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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語

作者:マルバ
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■■???編 主人公:???■■
広がる世界◆序章
  第七十話 子どもたち

 
前書き
原作小説の超重要人物との初対面です。 

 
 それは、セルカに連れられて彼女の家を訪れ、一時間ほど人形遊びに付き合った後、セルカが庭の花壇の間を行ったり来たりするのを見守っているときのことだった。彼女が脚を滑らせて、花壇の端に腰をしこたまぶつけたのは。
 セルカは一瞬何が起きたのかわからないという顔をしていたが、三秒くらいして感情が痛みに追いついたのだろう、声を張り上げて泣き出してしまった。ミズキがあわててぶつけた場所を確認するが、特に出血もなければ、痣になりそうな様子もなかったため、ぎゅっと抱き上げて頭を撫でながらあやしていると、後ろから誰かに声をかけれれた。

「あんた、そこでなにやってるの」
 怒りをこめた声に恐る恐る振り返ると、そこには仁王立ちのアリスがいた。あわててセルカを解放すると、セルカは泣きながらアリスに抱き着き、アリスはセルカを背後に守るように隠した。
「そんな警戒すんなって、一緒に遊んでたらセルカがコケたから泣き止むまでああしてただけだ」
 アリスが、ほんと? とセルカに尋ねると、セルカは無言で首を縦に振った。アリスは安心して肩の力を抜く。
「ごめん、疑って」
「気にすんな。腰を花壇にぶつけたみたいだが、ケガはなさそうだぜ。一応シスター・アザリアに見てもらうんなら俺がつれてってもいいが、どうする」

 ミズキが提案すると、アリスは首を振った。
「ぶつけたくらいなら私でもみれるから大丈夫よ。そうだ、ミズキ、神聖術忘れちゃったんでしょ。せっかくだから見せてあげる」

 アリスが人差し指と中指をそろえて空間にSとCを合わせたような印を描き、そのままセルカがぶつけたあたりに触ると、目の前に突然半透明のステータスウィンドウが開かれた。ミズキが驚いて声を上げる。
「うおっ、なんだこれ」
「なにって、ステイシアの窓よ。天命が分かるの」

 天命とはようするに生命力(バイタル)を数値化したようなものだ。半透明のホログラムウィンドウを覗き込んだミズキは再び驚きの声を上げた。
 まず一番上で目を引く数値は『Durability:1051/1112』の表示だ。Durability(デュラビリティ)という単語自体は知らなかったが、意味はすぐに分かった。頑丈な、を意味するdurableの名詞形、すなわち耐久性とかいう意味だろう。これが天命なのだろうが、耐久性などという、モノに使う単語が出てくることにミズキは寒気を感じた。
 次に表示されるのは『ObjectControlAuthority:12』と『SystemControlAuthority:8』である。それで終わりだった。

 システム・コール、ヒール・ヒューマンユニット・デュラビリティ、とアリスが詠唱しているのを尻目にセルカの『窓』を熱心に見つめていたミズキは、アリスの詠唱が終わるとすぐに彼女に疑問をぶつけた。
「なあ、このデュラビリティってのが天命だよな?」
「そうよ。一番上の数字が天命」
「じゃあ下のふたつ、オブジェクトコントロールオーソリティとシステムコントロールオーソリティって数字はなんなんだ?」
「下の二つはよく分かってないのよ……神聖語が読めればいいんだけど、シスター・アザリアもよく知らないみたいで……」

 そこまで話したアリスは突然ハッとして顔を上げると、突然鋭い声でミズキを問い詰めた。
「ねえ、今あんた何て言った?」
「えっ、下の二つの数字が一体何なのか、って……」
「その前よ! なんちゃらおーそりてーがどうとか!!」
「オブジェクトコントロールオーソリティとシステムコントロールオーソリティ?」
「それよ! ああ、なんてこと! あんた神聖語が読めるのね!?」
「神聖語……って英語のことか。ああ、読めるぞ。ってアリスも神聖術使うときに声に出して言ってるじゃないか」
「それとこれとは話が違うわ! いい、よっぽど偉い術者じゃないと神聖語は読めないのよ。神聖語が読める術者なんて、それこそ一握りしかいないはずだわ。まさか神聖語の意味は分からないでしょうね?」
「いや、ある程度は分かるけど……」
「なんですって!? こうしちゃいられないわ。セルカ、ほんとごめん、あとちょっとだけお留守番しててくれる、いいわね? 私ミズキと行かなきゃいけないところがあるの」
 姉とミズキのやり取りをよく分からない顔で見ていたセルカは、突然話を振られて言葉に詰まった。その間にもうアリスはミズキの手を取って走り出していて、ミズキはあわててセルカに一声叫ぶ。
「セルカごめん、また後で遊ぼうなー!!」
 アリスに引きずられながらミズキがそう叫ぶと、セルカはまたねーと手を振った。


「聞いて! 緊急事態よ!!」
 アリスはあっという間にいつもの遊び友達である二人のもとへ駆けつけて叫んだ。集合したのは村の南に屹立する巨木『ギガスシダー』を倒す役割(この世界では『天職』と呼ぶのだそうだ)を与えられた、通称刻み手の二人である。今は仕事の休憩中のようだ。
「ねえアリス、今度はなんだよ、っていうかこのお兄さんだれ」
 ブロンドの髪の少年が訪ねると、アリスは少しイライラしながら答えた。
「この前話したでしょ? 私が村の前で発見した『ベクタの迷子』よ。ミズキ、自己紹介して」
「お前には年長者に対する敬意ってものはないのか……? まあとりあえず、ミズキだ。ベクタの迷子とやらで記憶が無いからそれ以上は特に語れない」
「ミズキさんね。よろしくお願いします、僕はユージオです」
「俺はキリトだ。お兄さん、ベクタの迷子ってほんとに何も覚えてないの?」
 キリト、という名前を聞いたミズキは頭のどこかにかすかな違和感を感じた。どこかで聞いた名前だが思い出せない、という感覚。少し戸惑っているうちにその感覚も消えてしまい、後にはもやもやだけが残った。首をかしげながらキリトの質問に答える。
「ああ。神聖術とかも全然覚えてないから困ってる。もし良かったら暇なときにでも教えてくれ」
「あーもう、そんなことはどーだっていいのよ。あのね、ミズキは神聖語が読めるんだって」
 アリスが暴露すると、ユージオは驚いてのけぞり、キリトは逆に身を乗り出した。
「まじかよすげえ! それじゃあ、ステイシアの窓とかに書いてあるのも全部分かるのか!?」
「一応な。意味もある程度は」
「まじかよ!! それじゃちょっと俺のやつ読んでくれよ!」
 キリトが嬉々としてステイシアの窓を開く。キリトの窓には天命の他に『ObjectControlAuthority:17』と『SystemControlAuthority:1』が表示されている。
「オブジェクトコントロールオーソリティ、つまり物体の制御権限が18で、それからシステムコントロールオーソリティ、システムの制御権限が1」
「おおお……おお? その権限ってのはなんなんだ?」
「うーん、それが俺にもいまいちよくわからねぇんだよな。一体なんの権限なんだか」
「ねえキリト、いつだったか、その二番目の数字の横の文字と似た文字が、道具の『窓』にも書いてあるって言ってなかったっけ」
 ユージオの言葉に、キリトは手元の斧の『窓』を開いた。
「そうそう、この二番目のとこの文字が、そのおぶじぇなんたらってやつに似てると思ったんだ」
 ミズキが読んでみると、それはまさしく同じ単語だった。『Class 21 Object』と書かれている。
「クラス21オブジェクトって書いてあるぜ。21級の物体っつーことだな」
「なるほど! つまり俺の権限が17だから、21の斧がまだそんなにうまく使えないってことか」
 キリトが嬉々として言ってから、すぐにその表情を曇らせた。
「俺が前回数字を見たのは天職を与えられてすぐで、そのとき権限は15だった……21になるのに一体どれだけかかるんだろう」
 自分の窓を見つめてぶつぶつ呟いているキリトと同じく、ユージオも少し暗い顔をしていた。ただしこちらはミズキの心配をしているようだ。
「神聖語が読めるってことは、ミズキさんはよっぽど偉い術者だってことですよね。それこそ、中央協会にいるような。うーん、僕らの村なんかにずっといていいのかなあ……」
「いいのよ、シスター・アザリアだっていいって言ってるんだし! そもそもほら、ミズキはお金持ってないからセントリアなんか行けないでしょ。ねえ、そんなことより、ミズキがいればもしかしたら神聖術の式句がどんな意味なのか、全部分かるんじゃないかって思うの」
 アリスは嬉々として言うが、キリトとユージオはさほど興味なさそうだ。
「うーん、権限が簡単に上がる方法とかなら気になるけどな、俺神聖術の才能ないし、あんまり興味ないかな……」
「そりゃキリトは私が教えてあげるって言ってるのに練習サボってばかりだからでしょ。ユージオは?」
「僕もあんまり。それにまだ今日の分の天職が終わってないからさ、あんまり長く休憩するわけにいかないし」
むぅ、と頬を膨らませたアリスだが、しょうがないと納得したようだ。彼女は11歳にも関わらず例外的に天職についていないが、そうはいっても家の手伝いをしなくてはならないため、彼女にもあまり時間がない。

「お前さえ良ければ、家のこと手伝ってやってもいいぜ。シスター・アザリアも、お前さんの手伝いをするぶんには許してくれるだろう。夜時間ができたら神聖術の解読をすればいい」
 ミズキの提案に、しかしアリスは首を振った。
「それはいいわ。家のことは私の仕事だもの。そうね、ミズキさえよければセルカの遊び相手になってくれないかしら。本当なら私が面倒見てあげられればいいんだけど、私はほら、やることがいっぱいあるから」
「それくらいならお安い御用だけど、お前の母親はどうしてんだ? いつもなら家にいるんじゃないのか?」
「家にはいるんだけどね、少し前に大けがをしてまだ体調がよくないのよ。怪我自体はもうとっくに回復してきてるんだけど、天命の減りが速いものだから、まだ一応安静にしておいたほうが良さそうなの」
「そういうことならまかせとけ」

 ミズキが頷くと、キリトとユージオが斧を持ち上げて休憩の終わりを宣言した。
「それじゃ休憩終わり、続きいくぞ! 今日のシラル水は俺のものだ!!」
「いんや僕だね。今日は僕のほうが二回多くいい音させてる。追いつけるもんなら追いついてみなよ」
「言ったな! せえい!!」
 キリトが斧を振り下すと、斧は巨大な杉の切れ込みの中心を見事に叩き、こおんという澄んだ音を響かせた。キリトが得意げな顔で振り返ると、ユージオが驚いて嘘だろ、とつぶやく。
「ほらみろ、これで一回差だ!! そら次!」
 もう一度振り下ろすが、今度は中心からだいぶ離れた場所を叩き、鈍い音がしただけだった。ユージオが安心してため息をつく。
「そんなすぐに挽回できるもんか。力むと余計に失敗するぞ」

 仕事を再開したキリトとユージオに背を向け、アリスとミズキは村への帰路についた。

 そう、彼らはまだ知らなかったのだ。彼らの日常を壊すあの事件が、もうすぐ起こるということを。 
 

 
後書き
 キリト、ユージオとの初対面でした!
 これで時系列が明らかになりましたね。現在、キリトは3日間のテストダイブ中です。
 アリスの禁忌目録違反が発生してから数日以内にサーバーが停止され、アリスのフラクトライトが無事なら回収されることになります。
 この小説ではどのようになるのでしょうか……?


 さて、これで一旦ストックが尽きたので、更新を一時停止します。
 ここからの展開はいくつか案があるものの、どう展開させるかまだ決まっていません。

 アリスはアリス・ツーベルクのままでいさせるか?
 それとも、公理協会に連れていかれてアリス・シンセシス・サーティになるのか?

 現実世界の方がどうなっているのかも気になりますね。
 死んだはずのミズキがこうしてアンダーワールドに現れているのは、一体どういうことなのでしょうか。
 ミズキの設定は結構練ってありますので、ご期待ください!


 裏設定……というか、原作設定のおさらいをしておきましょう。
 原作では、アリス・キリト・ユージオが11歳の時、アリスがさらわれることになっています。このとき、セルカは6歳です。
 キリトがラフコフの襲撃を受けて昏睡し、アンダーワールドに拉致されたとき、ユージオとキリトは共に17歳です。ちなみにセルカは12歳となります。
 無駄にセルカの存在を強調してますが、すでに小説内でも登場しているように、セルカも重要人物となる予定です。あとロニエ、ティーゼもですね。
 そういえば原作では確か名前しか登場しませんが、アリスの母親は存命で、サディナと言います。この小説では登場予定です。 
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