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魔法少女リリカルなのは ~黒衣の魔導剣士~

作者:月神
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IFエンド 「月村すずか」

 モニターに映る複雑な文字式の羅列。それらは全て魔法世界の言語で書かれている。
 私が生まれ育ったのは管理外世界に分類されている地球。魔法なんてものを使える人はほぼいないし、私も魔法を使うことはできない。
 にも関わらず私が魔法世界や魔法のことを知っているかというと、一緒に育った友達達が魔法に関わる人間だからだ。
 なのはちゃんは魔導師の先生みたいなことをしているし、フェイトちゃんは犯罪者を追いかけたりする仕事らしいから警察官かな。でもはやてちゃんは捜査官って言ってた気がするから、執務官のフェイトちゃんは裁判官とか弁護士寄りなのかな?
 なんて思ってしまうのは、私が魔法を使える人間じゃないので同じように感じるからかもしれない。

「私も魔法が使えたら……ううん、多分無理な気がする」

 たとえ魔法が使えたとしても私にはみんなみたいに戦うことは出来ないと思う。自分が傷つくのも怖いし、犯罪者や危険生物が相手だからとはいえ傷つけるのも嫌だから。私にはやっぱり今の仕事が合ってると思う。
 ――仕事って呼ぶにはまだ早い気がするけど。
 私が今行っていることはデバイスのプログラミング。何故そんなことをやっているかと言うと、デバイスマイスターになって仕事をすることが今の私の目標だからだ。
 どうしてデバイスマイスターになろうと思ったのかと聞かれたら昔から工学系に進もうと考えていたからだ。その夢の実現のために大学でも工学系を専攻していた。だけど勉強すればするほど魔法世界の科学技術に意識が向くようになった。

「地球と同じくらいの技術もあるけど、魔法に関して言えば本当に言葉通りみたいな技術だよね」

 こんな技術が昔から幾つもの世界にあったと思えると、人という生き物は凄いと感じる。その一方で進み過ぎた技術故に滅んでしまった世界もあるらしいので、傲慢になり過ぎちゃいけないとも思う。
 まあ今の私にはどうあがいても凄いものなんて作れないけど。デバイスマイスターに必要なことも今勉強してる真っ最中だし。
 魔法世界の言語はそれほど複雑な文字を使っているわけじゃないけど、地球育ちの私からすれば外国語に等しい。だから覚えるのも時間が掛かったし、それを用いてのプログラミングともなれば効率の良い作業なんてできない。

「大分マシにはなってきてるけど……まだまだだよね」

 独学でやっていたなら多少自信を持つことが出来たのかもしれないけど、私には先生が居る。
 その人は私と同じように昔から工学系に興味を持っていて、デバイスに関することはすでに10年以上勉強している。他に特徴を上げるとするなら感情が表に出にくいとか。あまり面と向かって言えることじゃないけど、優しい人だから許してくれる気もする。

「ショウくん、今頃何してるのかな……」

 時間を確認するともうすぐ夕方だ。ショウくんはわざわざいつも私の家に足を運んでくれて勉強を見てくれてる。だから私としてはお礼に晩御飯くらいはご馳走したい。
 何時に来るのは知りたいけど……仕事中かもしれないし、電話をするのは気が引ける。それに外で食べてくる可能性もあるし、勝手に作るのも良くないよね。一度に二人分も食べれるほど大食いじゃないし。
 余ったら次の日に回せばいいと思わなくもないけど、もしもショウくんに見つかって変に気を遣わせるかもしれないと思うと、彼が来て確認が取れるまでは勉強を続けていた方が良い気がしてくる。

「…………私って……ショウくんの何なんだろう?」

 不意に自分の口から洩れた言葉にドキッとし手を止める。
 私、急に何を言ってるんだろう。今までそんなこと考えたことなかったというか、友達って思ってたはずなのに。
 ショウくんは私にとって友達のはずだよね。
 小学生の時に出会った口数が少なくて無表情気味な男の子。それが私のショウくんの第一印象。だけど学校の図書室や図書館で見かけてる内に工学に興味があることが分かった。

「でも確か……」

 話すようになったのは……あのときからかな。
 今の私なら楽々届く高さだけど小学生の頃は台を使ったりしないと届かないこともあった。あの日も確か図書館で届きそうで届かない本を取ろうとしてて……ショウくんが取って渡してくれたんだっけ。
 近くにあった本を手に取ってから私のはついでだったんだろうし、本人にもお礼を言ったらそんな感じの素っ気ない返事をされた気がする。ただそれでも子供の頃から機械の話が出来る子は少ないだろうし、せっかくの機会だからってことで勇気を出して話しかけたんだよね。

「それから顔を合わせる度に少しだけど話すようになって……ただ学校だとなのはちゃんやアリサちゃんと一緒に居ることが多かったからちゃんと話してたのは図書館で会った時くらいだっけ」

 冷静に思い返してみると、実に物静かな会話をしていた気がする。内容もアニメやゲームみたいに子供らしいものじゃなくて、こういう機械に興味があるんだよねみたいな感じだったし。はたから見てた人達はこの子達は何だろうって思ってたかも。
 だけど……あの頃はそんなことを気にしたりはしてなかったなぁ。ショウくんと話すの楽しかったし。男の子と話してあんなに楽しいと思ったのはショウくんが初めてだったかな。
 少しずつ距離感が縮まる内にフェイトちゃんが転校してきて、気が付けばなのはちゃん達も含めてショウくんと話すようになってた。それで図書館ではやてちゃんと出会って仲良くなると、それまで以上にショウくんの話をするようになったんだよね。

「もうあの頃から10年以上も経つんだ……何だかあっという間に過ぎちゃった気がする」

 それだけ楽しい時間だったのかもしれない。ううん、楽しい時間だった。
 アリサちゃんがなのはちゃんとギスギスしちゃったり、お仕事で大怪我をしちゃったり……悲しくて辛いこともあったけど、それがあるから今がある。こんな風に思えるのなら決してダメな時間じゃないよね。
 ただ……この前の一件に関しては消化できてないかも。
 その一件というのはショウくん達の入院だ。大変な事件があってその解決のために頑張って怪我をしちゃったわけだから責めるわけにもいかないけど、やっぱり友達が怪我をすれば心配になる。特にこうと決めたら曲げないなのはちゃんとか、普段は止める側なのに大事な時に限って相手優先になるショウくんとか……。

「……まあ結果的に言えば、ふたりとも無事に退院して元気に仕事してるから良いんだけど」

 ただもう少し細目に色々と話してほしいな。私に出来るのは待つことだけだし、何も知らないで心配するよりは知った上で心配したい。
 あっちからしたら余計な心配をしてほしくないだろうけど、待つ人の気持ちも考えてほしいよね。それが分からないと将来結婚とかしたときにすれ違いの原因とかになるかもしれないんだし。
 ……あれ? 仕事の話は聞いたりしてるけど、プライベートの話ってあんまり聞いてないような……もしかして私の幼馴染達は仕事が恋人っていう悲しい人生を歩んじゃうのかな。みんな可愛いのにそれは……私はちゃんとみんなの結婚式とかに行って祝ってあげたいよ。

「何で浮いた話のひとつも聞かないだろう?」

 なのはちゃんやフェイトちゃんは子供の頃から仕事してたわけだから貯えだってあるだろうし、魔法世界ではエリートって呼ばれる職業に就いてるはずだよね。まあエリートだから近づきにくいと思う人も多いのかもしれないけど。はやてちゃんとかはこういう理由以外に家族が認めた相手じゃないとダメってのがありそうな気がする。
 そういうことを考えると……ショウくんとかがベストな相手なのかな。昔から付き合いがあるから対等な会話ができるだろうし、仕事の苦労とかも理解し合えるわけだからすれ違いみたいなものはないと思うし。

「それに……」

 フェイトちゃんは昔からショウくんのこと好きだったように思えるというか、あれは絶対好きだよね。ショウくんの話題になると過敏に反応してた気がするし、ショウくんのことを話してるフェイトちゃんの顔はまさに恋する乙女って感じに見える。
 誰よりも付き合いの長いはやてちゃんも否定はしてたけど、多分ショウくんのことを好きな気がする。小学生の時は友達って感じに見えてたけど、中学生……特に3年生の頃かな。それくらいから距離感に変化が現れて微妙な感じになってたし。まあ割とすぐに気まずい雰囲気は消えたわけだけど。
 なのはちゃんは……私達の中でも色恋に疎かったけど、今ではどうなんだろう。昔ほど疎くはない気がするけど……誰とでも仲良くしちゃうから判断しにくいんだよね。でもよく思い返してみるとショウくんに対しては素直にあれこれ言ってた気がする。人一倍溜め込んじゃうところがあるからショウくんみたいな人が傍に居る方がいいんじゃ……

「……あれ…………何で」

 何で……私は泣いてるの?
 別に悲しいことだとか辛いことを考えるはずじゃないのに。友達の幸せに繋がることを考えてるはずなのに、どうしてこんなに涙が出るんだろう。これじゃあ……まるで……

「私……ショウくんのことが……」

 そこから先の事は口にすることが出来なかった。自分の気持ちに気づいてしまったから。
 本当はずっと前から……下手をすれば子供の頃から私はショウくんのことが好きだったのかもしれない。断定じゃないのは私の初恋がショウくんだけどその恋はすぐに冷めちゃったから。
 いや……冷めたというよりは身を引いたって言う方が正しいのかな。ショウくんと話すみんなを見ていると自分よりも仲が良いのが分かってしまったから。

「相談されてたら本気で自分なりの意見を言ってただろうし、誰かがショウくんと付き合うことになっていたなら心から祝福したいと思ってた……でも、もう無理だよ」

 昔はお姉ちゃんや恭也さんの姿を見て恋に恋する感じでショウくんのことを好きになってたんだと思う。だからすんなりと他人の事を応援しようと思えた。
 だけど今は違う。あの頃よりもずっと強くて大きい気持ちが芽生えてしまった。誰にもショウくんを渡したくない。ずっと傍に居てほしい。そんな風に思ってしまう。

「私って……嫌な子だ」

 みんなのこと応援しようって思ってたのに……。今になってショウくんのこと好きになって……友達としての関係じゃ満足できなくなるなんて。
 別にショウくんは今誰とも付き合ってるわけじゃないけど、他の子が……友達が好きな人を好きになるなんて最低だ。いったい私はどうしたら……
 そのとき不意にインターホンが鳴る。時間帯的に考えてショウくんがやって来たのだろう。しかし、私はすぐに動くことが出来ない。
 どどどうしよう、こんな状態で会ったら確実に心配されるよ。ショウくんじゃなかった場合でも今の顔を見られたら何かしら思われるだろうし……だけど多分ショウくんだよね。以前に約束して来てもらってるわけだから居留守を使うわけにもいかないし。でも今のままで会うのも……
 あれこれ考えている間に何度かインターホンが鳴り響く。
 このまま何もしないで居るとショウくんは帰ってしまうだろう。そうでなくてもケータイに連絡が来るに違いない。そうこうしている内に約束を破ることへの罪悪感に耐えかねた私は、気が付けば玄関に向かって動き出していた。玄関に着くと覗き口から相手を確認することもせずに扉を開けた。

「――っと」
「ご、ごめんなさい!」
「いや、別に怪我はしてないから」
「え、えっと……それもだけど待たせちゃったから」

 我に返った私は恥ずかしさや罪悪感のような感情によって視線を外して俯いてしまう。ただショウくんはある程度のことはスル―してくれる人ではあるけど、落ち込んだりしている時の変化には敏感だ。
 だからきっと私が何を考えてるまでは分からなくても、私がいつもどおりじゃないのは分かってしまう気がする。

「すずか、どうかしたのか?」
「ううん……何でもないよ」
「何でもないって……目元が赤くなってるぞ」

 ショウくんが覗き込んできたことで必然的に距離が縮まってしまう。これまでは問題なかったわけだけど、気持ちの整理がついていない今の状態でそれは非常に不味い。羞恥心が一気に込み上げてきた私は慌てて背中を向ける。

「だだ大丈夫! その……これはさっき頭ぶつけて涙が出ただけだから!」
「なら……まあいいけど。血とかは出てないんだよな?」
「う、うん。大丈夫、大丈夫だから心配しないで」

 出来るだけ明るい声で返事はしているけど、誤魔化せているかは怪しい。
 しかし、私のことを信じることにしたのかショウくんはそれ以上何も言わなかった。それはありがたいことではあるけど、その一方で嘘を吐いてしまった罪悪感も覚えてしまい私の内心は複雑だ。
 ただいつまでも玄関で話すわけにもいかないのでショウくんを中に通す。その際、夕食を食べたか確認するとまだだという答えが返ってきた。料理をすれば気分も変わるかもしれないと思った私は、ショウくんをリビングに通してキッチンに立つ。

「すずか、何か手伝えることあるか?」
「ううん、ショウくんはそこで待ってて。お仕事で疲れてるだろうし、そもそもお客さんなんだから」
「だが……来る度にご飯を作ってもらうのも」
「いいの。私が好きでやってることだし、いつも勉強教えてもらってるわけだからお礼もしたいから。それにショウくんの作ったもの食べたら自信なくしそうだし……」

 それなりに料理は出来る方ではあるけど、冷静に分析しなくてもショウくんの方が私よりも料理が出来るのは分かっている。これまでに何度も口にしたことはあるし……
 はやてちゃんやディアーチェちゃんとかが出来るのは分かるし、負けても納得が行くけど……ショウくんに負けるのはあれなんだよね。女のプライドって言うのかな? そういうのが刺激される。

「はぁ……分かったよ。……昔からときどき思ってたが、すずかって優しそうに見えて割とイイ性格してるよな」
「そういうショウくんもイイ性格してると思うけど。根は優しいのに今みたいなこと言っちゃうわけだし」
「前言撤回だ。お前は割とじゃなくて凄まじくイイ性格してる」
「もう、そういうこと言うからみんなからあれこれ言われるんだよ。まあショウくんが荒めの言葉を使ったり、毒を吐いたりするのは気を許してる相手だけだから本気で気にしてはないだろうけど」
「うるさい、黙って料理しろ。指を切ってもしらないぞ」

 ふふ、素っ気ないけど多分照れてるんだろうなぁ。
 基本的に落ち着いてて感情の起伏があまりないように見えるショウくんだけど、付き合いが長くなると意外と随所に感情を出してるのが分かるんだよね。それが分かると可愛いって思える時がある……こういうのをギャップ萌えって言うのかな。
 なんて思った直後、指先に痛みが走る。反射的に口から悲鳴が漏れ、指先を確認してみると薄っすらとだが血が滲み始めていた。そこを口に含ませて私は絆創膏を取りに行く。

「すずか……切ったのか?」
「えっと……ちょっとだけ」
「笑いながら言うことじゃないだろ……絆創膏とかどこにある?」
「え? だ、大丈夫だよ。これくらい自分でやれるし」
「今日のお前は何かやらかしそうだから言ってるんだ。そもそも、お前がいつもどおりなら指切ったりしてないだろ。それに綺麗な手してるんだから傷でも残ったらどうする」

 反論したいところだけど、確かにいつもの私なら今回のようなミスはしてないと思う。というか、さらりと綺麗とか言わないでほしい。好きな人からそんなこと言われたら何も言えなくなっちゃうんだから。
 そう思った私は絆創膏が入っている救急箱の場所を教える。するとショウくんはすぐさま救急箱を持ってきて私の手を手に取った。

「……深くは切ってないみたいだな。少し沁みるだろうが我慢しろよ」

 言い終わるのとほぼ同時に消毒液が掛けられ傷口に痛みが走る。しかし、その痛みよりも私の意識はショウくんの手の方へ行ってしまっていた。
 昔は同じくらいだったのに……大きくてゴツゴツとしてる。でも指は長くて細い……。
 ショウくんは私の手を綺麗だと言ってくれたけど、私としてはショウくんの手も綺麗だと思う。それに大きくてゴツゴツしてるけど、優しく触れてくれるから安心する。子供の頃にお父さんに頭を撫でてもらったりしたとき似たような感覚だったかも。この手に頭を撫でてもらったら同じように思うのかな……
 ふと脳裏に昔の記憶……ショウくんが女の子の頭を撫でている姿が蘇る。それは落ち込んでいたり、泣きそうになっている時にやっていただけで特別な気持ちがあってやっていたものじゃない。だけどそれにすら今の私は嫉妬を覚えてしまう。
 ……私は……嫌い。今の自分が大嫌い。
 目の前に居るのは初恋の人……自分から身を引いたのにまた好きになってしまった人。でも親友が好きな人でもある。それを考えると、こうして手当てしてもらっていることに……優しくしてもらって嬉しいと思ってしまっている自分が嫌で仕方がないよ……。

「……これでよし。まあすずかの言ったようにちょっと切っただけだろうからひどくなることもないだろう」

 私からショウくんの手が離れる。名残惜しいように彼の手を向かってわずかに動いた自分の手を私は見逃さなかった。
 ――私は……ショウくんが好き。だけどみんなのことも同じくらい好き…………私の気持ちは誰にも気づかれてない。だったら私が我慢すれば今までと同じ関係で居られる。そうすれば……
 ――でもそれって、これまでと同じようにショウくんに勉強を見てもらうってことだよね。ふたりだけの時間を過ごして幸せを感じるってことでしょ? このまま誰もショウくんにアタックしなければデバイスマイスターになった一緒に仕事も出来るかもね。それにショウくんに相談すれば仕事を回してくれるかもしれないし、ちゃんとやれてるか定期的に見に来てくれるかもしれないよ。
 心の中で白い私と黒い私が語りかけてくる。
 それはみんなを想う私と幸せになりたい私。どっちも嘘偽りじゃなく存在している私の気持ちだ。だからこそ私は自分がどうしたいのか決めることが出来ない。

「……おい……すずか?」

 ショウくんが心配そうにこちらを覗き込んでいる。その理由は分かってる。私がまた涙が流しているから。

「いったいどうした?」
「ショウくん……分からない…………分からないよ」
「何がだ?」

 私は……自分の気持ちが分からないの。今の私じゃショウくんへの気持ちを抑えることが出来ない……だからといってショウくんのことをずっと思い続けていた友達のことを考えると今の状態でこれまで通り過ごすのはダメだと思う。
 そう言えたならどれだけ楽なんだろう。でもそれは人の想いを勝手に伝えてしまうことにもなる。それはしちゃいけないこと……。
 ……なら自分の気持ちだけ伝えればいいんじゃないかな。それで振られれば気まずくなるだろうし、傷ついて泣くとは思う。だけど時間が過ぎれば気持ちの整理がついて友達に戻れるかもしれない。

「私……私ね…………ショウくんのことずっと友達だと思ってた。機械とか本の話が出来る仲の良い友達だって」
「あぁ……それで?」
「でもね……デバイスマイスターになろうと思ってショウくんに勉強を見てもらってたのに、いつの間にか一緒に居れることが嬉しくてもっと一緒に居たいって思うようになってた…………ショウくんのこと好きになっちゃったの」
「…………」
「最初は……なのはちゃん達とも前より会えるようになるし、魔法が使えない私でも…………みんなのために何かできると思ってデバイスマイスターを目指したのに……」
「もういい……もういいから」

 ショウくんは泣いている私を頭に手を回すとそっと抱きしめる。泣く子供をあやすように優しく頭を撫でてくれて……それが嬉しくて、同時に辛くて…………私はしばらく彼の胸の中で泣き続けた。

「…………すずか」
「うん……」
「俺はお前が何でそこまで苦しんでるのか分からない。……でもこれだけは言える。俺も……お前が好きだ」
「……え?」

 今なんて……私の聞き間違いじゃなかったらショウくんも私のこと好きだって言ったような気がする。

「嘘……でしょ?」
「嘘じゃない。俺もお前のこと最初は友達と思ってた。でも一緒に過ごすことが多くなって、笑ったり怒ったりするお前を……頑張るお前を見てる内にお前のことばかり考えるようになってたんだ」
「でも……だけど…………私なんかで本当にいいの?」
「お前が良いんだ。……もしかするとこれがきっかけで関係が変化する相手も居るかもしれない。だけど俺はお前と一緒に居たいんだ」

 関係が変わる相手……それが誰なのか私に特定することはできない。だけどこれだけは分かる。ショウくんにも私と似たような気持ちがある。それでも私のことを選んでくれた……好きだと言ってくれたんだって。なら私はもう迷わなくていい――

「私も……私もショウくんと一緒に居たい。今後のことを考えると不安なこともあるけど……それでも私はショウくんのことが好き……大好き。ショウくんが一緒に居てくれるのならどんなことだって……」
「すずか……」
「……ショウくん」

 少しずつショウくんの瞳の中に映る私が大きくなり…………唇が重なる。
 泣いていたせいか少ししょっぱい味がしたけど、心は甘くて幸せな気持ちでいっぱいだった。お姉ちゃんが恭也さんに抱いている気持ちはこういう気持ちなのかもしれない。
 ずっと唇を重ねていたかったけど、さすがに息が持たずに離れてしまう。だけどこれからは遠慮なんかしなくていい。何度だって自分の気持ちを出していいんだ……

「ショウくん……もう1回しよ?」


 
 

 
後書き
 今回はすずか編になります。書いている内に最初に予定していたものとは違った感じのものになった気はしますが、恋愛もひとつではないのでこれもありかなとは思ってます。
 さて……現状の予定では今回のでおおよそ半分のIFエンドを書いたことになるわけですが、シュテルやディアーチェに関してはどういう話にするか大方出来上がっていますが、他の子達をどうするか……それぞれ性格が違うのでそれぞれの恋愛があるだけに難しいところです。何かしら意見をもらえたりすると参考になるので助かります。 
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