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小ネタ箱

作者:羽田京
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一発ネタ
  テイルズオブ転生者ネタ「サーヴァントドミネイター爆誕」

 
前書き
・続きました 

 
 冬木市。
 とある名家の屋敷にて、怪しげな儀式が行われていた。


「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
 繰り返すつどに五度。
 ただ、満たされる刻を破却する」


 力ある言葉が、響きわたる。


「汝三大の言霊を纏う七天、
 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」


 呪文を唱え終えると、屋敷に何かが激突したような大音量が鳴り響く。
 すわ何事かと身構え、召喚に失敗したのかと青ざめる。
 とりあえず、確認しなければならないと気を取り直し、震源地へと向かう。
 現場についた少女――彼女が召喚の儀式を行った――が見たものは。


「って、死にかけじゃない!?」


 血まみれの偉丈夫が横たわっていた。
 召喚してそうそう死なれたなんてたまったものではない。
 泣く泣く父の形見のとっておきの宝石を使って治療した。
   

「サーヴァントドミネイターだ。救命感謝する。」
「マスターの遠坂凛よ」
「死にかけの私を治療するとは……マスターは偉大な魔術師なのだな」
「べ、別に大したことないわよ」
「私は詳しくないが、触媒の宝石は貴重なものなのだろう? ……すまない」
「マスターなんだから当然のことをしたまでよ」

 
 目覚めたサーヴァントは、ドミネイター(侵略者)を名乗った。
 まさかのイレギュラークラス。セイバーを狙っていたのに、と一瞬気落ちするが、すぐに気持ちを切り替える。
 理由はどうあれ、英霊は英霊である。マスターとして選ばれた以上、義務を果たすのみ。


「ところで、貴方は何の英霊なのかしら? ステータスは……ってえええ!?」
「どうしたマスター、そのような奇声を上げて」
「な、なんなのよこれ!」
「ん?」
「あんたのステータスよステータス!」
「む、そんなにステータスが低かったのか。これでも自信があ——」
「違う! 高すぎよ、あんた何者なの?」


 あらためて、青年、ドミネイターを見つめる。
 赤いバンダナを巻き、流れるような金髪を背に流し、ボロボロだがどこかの民族衣装のような恰好をしている。
 驚くほど整った顔に、サファイアの瞳は叡智を感じさせた。
 ステータスは魔術師寄りだがすべての能力値が驚くほど高い。
 そして、彼はよく響く特徴的な声で名乗った。


「我はデリス・カーラーンの使者、ダオス」


 聞いたことない英霊の名前に凛は混乱する。
 幸か不幸か、典型的な魔術師である凛はパソコンを持っていなかった。
 もし、インターネットで検索していたら彼女はもっと混乱していたかもしれない。
 いまだインターネット黎明期とはいえ、ダオスの名前はすぐに見つかったはずだ。
 凛が知らないだけで、彼はこの世界でも名を(一部で)知られていた————SFC、PSゲーム、テイルズ・オブ・ファンタジアのラスボス、ダオスとして。





 やっぱつええな、クレス・アルベインたち。さすがは、主人公。
 ああ、俺……死ぬんだな。
 精霊マーテルよ! 俺は死んでも構わない。だから、どうかどうか、大いなる実りを俺の故郷に、デリス・カーラーンに届けてくれ!
 頼む!!!! …………まさか、だめ、なのか。

 これは、クレス・アルベイン!? お前たちまで、デリス・カーラーンのために祈ってくれるというのか。俺のために泣いてくれるというのか!  ああ、お前たちこそ本当の勇者だ。
 おお、マーテルよ! これこそが大いなる実り。
 俺の亡骸といっしょに母なる星へ届けてくれるというのか。
 ……ありがとう。ありがとう。

 父ちゃん、母ちゃん、みんな。どうか、元気、で……来世があるならば、今度こそ……誰にも迷惑をかけずに、人の役に立ちた……い、な。

(その願いききいれました)

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
 繰り返すつどに五度。
 ただ、満たされる刻を破却する」

 ん? 身体が引っ張られていく!? なんかいろんな知識が流れ込んでくる。
 は、聖杯戦争? ……ハアッ!?

 そして、俺は轟音とともにマスターの家に墜落。
 ドミネイターとして新たな生を受けたのだった。いきなり死ぬかと思った。





「ダオス? 聞いたことのない英霊ね。それに、デリス・カーラーンって何よ」
「私の正体を一言でいえば、異世界の魔王だな」
「何馬鹿なこといってるの。いまはふざけないでくれる?」
「ふざけてなどいないのだが」


 遠坂凛は混乱していた。
 自分のことを異世界の魔王だと抜かすなど、脳みそ沸いてるんじゃないの。
 しかし、ドミネイターは至って真面目な様子だった。
 異世界とやらについて問い詰めてみると、理路整然と答えが返ってきた。
 デリス・カーラーンとは彼の母星であり、滅亡を回避するため単身アセリアという星に旅立ったらしい。
 アセリアでの出来事に関しては口をつぐまれたが。
 魔王と呼ばれるほどのこと仕出かしたのだ。答えたくはあるまい。
 死にかけだったのは、異世界の勇者との最終決戦に敗れたところに召喚されたから。
 確かに辻褄はあっている。


「オーケー、とりあえずあなたの話、信じてあげる。でも何か証拠になるようなものはないの?」
「ならこれはどうだ―――――<タイム・ストップ>」
「消えた?」
「これで信じてくれるかね」

 うひゃあ、と淑女にあるまじき悲鳴を上げて凛は振り返った。
 そこには目の前にいたはずのドミネイターがいた。
 転移魔法、確かにさすが神代の魔術といえるが、異世界の証拠にはならない。
 だが、ドミネイターからの返答は——。

「時を止めた、ですって?」
「聖杯からの知識によれば、時を止める魔術はないのだろう。他にもこの世界にはない魔術や法術はあるが、攻撃魔法が多くてな。まさかいきなり隕石を落とすわけにもいくまい」
「当たり前でしょ!」


 その後何度か<タイム・ストップ>を使わせて、ようやくこれが時を止める魔法であると理解した。
 そう『魔法』である。人類がなしえない超常現象であり、魔術とは一線を画す。
 凛とて魔法に到達するために聖杯戦争に挑んだのだ。
 いきなり魔法に出会えるとは、さすが聖杯戦争ね、と独り言ちる。


「ドミネイター、他にはどんな魔法を使えるの?」
「そうだな……私がよく使うのはブラックホールやビックバン、タイダルウェーブあたりだな」
「な、なんか名前だけで凄そうね」
「冬木市くらいなら簡単に廃墟にできるな」
「ドミネイター! 大規模魔法は封印よ。いいわね」
「承知した。あと、私オリジナルの必殺技もある」
「へー、必殺技、かっこいいじゃない」
「ダオスレーザーにダオスコレダーだ」
「……」


 ふふん、と自慢げに必殺技を語るドミネイターに凛は閉口した。
 
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