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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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second contact
  ep.028 死神の一手

answerと的場を保護した翌日の夜。
studentのリーダーである野口は、とある人物から呼び出しを受けて待ち合わせ場所に向かっていた。

「......まさか向こうから来るとはね。」

待ち合わせ場所は誰の目にも止まらないような廃ビルの中で、そこには1人の青年が待っていた。

「遅かったじゃねぇーか野口。」

青年が声を掛ける。
誰もいないビルなだけあって青年の声は恐ろしく大きく響き渡る。

「比較的単純な君のことだから何がしたいのかはすぐに分かったよ死神....いや、叶瀬くん。 君の狙いは僕の無効化だろ?」

「は....分かってんじゃん。 お前を無効化、あるいは始末できれば、あとのメンバーは寄せ集めに過ぎない。」

つまり、student、answer、的場の3つの勢力が協力したとしても"野口 勝哉"という人物が存在しない時点で、これらは連携を取れなくなってほぼ無意味になるのだ。

「褒めてもらえて光栄だね。 でも、無効化されると言われて僕が素直に従うとでも?」

「お前の意思は聞いてねぇよ。」

すると何かが1つ、音もなく野口の腕辺りを通過した。
野口は突然の痛みで腕を押さえた。
そこには傷口ができていた。

「今、お前に撃った弾丸は"JAM加工"してあってな。」

「JAM加工?」

「そいつが能力者に付着すれば、一時的にその能力を使えなくすることができる。」

『つまりJAMMING(ジャミング)加工でJAM(ジャム)加工と名付けているのか。』

それにより野口の目的は"敵の撃退"から"戦場からの脱出"に速やかに変更された。
野口は着ているロングコートからハンドガンを2丁取り出し発砲する。
野口が撃った弾丸はフロアの辺りを撃ち壊し、辺りは静寂と暗闇に包まれる。
野口はそのうちにフロアの柱のうちの1本の影に身を潜ませて息を殺した。

『さっきの発砲から敵は叶瀬を含めて"2人"いる。』

あらかじめ野口がどこに立つのかを予想してブービートラップのようなものを仕掛けていたのなら話は別だが....

『そんなことが可能なのは人間の思考や動作すら数字化して予想できる影縫くんぐらいだろうね。』

影縫が相手の場合、計算上で影縫自身が勝つルートが導き出されているならこちらが勝つためには、影縫の計算を狂わせる手が少なくとも2、3個が必須だ。

影縫の計算速度はおよそ10桁の数字30個を掛け算する問題を5秒掛からずに解ける。
それ故、頭の回転はstudentの中でずば抜けて良く、能力を使わずとも計算上で敵を凌駕できる。



「おい.......どこを見てるんだ?」

戦闘慣れしている野口の背筋が凍りついた。
その声は背後から聞こえるが気配はない。

「正真正銘.....死神の声ってことかな?」

ビルの柱を折るほど強烈な一撃に野口は吹き飛ぶ。
野口は激突に等しい着地をするとハンドガンとナイフを取り出し、叶瀬に奇襲をかける。

3発の弾丸を放ち、ナイフを逆手に持って叶瀬に迫る。
すると、先に撃った弾丸3発が横から来た謎の何かに弾き飛ばされた。
しかし、それで相手の位置を瞬時に特定した野口は見えない相手と、すれ違うタイミングすら分からなさそうな状況で見事にナイフの一撃を当てた。

「うっ!!」

死神らしき声は怯んだような雰囲気を出す。
そのうちに叶瀬の目の前に着き、そこから体を器用に使って背後に回り込んだ。
うなじを狙ってナイフを突き立てようとする。

「これでも組織を率いるリーダーだから逃げるだけじゃいけないよね。」

「ハッ......馬鹿だなお前。」

ナイフの刃は叶瀬に触れそうになった瞬間、突如気化し出した。
叶瀬の能力"状態操作(スタイルマインド)"は物体の温度を自由に操り、その状態変化を操れる。

「しまっ!!」

次の瞬間、野口は見えない何かに吹き飛ばされる。
野口は地面に激突するがなんとか立ち上がる。
すると、野口が吹き飛んだ直線上に1人の男が現れた。

「痛かったか? 肋骨の2、3本は逝ったな。」

野口は脇腹を押さえ、口に溜まった血を吐き捨てた。
そして、野口は2人目の能力を見破った。

「光の屈折を操っているんだね。」

「何ッ!!」

どうやら図星だ。
さっきまでは姿が見えないでいたが、野口はある人物の能力と比較した際にその答えを出した。
その能力とは、七草 花夜(ななくさ はなよ)の"無感存在(ノーセンス)"だった。
彼女の能力は人間で言う五感や機械のサーモグラフィ、赤外線のレーダーでも捉えられないのに対し、今回の相手からは途中から殺気を感じ取れた。

「透明にはなれても、気配は簡単に消せないんだね。」

野口は蓄積されたダメージから地に膝を付く。
その途端、足場がドロドロと柔らかくなっていく。

「これは.....。」

「残念だったな。 このビルは前からあちこちに仕掛けをしてたんだよ。」

やがて溶けたコンクリートは野口の足を飲み込み、野口は身動き1つ取れなくなってしまう。
そのうちに、叶瀬とその仲間はビルを出た。

「良いのか?」

「あのまま放っとけば地盤が緩くなってビルが沈むだろうからそれで野口も終わりさ。」

その頃ー
足を固定された野口は相変わらず動けないままだ。
すでに建物全体が大きく揺れ始めている。

「このままビルごと僕を押しつぶすつもりか。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
凄まじい音と同時に抜け落ちる天井が野口を襲う。

「ッ.........!!」

ドシャーーンン!!!
ビルは巨大な空洞のようになった地面に激突し、ビルは大崩壊を起こした。

「.......じゃあな.....野口.....。」

同盟の翌日。
その晩から野口は消息を絶った。 
 

 
後書き
一応の補足ですが、
前々回の"襲撃者"にて仁を襲ったのは
今回、名前で登場した叶瀬です。 
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