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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  11eyes ~派手に戦ってみますか!~


朝である。


いい朝である。
そんな朝、皐月駆は寝起きにとんでもない物を見た。



「うみゃぁ~~~~~」

「が・・・・・・かけ・・・たすけ・・・・・・・」


寝ぼけた蒔風が賢久にチョークスリーパーをかけていた。しかもホールドで。



「おいおいおいおい!!!」

駆がどんどん青ざめて行く賢久の首から蒔風をはずし、代わりに抱き枕を抱かせることで事なきを得た。


「し、死ぬかと思った・・・・・」

「大丈夫か?賢久」

「まあいいや、飯食いに行こうぜ」

「蒔風はいいのか?」

「あーーー・・・一応起こして(ブチブチ、ボンッ)いや、このままほっておくのが本人のためだ」

「だな」



二人の背後から何かが破裂する音が聞こえたが何も気にせず二人は朝食を取りに行った。






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「さて!!皆さん、今日と言う日がまたやってきましたが、ご機嫌いかがでしょうか!!!!」

「朝からデッドオアアライブ」

「死にかけた友人を救いました」

朝の身支度も終わり、みんなで朝食をとっていると、少し遅れて蒔風も部屋に入ってきた。

なんだか突撃レポーターのようなテンションだが、それに対して朝からとんでもない目にあわされた賢久と駆があっさりとした塩対応で流す。


「それはとってもエキサイティングッ!!!」

それでもテンションの高い蒔風。
無言で二人からド突かれてながらも、あっはっはと笑っていた。


「男の子ってすぐ仲良くなりますね~~」

「うらやましいですね」


女性陣は女性陣で会話に花を咲かせている。
そして朝食後、男三人は何を思ってか、庭に出て何やら始めていた。




「よっしゃ駆!!どっからでも打ちこんでこい!!」

「おぉッ!!」


カンカン!バシッ!

二人が木刀を持って打ち合っている。
その光景を賢久がドーナツをつまみながら眺めてやんややんやと囃している。


「ほう、鍛錬か。いいことだな」

「草壁さんじゃないですか」

「私も剣術の心得があるんだが、あとで手合わせしたいな」

「ええよ?でもちょいと待ってね。今日来なきゃ明日・・・いや、明日だな。明日来る」

「ほう・・・なぜ断言できる?」

「勘」


蒔風が駆の剣術鍛錬の相手をしながらも美鈴と会話をする。
当然その間にも駆が木刀で打ち込んできているが、受けるなり弾くなり流すなりで蒔風には当たらない。


「このっ、くそっ!!せめてこっちみろよっ!!」

「おいおい駆。本当に申し訳ないことにハッキリ言って、お前の剣術じゃ俺には勝つのは現状無理ってもんだ。で、別に試合するわけじゃないんだし、お前はお前の特技を使っとけ。むしろこれ、そのための訓練だし」

「ちぇ・・・いいとこまで行けると思ったのに」

「うーむまだまだ。素人に毛が生えた程度」

「まあ、駆君には刀の扱い方だけしか教えてないな。あの時はのんびり訓練できる状況ではなかったから、あとは能力に頼り切りになるのは仕方あるまい」

「じゃあ・・・今あるだけ最大限で、行くぞっ!!」

「よし来いッ!!!」


蒔風が剣を縦一文字に振り降ろす。
だが蒔風がそれを振るう動作よりも早く、駆が横に動いてそれをかわす。

まるで最初からそう来るとわかっていたかのように。


蒔風がもう一度駆に向き合うと、駆の左目が金色と黄色の中間あたりの色に変っていた。


「劫の眼・・・・さすがの性能だな」

「ふぅ・・・・でも見れてもオレの身体が動きについていけなかったり、受けても受けきれないような攻撃じゃどうしようもないからなぁ」

「それでも有利っちゃ有利だろ」

「そうだけど。結構疲れるんだよな」

「そりゃそうだ。未来の情報を脳に受け止めるだけで相当な負荷だしな」


そんな話をしながら駆と蒔風が打ち合う。

劫の眼を発動させたり、止めたりの訓練に、さらには発動させっぱなしで動いてみたりと、とにかく使い方になれるように訓練をする二人。
そうして正午に近くなり、みんなでお昼にしようと言ったところで、それが来た。




「む?」

「どうした?」

「敷地内に・・・・何かが侵入した・・・・」

「ああ、それ?「奴」じゃないね。多分過去あんたらが戦った敵だよ、それ」

「え!?」



ドドドドドドンッ!!!!

蒔風の言葉通り、「奴」ではない六体の黒い影が蒔風たちの前に降り立つ。

その形態は武人、巨大な棍棒を持った丸い大男、鞭のような剣を持った悪魔的な女性、何かの像のような形をした者、二本の刀を持った女性。

そして・・・・・


「あれがリーダー格か・・・・・なにあれ、仮面ライダーの―――オーガ?そっくりだな」

そしてその内のリーダー格であろう黒騎士。
確かに、彼らがこの姿を見て「黒騎士」と名付けたにふさわしい外見をした男。




「敵の襲来か!?」

「そう。土地だとかに染み付いた過去の記録や記憶。それをもとに「奴」が生み出したコピー品ってとこだな」

「だが一度戦った相手だ。とにかく、ここはみんなで――――」

「いや、ここはオレに任せてもらおう」


蒔風が一歩前に出て拳をバキボキと鳴らして行く。
コピー品とは言うものの、その再現率は完ぺきといっていい。

さらには、彼らを実体化させているのは「奴」の「欠片」だ。
強さはオリジナルに準拠するとはいえ、それなりにパワーアップもされているだろう。


「蒔風、あいつらは強い!!俺たちも以前は一対一じゃ相当苦戦したんだ。それがあれだけそろっていれば・・・・」

「でも今ならそうじゃない。今のお前らなら、そう苦戦はしないはずだ。ってことで、まあやらせてくれ。今のオレがどれだけ動けるのか、試させてくれ」

「今の・・・君?」

「気にするなよ。それに、デカブツは終わった」



キィン・・・・・・ゴガアアアアアアアア!!!!!!



蒔風がそう言うと、棍棒を持った巨体の黒騎士が斜めにずれ、消滅した。

左手を肩に当て、体の調子を確かめるかのようにゴキリと鳴らす蒔風。
その右手にはすでに日本刀「風」が握られていた。

目に見えぬ抜刀、そして一閃。
度重なる戦闘の傷は、ひとまずこれくらいのことができる程度には回復していたらしい。


「さぁて、はじめようか。この地に染みついた記憶より作られた過去の亡霊よ」

そう蒔風が言うと同時に、武人の黒騎士・イラが中段に拳を構えて突進してくる。

蒔風がそれに対して刀を収めた。
無手にて身体の正面を相手に向け、腕を「ハ」の字にして誘うように構えた。


はたして、その拳は周囲の空気を捩じりあげて蒔風の腹部に向かって放たれた。

それを左手で掴みながら蒔風は右足を下げて上体を反身に返す。
そこからさらに左足を下げ、右手でも掴みながらさらに身体を返し、イラの身体を投げ、地面に落とす。


腕を極め、その根本からへし折ってから頭蓋を踏み砕く。
そして背後に迫る悪魔的な女性の姿をした黒騎士・インヴィディアに振り返りながら裏拳を振るい、顔面にめり込ませる。



「勢いよく飛び過ぎだ。飛翔音で丸わかりだったぞ?」

ゴゴン!!ゴゴン!ゴガッ!!ズ・・・ズン!!!


邸宅の周囲の林に突っ込み、木々をなぎ倒しながら吹っ飛んだインヴィディアが、最後の巨木でなんだかよくわからない染みになって終わった。



そしてインヴィディアがそうなるより少し前に、すでに蒔風と二刀流の女性像をした黒騎士・スペルビアと激しい剣撃を打ちあっていた。


その速度はもはや人の範疇を超えており、実際には五回ほど打ち合った剣の音が、「ギン!!」の一音に聞こえる。
さらにその「ギン!!」がとんでもない回数、一気に鳴っている。

ギギン!!ギギャギャギャギギギギンッ!!ガキュィッ!!ガガギギギギンッッ!!!



「ハァァァァアあああああ!!!!ぬぅん!!!!」

ガギギッ・・・・ギャギィン!!!!!


蒔風がスペルビアの剣を弾く。
それと同時に、唯一人型でない、像の形をした黒騎士・アケディアが蒔風に向かって炎と雷を同時に放ってきた。


「圧水砲!!!!!」

それに対し蒔風が圧水砲で迎え撃ち、爆発を起こして周囲が霧に覆われる。



「なッ・・・視界が・・・・・・」

「ゆか!!離れるな!!」

「か、駆君?どこ!?」

「オレはここ「声を出すな駆!!!」ッッ!?」


ゴギャン!!!!


駆が蒔風の声にビクつき、ふいに見えた影に頭を抱えて防御をとる。
だが、その影が駆に危害を加えることはなく、蒔風がその影、スペルビアを背後から貫いていた。


蒔風が二人の無事を確かめるためにスペルビア越しに二人を見ると、すでに二人を守るように雪子がナイフを構えていた。
それなりに攻撃は防御したようだが、腕と頬に少し切り傷が―――と、思った矢先にその場ですぐに完治してしまった。


「おお」

感心するようにつぶやく蒔風。
そんな彼はすでにスペルビアから刀を抜いてその場から離れており、最後に残ったアケディアを斬り、そして同時に蹴り飛ばして撃破していた。



「ふう・・・ま、こんなもんか。みんな大丈夫か?」

「あ、ああ」

「びっくりしましたよも~~~」

「凄いな、超速再生か?」

「ご明察の通りです!こっちのほうは自前の技術ですけどね。私の力はすっごくよく治るだけですよ?」

こっち、と言いながらナイフをくるくると回して収める雪子。
だが、そんな話をしている場合ではなかった。



突如として、蒔風の身体が漆黒の巨大な腕に掴まれ持ちあげられる。

その腕の主はリーダー格・アワリティア。
巨大な竜へと変貌した彼が、蒔風を潰そうとその腕を握りしめた。


「こんの・・・・・」

「蒔風!!!」

「ち・・・いいだろう・・・試してみるか・・・・『我ここに異端を証明す』」


ブシャッ!!!!!


蒔風のつぶやきと共に、竜の腕が裂け、その体を離す。


「なんとかうまく行ったな・・・・固有結界、中々難しい」

「蒔風!!!まずい!!!!」

「ん?なッ!?」


蒔風が賢久の声で竜を見上げる。
その口元には炎のように七色の虹が蓄えられていっている。



「契約の・・・虹ッ!!!」

「なるほど・・・・次元破断砲撃かよ・・・・・勘弁してくれ!!!!」



ドバォ!!!!!!



虹色をした砲撃が放たれ、蒔風がそれを迎え撃とうとする。
だが、それよりも早くそれに対処したのは・・・・・


「や、やめてぇ!!!!!」


ゴォ!!!!


周囲が一瞬で赤くなり、その場の世界が塗りつぶされる。
そして蒔風の寸前で、虹の砲撃が掻き消されるではないか。

蒔風が振り返ると、ゆかの手が光っており、それが力の発動を物語っていた。



「栄光の手(ハンズオブグローリー)による幻燈結界(ファンタズマゴリア)・・・・それによる能力の打ち消しか!ありがたい!」


その隙に蒔風が手に力を借りて跳び上がる。

その手に握るは勝利の剣。
黄金に輝き、黒き竜を討つ!!!!


「エクス、カリバーー!!!!!」



ドゴッ!!!!ゴシャァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!






その光によって竜が跡形もなく消し去り、同時に赤い夜も消え、普通の昼下がりの陽気に戻った。




「う~~~ん・・・・助けられちまったな。ありがとさん!!!」

「う、うゆ・・・・・」

そう言いながら蒔風がゆかの頭をくしゃくしゃと撫で、ゆかがそれにワタワタと困る。



「ま、これで証明できた。「奴」は今日、来ない」

「では明日?」

「今晩12時からだな。そこまでは気を抜いておけぇ。神経切れちまうからな」


ヒラヒラと手を振りながら椅子に座って眼をつむる蒔風。


「オレは寝るよ。ごめんな、草壁っち。相手はできそうにないや」

「いや・・・構わない。あの戦いを見れただけで十分だ」

「そ?よかった・・・・ふぁぁぁ・・・・」




そうしてあくびをして眠る蒔風。


最初は俯いていたが、次第に顎が上がって上を向き、口をポカーっと開けてしまった。

あ、よだれ垂れた。



「こいつ・・・ホントにすごい・・・・」

「それでも「奴」に勝つのは難しいらしいんだ」

「それホントですか!?」

「それなら我々も休もう。今日はなんだかもう疲れたよ」



そう言って皆が思い思いの行動に移った。

のんびりする者、いつも通りの者、遊ぶ者、身体を動かす者。





着実に時間は進む。
「奴」の襲撃時間が迫ってくる。








to be continued
 
 

 
後書き

「奴」が来るのは次回ですね。

アリス
「私が言うつもりだったのに!!!」

ではまた次回







そのアイ(眼/愛)が運命を変える 
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