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ブルーラブ

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第一章

                 ブルーラブ
 姿愛衣は大学で博物館の学芸員の資格を取ってから生まれ過ごした県のある博物館で勤務となった、その博物館は県庁所在地の都市にあったので通勤も楽で生活にも便利でだ。
 彼女は満足していた、それで博物館の中で同期の宮島千夏にもよく笑顔でこう言っていた。
「満足してるわ」
「今の状況によね」
「とてもね」
 こう言うのだった。
「本当にね」
「実家から通っていて」
「しかも実家近いから」
 愛衣は実際に笑顔だった、細めの目の睫毛は長く頬は少しふっくらとしていて唇は小さめで笑みの形だ。眉は薄く和風の顔立ちだ。黒髪は長めで波がけていて後ろで団子にしている。背は一五二程で胸が目立つ。
 千夏はやや切れ長のアーモンド型の目で黒髪を肩の高さにしている。眉は細くピンクの唇はやや横に大きく顎は少しだけ先が平たく頬もエラが僅かだがある。背は一六六位で愛衣よりも十五センチは高い。
 その千夏にだ、愛衣はにこにことして言うのだった。
「余計にね」
「満足してるのね」
「しかもここ県庁所在地だから」
 つまり県の中心である。
「色々ものを買うにもね」
「お店も百貨店もあるしね」
「楽だしお外に行けるにも」
「鉄道もあるし」
「車道も整備されてるから」
「もう満足っていうのね」
「しかもお仕事もあるから」
 言うまでもなく博物館の学芸員のそれだ。
「何もかもがね」
「満ち足りてるっていうのね」
「食堂の御飯は安くて美味しいし」
「そうなのね、ただね」
 ここで千夏は愛衣にこう言ったのだった。
「愛衣はまだ」
「結婚のこと?」
「そろそろでしょ」
「それはね」
 結婚の話になるとだった、愛衣は微妙な顔になった。そのうえで千夏に対して言うのだった。
「どうもね」
「そうでしょ、もう三十も近いから」
「それを言われると」
 弱った顔になった愛衣だった。
「余計にね」
「困る?」
「大いにね」
「そろそろ結婚もしないと」
「アラサー、アラフォーになっていくと」
「愛衣も結婚したいでしょ」
「ええ、それを言われたら」
 博物館の倉庫の中で資料のチェックをしながら話す、チェックといっても特に何も変わったところはなく平穏無事である。
「困るわ」
「私はね」
 千夏は自分のことも言った。
「まあ、早いうちに結婚出来て」
「それでよね」
「子供もいるけれど」
 千夏の場合はそうであるのだ。
「それでもね、結婚はね」
「早いうちにっていうのね」
「愛衣もだから」
「そろそろ結婚して」
「子供も作った方がいいわよ」
 結婚相手である夫との間にというのだ。
「是非ね」
「私もわかってるけれど」
 愛衣は目で資料のチェックをしつつ耳で千夏の話を聞いて口で応えていた、指は目のチェックを手伝っている。 
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