| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『チロの物語』

作者:零那
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

『海斗』



僕は、チロの躰から
抜け出した魂。

いつの間にか
あの砂浜に居た。
流那チャンが
砂浜の端っこに
穴を掘ってる。

涙が...とめどなく
流れて、それを
拭いながら
穴を掘り続ける。

此処には先輩猫も
たくさん眠ってる。
前、流那チャンが
教えてくれた。

お兄ちゃんが
殺してしまった
子猫3匹も

おじいちゃんが
殺してしまった子も

事故で
死んじゃった子も

あの家にいた猫は
此処かオリーブの処が
お墓になるらしい。

僕は
此処で良かった。
流那チャンとの
思い出がたくさん
詰まってるから

きっとまた
流那チャンの元に
行けそうな気がする。

僕の魂は
安らかに天に昇る。

その後、僕は
流那チャンの前に
人間として
現れたんだ。

そして
流那チャンの為に
此の命を
捧げることが
出来たんだ...。

それがどんなに
幸せな事か
流那チャンには
解らないだろう...

もしかしたら
僕は流那チャンに
悲しみを
与えてしまった
だけだったのかな?

僕はまた
人間として
流那チャンの前に
現れる事が
出来るのかな?

その時は
きっと僕が
此の手で此の命を
かけてでも
流那チャンを
幸せにしたい...。

海斗として
生きた日々を...
永遠に
忘れはしない。

流那チャンを
少しでも
守れたこと

流那チャンを
少しでも
掬えたこと

僕が流那チャンと
過ごした日々の中で
流那チャンが少しでも
楽しいと思えたこと

流那チャンにとって
僕の存在が確かに
大事だったこと

限りなく愛に近い
情を交わし
心が通ったこと

ずっとずっと
永遠に
忘れはしない。

そしてまた
流那チャンと共に
生きたいと願う...

今度は
流那チャンの愛を
独り占めできる
存在になりたいと

できることなら
流那チャンの
子供になれたら

なんて...
無理な話かな?


(※海斗=『小さな街の、大きな闇。』参照)


 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧