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巻き添え

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第四章

「そして随分と殺された」
「これまでも何かあるとだから」
「その何かが起こる前にだ」
「逃げるのね」
「そうだ、安全な場所までな」
 ここでは具体的に言うとロンドンにだ、ミシェルはこう言って家族を連れてパリからロンドンに逃れた。彼が声をかけたユダヤ人の知り合い達も多くがだった。
 パリを去った、彼等もユダヤ人でありそうしたことがわかったのだ。
 去る者は去ったパリにおいてだ、ナバラ王アンリと王女マルグリットの婚姻が行われようとしていた。だが。
 新旧の有力な貴族達が婚姻の式に参列する為に集まりだ、パリはまさに一触即発の事態になった。何しろ新教徒の領袖であるコリニー提督と旧教徒強硬派の首領であるギーズ公も共にいたのだ。それでだった。
 コリニー提督が狙撃され事態は緊迫化した、新教徒の貴族達は状況の説明を宮廷に認め興奮状態に陥った。
 王はそれを見て事態の沈静化を考えた、だが。
 太后は彼等の興奮状態とコリニー提督への悪感情からこう言った。
「仕方がありません」
「粛清ですか」
「新教の主な貴族達をですか」
「この際一気にですか」
「消しますか」
「狙撃はおそらく」
 それが誰の手もかもだ、太后は察していた。
「ギーズ公です」
「やはりそうですね」
「あの方しか考えられません」
 太后の側近達も応える。
「以前も新教徒達を虐殺していますし」
「今回もそうしたいと考えていることは間違いないです」
「ギーズ公は民衆からの支持も高いです」
 旧教徒の彼等からだ、ギーズ公はその強硬な姿勢がかえって支持を受け旧教ひいては彼等の擁護者とみなされているのだ。
「一度動けばです」
「暴挙に至ります」
「そうなれば余計に厄介なあこおとになります」
「新教の貴族達は抑えるにしましても」
「ギーズ公にはですね」
「動かすことはさせない」
「そうしますか」
「はい、必ず」
 太后はこう考えていてだ、王に新教の貴族達の粛清の必要性と執拗に唱えた。王はコリニー提督への想いはあったが。
 苦い顔の後自暴自棄になってだ、こう言った。
「わかりました」
「では」
「仕方がありません」
 最後の手段だと言うのだった、王も。
 太后が出した粛清すべき新教の貴族達の名簿を見てだ、こう言ったのだった。
「そこにある者は皆です」
「粛清ですね」
「そうしましょう」
「ではスイス人の傭兵達を使います」
 太后は宮廷が持っている彼等の名前を出した。
「彼等の手で」
「それでは」
 王はここで自暴自棄のまま皆殺してしまえと言った、だが殺そうと考えていたのはあくまで主な者達だけだった。 
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