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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第73話 希望の国・蝦夷

 山を越え、谷を越え、野や川を駆け、死に物狂いでようやく仙台に土方達は仙台へ到着っした。
「土方さん、見えました。開揚丸です。榎本さんの船に間違いありません」
 大鳥は指を差し大声で叫んだ。
(なんとか、ここまでこれたか)
 土方は安堵したが、一難去ってまた一難。
 榎本艦隊は、蝦夷、今の北海道に向かうとのことだった。
 榎本艦隊はどういう訳か嵐に見舞われていた。
 江戸を脱出した後も嵐に会い、今も嵐の中を航海していた。
(大丈夫なのだろうか?)
 足に地がついていない土方達陸戦隊はそんな不安を抱えていた。が、なんとか蝦夷にたどり着き、一気に新政府軍を叩き、五稜郭を占拠した。
「なんとか、居城を確保出来たな、土方君」
 海の上では榎本が優位であったが、陸戦では土方達に頼ざるを得なかった為に疲労していた。
「あぁ、そうだな。が、これからどうするんだ、榎本さん?」
 土方は榎本の策を率直に聞こうと思った。
「私はね、土方君。この地に国を造ろうと思う。新政府軍に居場所を奪われた幕府に忠誠を誓って戦った人達が笑顔でいられる場所をね」
 榎本は土方に向かってにこりと微笑んだ。
「土方君、君にも協力を願いたい。新しい我々の国の為に尽力してくれないか?」
 榎本は土方に深々と頭を下げ右手を差し出した。
「頭を上げてくれ、榎本さん。我々をここまで連れてきてくれたのは、貴方だ。この土方、いや、新撰組は榎本さんに命を預けよう」
 土方は差し出された右手を強く握った。
「ありがとう、土方君」
 榎本もまた強く握り返した。

 12月中旬についに榎本脱走艦は蝦夷地を平定したと宣言したが、内部は安定してはいなかった。
 陸戦隊と海軍との確執、高官と下級武士とのもめごと。
 人間というものは、危機に対しては団結するものだが、平穏になれば不満もふきだす。
 そこで、官吏以上の者たちでこの時代の初めての選挙が行われた。そして、榎本は総裁に任命された。
 土方といえば、陸軍奉行並という役職についた。
(まったく、面倒な物になってしまったな)
 と、心の中で舌打ちをしたものだった。だが、榎本としては、実践たたき上げの土方を陸軍奉行にしたかった。
 何故なら、大鳥より土方の方が陸戦部隊に人気があったからだ。が、土方を選んでしまえば、大鳥がへそを曲げてしまう。
 榎本の苦肉の策だった。
「土方君、陸戦隊をうまく抑えてくれないだろうか」
 と榎本に頭を下げられたら致し方がない。土方はその役職を引き受けたのだった。

 
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