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艦隊これくしょん【幻の特務艦】

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第三十一話 第一機動艦隊

海鷲が一羽、す~っと羽を伸ばしたまま風に乗り上空を旋回している。その鋭い目は獲物を求めて海上をめまぐるしく見まわしていたが、ふと、眼下の一点で目が留まった。眼下には細長い筆で掃いたような白い航跡が間隔を置いて幾筋も伸びていた。南に向かっている。なお、目を遠くに凝らせば、西側からも同じような白い航跡が北に向かって伸びているのが確認できただろう。だが、彼は一声甲高く泣き叫ぶと、羽をはばたかせ、飛び去っていく。まるでこれから起こりうる凶事を予感したとでもいうように。


穏やかな5月の気候にあって、波が高いのは発達した低気圧のせいだ。波に翻弄されながら進むというのはあまり気分のいいものではない。戦艦だというのに三笠には船酔いの傾向があった。
(これがベタなぎの海だったら進みやすかったのに。)
三笠は戦闘速度に移行しながらふとそんなことを考えていた。
「敵との距離、1万3000!!」
三笠の艤装の中で砲術妖精が声を上げる。いよいよか、と三笠は顔を引き締めた。今までの猛訓練はまさにこの一点の海戦のための物である。この戦いに敗れれば今まで積み上げてきた数々の勝利も吹き飛ぶが、この戦いに勝てばすべての大勢が決し、両国間の戦争は終結するのだ。まさに歴史の転換点であり、このような大きな舞台に上がった三笠の頬は紅潮していた。
「三笠、どうするか指令して!!艦隊に戦闘準備をさせなくていいの?」
3番手を走る黒髪を長く伸ばしたやや小柄の少女の様な容姿の艦娘が叫ぶ。朝日の声に三笠は我に返った。朝日は連合艦隊随一の頭脳を持ち、今までの作戦立案を行ってきた総責任者であり、さらに戦場に立つたびに大小の敵艦を撃沈し武勲を上げてきている。文武両道の姉を三笠は苦手としていたが、ここで臆するわけにはいかない。先頭を走る彼女は連合艦隊司令総旗艦にだけ帯刀を許される装飾を施した指揮刀を高々と掲げた。
「全艦隊、戦闘用意!!」
「三笠ァ!あんたビビってない!?」
三笠は灰色の髪を風に乱しながら振り向いた。自分の後ろ、二番手を赤い髪を肩まで伸ばし、好戦的な顔つきをしているのは、自分の長姉である。本来であれば連合艦隊総旗艦になるのは彼女であったのかもしれないが、何故末っ子の自分が連合艦隊総旗艦なのだろうと、ふと三笠は思ってしまう。
 それは敷島の方も同じらしく、声を張り上げて叫んだ。
「もし、総旗艦にふさわしくないと思うんだったら、その刀をよこしな!さもなければ死ぬ気で戦うんだよ!!」
「わかっています!!死んだ初瀬姉様、八島先輩、吉野さんたちのためにも・・・・絶対に負けられないんだから!!」
最後は自分に言い聞かせるように強くこぶしを握った。
「距離、1万2000です!!」
三笠の艤装の中にいる砲術妖精が声を上げた。徐々に近くなっていく距離のなか、彼方の海霧に艦影が浮かび上がるのが見え始めた。その瞬間三笠は胸を押さえた。
「くっ!!」
あの追い詰められた時の胸の強烈な鼓動を感じ取ったのだ。
これから自分は究極の選択をしなくてはならない。数ある戦法の中から血のにじむような思いで絞り出し、なおかつまだどちらを取るかを決めかねている。それは今この時に至っても同じことだった。
「三笠さん、どうするんですか?あの戦法・・・・。」
砲術妖精の問いかけに三笠は答えなかった。代わりに拳がますます握りしめられる。

安全策をとるか、それとも乾坤一擲で大勝負に出るか。

(私自身は死ぬ覚悟はできてる。でも、他のみんなを巻き添えにしてまで取ることができる?そんなことはできない。通常の反抗戦だって私たちは充分に相手にダメージを与えられるところまで訓練してきたわ。)
三笠がためらっているのは、もしこの戦法をとれば、文字通り自分だけでなく、味方全艦隊にまで凄まじい敵の砲火が集中するからだった。
「距離、1万1000!!!」
「三笠!!」
再び敷島が声を張り上げた。
「あんたどうするか、まだ迷ってるんじゃないでしょうね!?」
「違うわ!!ギリギリまで引き付ける!!!」
そう振り向いて叫び返しながら三笠はまだためらっていた。後続を走る春日、日進という二人の装甲巡洋艦の二人と一瞬だったが視線がかち合ったからだ。二人は青い顔をしてみるからに不安げな様子だった。
(無理もないわ・・・・本来であればあそこの席には初瀬姉様と八島先輩がいるはず・・・それを装甲化されているとはいえ、巡洋艦が据わるなんて・・・・。)
もし、開戦が始まれば二人にも当然砲弾が集中する。そうなれば戦艦に比べて装甲が薄い二人は下手をすれば轟沈してしまう可能性があった。
 三笠自身は覚悟を決めていた。だが、最後の一歩が踏み出せない。踏み出した瞬間、待っているのは苛烈な攻撃だ。その中の何人が生き残れるかはわからない。ある者は死への舗装された道を進むことになるだろう。
(どうすれば・・・どうすれば・・・・!?教えて、初瀬姉様!!)
三笠は祈るような思いですぐ上の姉のことを想った。おっとりしているが銀髪をなびかせた美貌だった姉は姉妹の中で一番の仲良しだった。ことに三笠が連合艦隊総旗艦に軍令部からの要請で就任した時、敷島の風当たりが強く、三笠はいつも罵声を浴びながら訓練から帰ってきた。こらえきれずに布団の中で涙を流していた時もある。そっと涙を流していると、初瀬はいつもそれに気が付き、自分も布団の中に入ってきて、彼女を抱きしめて慰めてくれたのだった。

 その姉が今はいない。だから自分で決めなくてはならない。

「距離、1万!!」
敵の艦娘たちの姿がはっきりと浮かび上がった。北欧の神話に出てきそうな戦乙女の鎧の様な銀色の衣をまとい、艤装の砲塔の照準をこちらにつけてきている。敵の顔も青ざめている。中でも先頭を走る嚮導艦娘らしい少女はまだ10代半ばのように思えた。
(あんな子が!?・・・・両国の思惑でまだ若い子が戦場に駆り出され、戦わなくてはならないなんて・・・でも、私たちも同じこと。初瀬姉様!!私はどうすれば・・・・!?)
このまま直進して反抗戦を演じるか、それとも――。
『三笠。』
不意に柔らかな声が響いた。小さな声だったがそれは空耳ではなくまるで静かな部屋の中で話しているときのようにはっきりと聞こえた。海上を弄するばかりの風圧にもかかわらず、三笠はその懐かしい声をはっきりと聞くことができた。
『三笠。私の優しい妹。とてもつらい気持ちは私にもわかります。』
「姉様!!まさか、そんなことって――。」
三笠は絶句した。何故死んだはずの初瀬が話しかけてくるのか。慌てて周りを見まわしても、初瀬の姿はどこにもいない。それなのに、声だけははっきりと聞こえるのだ。
「どうしたんですか!?一体――」
『時間がありません。三笠、よく聞いて。あなたはすぐに決断しなくてはならない。』
「わかって・・・るわよっ!!!でも・・・でもっ!!今ここであの戦法をとれば、みんな死んでしまうかもしれない・・・・。そんなことを私が指令できるわけが――!!」
声だけが聞こえるのに、ふと姉が目を細めた様に三笠には思えた。
『あなたは誰も傷つけたくはないのね。味方も、そして今先頭を進んでいるあの若い子も含めた敵も傷つけることなくこの戦いを終わらせる最良の方法をあなたは探ってきたのよね。』
「はい・・・。」
『その努力は大変なものだったと思う。でもね、時には私たちや敵の血を流さなくては作れない道・・・未来もあるのよ。』
「血で作る未来・・・・・。」
「距離、9000!!」
砲術妖精が叫んだ。既に敵も迎撃態勢に入り、すべての照準がこちらに向けられ始めている。いつ敵も発砲してきてもおかしくない状況だ。
『それは凄惨なものだわ。でもね、それを恐れていては駄目。一時の凄惨さも、その後に待っている無限の可能性をはらんだ未来のためには必要なことだってあるわ。たとえ今この場にいるすべての艦娘たちを犠牲にしても。』
「姉様・・。」
あの穏やかな姉がそのようなことを言うとは三笠には信じられなかった。だが、これは紛れもなく初瀬自身の声なのだと、三笠は確信していた。
『あなたのなすべきこと、それを理解しなさい。敷島型4番艦三笠。連合艦隊総旗艦、そして・・・・。』
声が遠ざかっていく。
『私の愛する優しい妹。』
声は途切れ、三笠は再び海上を吹き荒れる風の中にいた。
「距離、8500!!」
三笠は目を閉じた。あれほど荒かった胸の鼓動は収まっていた。姉が最後に届けてくれた思いを、贈り物を三笠は目を閉じ、しっかりと抱きとっていた。
「三笠!!!」
後方で敷島がいらだったように叫ぶ。今度はその中に朝日や富士たちの不安そうな声も交じっていた。
「姉様・・・・。ありがとう。本当に・・・・ありがとう・・・・。」
三笠の眼が開かれた。
「私の心は決まったわ・・・。連合艦隊総旗艦として・・・・全軍の総指揮官として・・・・私は役目を果たします!!」
三笠の右手が拳を作り、噴き上がる波浪の中を高々と上がった。

それは――。
「皇国の興廃、この一戦にあり!!各員一層奮励努力せよ!!」
この意味だったが、三笠自身も声を張り上げていた。その声は不思議なことに全艦隊にこだまし、全艦娘を奮い立たせ、次々と同じ言葉を叫ばせていた。


「距離、8000!!有効射程距離です!!敵、こちらに照準を指向!!発砲態勢に入りました!!砲撃、来ます!!」
砲術妖精が叫んだが、三笠は動じない。その姿はまさしく全軍の先頭に立つ将帥そのものであり、右手を高々と上げたその姿は凛として不動の立ち位置を占めていた。連合艦隊総旗艦として・・・・。
「私の役目・・・・それは・・・・・。」
三笠の眼が引き締まった。
「それは、この海戦に勝利し、日本を救うこと!!私たちの手で私たちの未来を切り開くこと!!そのためになら私はどんなことでもするわ!!」
上がった手が半円を描くように、ひゅうっと勢いよく左に振りぬかれた。
「全艦隊東北東に反転150度!!敵艦隊との距離を6000に縮め、近接並行戦闘に移行!!!」
朗々たる声が全艦隊を駆け巡った。その瞬間誰もが凍り付いたように動かなかったが、ただちにその言葉を理解した敷島が真っ先に叫んだ。
「なるほど・・・アンタも覚悟を決めたってわけか、面白い!!乗ってやるわよ!!」
敷島が叫んだときには三笠はターンを始めていた。全速航行での急速反転により、波しぶきがほとばしり、三笠の艤装に降りかかる。三笠の転進を見た敵が一瞬驚愕の表情を浮かべ、そののちうなずき合うのが視界の隅に移った。ちらと後ろを見ると、敷島も、回頭を始めている。朝日も、そして富士たちもそれに続こうとしていた。


それは、自分を連合艦隊総旗艦として姉たち、そして全艦隊が認めた瞬間だった。


戦闘の嚮導艦娘が何か叫んだようだった。それが何の言葉なのか三笠にはわからなかったが、意味はわかった。

 轟音が海上に響き渡った。

 敵の全主砲が火を噴き上げ、敵艦隊を覆い尽くすほどの黒煙が立ち上ったと認めた瞬間凄まじい砲撃が降り注いだ。水柱が林立し、いたるところに主砲弾が炸裂、爆発し、その破片が降り注ぐ。それを手でかばいながらも進む三笠、敷島、朝日、富士、春日、日進、そして後続の出雲以下が、凄まじい攻撃を受け、次々と被弾していく。その被害は最も先頭を進む三笠自身に降りかかってきた。絶えず至近距離で砲弾が炸裂し、時には直撃弾を被り、艤装が吹き飛んだ。それでも、三笠は足を止めない。連合艦隊総旗艦として、姉、そして仲間たちへの想いと責務が彼女の足を止めさせなかった。
(姉様、姉様、姉様ッ!!)
この間まともに射撃もできず、三笠にできたのはただ姉に祈ることだけだった。時間にしてはおよそたったの数分のことだったろう。だが、その数分が三笠にはとてつもなく長く感じられた。
 三笠が回頭を終え、あらたな進路に入った。右を見ると、敵が陣形を並走しているのが目に入った。だが、その顔色は狼狽している。思ったほどダメージが与えられなかったこともあるだろうが、日本艦隊が弾雨の危険を冒しつつ寄ってきたことに驚いているようだ。
「敵が寄ってきます!?あ、違った。私たちが敵によっているんです!!距離6500!!完全に射程内に収まりました!!」
「2番艦敷島新進路につきました!!さらに3番艦朝日も回頭終了間際!!さらに4番艦富士以下、続きます!!」
相次ぐ妖精の報告にうなずいた三笠が右手を振った。まず、一門だけ砲が撃たれる。その際の着弾によって三笠のみならず各艦隊は距離を測るのだ。
 敵嚮導艦娘の至近に落ちた水柱を見た三笠が各艦隊に叫んだ。
「仰角修正マイナス0.1!!今よ、全艦隊、主砲、撃ち方、用意!!」
全艦娘が主砲を敵に向けた。三笠の右腕が高々と上がる。まるで鋭い日本刀のように上段に構えられた腕につけられた総旗艦の腕章が朝日を受けて輝く。

そして三笠の右腕が敵に向かって振り下ろされた。
「テ~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!」
三笠の誇る30サンチ2連装主砲が轟然と火を噴き上げ、すさまじい音が海上に響き渡った。それを見届けた敷島以下各艦が発砲を開始した。初弾が敵嚮導艦娘のすぐ前に落下、彼女が怯えた様に叫んだのを三笠は見た。
(くっ・・・!!)
目をそらしたかったが、三笠はそれを自分に許さなかった。彼女は再び右腕を掲げた。
「血で作る未来・・・・それが私たちだけではなく、敵の血で贖うものならば、私たちはそれを見届けなくてはならないわ。目を背けてはならない!!・・・・許して!!!」
三笠が振りぬいた右腕が第二斉射発砲開始の合図だった。
 両軍は並行戦闘にもつれ込む。敷島も、富士も被弾していたが、それでも砲撃の手を緩めることはなかった。敵も一歩も引かなかった。すさまじい砲戦が続いたが、戦闘は猛訓練を続けてきた日本艦隊側に有利だった。組織的な主砲撃ち方、風上に立ち、敵を追いこんだ進路、そして何より三笠自身の覚悟が全軍に伝播して一糸乱れぬ行動を展開している。
三笠は速度を上げ、敵艦隊前方に回り込み、主砲を向けた。
既に先頭の嚮導艦娘ともう一人の第二艦隊の艦娘はひどい怪我を負い、轟沈寸前だった。主砲は折れ曲がり、艤装は吹き飛び、服もひどく裂けて汚れている。それでも彼女たちは残った砲での砲撃をやめない。三笠は降伏してくれることを祈ったが、彼女たちは足を止めることはなかった。
 一瞬――。嚮導艦娘との目が合った。怯えきっている青い目がやけにはっきりと三笠の目に飛び込んできた。
「初瀬姉様・・・・!!」
三笠が振りぬいた手がとどめの一斉射を呼び起こした。

 はっと葵は体を机の上から起こした。連日の作戦会議、そしておそらく最大の激戦になるであろうミッドウェー本島攻略作戦、その準備に追われ、いつの間にか眠っていたらしい。
「バカよね・・・・。自分が艦娘になった夢を見ていたなんて・・・・・・・・。」
かつての連合艦隊総旗艦は驚いたように目をぬぐった。いつの間にか涙が頬を伝っていたからだ。
「でも、夢ではないわ。初瀬姉様は死んだ。私は連合艦隊総旗艦だった。そのことに変わりはないのだから。」
葵は深い吐息を吐き出した。
「初瀬姉様、朝日姉様、敷島姉様・・・・。私がもし艦娘としてあの場にいたならば・・・・もし、東郷閣下がおらず、参謀たちもおらず、私が全軍の指揮権を担い、すべてを決めなくてはならない立場にあったら・・・私は、決断できるかな・・・・。」
そう考えると、今深海棲艦と戦っている艦娘たちがいかに重責を負い続けているか、いかに自分たちが後方にあって指示を飛ばすだけの存在なのか、葵はそれらを自覚しないわけにはいかなかった。


 第六章――
呉鎮守府の奮闘と多大な犠牲により、横須賀鎮守府に補給物資が到着し、ヤマトの士気は上がった。また、海外同盟国からの派遣艦隊や新鋭艦も到着し、戦力増強が行われる。
 ここに至って、正規空母赤城の進言で、ヤマト軍令部は全艦隊の総力を挙げたノース・ステイトへの遠征作戦を正式に発動。その前哨戦としてミッドウェー諸島攻略作戦を開始した。
 ミッドウェーは太平洋上の重要拠点であるものの前世大戦時に大日本帝国海軍の鬼門ともいうべき存在であった。
 ここを攻略することに成功すれば、ノース・ステイトへの道が大きく開くこととなる。
 
 だが――。太平洋上には先日ヤマトを空爆した敵の大機動艦隊が展開し、ヤマトのミッドウェー本島攻略を阻みつつ、虎視眈々とヤマト侵攻を狙っていた。


* * * * *

 ミッドウェー本島攻略作戦はゆるぎないものとなった。だが、ここにきて葵が一つ作戦の修正を求めてきた。その理由は、偵察機によるミッドウェー本島並びに度重なる潜水艦隊による偵察の結果、ミッドウェー本島近海に有力な機動艦隊の存在が確認されたことによる。陣容からこれは先日ヤマトを空襲した敵の機動艦隊であることが確認された。ヤマト側はこれを第一機動艦隊と呼称。軍令部はまずこの機動艦隊を撃滅してヤマト本土の安全を確立させ、しかる後にミッドウェー本島攻略をする方針を取った。これにはだいぶ艦娘や軍令部参謀あたりから異論があったが、艦娘を交えた投票の結果、僅差でこの方針がとられることとなる。
「・・・いよいよミッドウェー本島攻略作戦が発動されるわ。」
梨羽 葵は主だった艦娘を会議室に招集していた。普段であれば長門が会議を主催し、概要を説明するのだが、今回の作戦は軍令部肝いりということで、葵が仕切ることとなったのだ。だが、それは前世の帝国海軍の総旗艦が時空を超えて次世代艦娘たちと相対し指揮を執るという光景でもあった。
「この戦いでは、前回私たちを苦しめた敵の第一機動艦隊が間違いなく出てくるはず。偵察機からの報告ではその陣容は本島に展開する艦隊に劣らないわ。しかもその機動性は私たちと同じくらいなの。したがって、これをまず撃破しなくては、ミッドウェー本島に肉薄できない。赤城、申し訳ないわね。ここにきての作戦転換で。」
呼ばれた赤城は目に力を込めて葵を見返した。
「いいえ。敵の第一機動艦隊を撃破しなくてはヤマトを防衛できないというのであれば、私たちは前進してこれを撃滅するべきです。」
「ありがとう。」
葵はふっと柔らかな表情になったが、すぐに顔を引き締めた。
「大淀。作戦概要の説明を。」
大淀は椅子をゴトッと鳴らして立ち上がり、ディスプレイを展開させて海域を映し出した。
「現在敵は、ここ、太平洋上にて空母6隻を主力とする主力部隊を展開中です。」
敵艦隊の所在及び戦力がマッピングされていく。
「意外に戦力が少ないな。」
武蔵が顎に手を当てながらつぶやく。
「はい。これは呉鎮守府がマリアナ諸島に陽動艦隊を出撃させたため、そちらに戦力を割いたことが原因と思われます。しかし、敵の主力から北西に空母2隻を中心とした支援艦隊が展開中。本隊と連携を取るかのように一定の距離を保ちつつ遊弋しています。」
「おそらく、私たちの進出を待ち構えているわ。本隊若しくは支援艦隊に殺到したところをどちらかが襲うという其角の挟撃体制を構築しているはずよ。」
葵が補足した。
「よって、まずはこの艦隊を叩き、しかる後に本隊を攻略するわ。」
「そんな悠長なことをしていて、大丈夫なの?全軍をもって出撃し、同時にこの2部隊を叩けば、蹴りはそれでつくわ。」
と、尾張。彼女の態度は紀伊が救援にきて以来変わっていた。冷ややかな性格は相変わらずだったが、もう面と向かって他の艦娘をさげすむことは少なくなっていた。この尾張の態度を最初は嫌っていた他の艦娘たちも徐々に彼女のことを受け入れつつある。そして尾張も、もう紀伊型空母戦艦の性能を誇ることはなくなっていた。絶対はないと身をもって知ったことが大きいのだろうと紀伊は思っている。
「今回の作戦は敵の航空戦力と艦隊戦力を漸減させ、かつこちらの戦力を消耗させないことが目的なのよ。当然こちらの被害は零ではないだろうけれど、できる限り味方の損害を少なくしながら敵の有力な艦をつぶしておきたいの。そして、最終的には私たちの進路を阻むこの第一機動艦隊という障害は取り除いておきたいわ。何か他に案があれば承るけれど。」
尾張は何も言わず黙った。それは不服の意味ではないことはこの妹の横顔を見ている紀伊はわかっていた。
「なら、実働部隊の編成やそのほかの具体的な作戦方針について、大淀。」
長門、陸奥、そして大和や大鳳たちはこの直前に話し合いを行い、もう作戦を極端に隠し立てしないことに意志を決定させた。いるかどうかもわからない裏切者を捜索するよりも目前の戦いに全力を挙げて当たるべきだという思いがあったし、何より仲間を疑っていては存分に力を発揮できないことに気が付いたからだ。
「今回の作戦は、高速機動艦隊を投入します。全速力で敵に接近し、一撃をもって敵を撃滅し、敵が増援に来る前に急速反転離脱を図るのです。」
大淀の指がポータブルキーを叩き、艦娘たちの編成表がディスプレイ上に表示されていく。
「オーダー表は以下のとおりです。讃岐、霧島、比叡、北上、大井、赤城、加賀、愛宕、矢矧、能代、野分、磯風、舞風、清霜そして、旗艦として紀伊。」
「なっ!?」
紀伊が声を上げるのと、周囲がざわざわという声を上げるのとが同時だった。
「どうして私が?!同行するのは実戦経験が豊富な先輩方ばかりです。それを差し置いて私が旗艦だなんて!!」
これまで旗艦を務めたことはある。だが、それは日常的な哨戒艦隊としての任務であり、今回の様な大規模作戦の旗艦を務めることは紀伊には経験がなかった。
「これは規定事項よ。」
葵がきっぱりと言った。
「ですが!」
「先日の横須賀鎮守府での戦闘指揮は見事だったわ。あなたが湾内で奮戦してくれたからこそ被害はあれで済んだのかもしれない。それにこれまでもあなたの戦術眼があったからこそ、艦隊が救われたことが何度もあったということは聞いているし。」
「ですが!!」
立ち上がろうとした紀伊の肩に手が置かれた。赤城だった。
「赤城さん?」
「紀伊さん。ご自分を信じられないのですか?」
紀伊の動きが止まった。
「私を、みんなを、これまで叱咤激励してくださったあなたの姿はとても立派でした。でも、ご自分のこととなるととたんに自信がなくなるように私には見えます。」
「それは、事実ですし――。」
「いいえ、違います。」
赤城は立ち上がった。さすがに第一航空戦隊の双璧である。凛とした挙動に紀伊は気圧されて彼女を見上げるしかできなかった。
「・・・・こういう言い方をしたくはないのですが、あえて言わせてもらえば、あなたは、卑屈です!!」
紀伊の眼が衝撃で見開かれた。この言葉は以前にも聞いたことがある。呉鎮守府で南西諸島方面に出撃する前のことだった。あの時も――。
「あなたのおっしゃっていることは卑屈にしか聞こえません。かつての尾張さんの例を出すようで申し訳ありませんが、あれほど傲慢になれとは言いません。ですが、卑屈すぎるのも駄目なのです。自分をしっかりもっておごらず、弛まず、前を向いて進むことが武人としての、そしてヤマトを護るために戦う艦娘としての姿なのだと私は思います。」
「赤城さんの言う通りだわ。」
乾いた声で加賀が言った。
「私はここに来る前にあなたに謝罪しました。それはあなたの鍛錬とたゆまぬ向上心を感じ取ったからこそ。でも、今の発言をするようなあなたでは私は先の謝罪を取り消さざるを得ないし、あなたについていこうとは思わない。」
「・・・・・・・。」
「旗艦を務めるのが嫌なのであれば、あなたは即刻呉鎮守府に帰りなさい。」
紀伊は黙り込んだ。周りで姉妹たちが不安顔で見守っているのがわかったが、彼女たちも何も言わない。赤城たちの言葉に対して反駁する材料がなかったし、見つからなかったのだろう。
 逃げ場がない。そう思った瞬間に紀伊は悟った。自分は前世に記憶がなく、造られた存在であるがゆえに、他の艦娘と違い、自身がない。だから他の艦娘たちに対して卑屈に感じてしまう自分はやむを得ないのだと。だが、それは単なる「卑屈」というだけに過ぎなかったのではないか。

『私を命がけで助けてくれたあなたは最高にかっこよかったのに。その時と比べたら今のあなたは大破して沈没しかけているボロ船同然よ!』
不意に瑞鶴の言葉がよみがえってきた。そう、鳳翔との試合に対して今と同じ、逃げようとしていた自分に浴びせられた言葉だ。
『あんたはそんなに卑屈な人だったの!?』

 もし、と紀伊は思った。仮に呉鎮守府に帰ったところで、利根たちは何というだろう。何もできない自分に朝から訓練に付き合ってくれ、励ましてくれた利根たちは、きっと自分を軽蔑するに違いない。利根たちだけではない。これまでずっとそばにいてくれた第6駆逐隊の暁たちも、瑞鶴も、翔鶴も、皆も――。

『私は卑屈だなんて言われたくはない。こんなところで私は終わりたくはない!!』
瑞鶴の言葉に対してそう叫んだことを紀伊は思い出していた。
(そうよね、あのとき私は大声でそう言った。今だってその気持ちは失われていない。正直怖いけれど、でも逃げ出すことの方がもっとつらい事なのだわ。)
「わかりました。」
紀伊は立ち上がって赤城を、加賀を見た。
「旗艦を引き受けさせていただきます。」
力んでいなかった。自然と声が出ていた。
「そして、必ず全員を無事に戻せるように全力を尽くします。」
再びざわめきが起こったが、今度は先の物と色合いが違っていた。赤城も加賀も何も言わなかったが、目を見れば彼女たちの気持ちはよく分かった。
「よく言った。それでこそ武人だ。」
武蔵が立ち上がっていた。
「姉様!!さっすがです!!」
讃岐も感激して抱き付いてくる。
「皆まだ話は終わってないわよ。」
葵が手を叩いて一同の視線を戻した。
「この間に各人は後退で艤装を点検。また全員が改装を受けてもらいます。あ、今回の派遣艦隊も帰投次第改装を受けてもらうからそのつもりで。」
「改装!?」
突然降ってわいた話に艦娘たちは色めきだった。改装はある程度練度が上がってこないと受けられないいわば艦娘をパワーアップさせる施術のようなものである。新型兵装を搭載したり、能力があがったりと様々なプラスが与えられるので、艦娘たちは改装にあこがれていたのだ。
 それが今回全員が受けるという。
「ですが、そのための資材は大丈夫なのですか?全員が受けることになると流石に資材が・・・・・。」
大和が不安顔になった。超弩級戦艦の彼女には改装に必要な資材の桁も多い。
「その点は心配ないわ。先の補充によって資材の備蓄も回復したし、それに南西諸島攻略以来、久々に大陸から先日輸送船団が到着して補給を受けたの。舞鶴鎮守府の奮闘のおかげだって。」
葵は皆を見まわした。
「さぁ、ここからは一気に行くわよ。全員今のうちに、休める時に休んでおくこと。いいわね?では解散!」





讃岐、霧島、比叡、北上、大井、赤城、加賀、愛宕、矢矧、能代、野分、磯風、舞風、清霜そして、旗艦として紀伊。彼女たちが横須賀鎮守府を出撃したのは、0900。夏を迎えた横須賀鎮守府近海海域では既に朝日が昇り切り、ギラギラとまばゆいばかりの太陽が雲一つない青空から光を放ち続けている。
 紀伊は全艦隊を2分した。第一艦隊は彼女が直卒する讃岐、赤城、加賀、大井、北上。
そして第二艦隊は霧島を旗艦とする比叡、愛宕、矢矧、能代、野分、磯風、舞風、清霜だった。
 これは戦闘海域に入り、作戦行動を起こすときになってから分断されるものであり、今は全艦隊が一つになって航行している。
「今回の作戦では、こっちは空母4人、相手は2隻。だから航空戦では撃ち負けないわよね、姉様。」
同航している讃岐が話しかけた。
「わからないわよ。支援艦隊だけ見れば、空母は2隻だけだけれど、本隊が合流すれば全部で8隻。しかもマリアナ諸島海域に進出している敵の別働艦隊が合流すればさらに増えるわ。」
「う~~~~・・・・。」
讃岐は急に吐き気を催したように顔色を変えた。
「だ、大丈夫!?」
妹の背中をさすってやりながら紀伊は落ち着かせるように
「今回は短期決戦よ。目標は空母の全滅。それさえ果たせば後はこちらは全速航行で撤退するから、長い戦いはしないわ。」
「わ、私、その、あの・・・。」
横須賀での戦いと言い、今回のことといい、讃岐はなにか艦載機にトラウマでもあるのか。気にはなっているが、中々話す時間が取れず、聞き出せずにいた。
(今回の戦いが終わったら・・・一度時間を取って聞いてみることにしよう。)
紀伊がそう決意した時、加賀と赤城がそばに寄ってきた。
「紀伊さん。偵察機から報告です。11時の方向、距離7万に敵艦隊あり。陣容、空母2、戦艦4、重巡2、軽巡6、駆逐艦8、目標の支援艦隊だと思われます。」
加賀が報告する。
「了解です。敵は艦載機を発艦していますか?」
「いえ、直援機が数機上空を旋回しているのみだとのことです。」
「わかりました。では予定通りここから艦載機隊を発艦させ、先制攻撃を行いましょう。赤城さん。」
「了解です。・・・加賀さん。」
「承知です。行きましょう、赤城さん。」
第一航空戦隊の双璧の二人は、ペアスケートをしているかのように優美な曲線を描きながら反転し、次々と艦載機を放ち始めた。
「さすが赤城さんと加賀さんですね~。わたしもあんな風に空母として活躍したいなぁ!」
讃岐が感嘆の声を上げた。
「そうね。私も見習わなくちゃ。さぁ、私たちもやるわよ。」
「はい!」
二人が艦載機を射出し始めた。ただし、紀伊の場合は半ばで打ち切ることとなっている。それは彼女が艦隊指揮官として他の艦娘たちに指令を下さなくてはならないからだった。
『全艦隊、戦闘隊形へ!第二艦隊は右翼に展開して敵艦隊を本隊へ合流する道を閉ざしてください!加賀さんと赤城さんは射程外へ退避、周辺警戒に備えてください。私と讃岐は左翼方向から敵を砲撃します!』
『了解です!』
全艦娘が了解する。
「あ、ちょっと!北上さんはどうなるわけ!?」
大井が気色ばんでこちらにやってきた。紀伊はその迫力に一瞬ひるんだ。もしここでこの二人を温存するなどと口に出せば、たちまち魚雷が飛んできそうな気がする。
「あなた方・・・あ、いえ、北上さんとあなたには一番大事な役目をやってもらいます。」
出撃前に長門と陸奥から助言を受けていたこともあり、紀伊は大井の『北上さん』を持ち上げるような話し方を心掛けていた。
「それ、どんな作戦ですか?!」
俄然大井の眼の色が変わってきた。
「敵の空母に接近してとどめを刺す役目です。弾雨をおかしての接近戦にはなりますが、回避において優れており、かつ戦艦の主砲並みの火力を持つあなたたちにしかできないことです。お願い、できますか?」
「もちろんです!!あぁ・・・北上さんの雄姿を皆が目撃することになるわ!!ねぇ、北上さん!!」
大井がうっとりとした目で空を見上げ、ついで北上を見る。きっとみんなに賞賛される『北上さん』の雄姿を妄想していたのだろう。
「え~~あたしゃ別にいいよ~~。」
北上が腰に手を当てて嫌そうな顔をした。
「ウザイ駆逐艦に一矢報いてやれるチャンスですよ。」
「うわっ、黒ぉ・・・・この人・・・・。」
讃岐が心底総毛だったように顔を凍らせた。
「そう言わないの。大井さんも北上さんもなくてはならない人です。私たちは二人を護衛しつつ、前進して敵戦艦を攻撃するわよ。」
「はい。そっか。今度は戦艦として戦闘をサポートしないとですね。」
讃岐はうなずくと、主砲の点検を始めた。開戦直前に作動しないということがないようにと言うのだろう。紀伊も念のため艤装を点検することにした。
(今回の戦いはほんの序盤だけれど・・・・それだけに躓くことがないようにしたいわ。)
慎重な面持ちで彼女は胸にそうつぶやいていた。


そして1時間後――。
紀伊たち艦娘はついに敵の支援艦隊をその射程内に捕えることに成功した。
「全艦載機、突撃!!」
晴天に向かって紀伊の手が振りぬかれた。
「能代さん、野分さん、舞風さんは対空戦闘用意!!比叡さん、霧島さんは右翼に展開しつつ主砲で敵戦艦をけん制。愛宕さん、矢矧さん、清霜さん、磯風さんは敵右翼に迂回し、航空攻撃終了と同時に近接戦闘を開始!!そして・・・・。」
紀伊は重雷装巡洋艦の二人を見た。
「私と讃岐が護衛します。有効射程まで近づいたら、空母のみに攻撃を集中!!確実に仕留めてください。」
「別に護衛してもらわなくても平気――。」
大井がそう言った時ものすごい水柱が至近で立ち上がった。ここにきて敵はエリート以上のレベルで固められている。紀伊が出会ったフラグシップ級戦艦の姿も確認できていた。当然その練度は高い。
「・・・・やっぱり、護衛、お願いします。」
「大井っち、無理しない方がいいよ。あたしたちの装甲って基本紙だからさぁ。」
北上と大井を護衛しつつ、突撃してきた敵の軽巡を讃岐が一撃で轟沈させ、続く駆逐艦隊を紀伊がけん制射撃を行い、雷撃地点に近寄らせなかった。その紀伊の左背後をかすめるようにして北上、大井の二人が猛速度で敵艦隊に突撃する。
「北上さん、大井さん、お願いします!!!」
紀伊の言葉がすぐわきを通過した二人の耳に流れ込む。
「了解!!北上さん!!敵のヲ級が増速したわ。逃げるつもりです!!」
「散布角は10度、目の前のヲ級2隻に向けて一斉雷撃、いくよ、大井っち!!!」
「はい!!」
二人は魚雷発射管を構えた。
「テ~~~~~~ッ!!!」
放たれた魚雷は綺麗に放射状に広がっていき、増速を始めたヲ級2隻に3本ずつ命中し、大爆発を起こした。さらに追走するように航行していた敵戦艦ル級フラッグシップと重巡エリートに命中、フラッグシップを大破させ、重巡を轟沈させた。
「今です!!比叡さん、霧島さん!!!」
紀伊が叫んだ。
「了解です。比叡姉様!」
「主砲、構え!!」
二人が主砲砲塔を手負いの戦艦群に向ける。
「主砲、斉射、始め!!!」
轟音と共に放たれた35,6センチ砲が敵戦艦を貫いた。
「愛宕さん、矢矧さん、能代さん、皆さん!!お願いします!!」
霧島の求めに応じ、それまで軽巡以下と水雷戦闘を行っていた矢矧たちが一斉にうなずく。
「愛宕先輩、指揮をお願いします。能代、ここは任せたわ。磯風、清霜、私についてきて。航空隊の支援の下、残りの大型艦をつぶしに行くわ。」
敵はその数をだいぶ減らされ、さらに空母を全滅されられたとはいえ、まだ戦艦は大破した一隻を除き健在だったし、重巡以下とスクラムを組んでこの戦場を離脱しようとしている。矢矧たちと目の前で交戦する軽巡以下の艦隊はさらにこの艦隊を護るべく猛進して間に割り込む動きを見せていた。愛宕、能代たちはそれらの動きに合わせつつ、的確に軽巡艦隊を沈めていく。矢矧たちはこの敵艦隊を大きく迂回して、敵の中枢に突撃していく。
「加賀さん、敵の残存艦隊に攻撃機を集中。できる限り撃破しましょう。」
「いいの?空母は撃破したし、初動目的は達せられたと思うけれど。」
「敵の戦意はフラッグシップを大破させられたことで低下しています。今ならそれほど損害がなく敵を撃破できると思います。それに・・・・・。」
「それに?」
「第一航空戦隊として私は恥ずかしくない戦いをしたい。」
にじみ出る赤城の想いを受け取った加賀は無言でうなずいた。二人は艦載機を順次発艦させ、敵艦隊に向けて吶喊せしめた。その下では第一斉射を終わった大井、北上の二人が転進して敵艦隊の真横につくべく運動を開始している。紀伊、讃岐は二人を護衛し敵艦隊に砲撃を浴びせ続けていた。さらに反対側からは比叡、霧島の砲撃がまだんなく続き、そして矢矧たちが近接戦闘を仕掛け、軽巡艦隊を撃破した愛宕たちもこれに加わった。


艦種が異なっているが、すべての艦娘たちがまさしく一糸乱れぬ連携で敵艦隊を相手に奮闘していた。
 
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