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天本博士の怪奇な生活

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9部分:第八話


第八話

                第八話   ペットの餌その三
「さてと」
 博士は街の動物園に向かった。当然ながらそこには大勢の動物達がいる。
「まさかとは思いますけど博士」
 同行する小田切君が声をかけた。
「ライオンやアナコンダにやったりしないで下さいね」
「わかったのか」
「わかったのかって、冗談抜きで怪獣映画になるじゃないですか」
「フン、面白くない」
 恐るべき野望がすんでのところで阻止されたのであった。
「猛獣を巨大化させずして何がいいのか」
「洒落になりませんよ」
「ではどうすればいいのじゃ」
「動物園から帰りましょうよ」
「それでは発明した意味がないではないか」
「破壊活動が発明の目的じゃないでしょ、それだって普通に使えば凄くいいことになるのに」
「平和なぞつまらん」
 とんでもないことを言い切った。
「破壊の後の創造こそが最も素晴らしいことなのじゃ」
「そんなこと言ってるとしまいに日本政府も切れますよ」
 実は既に公安にマークされている。どうしようもない事態なのだがそんなことを意に介する博士ではない。
「では」
「結局帰らないんですね」
「ここまで来て止められるか」
「やれやれ」
「おい、見ろ」
「ああ、天本博士だぜ」
 動物園の職員の人達が早速博士に気付いた。こうした時悪い意味で世界的な有名人は辛い。
「離れるなよ」
「わかってる」
 早速公安に連絡されマークがつく。何かやばい雰囲気の人達が動物園のあちこちに見られるようになってきた。
「ライオンの側、押さえました」
「虎もです」
「狼完了」
「よし、爬虫類も鳥も全部押さえろ」
「はい」
 上から指示が飛ぶ。
「現場最優先でいく、いいな」
「了解」
「下手なことしたら射殺しろ、相手が相手だ」
「わかってます」
「この機会に」
 なおここは日本で公安も日本の組織である。ここまで言うのはドラマでも有り得ない。しかし天本博士は別だった。この博士だけは非常手段に訴えてもよいとされていたのだ。もっともこの博士は拳銃やライフル程度では死なないのだが。ここにも秘密があるのだ。
「博士」
 小田切君にもそれはわかっていた。
「来てますよ」
「何、構わんさ」
 博士は平気な顔である。警官も国家権力も恐れる博士ではない。
「彼等にも見せてやるわ。わしの発明をな」
「やれやれ」
 マークは続く。その中で博士だけが平気な顔をしていた。

第八話   完


                2006・8・9



 
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