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提督はBarにいる。

作者:ごません
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艦娘とスイーツと提督と・7

~朧:あんドーナツ~

「あぁぁ、油で揚げたからこそ出るこのコク!周りを大袈裟に覆ってジャリジャリという位に付着した砂糖!それに負けず劣らず甘味と個性を主張してくるこしあん!」

 えー、何でか解りませんがリクエストを出されたあんドーナツを山積みにして朧の前に出したんですが。何故だか絶叫しつつ半泣きになりながらパクパクと食べて行ってます。

「一度食べ出したら止まらない、しかしそれを許さないカロリーの嵐!あぁ……なんて恐ろしいお菓子なんでしょうか!」

 恐ろしいお菓子、ねぇ。その割には食べ進める手は休まない。食べやすいようにと一口サイズで作ったあんドーナツを、両手で1つずつ掴んで右手のあんドーナツを放り込んで咀嚼し、飲み込んだら今度は左。その間に右手には既にあんドーナツが摘ままれている。もうどうにも止まらない、といった感じだ。

「恐ろしいとか言う割には手は止めんのなw」

「司令が美味しく作りすぎるのがいけないんじゃないですかー!」

「おいおい、俺は褒められてんのか?叱られてんのかどっちだよ。」

「両方です!」

「おい。」




「取り敢えず、飲み物でも飲んで落ち着け。お茶にコーヒーに牛乳。どれにする?」

「あ、じゃあ牛乳で。……だって、折角リクエストしたのに食べなきゃ損じゃないですかっ。」

 そう言いながら再びあんドーナツに手を伸ばす朧。左手には牛乳のコップを持つようになったが、右手で2、3個口に放り込んでから牛乳で一息、というバルジ増加(意味深)不可避な食べ方をしている。

「だったらカロリー云々を気にするのは止めとけ。折角美味いもの食べてるのに気分が沈むだけだろうが。」

「それが出来たら苦労しませんよ!提督は乙女心が解らないんですかっ!」

 そう言いつつ尚も手を休めない朧。

「せめて話す時は食べるのを止めろ、行儀悪いぞ。」




 そこでようやく手を止める朧。

「むぅ……でも、これってそんなにカロリー高くないですよね?」

「カロリーか。う~ん、作ってる時にゃ気にした事もねぇからなぁ。」

「だ、だったらもう少し食べても大丈bーー」

「どれ、乙女心の参考になるかは解らんが、今計算してやろう。」

「       」

 朧は唖然というか呆然というか、例えるなら『この世の終わり』とでもいうような絶望感に溢れた顔をしている。

「えぇと、生地に練り込んだ砂糖が~g、まぶしたのがこの位、餡にこの位入れて練って、油で揚げたからこの位吸い取ってると仮定して……」

 カタカタと電卓を叩いていく。こういう計算は一度覚えちまえば簡単だ。

「あわわわわわわ、ストップ!ストオオオオオォォォォォップ!」

 必死に止められた。

「なんなんだよ急に。カロリーの話題持ち出して来たのはそっちだろ?」

「そういう現実を突き付けて来るような所はダメだと思います!」




「あのなぁ、俺だって聞かれなきゃ計算しねぇから。美味いもの食べてカロリー増えたら消費すりゃいいだろが。」

 これは持論だ。カロリー気にするなら食事制限よりも動け。食べてる最中に気にしてたら折角のご馳走が思う存分味わえないからな。

「そもそも、お前ら出撃で激しく動くからその位のカロリー消費はすぐだろうに。」

「そ……それでも乙女は気にするんですっ!永遠の課題なんですっ!」

「お、おぅ……。」

 そのあまりの剣幕にちょっとたじろいでしまった。

「あ、なら第七駆逐隊の皆にお土産として持って帰ってやったらどうだ?喜ぶだろアイツ等。特に曙とかあんこ大好きだったろ確か。」

「うっ……そ、それはそうなんですけど。」

「ん?何か都合が悪い事でもあるのか?」

「あれ以上うs……いえ、あの娘にカロリー与えちゃったら、更に格差が広がるんじゃないかと思って……」

「あ?あ~……あぁ。」

 深くは言わないが察してしまった。主に脅威、もとい胸囲の格差社会的な意味で。

「まぁ……朧、頑張れ。何がかは解らんが。」

「は、はい……。」

 その後、結局残ったあんドーナツは持ち帰る事になり、翌日曙に

『あんな美味しい物食べさせて、太ったらどうしてくれんのよこのクソ提督!』

 と言いながら脛を蹴られた。なんでや。 
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