| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

歌集「春雪花」

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

278




 密やかに

  想いそぼ降る

   秋の夜の

 月影落つる

    風もなきにし



 静かな夜更け…耳を澄ませば、遠くから微かに車の走る音がするだけ…。

 そんな静けさの中に一人でいると…まるで雨が降るかのように、彼への想いが募ってくる…。

 遠く…また遠く…。彼はここにはいない…。

 窓の外には月明かり…世界を蒼白い光で満たしていた…。

 風はなく…草木の掠る音さえしない静かな夜更け…。


 泣くことさえ…儘ならない…。



 野も枯れて

  冬を待ちにし

   侘しさに

 君に逢いたき

     心叱りし



 見渡せば野の草も枯れて、辺りは冬支度を整え始めている…。

 長く寒い冬…凍てつく寒さが心までをも多い尽くす季節…。

 また…堪え忍ばねばならないのか…。彼のいない冬…。

 会いたい…そう思う権利すら私にはないのだ…。

 だが、心は会いたいと願い続け…私を遠くへと誘う…。

 そんな心を…私は叱りつけ、己の愚かさに溜め息を吐くのだ…。



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧