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クリスマスは大歓迎

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第二章

「年末のここぞとばかりの」
「かき入れ時ですね」
「だからだよ」
「ここぞとばかりに売る」
「それだよ」 
 まさにとだ、大家は徳武に言った、そのスーパーの店の裏の倉庫でだ。従業員用の場所なのでオープンに話す。
「ケーキに鶏」
「売らないとですね」
「何になるんだよ」
「それこそそういうのを売らないと」
「何にもならないよ」
「そうですよね」
「徳武君もわかるだろ」
 大家はまた徳武に問うた。
「クリスマスなんていらないって言ったら」
「商売あがったりですね」
「ケーキ屋さんやお肉屋さんもそうでね」
「スーパーもですね」
「土用の日に鰻を売るよね」
 七月のだ、これは平賀源内が流行らせたと言われている。それまでは夏は鰻は熱いので敬遠されていたのだ。
「そうだね」
「鰻美味いですよね」
「その鰻を食べるから」
「土用は鰻を売りますね」
「そしてクリスマスには」
「ケーキ、鶏肉ですね」
「ついでに他のものもね」
 看板に出すものの他にも買ってもらう、そこであえて安売りもする。これがスーパーの経営戦略の一つだ。
「売るから」
「クリスマス万歳ですね」
「彼女いない?僕だってそうだよ」
 このことは自覚している大家だった。
「それでもだよ」
「スーパーにとっては」
「売る時なんだよ」
 だからこそというのだ。
「ここぞとばかりに売らないと」
「じゃあクリスマス万歳ですね、大家さんは」
「勿論、苦しみますというのは」
 この言葉はというと。
「忙しくて苦しみますだよ」
「そういうことですね」
「働いてもらうよ、君にも」
 大家は徳武に確かな顔で問うた。
「必死にね」
「必死にですか」
「そして儲けるから」
「じゃあ」
「今年も商品たっぷり入れて」
 クリスマス商戦に備えてである。
「売るから」
「やらせてもらいます」
「ケーキも鶏肉もね」
「僕達はドライですからケーキですね」
「そう、そっちも担当しているからね」
 この店ではそうなっている、大家はお菓子や調味料に香辛料といったそうしたものを全て担当しているのだ。乳製品やパンもそうだ。
「じゃあいいね」
「ガンガン売りましょう」
「ワインも入れるからね」
 そちらもだ、こうしてだった。
 大家はパートの人達にもハッパをかけ自ら積極的に動いてだ。クリスマス商戦に向かっていた。彼にとってクリスマスは仕事の時だった。
 当然当日もそうだ、クリスマスには早く出勤してだった。
 開店前から売る用意をしていた、そうして出勤してきた徳武に言った。
「今日もやるよ」
「勝負の日ですね」
「年末はいつもそうだけれどね」
 スーパーにとってはだ。 
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