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天本博士の怪奇な生活

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5部分:第四話


第四話

                 第四話   博士の持ち物
「博士、それ何ですか?」
「うむ、これはな」
 博士はふと道の真ん中で得体の知れない棒みたいなものを振り回しているとお巡りさんに質問された。博士はそれを受けてお巡りさんに顔を向ける。
「鞭じゃ」
「鞭!?」
「ん!?鞭を知らんのか?」
 博士は驚いた顔をするお巡りさんにそう返した。
「鞭って言いますと」
「細長い鞭とは違う。中国のあの棒みたいな武器でもない」
「水滸伝のあれですか」
「うむ、まあどっちかというとこの鞭はそっち系統じゃ」
「はあ」
 お巡りさんは博士の言葉に戸惑いながらも応えた。
「乗馬に使う鞭をモデルにしておる」
「ああ、その鞭ですか」
「うむ、その通りじゃ」
 博士はその言葉を聞いて満足そうに頷いた。
「ただ、この鞭は普通の鞭とは違う」
「何かあるんですか?」
「この鞭はな、電気鞭なのじゃ」
「触ると高圧電流ですか」
「五〇〇〇万ボルトのな」
「五〇〇〇万ボルト!?」
「ワフッ!?」
「ニャンッ!?」
 それを聞いてお巡りさんどころか道行く人達も犬や猫まで驚きの声をあげた。
「左様、ボタンを押すとな、それで出る」
「そうなのですか」
「けれどそんなものを何故?」
「わしも色々と危ないからな」
 博士は真顔で答えた。そこには一遍の冗談もない。
「護身用にじゃ。これさえあればどんな奴が来ようとも黒焦げじゃ」
「黒焦げ、ですか」
「この鞭を振り回せばそれだけでな。街を一個潰せる」
「街を」
「やばいよなあ」
「よなあ、じゃなくて確実にやばいぜ、おい」
 学生達がそれを聞いて囁く。
「どの様な輩が来ようとも安心じゃ。この電気鞭がある限りな」
「それで博士」
 お巡りさんが恐る恐る声をかけてきた。
「今度は何じゃ?」
「それって、危険物ですよね」
「まあそうなるな」
 実際にはそれどころでは済みそうにないが。
「それが。どうしたのかのう」
「許可とか。受けていますか?」
「許可、とな」
「危険物所持法とか。そういうものに引っ掛かりますので」
「そんなことか、安心しろ」
 博士は自信に満ちた笑みでそれに応える。
「そんなもの知らんわ」
「そうですか。知らないんですか」
「左様、細かいことをいちいち気にしていては研究も発明もおぼつかぬ。天才は些細なことにはこだわらんのじゃ」
「じゃあ博士、ちょっと」
「!?」
「来てほらいたいところがあるのですが」
「何処じゃ、そこは」
「すぐにわかりますから」
 街の人達はお巡りさんを中心として博士を取り囲む。そしてそのまま何処かへと連れて行く。
「で、ここに拘束されたのですか」
 小田切君が迎えに来た時博士は暑の拘置所に入れられていた。
「そうなのじゃ、困ったことに」
 博士は牢の中で座り込んでいた。困った顔をして小田切君に答えた。
「困ったことにな」
「そりゃ当然ですよ」
「当然とな」
「だって、あの電気鞭でしょ」
「うむ」
「あんなの持って外に歩いてたらそりゃ捕まりますよ」
「困ったことじゃ」
「まあ署長には僕が話しておきましたので」
「出られるのじゃな」
「はい。それで鞭は」
「何、それなら心配ない」
「どういうことですか?」
「スペアもあるしの、それにあれは」
「はい」
「リモコンで動くのじゃ。だからすぐにわしの手に返って来る」
「リモコンで」
「左様左様、じゃから何の心配もいらんのじゃ」
「けれど。警察に押収されてるんですよ」
 小田切君は付け加える。
「そんなことしたら」
「何、替え玉は用意してある」
「替え玉」
「普通の鞭をな、置いておくわ。それならばれんじゃろう」
「普通のなんてまずいに決まってるじゃないですか」
「普通の電気鞭じゃよ」
「電気鞭に普通かそうかなんてあるんですか!?」
「百万ボルト程度じゃ。それならばれんわ」
「けれど博士」
 小田切君の疑念は尽きない。
「それも申請とか許可とかないですよね」
「それが大したことか?」
「やれやれ・・・・・・」
「では帰るか。今日はキスの天麩羅じゃ」
 結局博士は博士だった。なおこの鞭は無事博士の手に戻り今でもその手にある。時たま酔って好き勝手に振り回したりすることもある。それもまた小田切君の頭痛の種であった。

第四話   完


                 2006・7・15

 
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