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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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69部分:第八話 罠その三


第八話 罠その三

「それは何があろうとも地上を守り抜く為です」
「人々と。そして」
「アテナの為に」
 こうムウに対して言い切ってみせたのだ。
「私達は存在しているのです。無数の転生を経て」
「転生を」
「私もまた同じ」
 シャカはムウを見てはいなかった。目は閉じられている。しかしその言葉は確かにムウの心の中に入り込むのだった。まるで神の言葉のように。
「幾度もの転生を経てここにいるのです」
「では他の黄金聖闘士達も」
「そうです」
 今のムウの言葉を認めた。
「ムウ、貴方にも前世がありました」
「若しかしてそれは先の聖戦の」
「さて。そこまでは」
 言わないのだった。あえて。
「そして運命に導かれて戦っています」
「聖闘士としての運命に」
「運命の為に死ぬことはできますね」
「無論」
 その言葉には偽りはなかった。ムウもまたアリエスの黄金聖闘士だ。だからこそその言葉には誇りがありまた心もそこにあったのである。
「人々とアテナの為なら」
「私もです。そしてそれは今出撃しているデスマスクも同じです」
「デスマスクもまた」
「ああした御仁ですので口には出しません」
 とかくデスマスクの口や態度の悪さは聖域でも言われているのだ。ムウの様に生真面目かつ温厚な男ではないのは確かでそれが対比されて言われることもあるのだ。
「ですがそれでも」
「そうですか」
「貴方も何時かそれがわかります」
 こうも言ってみせた。
「それは」
「そうですか」
「黄金聖闘士となるには聖衣に選ばれるのとは別に運命もあるのです」
「やはり運命ですか」
「黄金聖衣を纏う運命です」
 言葉が続く。
「最初から聖衣に選ばれ見出されているのです」
「生まれた時からですね」
「その通りです。私は最初にこのバルゴを身に纏った時に懐かしさを感じました」
「そういえば」
 その言葉にはムウも実感するものがあった。
「私も。何か」
「そうですね。それは他の黄金聖闘士達も同じでしょう」
「ですか」
「おそらく私は教皇の御言葉通り聖域から出ることはほぼない筈です」
 あくまで守りとしてなのだ。教皇からそれは強く言われている。
「しかし貴方は」
「出る機会もあるということですか」
「貴方は白羊宮を守る聖闘士」
羊宮は双魚宮と共に十二宮の中でも特別な宮であるとされている。何故なら聖域の最初の守りだからだ。それだけに白羊宮を守護する聖闘士は特別な存在と見る傾向がある。代表的な例としては今の教皇であり先の聖戦で最後まで生き残ったシオンがそうである。
「その貴方が出られること自体がかなりのものです」
「相手が戦皇アーレスですから」
 ムウもまたそれを覚悟しているのだった。
「それもまた当然でしょう」
「そうです。後ろはお任せ下さい」
「シャカ、貴方は」
「私は神に最も近いと言われる者」
 それがシャカを評する言葉である。それだけに彼の小宇宙はかなりのものだ。黄金聖闘士達の中でもとりわけ大きいとさえ言われている。
「この私の力。貴方達の為に使いましょう」
「御願いします。では私は」
「時を待つのです」
 こう告げるのだった。
「貴方が出られる時を」
「私が出られる時ですか」
「それは必ず訪れますので」
「確かに。その時は」
 必ず来る、これはムウもまた確信していた。戦いの流れから見ているのではなかった。今は八大公との対峙からそれを見ているのであった。出撃の時を。
「その時まで英気を養っておいて下さい。いずれはアーレスの本拠地にも出向くことになるでしょうし」
「トラキアにですか」
「戦いが進めばそうなるでしょう」
「今はまだ想像もつきませんね」
 ムウはまだそこまでは考えていなかった。今はただアーレスの軍勢である狂闘士、とりわけその頂点にいる八大公にどう立ち向かうのかを考えているだけだった。敵の本拠地に向かうということまではとても考えられなかった。そこまで考えられるシャカに驚いている程だ。
 
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