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クローンといえど

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第三章

「完全なね」
「ではその白紙の彼等にですか」
「教育を施していく」
「一からですか」
「そうだよ、そうしていくのだよ」
「独裁者に教育ですか」
「確かに彼等は悪名高い独裁者のクローン達だよ」
 博士は山村にそのことを話した。
「何千万もの犠牲者を出したね」
「その通りです」
「けれど彼等は真っ白なんだよ」
 何の教育も施されていない、というのだ。
「ではね」
「それならですか」
「これから教育をしよう」
「独裁者再びでは」
「さて、それがどうなるか」
 教育をしてみようというのだ、独裁者達のクローン達に対して。それはヒトラーやスターリンだけでなくムッソリーニのクローンにもだった。
 博士は教育を施した、それは彼が言った通りに聖職者カトリックのものだった。
 教育といっても頭の中に次から次と機械で知識を流し込むものだった、それを数ヶ月行うとクローン達は。
 もう完全にカトリックの司祭になっていた、神を讃え万民に慈愛を注ぐ様な。山村はその彼等を見てだった。
 そしてだ、こう博士に言った。
「あの」
「彼等だね」
「はい、驚きました」
 司教の服を着て十字架の主に跪く彼等を見ながらの言葉だ。山村は教会の礼拝堂で博士に対して言った。
「正直」
「これが教育だよ」
「独裁者でも最初から教育を行えばですか」
「そう、聖職者にもなれば」
 博士は山村にさらに言った。
「スポーツ選手にもなれる」
「サッカー選手にもですね」
「そう、なれるのだよ」
 ヒトラーやスターリンでも、というのだ。
「彼等はスポーツとは無縁だったがね」
「そもそもスポーツに向いてます?」
「どうだろうね、頭は抜群にいいがね」
 頭が悪くては独裁者にはなれない、運よくなれても足元を掬われてしまう。
「運動はね」
「縁がないですね」
「そうだろうね」
「やっぱりそうですよね」
「だからスポーツ選手になる為の教育をしても」
「スポーツ選手にはですか」
「なれないかもね、アスリートはもう才能も関係するから」
 それぞれのスポーツのだ、サッカーなり他のスポーツでもそれは同じだ。
「わからないがそれでもね」
「スポーツ好きにもなれますか」
「アインシュタインのクローンでもだよ」 
 偉大な学者である彼のそれを出してもというのだ。
「教育次第でね」
「学者以外の仕事に向かいますか」
「そうだよ、独裁者達と同じでね」
「教育なんですね」
「教育でね」
 まさにというのだ。
「人は変わるんだよ」
「悪名高き独裁者が慈愛に満ちた聖職者にもなる」
「スポーツ選手にもロック歌手にもなるよ」
「ロック歌手にもですか」
「そう、教育次第で」
 博士の言葉にだ、山村はヒトラーやスターリンがギターを持ちドラムを鳴らして演奏しつつ派手な歌を歌っている姿を想像した、黒い革の衣装を着て。
 そのうえでだ、こう博士に言った。
「凄い光景ですね」
「想像したね」
「それは出来ましたが」
「何ならキング牧師のクローンをロック歌手にしてみるかね」
「キング牧師ですか」
「孔子でもいいね」
「何かもう無茶苦茶ですね」
 山村は彼等のロックスター姿は想像出来なかった、それこそジミ=ヘンドリックスの様な派手な演奏をする彼等のそれを。 
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