| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンラインⅡ〜隻腕の大剣使い〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

ファントム・バレット編
  第78話 it’s show time

キリトside

ALO・イグドラシル・シティ、キリト一家宅

ライリュウが総務省仮想課のバイトでGGOにコンバートして2日目。ライリュウが今日の8時から開催されるGGO最強プレイヤー決定戦、《バレット・オブ・バレッツ》に出場するからみんなで観るために俺の家に集合した。うちの大きな窓はモニターにもなるから、大画面で大会を観戦することが出来る。

「なんか竜がいないだけで大分違うな」

「せやな。あいつがおらん世界なんて考えたことなかったで」

「そう言ってやるなよ。あいつなら優勝してバイト代貰ってホクホク顔で帰ってくるだろ」

ライトやキャンディの言うとおり、ライリュウがいない世界っていうのがあまり実感が沸かない。それだけライリュウはーーー俺の兄貴は影響力が大きかったのかな。
でもミストの言うとおり案外嬉しげに帰ってくるかもな。俺たちの中でライリュウを一番理解してるのは《リトルギガント》だからなーーーそういえば何のためのバイトだったんだ?

「メテオ、あんたって確か仮想課の役人だよな?ライリュウのバイトのこと、何か知らないのか?」

「ああ、菊岡さんからは何も聞いてないよ。まあボクがその気になればちょっと探りを入れるだけで全部わかっちゃうけどね」

「流石はIQ218の超天才・・・」

アスナが引き気味でそう言うのも分かる。メテオこと神鳴龍星さんは総務省仮想空間管理課の役人で、短時間限定でSAOサーバーにハッキングを仕掛けて《ナーヴギア》に声を送ることをやってのけた超天才だ。その気になれば極秘情報の一つや二つ、簡単に手に入れられるだろうな。それにしてもーーー

「竜兄、まだ出ないね」

「ライリュウさんのことですから、まだやられてはいないと思いますが・・・」

「ある程度人数が減るまで隠れてるとか?」

「いや、野郎はそんな汚え作戦に出る奴じゃねぇだろ」

ミラやシリカは普通にライリュウの心配をしてるが、リズはライリュウがらしくない作戦に出たと言い、クラインが釘を指す。確かにまだ生きてるのに画面に映らないのは不思議だけど、あいつはそんなコソコソするような奴じゃない。ライリュウはーーー

「リズさん!おいちゃんは堂々と暴れるタイプの人です!きっとカメラに映る暇もないくらい一瞬で真正面から攻撃しまくりです!!」

「まあ確かにその通りね!あいつは対人戦だと敵の背後を取らない奴だからね!よく分かってるわねぇ~」

「ユイちゃんはライリュウくんのこと大好きだもんねぇ~?」

「はい!パパやママと同じくらい大好きです!!」

「あはは、竜兄ちゃんも幸せ者だねぇ~。ねぇお兄ちゃん・・・お兄ちゃん?顔恐いよ?」

「気のせいだろ?スグ」

ここ数ヶ月、ユイからライリュウの話を聞くと無性に腹が立つ。理由は分かってる。何故ならそれが俺のアバターの髪を下ろした原因でもあるからだ。
ALO事件の時に使ったアバターの髪が逆立っていたため、ユイがツンツン頭では座りにくいことが分かった。それで現実(リアル)と同じ髪型のインプに転生したライリュウの頭に座った時ーーー

『わぁ~・・・!おいちゃんの髪の毛、フサフサしてて気持ちいいです!今度から時々ここに乗ってもいいですか?』

『もちろんいいぞ!なんならずっと入っててもいいぜ!あははははははは・・・ははは・・・へっへっへっへっへ・・・』

あの時のライリュウの黒い笑みが俺の神経を逆撫でする。

「キリト君、その気持ちよく分かるよ」

「メテオ・・・あんたもか?」

「ボクがあんまり星乃ちゃんといられないのも悪いんだけど・・・ボクの前で弟がパパ呼ばわりされてるとねぇ?」

「どうやら奴は俺たち兄弟から相当な怨みを買ってるようだな」

俺とメテオは今この瞬間から同志となったーーー兄弟に娘を取られた父親として。

「あっ、あの人強いねぇ~」

「え?あの青い服の人?」

リズの発言にアスナが反応し、俺たちもそのモニターに目を向ける。そのモニターに映っていたのは、カウボーイのような装備に見を包んだ男性プレイヤー・ダインを攻めている青いスーツのプレイヤーだった。その名はペイルライダー。大きな橋の支柱を軽やかに飛び移り、アクロバティックな動きでダインを翻弄しながら接近する姿はまるでーーー忍者。そして弾切れを起こしたライフルに新しい銃弾を装填しようとしているダインに一気に近付き、銃弾を2発撃ち込む。そして未動きが取れなくなったダインの眉間にショットガンの銃口を突きつけーーーとどめの1発がダインを撃破した。

「すごいですね・・・」

「うん。きっと今回の優勝候補に違いないわ・・・」

「竜の苦手なスピーディなタイプか」

「優勝する気なら、あのペイルライダーが大きな壁になるな」

確かに完全じゃないとはいえ、パワー重視な戦闘スタイルのライリュウにとってペイルライダーはとてつもない強敵になるだろうな。《オーバーロード》を使えば話は別だろうけどなーーーん?

「ペイルライダーが撃たれた?」

「おいおいダメじゃねぇか!」

「まだやられてないわよ!」

突然倒れたペイルライダーにガッカリしたようなクラインにリズが怒鳴り、ペイルライダーの右肩の部分にモニターをズームする。そこにあったのはーーー電気を帯びた針か?

「何でしょう?」

「恐らく一定時間対象を麻痺させる攻撃ですね」

対象を麻痺させる攻撃ーーー確かALOにも《サンダーウェブ》っていう同じ効果を持つ風魔法があったな。それよりあの麻痺針を撃ち込んだのはーーーッ!?

「何だあいつ・・・!?」

「黒いボロマントに骸骨マスクって・・・」

「キショイわぁ~・・・なんやあの悪趣味な男!!」

モニターに映ったペイルライダーを撃ったプレイヤーは体格的に男だ。その姿は腕を包帯で隠して、黒いボロマントで身を包み、顔を赤い眼の骸骨を模したマントで隠していた。キャンディの言う通り、気色の悪い不気味な男だ。肩に担いでる狙撃銃を見る限り、あれで狙撃したんだろうな。それにしてもーーー

「キリトくん、あの人何処かで見たことない?」

「俺もそんな気がした」

アスナもあの男に同じようなものを感じていた。
そのボロマントの男は腰のホルスターからハンドガンを抜き、ストッパーを引いた。そして顔の前で十字を切るようなジェスチャーをしてーーーどこからか飛んできた銃弾をかわす。あんな視界の端にすら入ってなさそうな所から放たれた銃弾をかわしたところを見ると、最初から気付いてたのか?そしてペイルライダーに向き直り、銃口を向けーーー心臓を撃ち抜く。HPバーは少ししか減ってない限り、まだ戦えそうだな。俺の思った通りペイルライダーは立ち上がり、ボロマントの男にショットガンの銃口を向けてーーー何もせずショットガンを落とし、地面に倒れ込む。それにーーー

「苦しんでる?」

スグの見解は正しいと思う。何故ならペイルライダーの動きはとてもダインを倒した時みたいに素速くなくてーーー回線が切断されてアバターが消えたんだから。
そしてボロマントの男はカメラに映り、俺たちには見えない口を開いた。

【俺と、この銃の、真の名は・・・死銃(デス・ガン)

ボロマントの男ーーーもとい死銃(デス・ガン)と名乗った男はカメラにペイルライダーを撃ったハンドガンの銃口を向けた。

【俺は、いつか、貴様らの前に現れる。そして、この銃で、本物の死をもたらす・・・俺には、その力がある。忘れるな。まだ、終わっていない・・・何も、終わって、いない】

貴様らの前に現れる、本物の死をもたらす、まだ終わっていない。その次に言い放たれるセリフに俺はーーー

【it’s show time】

この妖精の世界で遊び場として復活した浮遊城の元々の世界の、デスゲームの中での記憶を呼び起こされた。そう、このセリフはーーー

「ラフコフ・・・!?」

殺人ギルド《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》のリーダー、PоHが殺人(プレイヤー・キル)を犯す直前に言っていたセリフだ。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧