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夜間戦

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第二章

「いいか、東京への爆撃だがな」
「はい、東京上空に来たらですね」
「一気に来ますよね、日本の連中も」
「夜間戦闘機が」
「そうだ、奴等も必死だ」
 敵である日本軍もというのだ。
「どんどん来るからな」
「奴等も馬鹿じゃない」
「そういうことですか」
「敵を侮っていたら負けるぞ」
 マクドネルの確かな考えの一つだ。
「御前等もそれはわかってるだろ」
「はい、日本軍も強いです」
「しかも馬鹿じゃないです」
 部下達も通信から口々に言う。
「諦めないですしね」
「必死に来ます」
「馬鹿にしたらやられるぞ」
 自分達の方がというのだ。
「死にたくないだろ」
「はい、絶対に」
「何があっても」
「生きて帰ってです」
「英雄になりたいです」
「そうだろ、だからな」
 生きて喝采を浴びたい、それが故にというのだ。
「死ぬなよ」
「ですね、撃墜なんてされたら」
「よくても捕虜ですからね」
「それもあれですし」
「それなら」
「下手なことはするな」
 具体的に言うと被弾である、敵の攻撃を受けて。
「連中は夜間戦闘機も持ってるしな」
「月光とかですね」
「雷電とかもそれで使ってきますし」
「戦うまでわかってなかったがな」
 マクドネルは自分の以前の考えも部下達に言った。
「日本人も馬鹿じゃない」
「猿とか言う奴いますけれどね」
「今も多いですけれどね、そういう奴」
「ハーストなんか読む奴の方が馬鹿だ」
 それこそという言葉だった、アメリカのタブロイド詩だ。質の悪い紙に質の悪い記事を書く愚劣なジャーナリズムの象徴でもある。
「タブロイドはタブロイドだ」
「ですね、本当に」
「あんなの読んでも何もわかりませんね」
「かえって頭が悪くなる」
「そうしたものですね」
「そうだ、実際に戦うとな」
 その日本軍とだ。
「ドイツ軍に負けない位に強い」
「ですね、本当に」
「特に空と海は」
「とかくです」
「物凄く強いですね」
「そうだ、だから今もな」
 日本本土上空での夜間戦もというだ。
「油断するなよ、いいな」
「はい、そろそろですしね」
「日本機来ますね」
「それも必死に」
「数も結構来るからな」
 戦争で消耗しているからだ、機体もパイロットも。
 しかしだ、それでもというのだ。
「ない分だけかき集めてくるぞ」
「自分達の国を守る為に」
「そうしてきますね、相手も」
「ああ、俺達だってそうするさ」
 アメリカ人の立場に立っての言葉だ。 
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