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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  閑話4「人間の限界と人外」

 
前書き
ちょっとしたリリなのinnocent...というかとらハ要素。
日常回と言えば日常回...なのかな?(白目)

IS要素が少なすぎるので読み飛ばし可。
...というか、本編にほとんど関わらない話かも。
 

 






       =out side=







「こんにちは~。」

「やぁ、よく来たね。」

 ワールド・レボリューションのロビーにて、そんな挨拶が交わされる。

「有名なワールド・レボリューションに呼ばれるなんて光栄やわぁ。」

「有名になったのは最近だけどね。」

 女性の言葉に、男性...グランツ・フローリアンはそう答える。

「それにしても、まさか僕らの開発に興味を持ってくれるとはね。」

「ISも凄いけど、こういうのもあった方がええなって思ってなぁ。」

「ははは。確かに、ISには劣るかもしれないが、これもれっきとした大発明になると思っているよ。...成功すればだけどね。」

 京都弁のような訛りでグランツにそういう。

「それにしても、よぅ私を選びましたね?」

「謙遜しなくてもいいさ。僅か小学生の年齢にして飛び級で大学卒業。あの篠ノ之博士に次ぐ天才と言われる程の君なんだ。...それに、この開発は同志と共に成し遂げたいと思っていてね。」

「...まぁ、気持ちはよぉわかります。ISが生まれる前から、夢見る人は多かったですもんね。...ISが出てから少なってしもうたけど。...後、私が篠ノ之博士に次ぐ天才は買いかぶりやと思います。」

 そんな会話をしながら、目的の場所へと移動する。

「そんな事はないと思うけどね。」

「そんな事あるんです。いくらなんでも世紀の大天才に次ぐだなんて言いすぎです。」

「...まぁ、はやて君がそう思うならそういう事にしておこう。」

 グランツは苦笑いしながら彼女...八神はやてにそういう。
 ...しかし、実際の所その束本人が似たような事を言っていたのを、はやては知らない。

「...あ、ふと思い出したんですけど、ワールド・レボリューションから二人の男性操縦者が出ましたよね?実際、どんな人達なんですか?」

「ふむ...あまり詳しくは言えないけどね...。」

 はやての質問に、グランツは少し考えてから答える。

「まず、秋十君だが...彼は底知れない程の努力家だよ。それでいて、生半可では諦めない性格をしているね。そして桜君なんだが...彼はよくわからない...が一番適格な表現だよ。」

「...えらい適当ですね...。いや、むしろそれこそが最適なんですか...。」

「容姿だけでなく、性格も篠ノ之博士に似ているかもしれないと言っておこう。」

「あー....。」

 その言葉で、なんとなく察してしまうはやて。

「しかし、なぜいきなりそんな事を聞いてきたんだい?」

「いえ、私の家族の一人もIS学園に通うてまして。そこから気になったんですよ。」

「ほう、そうなのかい?」

 少し興味が湧き、グランツは聞き返す。

「はい。剣術が好きな子なんですけど、ISならもっと違う剣の戦いができるとかで入学したんです。あ、ちなみに三組です。」

「おや、残念だな...。桜君と秋十君は一組、他に二人うちから入学しているが、彼女達は四組で私の娘も四組の担任でね。ちょうどクラスが違うようだ。」

「ありゃ...それは残念ですわぁ。」

 偶然全員とクラスが違う事に少し残念がるはやて。

「...って、娘さん?」

「うん?ああ、言ってなかったね。今年からの新任さ。」

「はぁー、そうだんたんですか。」

 随分と一企業からIS学園に行っている人が多いとはやてはつい思った。

「...あ、剣術という事は...もしかしたら秋十君と知り合っているかもね。」

「あー、そうかもしれませんねぇ。...でも、確か今日は知り合った剣術使いの子の家に遊びに行くとか...。」

「そうなのかい?...っと、着いたようだね。」

 地下の、ある部屋の前に着き、グランツはそういう。
 そして、その扉を開けると...。

「ククク...ハーハッハッ!いいぞ!今日の私は冴えている!」

「.......。」

「.......。」

 白衣を着た(変態)...ジェイルが悪役の如き高笑いをあげていた。

「...ドクター、八神様がお見えになりました。」

「む...おっとすまない。つい興奮してしまってね。」

「なんややけに悪役染みた笑いが似合ってますなぁ...。」

 ジェイルの娘であるウーノが声をかけ、そこでようやくグランツとはやてに気が付く。

「...一応聞くが、どうしてそんな嬉しそうなんだい?」

「いやなに、今日はいつもより冴えていてね。少し手詰まりしていた事が解決したからね。つい嬉しくなったのだよ。」

「なるほど...君らしい...。」

 悩んでいた事が解決してスッキリしたのもあるのだろう。
 だが、それにしては笑いすぎである。

「...それで、そちらが八神はやて君だね?」

「はい。えっと...ジェイル・スカリエッティさんでおうてますよね?」

「その通りだ。」

 挨拶を交わし、二人は握手をする。

「...さて、三人も揃った訳だし、早速取りかかろうか。」

「ふむ、親交を深めたい所だが...それは合間合間でもできるか。」

「ほな、早速始めましょう。」



「「「フルダイブ型VRゲームの実現を。」」」

   ―――ここに、三人の隠れた天才が集まった。














       =桜side=






「はぁっ!」

「ふっ!」

     カァアアン!!

 木刀と木刀がぶつかり合う音が響き、木刀を振るった二人は互いに間合いを取る。

「....強いな。高町。」

「そっちこそ。...純粋な“経験”で積み上げた剣術...生半可な剣術だと正面から叩き潰されちゃうよ。」

 試合をしているのは八神と高町。
 結局、トーナメント後に知り合い、今日はこうして高町家の道場にお邪魔している。
 なお、俺達も興味があったのでついてきている。高町の家は広いし大人数でも大丈夫だ。

「じゃあ...これはどう対処する!?」

「っ!!」

   ―――御神流奥義之歩法“神速”

 刹那、高町の姿が掻き消える程の早さで動く。
 天井、壁を跳ねるように移動し、八神の死角へと潜り込み...。

「そこまで!」

「っ、くっ....。」

 試合を見ていた高町の兄に止められる。
 試合に負けた事を悟った八神は相当悔しそうにしていた。

「....まさか神速を使わせるとはな...。」

「これで我流だもんね...本当、凄いよ。」

 試合には負けた八神だが、高町兄妹をおおいに驚かせる程だった。

「....いや、それよりも...。」

 八神に対する驚きを一度他所に置き、高町兄は俺を見てくる。

「.......。」

「えっ、お兄ちゃん!?」

 木刀を一つ、軽く俺へと投げてくる。
 いきなりの行動に、高町も驚いている。
 そして、その木刀を俺がキャッチしようとした瞬間...。

「っ.....!!」

「......。」

 高町兄が、目の前で木刀を寸止めしていた。
 もちろん、俺はしっかりとキャッチした木刀で防ぐ体勢になっている。

「....やはりな。」

「.......。」

 そう言って、高町兄は納得したように木刀を下ろす。
 ...さすがにばれるか。

「お兄ちゃん!一体何を...。」

「すまないが、名前を尋ねても?」

「...篠咲桜だ。」

 高町の言葉を無視し、高町兄は俺に名前を尋ねてくる。もちろん、俺はそれに答える。

「...一試合申し込みたい。」

「...いいだろう。」

 彼としては、俺の強さを感じ取り、そのうえで試合をしてみたいのだろう。
 別に、断る必要もないので受ける事にする。

「もしかして....。」

「俺としても実力が気になるな。行ってくる。」

 秋十君もいきなりどうしてこうなったか察する。
 俺自身、高町兄の実力が知りたいので、すぐに準備を済ます。

「...試合の前に一つ聞いておきたいが....先ほどの試合の最後、なのはの姿は見えていたか?」

「...見えていたが、それがどうかしたのか?」

「っ...!...いや、なんでもない。」

 確かに、俺でさえ“早い”と思わざるを得ない動きだったが、見えない訳ではなかった。
 だが、それが高町兄妹にはありえないと思える程だったようだ。

「....全力で挑ませてもらおう。」

「お兄ちゃん!?」

 高町兄はそう言って高町の使っていた木刀を手に取り、二刀流になる。
 小太刀二刀流...それが高町達が使う剣術の本領か。

「(懐に入られれば、手数の差で俺でも無理だな...。)」

 対して、俺は脇差程の木刀一本のみ。
 手数の時点で差があるため、懐に入られればそれだけで勝てなくなる。

「なのは、審判を頼む。」

「うー...桜さんがどれぐらい強いか私も気になるし....わかったよ。」

 元々八神と試合をするためだったが、成り行きで俺も試合をすることになった事に高町はどこか複雑そうだ。...それでも審判は請け負ってくれたが。

「じゃあ...始め!」

「っ.....!」

 高町の合図と共に、普段は抑えていた闘気を晒す。
 闘気って言っても、周りから見れば雰囲気が変わったとかその程度だけどな。
 だけど、それだけで高町兄は俺の実力を大まかに理解したようだ。

「っ、ぜぁっ!」

「っ!」

     カァアアン!!

 俺の動きに注意しつつ、高町兄は一瞬で間合いを詰め、木刀を振るってくる。
 それを上に受け流すように弾くと、もう一刀で一閃してくる。

「くっ...!」

「.....!」

 だけど、それは俺からも接近し、手の動きの方を防ぐ事で阻止する。
 そこまでで約3秒以下。...早いな。

「早い....!」

「め、目で追いきれませんでした...。」

 秋十君とユーリちゃんの驚きの声が聞こえる。
 しかし、それを気にする暇もなく、高町兄は再度攻撃を仕掛けてくる。

「はぁっ!!」

「っ!」

 先ほどは様子見だったのか、さらに鋭く、早い攻撃が迫る。
 さすがにきついので、咄嗟に心に水を宿し、受け流して躱す。

「「........。」」

 受け流した際に、俺は滑るように高町兄との間合いを取った。
 それにより、初期位置から移動したものの、仕切り直しになる。

「...凄い...お兄ちゃん、全力でやってる...。」

「桜さんもいつも以上に真剣だ...そこまでの相手なのか...あの人。」

 高町と秋十君の声を皮切りに、再度ぶつかり合う。
 動きに風を宿し、心に水を宿したその動きで、高町兄の手数の差を潰す!

「っ...!」

「は、ぁっ!!」

 高速且つ流れるような動きで近づき、木刀を一閃。
 動きは見えたらしく、木刀を二刀とも防御に回し、自らも飛ぶ事で防がれる。
 そのまま高町兄は空中で体勢を立て直し、着地と同時に再び攻めてくる。

「ぜぁっ!」

   ―――御神流奥義之壱“虎切”

「っ―――!?」

     カァアアン!!

 腕に痺れが走ると同時に、冷や汗を掻く。
 早い...!鞘走りから放たれた神速の一撃は、風と水を宿した状態でも早かった。

「(身に...土を宿す!)」

「は、ぁあっ!!」

   ―――御神流奥義之肆“雷徹”

 急いでさらに土を宿し、二刀の攻撃を後ろへ飛びながら防ぐ。
 瞬間、思わず木刀が弾かれそうになるほどの衝撃が伝わる。

「(衝撃を徹してきた...!しかも、ここまで高度な...!)」

 もし身に土を宿していなければ今ので負けていた。
 身体能力では勝っているだろう。....だが、技では負けている。
 その事に驚愕すると同時に、気分も高揚してきた。

「(...なるほど。なら、全力でいかなきゃなぁっ!!)」

「っ、桜さんが本気を!?」

 秋十君にさえ実力を見せるために一度しか使っていない、“四属性を宿す”という事をやってみせる。

「...“動きに風を宿し、身に土を宿し、心に水を宿し、技に火を宿す”。全力で模擬戦をやるのは、幼馴染相手以来だ...。...行くぞ、高町恭也!!」

「っ、来い...!」

 高町兄...恭也の名前を叫び、一気に間合いを詰める。
 風のように早く、水のように滑らか...だが、その一振りは大地のように重く、火のように苛烈!

「ぜぁっ!!」

「っ!?がぁっ....!?」

 二刀で防ごうとする高町兄だが、すぐさま防げないと判断。
 俺の攻撃を利用して、一回転する事によってダメージを極限まで減らされた。

「っ!」

     ダンッ!

「っ、これは...!」

 高町兄は、そのまま体勢を立て直すと同時に上に飛び上がり、天井を蹴る。
 ...なるほど。正面からぶつかり合わずに、速さで翻弄するか...。

「ふっ!」

「っ、はっ!」

 振るわれた二刀を素早く受け流し、反撃を放つ。
 ...が、高町兄も相当早く動いており、躱される。

「(生身で“水”の動きに反応するか!...ますます面白い!)」

 “風”と“水”を合わせたその攻撃は、それを使わない俺でも梃子摺る。
 だが、それを高町兄はやってのけた。

「は、ぁっ!!」

「っ!!」

   ―――御神流裏奥技之参“射抜”

 ....見切れなかった。
 ただ、直感に従い木刀を構えた事により軌道が逸れ、偶然にも防げた。

「み、見えない...!?」

「お兄ちゃんがあんなに神速を連発するなんて...!?」

 外野が何か言っているけど、俺はそれに耳を傾ける暇はなかった。
 次の攻撃がすぐさま来る...!集中しろ...精神を研ぎ澄ませ!

「ぉ、ぁああっ!!」

「っ―――!!」

   ―――御神流奥技之六“薙旋”
   ―――“気炎万丈”

 神速の四連撃と、俺の四連撃がぶつかり合う。
 ...今度は見えた。集中力と精神を極限まで研ぎ澄ませてようやくだが...な。

     カァアアン!!

「「っっ....!」」

 最後の一撃で互いに大きく後退する。大技を放った反動だ。

「っ...神速の重ね掛けについてくるとは...な...!」

「...何だよそれ...まだ隠し玉があったのかよ...。」

 通りで俺でも見切れなかった訳だ...。だが、どうやら負担も大きいらしい。
 ...残念だな。もっと楽しみたい所だが、ここらで潮時か。

「.......。」

「っ、......。」

 静かに俺が構えると、高町兄も構える。
 ...互いに次が最大の技だ。これで勝負が決まる。

「「っ!」」

 同時に踏み込む。そして、技を叩き込む―――!!

「「はぁっ―――!!」」

   ―――御神流斬式奥技之極“(ひらめき)
   ―――“森羅一閃”

 高町兄は俺でも見えない一撃を、俺は四属性を込めた一閃を放つ。
 互いに攻撃を防ごう、相殺しようと考えていない、相手を倒すためだけに放たれた一撃。

     バキィイッ!!

「っ.....!」

「っ........。」

 すれ違い、木刀を振り切った体勢で俺たちは固まる。
 結局、技と技がぶつかり合ったのか、木刀は負荷に耐え切れずに壊れてしまった。

「ぐ....がはっ....!」

「っ....くっ...。」

 俺は膝をつき、高町兄は倒れ込むように手と膝をついた。
 どちらももう立てない状態で、戦闘不能になった。

「...み、見えたか...?」

「ぜ、全然見えませんでした....。」

 ふらふらになった体を支えつつ、秋十君とユーリちゃんの言葉を聞く。
 ...どうやら、二人には最後の一撃は見えなかったようだ。
 黙ってずっと見ていたマドカちゃんも驚いたままで、見えてはいなさそうだ。

「(...当然か。実際に喰らった俺すらも、“知覚”できなかったからな...。)」

 御神流...とか言ったな。高町達が使っている剣術は。
 ...まったく、恐ろしいものだな。

「お兄ちゃん!大丈夫!?」

「あ、ああ...。まさか、試合でここまで楽しめるとは、な....。」

「楽しむってレベルじゃないと思うよ!?」

 高町が心配して駆け寄ると、あろうことか高町兄は“楽しんだ”とかいう。
 ...かくいう俺も、楽しんでいた節があるしな...。

「大丈夫ですか...?」

「ああ...。俺もこれほどダメージを受けたのは久しぶりだ...。」

 一回目は束を庇った時の事故。それ以降は四属性を習得する際の無茶ぐらいだな。
 まさか、四属性全て使ってここまでダメージを受けるとは思わなかった。

「....いい試合だった。」

「ああ。まさかここでこんな強者と戦えるとは思わなかった。」

 何とか立ち上がり、高町兄...否、恭也と握手を交わす。

「...人外級がここにもいたなんて...。」

「秋十君!?お兄ちゃんはそこまで....言われてみればそうかも。」

「おいなのは。」

「あ、ごめんなさ~い!」

 失言に高町は恭也に謝る。

「...ふむ、やはり、私もまだまだだな...。」

「...なんかすまんな。俺の前座みたいになってしまって。」

「いや、上の存在がどれほどのものか知れただけよかった。」

 ずっと試合の一手一手を見逃すまいと見ていたらしいシグナムがそういう。

「御神流...だったか?」

「ああ。」

「最後の後半からの動きと最後の一撃...人の知覚外の動きだったが...。」

 俺が調べた限りだと、人の限界を引き出す剣術らしい。
 それにしても俺が言えた訳じゃないが、規格外な動きだった...。

「...むしろ、それを認識できる方が凄いのだがな...。」

「俺、ちょっと特殊だしな。」

 そんな俺に迫る恭也がおかしいというべきだろう。高町みたいに声には出さないが。

「御神流の奥義だ。詳しくは言えんな。」

「まぁ、そう簡単に一子相伝の技をばらす訳ないよな。」

 なんというか、年が近いからか恭也と親近感が湧く。仲良くなれそうだ。

「恭ちゃーん?母さんがお客さんを連れて休憩にしましょうだって。」

 そこで、道場内に入りながら、黒髪の三つ編みで、メガネをかけた女性...高町の姉である高町美由希がそう言ってくる。

「む、そんな時間か。」

「あはは...お兄ちゃんも桜さんも試合に熱中してたからね...。」

 そういう高町だが、外野も観戦に夢中になっていたようだ。
 秋十君やユーリちゃん、マドカちゃんが今更のように気づく。

「えっ!?恭ちゃんと試合!?相手は?」

「俺だ。」

 手を挙げ、俺だと主張する。

「....ほんとに人間?」

「失礼だろう。」

「あいたっ!?」

 さっきの試合で体力を使っても、はたくぐらいの力は残っていたらしい。
 失礼な事を言ってしまった高町姉は恭也にはたかれる。

「いたたた...とりあえず、翠屋に来るようにだって。」

「分かった。シャワーを浴びて行くから、先に行っておいてくれ。」

 恭也がそう言って、風呂場の方へ行く。
 ...俺もさっきので汗を掻いたし、同行させてもらうか。

「あ、じゃあなのはとシグナムちゃんも入ってくる?」

「...あの、“ちゃん”はやめてください...。」

 高町姉の呼び方に八神がそういう。...確かに合わないな。

「うーん...私たちは遅いから、お兄ちゃんが先に入ってて。」

「そうか?ならそうさせてもらうが...。」

「あ、俺も行くよ。」

 恭也についていき、俺はシャワーを浴びさせてもらった。







「わぁ....!」

「へぇ...これがあの....。」

 しばらくして、俺たちは翠屋へときた。
 シャワーとその着替え?特に描写する事でもないし、着替えは拡張領域に仕舞ってた。
 ちなみにこの拡張領域はISについているものではなく、その機能だけを用いた簡易的な倉庫だ。

「翠屋特製シュークリームよ。さぁ皆さん、ゆっくりしていってね?」

 高町達の母親...高町桃子さんの言葉に、一斉に皆がシュークリームを手に取る。
 ...まぁ、スイーツ系の雑誌のランキングにも載る店の商品だからな...。

「おいしそう....いや、絶対美味しい!」

「マドカさん...食べる前からそれは....いえ、確かに同感ですけど。」

 マドカちゃんの言葉にユーリちゃんは苦笑いしながらも同意する。
 ...やっぱり、女の子はこういうスイーツは好きなんだろうな。

「それにしてもなのは、随分と色んな人を連れてきたわね。」

「えっと...ダメだった?」

「別にいいわよー。むしろIS学園でも上手くやってるって安心しちゃった。」

 シュークリームを食べながら、高町親子の会話を見る。
 ...それにしても、高町の母親若すぎないか?

「しかしこのような街中にこれほどまでの剣の使い手がいたとは...。」

「シグナムも我流なのにここまでできるのは凄いと思うよ?」

 シュークリームの美味しさに驚いているユーリちゃん達を他所に、八神と高町がそんな会話をしている。

「あむ.....。...私としては、なのはさんが翠屋の店長の娘さんだった事に驚きですよ。」

「そういうユーリだって今話題の会社の一員だよー?」

 一番“普通”に近いのは八神だけだな。俺たち。

「いやしかし...本当に篠ノ之博士に似ているね...。体格的にも女性に近いし。」

「幼い頃は何気に気にしてましたね。今となっては誰かをからかうのに使えますが。」

 恭也の親である高町士郎と、俺は少し談笑する。
 ...この人も相当できるな...。店の仕事で道場にはいなかったけど。

「ああ、だから桜さんはよく...。」

「よく冬姉をからかうと思ったらそういう...。」

 秋十君とマドカちゃんが何か言っているが、敢えて気にしないでおこう。

「...っと、仕事もあるから、僕はもう行くよ。それじゃあ、ゆっくりしてね。」

 翠屋は言うまでもなく繁盛している店なので、士郎さんはすぐに仕事に戻った。
 高町姉も店の手伝いをしており、なんだかお邪魔しているのが申し訳ない。

「....そういえば聞きたいんだが、なのはは学園でどう過ごしているんだ?」

「...?それは本人に聞けばいいんじゃないか?」

 別に仲が悪い訳でもないし、聞けば大体は教えてくれそうだが。

「他人から見た意見を聞きたいんだ。」

「あー、そういう事。でも、俺は同じクラスじゃないしな...。」

 そういう訳で、ユーリちゃんとマドカちゃんを見てみる。
 ...まだシュークリームを堪能してたか。

「んぐ...?なのは?んー、普通に友達とかいて楽しく過ごしてると思いますけど...。」

「なのはさん、コミュニケーション能力が高いですしね。」

 俺たちの会話は聞こえていたのか、二人は答えてくれる。

「....そうか。まぁ、楽しく過ごしているならいいか...。」

「妹さんの事、大事なんですね。」

 秋十君が安心している恭也にそういう。

「当たり前だ。妹だからな。」

「....シスコン。」

「ん?」

 ボソッと呟いただけなのに恭也は耳聡く反応した。
 やっぱりシスコンじゃないか。

「...聞き損ねていたんだが、なのはは御神流がISを使っている時は全力を出せないとか言っていたが...そちらでは同じような事はないのか?」

「同じような....まぁ、生身ならではの動きはしづらいな。幸い、俺や秋十君が扱う剣術の傾向はISにも適応できるけどな。」

「...ISではそちらが上か。」

 俺としては生身では御神流の方が技術が上なのが悔しいが。
 だって、いくら機能がよくても俺たちにとってISは“翼”でしかないしな。

「....ん?」

 ふと、ケータイが鳴っている事に気づく。
 恭也も出てもいいぞと頷いたので、遠慮なく出てみる。

「もしもし?」

【さー君!さー君!助けてー!】

「...どうしたんだ?」

 相手は束。周りにはばれないように一応社長として接するが。
 ...それにしても慌てているな。

【スカさんとグランツさんとはーちゃんがー!】

「はーちゃん...?ああ、今日来るって言っていた...。」

 確か名前は八神はやて....八神がお世話になっている親戚だったな。
 ちなみに、このことは八神本人には知らせていない。

「...で、どうしたんだ?発明品が爆発でもしたか?」

【逆だよ逆!上手くいきすぎて傍から見てるこの束さんが近寄れないレベル!】

「.....訳わからん。」

 こりゃあ、直接見た方がいいかもな。

「悪い。社長から大至急のヘルプが入った。ちょっと行ってくる。」

「あ、ああ...。随分と慌ててたようだが...。」

「うちの研究馬鹿が調子に乗りすぎているみたいだ。八神、悪いがお前もついてきてくれ。」

「....?わかったが...。」

 適材適所という訳で、八神も連れて行くことにする。訳は道すがら説明しよう。
 ...というか、さっきの会話、恭也には聞こえていたのか...。

「...他言無用で頼む。」

「.....わかった。」

 また後で対価を持っていくか。

「それじゃあ、秋十君、マドカちゃん、ユーリちゃん。後は自分で帰ってくれ!じゃな!」

「桜さん!?....もう行ってしまった...。」

 急いだ方がいいので、準備が整った八神を抱え走り出した。
 途中でタクシーを捕まえ、急いで会社へと向かってもらった。













「さーくーん!!」

「あ、あ、主!?何を!?」

 その日、ワールド・レボリューションで一悶着あったが....それはまた別の話。
 とりあえず、フルダイブ型VRゲームについて“三人寄れば文殊の知恵”ばりに開発が進むのはいいが、その過程で周りに迷惑をかけるのはやめてくれ。

 俺と束と八神の怒号が飛ぶまで、それは終わらなかった。













 
 

 
後書き
ISなんていらないんじゃないかなこの人達。(小並感)
この恭也さん。とらハよりもさらに極めています。(膝も怪我してないし)
なお、強さは恭也>美由希=士郎>>なのはです。士郎さん、さすがに衰えた。

オチが締まらない...。まぁ、メインは恭也VS桜だし...。
御神流を出したのなら天災級の相手と戦わせてみたいという理由でこの話ができました。
結果は...まぁ、ほぼ引き分けです。狭い場所なら断然御神流が有利です。 
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