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IS ーインフィニット・ストラトスー 〜英雄束ねし者〜

作者:龍牙
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10話『新たなる力』

 敵の攻撃を逃れる為に幻夢界の中を飛翔する四季。流石に相手に有利な場所……等と言う話では無くほぼ無敵と言う冗談にしか聞こえない地の利が敵にはある。
 四季もそれを“彼ら”から聞いているので完全に理解しているが、一夏達三人……特に連戦の鈴と零落白夜まで使っている一夏は既に長時間戦えないと言うレベルでは無いだろう。……何時ISが解除されても可笑しくない。

『四季、ギルモンも戦う!』

 デジヴァイスの中から聞こえてくるパートナーデジモンの声。敵が敵なのだからパートナーデジモンの力を借りる事も問題ない……と言うよりも共に戦うべき場面と言えるだろうが、

「ダメに決まってるだろう!」

『四季~』

 エルガとの戦いの影響。ギルモンのデータの受けたダメージは未だに回復には至っていない。……今の状況では通常の進化、完全体や究極体はおろか成熟期への進化や成長期での活動さえ暗黒進化以上の負担になってしまう。
 今、デジヴァイスの中での回復が完了する前に、下手に戦わせて仕舞えばデジタマに戻る事さえ出来ない。

 それが分かっているからこそ、四季はそう叫ぶ。

(それにG-アームズに救援要請は届いている。何とか時間さえ稼げばこの状況も打破できるはずだ)

 追いかけてくる岩に目晦ましにとハイパーバズーカを連射する。狙いを着けずにただ連射するだけだが、どうせ効かないのだからと割り切って全弾使い切る。
 救援要請はアリーナに突入する前に念の為に入れておいた……。幻夢界への対抗手段のないG-アームズだが可能な者達への連絡は既に届いているだろう。後はそれまで逃げ切れば良い。

『バカめ、ヤツラが現れる前にお前を始末して、お前が隠し持っている物を奪い取るだけだ!』

 正面に現れる獣騎士ベルガ・ダラスの頭を、速度を殺さずにブレードで切り裂いて飛び去っていく。

(狙いはあれか。確かにあいつ等の手に渡ったら最悪だけど……)

 先ほどの言葉で敵の狙いは理解できた。一夏達は今は二の次……最優先のターゲットは四季と言うよりも、四季の持っている物の事だ。
 現状ではそれさえも決定打にならないのだから使う事はしないが……。

「フィン・ファンネル!」

『無駄な事を』

 フィン・ファンネルを含んだビームライフルを含めての一斉射撃だが、矢張り幻の岩は破壊する事はできない。それならばと、前方にパワーゲートを展開し一気に引き離そうとするが、

『お前を始末するのに最高の幻を見せてやろう』

「なっ!?」

 獣騎士ベルガ・ダラスの声が響きその姿を眼にした瞬間、四季の意識が驚愕に染まる。それによってパワーゲートを潜りそこない、コントロールの乱れたフィン・ファンネルはパワーゲートの維持が出来なくなる。

「まさか……」

 漆黒に染まっている幻だが見間違えるわけも無い。円形の盾と槍を携えたその姿は……

「……デューク……モン?」

 幻なのは分かっている。だが、四季にとってパートナーの進化したその姿が敵になると言うのは、想像以上に動揺を与えてしまう。
 その一瞬の同様を無機質な幻は逃さず、一気に四季との距離を詰めてその手に持つ槍の一撃が突き刺さる。

「ガハッ!」

 衝撃と共に吹飛ばされる四季の体が後ろにある岩に叩き付けられる。幸いにも叩きつけられたのは普通の岩だったが、追撃してきた幻のデュークモンに肩を踏み避けられ喉元へ槍を突きつけられる。

「くっ……くそ……」

 ゆっくりと振り上げられる槍。獣騎士ベルガ・ダラスの言う『最高の幻』と言うのは彼のパートナーの姿をした幻に始末させると言う悪趣味な行動の事だろう。

『死ね、五峰四季。貴様さえ始末すればガンダム共も力は発揮できなくなる!』

 獣騎士ベルガ・ダラスの声に従うように幻のデュークモンが槍を振り下ろす。

(っ!? 死ぬ? こんな所で? ……ふざけるな……オレは……オレは……)

 ブースターを全開にして無理矢理敵の拘束を逃れる。

「詩乃を守るんだ! こんな所で……死んで溜まるかぁっ!!!」

 ブレードを構えて幻のデュークモンへの応戦へと移ろうとした瞬間、


『ふん、我等誇り高きロイヤルナイツの姿をこんな形で汚してくれるとはな』


 何かの腕が幻のデュークモンの胸を貫いていた。……幻であるが故にそれさえもダメージにはなっていないが、その腕の持ち主はその体を投げ捨てる。

「……デジモン?」

 目の前に立つのは全身を包む龍を思わせる白い鎧、背中にはマントでは無く龍の翼を持ち、頭部には二本の角を持った騎士を思わせる人型の影。

「なるほど、新たに生まれた我が同胞を迎えに来る心算が、中々選ばれなかったはずの物と言うのもいい眼をしているな」

『貴様、何者だ! 何故、幻夢界に!?』

「ふん、今は我が同胞のパートナーと話していると言うのに無粋な輩だ。まあいい……我が名はロイヤルナイツの一人、『デュナスモン』!」

 紅蓮の聖騎士たるデュークモンと同じくロイヤルナイツの一角に名を連ねる13の聖騎士の一人……飛竜騎士『デュナスモン』。

『ふざけるな、この世界には何者も出る事も入る事も……っ!? まさか……』

「そのまさかだ。奴等と出会ったのは偶然だったが、異世界とやらにも見事な戦士達がいたものだな」

 デュナスモンの言葉に答える様に一時の流星が舞い降りる。

 それはスダ・ドアカワールドに於いて如何なるい空間さえも流星の様に飛び交う三人の騎士。ブリティス王国の円卓の騎士の中でも彼ら三人はこう呼ばれている。

「麗紅騎士レッドウォーリア」

「嵐騎士ガンダムマークⅡ」

「剛騎士ヘビィガンダム」

 流星より現れるのは三人のガンダム族の騎士達……。彼等の異名こそ幻夢界を打ち破りゼ・ダン要塞の最後の番人たる獣騎士ベルガ・ダラスを討った姿より与えられた……『流星の騎士団』と。

『ぐっ……こうなれば、奴らだけでも!!!』

 かつて己を倒した宿敵の姿に動揺を見せた獣騎士ベルガ・ダラスだが、せめて一矢報いようと言う様子でそういい残し姿を消す。

「待て! ……マズい、あいつは先に一兄達を殺す気だ」

「彼等の事なら私達に任せてもらおう」

 姿の消えた獣騎士ベルガ・ダラスを追おうとした四季を麗紅騎士レッドウォーリアが呼び止め、それを投げ渡す。

「これは……銀の円盤」

「僧正ガンタンクRから君の分も預かってきた」

「これは君の戦いだろ、君の手でベルガ・ダラスを倒すんだ」

「は、はい」

 流星の騎士団の言葉にそう答える。一夏達三人を助けに向かったのだろう、再び流星となって飛び去っていく。

「行こう、ブレイヴ」

「待て」

 銀の円盤を持って獣騎士ベルガ・ダラスの追撃に向かおうとした四季をデュナスモンが呼び止める。

「本来なら、デュークモンを迎えるために来ただけだったが、ヤツラやお前を見て気が変わった。お前に力を貸してやろう」

「ありがとう」

 デュナスモンの言葉に礼を言うとふと、ブレイヴの追加装備に付け加えられている機能を思い出す。

「協力序でに1つ頼みたい事があるけど……頼めるか?」

「何かは知らんが……既に力を貸すといったはずだ」

「それなら……来い、『アメイジング・レヴD』」

 追加武装の一対の多目的兵装のアメイジング・レヴの1つを呼び出す。支援メカ形態のために鳥の様な姿をしたそれは、

「なるほど、そんな力が有るのか?」

「ああ。幻夢界からの脱出は兎も角……デジモンの事はIS学園側に知られたくないからな」

 知られたくないのは学園と言うよりもその上で、理由は主にデジタルワールドの為に、である。

「面白い、お前の戦いとやら、真直で見せてもらおうか」

「それじゃあ、行こうか」

「応!」

 デュナスモンと共に新たな流星になると、四季は幻夢界を飛ぶ。








 管制室……

「アリーナで何が起こっているんだ?」

「わ、分かりません!」

 生徒四人を飲み込んだ黒い球体状の空間がアリーナの中心に座している。周囲は千冬を指揮官として、学園に配備されている量産型のISの『打鉄』や『ラフェール・リヴァイブ』を装着した教員の部隊で囲んでいるが、中の様子が分からない以上余計な手出しが出来ないのが現状だ。

 シャッフルガンダムの撃破後に四季、一夏、鈴の三人がシャッフルガンダムとの戦闘で開けた穴から教員の部隊が突入するも、正体不明の空間に対する対応等マニュアルに存在する訳も無く、攻撃しようにも内部に男性操縦者二人と代表候補生二人の……下手に怪我をさせては責任問題になりそうな者ばかり取り込まれている状況で自分から率先して攻撃してみようと思うものは居らず、何が有っても対応できるようにと周囲を警戒しながら取り囲んでいるだけに留まってしまっている。

 学園長は正体不明の事態に対しての対応の為の緊急の職員会議を開く事を決めた。

 気絶していて飲み込まれずに済んだ秋八を回収する側、観客席の生徒の避難を終え、生徒達の救出についての話し合いが始まる時間が迫る中、空間の中から紫の異形の影と一筋の流星が飛び出してくる。








 アリーナ……

「ぐ……ぐぁぁぁぁぁぁぁあ!」

「「はぁぁぁぁぁ!」」

 二つの声が重なって響く回し蹴りが紫の異形の影……獣騎士ベルガ・ダラスを吹飛ばす。光が消え……そこからは白いボディの全身装甲(フルスキン)のISが現れる。

「「Hi-νガンダム・ヴレイブ……アメイジング、(デュナス)!」」

 バックパックからはワイバーンを思わせる機械的なドラゴンの翼を持ち、その中心にブースターとしてアメイジング・レヴを装備し、両手には籠手状の新たな武装を装備した白いHi-νガンダム・ヴレイブの姿がそこには有った。

「付き合ってもらうぞ……天空までな!」

「な、なにを……」

 獣騎士ベルガ・ダラスの首を掴みそのまま天空へと飛翔する。アリーナのシールドは既に解除してあるらしく簡単に空高く飛翔することが出来た。
 従来のISのどれよりも早い速度で飛翔する中、四季は片手を獣騎士ベルガ・ダラスの体に触れ、

「ドラゴンズ・ロア!」

 籠手から放たれる一撃がその体を吹飛ばす。

「これだけ離れれば学園の被害も気にする必要は無い。これで終わりだ!」

「「『ブレス・オブ・ワイバーン』!!!」」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 巨大な光のワイバーンとなったHi-νガンダム・ヴレイブに貫かれる獣騎士ベルガ・ダラス。そして、彼が見下ろす中で獣騎士ベルガ・ダラスは爆散するのだった。

 獣騎士ベルガ・ダラスを撃破した直後、上空で突然の脱力感を覚える。

(くっ……なんだ、この疲労感は? 本来ならデュークモンの力を扱う為の『特種形態以降(フォーム・シフト)』を他のデジモンで使ったのが拙かったのか……?)

 特種形態移行……フォーム・シフトと呼ばれているHi-νガンダム・ヴレイブに搭載されている能力であり、獣騎士ベルガ・ダラスの様な存在と戦うために搭載されたシステムであり、デジモンの力を余り表に出さずに戦う為の姿でも有る。
 元々パートナーであるギルモンの究極体に位置するデュークモンの能力をアメイジング・レヴとの合体を介して使用するための機能なのだが、今回はそれが急遽デュナスモンとなった訳だ。

 意識が遠のいていく中、辛うじて機体を制御して地面に降りると通常のHi-νガンダム・ヴレイブへと戻るとそのまま意識を失いながらヴレイブが解除される。









「……っ」

 ゆっくりと意識が覚醒すると四季はゆっくりと眼を開く。全身の脱力感はブレス・オブ・ワイバーンを使った直後よりも楽だが、まだ全身に上手く力が入らない。今日のトレーニングは無理だろう。

 紅く染まった清潔な天井。病院か医務室かは分からないが、倒れた直後に此処に運ばれたのだろう。前者なら兎も角後者なら早く此処を出た方がいい。
 秋八ほどでは無いが千冬の存在も四季にとってストレス以外の何物でもないのだから。

 流石にこの状況で真っ先にそんな相手の顔など見たくも無く、声など聞きたくも無い。寧ろ、真っ先に大切な人の声が聞きたい、彼女の顔が見たい。

「四季っ!」

 何処かぼやけた意識の中でそんな事を考えている四季の耳に一番聞きたかった声が響く。

「詩乃……?」

 完全に開かれた視界の中に飛び込んできたのは泣きそうな表情の詩乃の顔だった。一番見たかった人の顔が見れた事は喜ばしいが、流石に状況が状況だけに無理だろうが出来れば笑顔が見たかったと思う。だが、先ずは聞かなければならない事が有る。

「ここは……?」

 流石に彼女がIS学園にいると言う事態、四季にとっては最悪の事態の1つに繋がる危険があるのだ。

「DEMの医務室よ。IS学園であいつらの仲間と戦って意識を失ったって聞いて……」

「……」

 どうやら、あの後DEMの方に運ばれたのだろう。それならば彼女が此処に居る理由も納得できる。

「ピヨ!」

「トリ!」

 そんなとき、突然オトモダチロボット二機が現れると空中にディスプレイが現れる。

「キャプテン司令官」

『病み上がりでこんな連絡をしてすまない。だが、なるべく早く伝えておくべきだと思ったんだ』

「?」

 空中ディスプレイに映し出されたのはG-アームズの司令官『キャプテンガンダム』の姿。彼の言葉に疑問を覚えつつ、彼の言葉に耳を傾ける。

『IS委員会からの要請でDEMから彼らに提出していた『Hi-νガンダム・インフラックス』が強奪された』

「っ!? インフラックスが!?」

 それは、四季のHi-νガンダム・ヴレイブの後継機に当たる『Hi-νガンダム・インフラックス』。
 完全に四季が操る事を前提として作り上げられた四季の真の意味での専用機であるHi-νガンダム・ヴレイブと違い、ヴレイブの性能を落とす事無く他の人間が扱う為に開発された機体である。何気に機体としての総合力はヴレイブよりもインフラックスの方が高かったりする。
 IS委員会からの要請でDEMから向こうに一時的に提出していた機体だったのだが……。

「あれが……奪われた?」

 幸いにも四季による運用を前提として居ない為、特殊なシステムこそ取り除いているが、インフラックスはヴレイブとは違い他のパイロットでも十全にその性能を引き出せる機体である。敵に廻った場合は間違いなく強敵と言えるだろう。

「他に被害は……っ!?」

「無理しちゃダメよ!」

 疲労の残る体を無理矢理動かそうとする四季を涙目で押し留める詩乃。

『それ以外は被害は無かった。寧ろ、新型の建設重機として作られている機兵の生産が順調で、各国で購入が進んでいると言う……どちらかと言うと吉報と言える事位だな』

 機兵……スダ・ドアカワールドにあるパイロットが登場する人型のロボットを指す言葉だ。現在はDEMから『雑機兵ムアルジ』が建設作業用の重機としてDEMから販売されている。
 それも、幸運にも“ある機兵”を入手できた事で研究が大きく進んだから、と言うべきだろう。
 流石に他には技術が特別すぎて手を出せない為、機兵と言う一種の巨大ロボットは、通常の物でも嬉々として束まで入り込んで調べている程の未知の技術の塊なのだ。

『量産型νガンダムの方はまだ各国でのトライアルの最中らしいが』

 最後にキャプテンはそう付け加える。幾ら最新鋭の機体と言っても行き成り全てを取り替えると言うのも無理な話なのだから、仕方ないと言えば仕方ない。

『インフラックスを強奪した組織が何者なのか調べるのは私達の仕事だ。何時敵として現れるかは分からないが、君の役目は休む事だ』

 最後に、『緊急とは言えこんな時に連絡した私が言うのもなんだが』と付け加えてキャプテンガンダムからの通信が消える。




















 生徒が寝静まっている中、千冬と真耶は学園の地下に極秘で設置された部屋に来ていた。……最も、IS学園に忍び込んで、こっそりとその部屋を覗いている忍び装束のガンダム……『隠密ガンダム』には知られているのだが。

 この部屋に二人が来たのはクラス対抗戦の後に運び込まれた……四季の破壊したシャッフルガンダムの残骸を解析するためである。

「…………」

「織斑先生、あのISの解析結果が出ましたよ」

「ああ、どうだった?」

「アリーナに突入した二機のISはあの黒い空間の中に吸い込まれて空間の収束と一緒に、消失してしまったので、解析は出来ませんが……」

 そう言うと作業台に置かれているシャッフルガンダムの残骸へと視線を向ける。

「これって、本当に同型機なんでしょうか?」

「四季の攻撃による切り口が無ければ元の形に修復するのは無理だな」

 全てのシャッフルガンダムのパーツは頭部以外全てバラバラであり、1つとして同じパーツは無い。
 辛うじて切断された痕でどの機体にどのパーツが付いているかは分かるが、これを同型機と考える方が無理が有るだろう。頭部以外の共通点等存在して居ないのだから。

「これは、無人機で有る事は間違い有りません。しかも、全て登録されていないコアでした」

 未登録のコア……そのキーワードを聞いて千冬の中に1つだけ思い浮かぶ可能性があった。

遠隔操作(リモート・コントロール)独立稼動(スタンド・アーロン)、どちらかは判りませんが、何れも現時点では実現されていない技術です。それに、アリーナに現れた機体が作り出した空間については正体不明としか言う他に有りません」

 真耶にそこまで言われて更に千冬の中で一人の人物への疑いが強くなっていく。

「五峰くんの攻撃で全機機能中枢が焼ききれていました。修復も恐らく無理かと。……ですが、あの最後の空間の事を考えるとこれで良かったのかもしれません」

 言外に『迂闊に修復させてIS学園内であの空間を発生させられたら』と言っているのが判る。千冬もまた彼女の言葉にその状況に陥った場合の被害の大きさを理解してしまった。
 特に生徒全員が寝静まったこの時間帯では万が一全機が空間を発生させたとして、避難も遅れてしまう。どれだけの被害がでるか分かった物ではない。
 ……まあ、正しく言えば幻夢界は獣騎士ベルガ・ダラスが発生させたものなので、シャッフルガンダムとは一切関係は無いが、それを知らない千冬達にそんな事を想像しろと言うのは無理があるだろう。

「でも、良かったですね、もし皆さんがあのまま脱出出来なかったら、織斑君達もどうなっていたか……。あの光には感謝ですね」

「DEMだ」

「え?」

 千冬のはっきりとした呟きに真耶が聞き返す。

「恐らく、一夏達を助けたのはDEMの関係者だろう。最初に何かを抱えて飛び出して来た四季も同じ光を纏っていた」

「あれは何だったんでしょうか……?」

「恐らくだが、アリーナに飛び込んだ無人機が二次移行(セカンド・シフト)した物だろう。あの空間は、機密保持の為の自爆の為の特殊な防御フィールド。自分だけでなく戦闘した相手も取り込む事で相手を確実に巻き込むことが出来る」

 推測を幾つか挙げていくと納得出来ない点も有るが、現状ではそれが一番現実的である。

「何故直ぐに自爆しなかったか……一夏達の証言にあった幻覚が襲い掛かってきてと言う点が幾つか不可解だが、恐らく間違いないだろう」

「そうですか……」

 結構間違っていると、こっそりと覗いている隠密ガンダムが内心で千冬の推測を否定している。

「自爆しなかったのは直前に二次移行(セカンド・シフト)したから、幻は何らかのISの能力……そう考えれば辻褄も合う。だが……」

「何か……心当たりが有るんですか?」

「いや、ない。今はまだ……な」

 千冬は真耶の問いにそう答える。だが、彼女の脳裏には一人の人物の顔が浮かんでいた。彼女ならば未登録のコアも、無人機の技術も、常識外の機能も説明が付く。だが、

(最初のISは兎も角、このISのデザインはDEMの物に近い……)

 シャッフルガンダム達の共通項である黒い頭部に視線を向けながら、良く似ているDEMのISを思い浮かべる。特に頭部のデザインのブレードアンテナにデュアルアイ……大きな特徴は良く似ている。全身装甲は無人機である為だろうが……それにしても似すぎている。
 DEM制か、DEMのデザインが無人機を基にしているか、DEMのデザインを無人機が真似ているかは判らないが、無人機とDEMの両者は何かしらの関係が有るはずだ。と、そう考える。

「どちらにしろ、一度四季に話を聞く必要が有りそうだな」

「はい、織斑君達とは一緒じゃなかったと聞いていますし……」

 獣騎士ベルガ・ダラスが一夏達に四季を始末する邪魔をされない為に四季を別の場所に隔離したと言うのも有るが、その点については完全に獣騎士ベルガ・ダラスのミスだろう。流星の騎士団とデュナスモンと言う不確定要素は兎も角、四季はそれらの事を学園側に隠したがっていると言う事を知らなかった点で、だ。

「それだけではない、四季のISを一度此方で解析する必要がある」

「っ!? ですが、それはDEMとの契約で……」

 予め四季の専用機の扱いについてもDEMとの契約に記述がある。

「また今回みたいな事態が起こった場合、また生徒が危険に晒される可能性がある。生徒の安全の為にも、あの防御フィールドを突破できるシステムだけでも此方も得る必要が有る」

「それはそうですけど……」

「流石に無理矢理取り上げるわけじゃない。その点について一度向こうと交渉して貰えるように私から学園長に提案しておこう」

 飽く迄学園側へと提案するだけでは有るが、今回のような事態に対する対策は採るべきだと真耶もまた考えていた。……対抗手段を持っているとしても、教師として本来守るべき生徒の一人である四季に全てを任せる訳には行かないのだ。

(少しでも向こうの事が分かればいいが……)

 思えば何処よりも早く量産型第三世代機を発表して販売を開始した事や、四季の持つ戦闘技術……とても、つい最近までISの関係で無銘だった企業とは思えない。
 四季の専用機にしてもそうだ。今回の一件で見せたウイングゼロ炎とHi-νガンダム・ヴレイブの能力(アビリティ)。瞬間的な能力の向上や一時的な二次移行(セカンド・シフト)等聞いた事も無い。

(……いや、未知の物を作り出す天災と言う奴もいるか)

「どうされますか、この無人機の部品は?」

「そうだな、委員会からの指示があるまでとりあえず此処に保管しておこう」

「分かりました」

「私は……僅かな映像しか残っていないが、紫の姿に二次移行した無人機の映像と共に、今回の事を纏めた資料を持ってくる」

「委員会に提出する資料ですか?」

「ああ。流石に今回の襲撃者について委員会に報告しないわけには行かないだろう」

 そう言って部屋を出て行く千冬と真耶の二人……。千冬は自室に資料を纏めに、真耶はこの後の作業が時間が掛かるだろうと思ってコーヒーでも淹れに行ったのだろう。
 僅かながら部屋が無人となる瞬間を逃さず、屋根裏から様子を伺っていた隠密ガンダムが部屋の中に入り込み、シャッフルガンダムの残骸を幾つか……気付かれない程度に持ち出していく。
 ボディに使われている金属の一部でも敵について知る為の重要なデータに繋がる可能性もある。頭部にあるISコアは危険性も考えて持ち出さない様に言われているので、小さな破片だけに留めておく。

 幾つかの残骸を回収すると再び隠密ガンダムは屋根裏へと飛び移ると真耶が部屋の中に戻ってくる。コンソールに手を置きデータを纏める。

 
 

 
後書き
ってな訳でギルモンが動けない状態でのパートナーデジモンの代理はデュナスモンです。イメージは漫画版クロスウォーズの綺麗なデュナスモンです。
結構好きなデジモンなんですよね、デュナスモン。 
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