| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

アルケミスト

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第四章

 グライゼナウはさらにでした、実験から色々なものを生み出しました。
「畑の虫を殺す薬ですか」
「それも出来たしな」
 シュタインホルクにその薬も出しました。
「また出来た、それにじゃ」
「ええと、火薬も」
「これまでの火薬よりもな」
「いい火薬が出来ましたか」
「それも出た」
 実験の中でというのです。
「金は相変わらずだがな」
「そうですね、ただ」
「それでもな」
「色々なものが出来ていますね」
「全てご領主様に紹介しておる」
「そしてそれが造られて」
「売られてな」 
 そうしてというのです。
「領地を潤しておる」
「そうですね」
「思わぬ展開じゃな」
「全くですね」
「しかしどうもな」
 グライゼナウはシュタインホルクにこうもお話しました。
「ご領主様はな」
「喜んでおられますね」
「国が潤ってな」
「それで、ですね」
「しかも造る時に人を雇うからな」
 このこともあってというのです。
「領地で溢れそうになっている者に仕事を与え」
「他の領地からもですね」
「人が来ておる、人が増えた」
 結果として、です。
「よいことにな」
「金が出来なくとも」
 ついでに言えば不老不死の霊薬もです、まだ出ていませんが。
「それでもですね」
「色々出来てな」
「それが領地を潤していますか」
「思わぬことじゃ」
「全くですね、ただあのワインも石鹸も」
 こうしたものについてです、シュタインホルクは言及しました。
「美味しいですし役に立ちますし」
「そして売れておるからか」
「黄金みたいなものですね」
「そういえばそうか、実は今度はな」
「今度は?」
「砂糖を使って実験してみたが」
 砂糖から黄金を生み出そうとしたのです。
「それがな」
「黄金は出なかったけれどですか」
「白い砂糖が出来た」
 これまで砂糖というと黒いものでしたが。
「これはかなり甘い」
「黒い砂糖よりも」
「また別の甘さだ」
「そうですか」
「ちょっと味わってみるか」
「はい、それじゃあ」
 実際にでした、シュタインホルクはその白砂糖を味わってみました、するとです。
 黒砂糖とはまた違う独特の甘さで美味しかったです、それで言うのでした。
「これもいいですね」
「そうだな、じゃあこれもな」
「ご領主様に紹介して」
「領地で造ればだ」
「売れますね」
「そしてお金になる」
「これもまた」
 白砂糖もです。
「いい感じになりますね」
「うむ、金は造り出せないままだが」
「お金になるものはですね」
「どんどん出て来ているな」
「全くですね」
 二人でお話するのでした、グライゼナウは黄金を造ろうとし続けました。その途中で売ってお金になるものを次々と生み出しました。
 そしてです、領地はとても豊かになってご領主さんは言うのでした。
「お金は産み出せなくてもお金は出来たな」
「そうなりましたか」
「それならそれでいい」
 こうグライゼナウに言うのでした。
「それで領地が豊かになるのなら」
「左様ですか」
「それもそなたのお陰だ」
 グライゼナウに笑顔で言うのでした、グライゼナウがその後黄金を生み出すことが出来たかは誰も知りません。ですが。
 多くのものを生み出して領地を豊かにしたグライゼナウと助手のシュタインホルクの名前は領地に永遠に残りまいた、領地を豊かにした偉大なる錬金術師として。皆彼に対して心から感謝してその感謝は何時までも残りました。


アルケミスト   完


                        2016・9・16 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧