ぜる。ムラが出ないようによく混ぜるのがコツだ。

 更に調味料と片栗粉を加えて更に練る。この片栗粉がポイントで、つなぎの役割と揚げた時の衣代わりになる。

 さぁ、揚げていくぞ。フライパンに油を注いで熱し、160~170℃位まで温まったらそこをキープ。タネをスプーンで成形するか、ビニール袋に詰めて絞り出して油に投入。鶏肉オンリーのタネよりも崩れやすいので、色付いてくるまでは触らないように。色が付いてきたら引っくり返したり全体をかき混ぜるようにしながら、きつね色になるまで揚げていく。揚がったら油を切り、レタス等を敷いて盛り付け。ケチャップとソース、マスタードを混ぜて出来るバーベキューソースを添えれば完成だ。

「はいお待ち、『豆腐チキンナゲット』だよ」

 アイオワは嬉々として指で摘まむと、バーベキューソースを付けてパクリ。瞬間、サクサクという軽い歯応えと共にアイオワの頬が弛むのが解る。

「美味しい!〇ックのナゲットよりもソフトだわ!」

 そう、それも豆腐を使うメリットだ。鶏肉オンリーのナゲットよりも柔らかい口当たりで、お年寄りや小さなお子様でも食べやすい。それに豆腐を使う分カロリーを抑えられる。

「それでもナゲットの味は損なわれてないだろ?」

「えぇ、しっかりとチキンの味がするわ」

 アイオワの隣を見ると、金剛も何も喋らずに黙々と食べている。どうやらこれは気に入ったらしいな。……さて、お次はもう少しボリュームのある物にするか。 
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