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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  169 ギルデロイ・ロックハート


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

ジニーが無事にグリフィンドールへ寮分けされて──新入生の歓待パーティーを大いに楽しんだ夜。俺は〝あったりなかったり部屋〟に足を運んでいた。……もはや恒例の【レーベンスシュルト城】だ。

〝恒例〟とは云ったが去年からは相違点もある。……それはアニーとハーマイオニーは居ない点だ。アニーとハーマイオニーはそろそろ成長期に入る頃合いなので、〝別荘〟の使用はそこそこに、と自粛するように説得してある。

……とは云っても、“己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)”で外見をある程度好きに変えられる俺は別だが…。

閑話休題。

「……うし、いっちょやってみっか」

俺が〝別荘〟に来ている理由は昨年度俺が誰かに聞かせたわけでもない言葉の有言実行で──つまりは、〝吸収〟の魔法を開発するためだ。

「……っと、〝杖〟〝アナログ時計〟〝デジタル時計〟〝砂時計〟〝年季を感じる本〟──これだけあれば良いだろ」

ローブや〝倉庫〟、または〝検知不可能拡大呪文〟が掛かっている鞄から、とりあえず5つの道具を取り出す。

〝杖〟に関しては魔法を使うので云うまでもなく、今から習得したいのは〝時間〟に関する魔法なので〝アナログ時計〟〝デジタル時計〟〝砂時計〟を用意する。

……〝年季が入った〟──悪く云えば劣化しまくりの本を用意したのは…

「本の経過時間──経年劣化を〝吸収〟出来れば新品同様になるはず」

……そんな理由だったりする。

更に、具体的方法は

1.まず5人の〝遍在〟を出す。

2.それから〝遍在〟たちに、予め“私のかわりはいくらでも(マイオルタナティヴ)”で保険(バックアップ)を用意しておいた“アギトの証”を渡す。

3.ついでに〝本〟にも〝双子の魔法〟を掛けておき、〝本〟の保険(コピー)も用意しておく。……“私のかわりはいくらでも(マイオルタナティヴ)”での保険(バックアップ)でも可。

4.〝杖〟に魔法力を込めて〝アナログ時計〟〝デジタル時計〟〝本〟の〝吸収〟を意味する──〝アブソルプ〟と云う言葉(ワード)を唱える。

5.〝4.〟の可否に関わらず、〝遍在〟を全部消して〝経験値〟をフィードバック。

6.〝1.〟~〝5.〟を、俺が納得がいく反応が出るまで繰り返す。

上記の〝1.〟~〝5.〟を繰り返していたら、4ループ目で成功させてしまった。……成功させて、作っているのが擬似的な〝不老〟の薬だと気付いたりしたが、広めるつもりの無い俺からしたら、どうでも良かった。

意気込んでいた手前、肩透かし気味ではあるが──その日の内に〝本の経年劣化〟を吸収を出来る様になったので、鍛練もそこそこにして〝あったりなかったり部屋〟を後に。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

地味に今年度のキーアイテムであるマンドレイクを、ハッフルパフの生徒と一緒に〝薬草学〟で世話をしたり、〝変身術〟では復習としてコガネムシをボタンを変えたりしている内に今年度初の〝闇の魔術に対する防衛術〟の授業となる。

……その時、コガネムシをボタンに変化させられたのは、俺とアニー、ハーマイオニーくらいなものだった。復習(イメージトレーニング)さえちゃんとやっていれば、コガネムシをボタンに変化させられたはずなのだが、皆、夏期休暇中に、脳ミソからほとんど()けてしまったらしい。

閑話休題。

〝闇の魔術に対する防衛術〟の枠をハートマークで囲むくらいには浮き足立っているハーマイオニーと、アニーのファンらしいコリン・クリービーがアニーに絡み──それをアニーが一刀両断しているの脇で眺めつつ〝闇の魔術に対する防衛術〟の教室に入る。

空いている席を見つけては座り、適当にアニーとハーマイオニーと雑談していると、他の皆もまた席に座ったようで。……(やが)てハーマイオニーや他の大多数の女子がお待ちかねであろう人物──ギルデロイ・ロックハートが入室してくる。

……そしてロックハートは皆から見える位置に立っては、キランッ☆ ……と、真っ白な歯を見せびらかす様にはにかんでは、()いてもいない事を話し始める。

「勲3等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、【週刊魔女】5回連続〝チャーミング・スマイル賞〟受賞──そう、ギルデロイ・ロックハートとは私の事だ」

「はぅ…」

そしてまたロックハート先生──もとい、ロックハートは自身の歯並びには大層な自信があるようで、キランッ☆ ……と、はにかんでは締める。

……俺とアニーに挟まれるように座っているハーマイオニーの甘い吐息は聞かなかった事に。

「……まぁ、とはいってもバンドンの〝泣き妖怪バンシー〟をスマイル一つでダウンさせた訳ではありませんのでそこまでの話を(つまび)らかに語るつもりはありませんが──時間も有限ですしね」

ロックハートは自慢話とよくわからないジョークをそこそこに区切り、「……〝どうしても〟と云う生徒がいるのなら課外授業で教授するのも(やぶさ)かではありませんがね」と続けては、教室を見回す。

「……ふむふむ、どうやら皆さん私の本を全巻そろえたみたいですね。さて〝今から授業です〟──とは言いたいですが、私は皆さんがどれだけ私の本を読み込んでくれたかが判らないので、ミニテストを行います」

ロックハートは「今から30分です──始め!」と、手拍子をしたので俺もテストに集中し──たのだが、豈図(あにはか)らんや、よもや一問目で後悔する事になるとは。


――――――――――――――


01.ギルデロイ・ロックハートの好きな色はなに?

02.ギルデロイ・ロックハートの密かな大望はなに?

03.現時点までのギルデロイ・ロックハートの業績の中で、あなたは何が一番偉大だと思うか?


………。

……。

…。


54.ギルデロイ・ロックハートの誕生日はいつで、理想的な贈り物は?


――――――――――――――


「そこまで!」

「「……はぁ…」」

……アニーとのため息がシンクロしたのは、きっとご愛敬。

(……一応埋まったが…。……テストって何だっけ?)

そんな事を自問しながら3ページの用紙の裏表にびっしりと在った解答欄を埋める事30分。ロックハートはまたもや手拍子を一つ。終わりの合図だ。

意外な事なのだが、ロックハートには文才は有ったようで──ロックハートの本は割りと面白く、それを読んでいたのが功を奏したのか全54問の──人に依っては難問であろう設問には、全て答えることができた。

しかしロックハートの顔色は(かんば)しくなく──

「チッチッチ…。……私の好きな色がライラック色だということをほとんど誰も覚えていないらしい」

笑顔だが声音は優しくない。しかしロックハートは喜色満面の笑みを浮かべ「しかし」と繋げる。

「どうやら、ちゃんと私の本を読み込むことが出来ている生徒が居るようだ。それも三人もがですよ! ……ハーマイオニー・グレンジャー、ロナルド・ウィーズリーはどこにいますか?」

ハーマイオニーは勢い良く、俺とアニーは愛想笑いをしながら挙手。

「素晴らしい! えーっ二人は確かグリフィンドールでしたね。……グリフィンドールに10点!」

目立つのは嫌いではないが、〝悪目立ち〟が嫌いな俺からしたら、羞恥心──と、ちょっとした殺意をロックハートに対して懐くには充分だった。

(……地味にハズいな…。……〝リドルの日記〟を押し付けてやろうか…っ!)

「さて、ミニテストも済んだことだし授業を開始しましょう」

危険極まりない計画を脳内で練っているとロックハートはそう(のたま)い、梟を入れるくらいの大きさな──形状からして、布が被された鳥籠を教卓の上に置く。布の向こうからはキーキー声が聞こえる。

(……ひぃ、ふぅ、みぃ…)

無聊(ぶりょう)を慰めるために仙術で布と籠の向こうに居る、〝コウモリくらいの大きさの生物〟の数を数えようとしたが、ロックハートは「さぁ!」と声を荒げる。

「気を付けて! 魔法界でもっとも(けが)れた生き物と戦う方法を皆さんに授けるのが、私の役目なのです!」

(……〝闇の魔術に対する防衛術〟の講師ならそうだろうな…)

俺の当たり前過ぎる脳内のボヤキだったが、態々(わざわざ)ミニテストで良い点数を取って良くしたロックハートの機嫌を損ねるのもアレだったので、お口にチャック。

「君たちはこの教室でこれまでにないほどに恐ろしい目に遭うかもしれない──ただし、私がここに居る限りは、何ものも君達に指一本触れさせない事を約束しましょう。……ただ〝やつら〟を刺激してはいけない。……どうか静粛に…っ」

ロックハートは布の縁に手を掛けて、籠を覆っていた布を一気に取り去った。

「コーンウォール地方のピクシー妖精だ」

「なんだ、ただのピクシー妖精?」

()ってはいた事なのだが、布と籠の中に閉じ込められていたのは──やはりと云うべきか、ピクシー妖精だった。シェーマスはハーピーの幼体でも出てくるとでも思っていたのか、がっかりとしている。

……シェーマス以外の皆もロックハートの事を(あざけ)るような態度である。

しかし、それはロックハートが欲しかったリアクションではなかったようだ。

「どうやら皆さん、ピクシー妖精を侮っているようですね」

「だってたかがピクシー妖精ですよ?」

「侮ってはいけませんよ。連中は実に厄介です。〝たかがピクシー妖精〟と侮れるその手腕、拝見させてもらいましょう!」

ロックハート籠の口を開ける。……ピクシー妖精は次々に籠から飛び出て来て、あっという間に教室をピクシー妖精の群青色が埋め尽くす。……控えめに云っても鬱陶しい。

「〝たかがピクシー妖精〟でしょう?」

俺、アニー、ハーマイオニーは本で物理的に叩き落としたり〝麻痺呪文〟や〝全身金縛り魔法〟で対処していたがいかんせん数が多すぎる。1分も経過しないうちに教室内はひっちゃかめっちゃかとなり──ロックハートはある程度溜飲を下げたらしく…。

(……成功させるか?)

〝〝映画〟より無能じゃないと良いなぁ〟と云う希望的観測だが──それはすぐに裏切られる。

「〝ピクシー虫よ去れ(ペスキピクシペステルノミ)〟!」

……何も起こらない。……それどころか杖を奪われ、窓の外に捨てられる始末である。

「君達、ピクシー妖精を籠に詰めておくこと」

ロックハートは俺達にそう言い残し、奥に引っ込んで行った。皆はもう教室から退散している。

「……はぁ…」

余りの前途多難さに、ため息が出たのはハーマイオニーがピクシー妖精に〝縛り術〟を掛ける数秒前の事だった。

SIDE END 
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