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NARUTO日向ネジ短篇

作者:風亜
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【お前は生きろ】

 
前書き
 大戦で死んでしまったはずのネジが目覚めた場所は──── 

 
「おーいアンタ、大丈夫かぁ?」


「─────・・・」


 聞き覚えのある声に導かれ、ネジは意識を戻した。

うつ伏せに倒れていたらしく、声を掛けられた方に顔を向けると、何故だか3,4年程前の姿のうずまきナルトがしゃがんだ姿勢で心配そうにこちらを窺っていた。


「おいナルト、無闇に近寄るな。...何かの罠だったらどうする」

「で、でもネジ兄さん……その人、病院に連れて行ってあげた方がよくないかな...?」

 他に二人、3,4年前の姿の"自分"と、ショートヘアの頃のヒナタが少し間を空けた所にいて、こちらを慎重に窺っている。


「───お? アンタもしかして、白眼か? ネジとヒナタと同じだってばよ」

 ナルトは、相手の若干乱れた長い髪の間から覗く瞳に気づいてそう言った。


「……白眼使いか? 日向家の者───ではなさそうだが」

「そう、かな…。わたしは何だか、知っている気がするんだけど……」

 訝しむ過去の自分と、何かを感じ取ったようにこちらを見つめてくるヒナタ。


ネジがおもむろに上半身を起こすと、過去の自分は片手を水平に上げてヒナタを守る姿勢をとった。

しかしナルトの方は特に警戒しておらず、こちらに問いかけてくる。


「オレは、外でこの二人の修行に勝手に付き合ってたんだけどよ、あいつ……ネジが妙な気配するっつーからちょっと林の先まで来てみたら、あんたがうつ伏せで倒れてたんだってばよ。何か、あったのか? 見たとこ、ケガしてるようには見えねぇけど」

 そう言われて、ネジは思わず胸の辺りに片手を当てた。

……自分は確か、挿し木の術で上半身を刺し貫かれたはずだった。しかし、今は何ともない。

まして忍ベストではない、普段着用していた白装束の格好をしている。

額当てをしておらず、後ろの髪はほどけているようだった。

自分は、ヒナタとナルトを庇って死んだはず……というのは覚えていたが、何故もう1人の自分が存在している過去のような場所に居るのかはよく判らなかった。


「なぁアンタ、胸に手ぇ当てて難しい顔してっけど、そこ痛むのか?」

「───いや、大丈夫だ。気にしなくていい」

「...んッ? アンタ、今の声からして───オトコだったんだな。見た感じ、オンナかと思っちまったってばよ。つーか……アンタの声、ネジに似てんな??」

 ナルトに怪訝そうに指摘され、ネジは心中しゃべらなければ良かったかと感じた。


「あの……、もしかしてあなたは、わたし達が知っている人なんじゃ、ないですか……?」

「ヒナタ様、何を言い出すんだ。そいつは白眼持ちで得体が知れない……話をするだけ無駄だ」

 白眼でこちらを油断なく窺う過去の自分と違い、ヒナタは恐れる事なく前へ出てこちらへ歩み寄ろうとしてくる。

「そんなことないよ、ネジ兄さん。...わたしにはどうしても、この人が知らない人には思えないの」


「──── ヒナタ」


 思わずつぶやくように、ネジは静かにその名を口にした。


「へ...? アンタ、ヒナタのこと知ってんのか?? 名前はついさっき、ネジがヒナタ様っつったけどよ……アンタは普通に、呼び捨てだな。オレもだけどよッ?」

「変化はしていないようだが……貴様、何が狙いだ」

 ナルトの言う事には構わず、過去の自分が柔拳の構えをとる。

「やめて、ネジ兄さん。この人と……話だけでもさせてください」

「─────、どうなっても知りませんよ」

 過去の自分はヒナタの願いを聴き入れるが、警戒は解かない。


「あなたは……わたしのことを、知っているんですね。きっと、ナルトくんのことも……ネジ兄さんのことも」

「…………...」

 ヒナタは、地面に座り込んだままの白装束の相手にできるだけ近寄り、目線を合わせるように両膝を付いた。


「だとしたらお前は……俺が何者だと思う」

 
 僅かに憂えた表情で、ネジは過去のヒナタを前にそう問わずにはいられなかった。


「声が...、そっくりだね。きっとあなたは、未来のネジ兄さんなんだ」

 何ひとつ疑っていない様子で、ヒナタは微笑んだ。

───過去の自分は何も言わない代わりに眉をひそめ、ナルトの方はヒナタの言葉に素直に驚いて"二人のネジ"を交互に何度も見やった。

そしてヒナタは、額当てのされていないネジの額に眼をとめる。

「呪印……消えてるんですね。未来に、日向の呪印を消す方法が、見つかったんですか?」


「─────・・・」


 ふと、ヒナタから視線を逸らすネジ。


「そんな……じゃあ、あなたは」

 何かを察したヒナタは、驚いた表情で片手を口に宛がった。


「ん…? 何のこと言ってんだってばよ、ネジ?」

 ナルトが馴染みのある方に問うと、過去のネジは眉をひそめたまま無感情に答える。


「お前には一度、中忍試験試合のあの場で話したはずだが……まぁ、忘れても構わない事だが、日向の呪印は受けた本人が死んでしまわない限り消えはしない。つまりそいつは───既に死んでいるという事だ。どうりで、チャクラの流れがちっとも感じられないわけだ。...未来の死人が何故、この場に存在しているかは俺にも見当が付かないがな」

「あッ? し、死人?? ソレってつまり、ゆーれいッ……いや! そんなはずねぇってばよッ! ネジは天才なんだ、そう簡単にくたばるわけねーだろ! なあッ?」


「・・・─────」


 ナルトの言葉に、ネジは沈黙する他なかった。

「お、おい……何とか言ってくれってばよネジ...ッ! よっしゃ、ならオレがお前は死んでねぇって証明してやるッ。行くぜ、よけんなよ……いっせーのー、せッ!!」


 ナルトは何を思ってか、座った姿勢のままのネジの頭部をいきなりバシッと片手のひらで思い切り叩いた。

「───おッ? ほら、すり抜けずに叩けるってことはユーレイなんかじゃねぇってばよ! ネジは生きてる証拠だッ。なぁ、痛かったろ?」


「───・・・いや、特に」

 ナルトからすれば叩いた感触はあったが、ネジにしてみれば、痛みや叩かれた衝撃は一切感じられなかった。

「お、おかしいな……、確かにさわれるんだけどよ…ッ??」

 ナルトは何度もネジを叩いたり、体のそこかしこに触れてみたりしたが、当のネジは怒りもせず無表情でされるがままになっている。

「ナルト……、ベタベタそいつに触れるな」

 過去のネジからすると、未来の自分かもしれない存在を執拗に触られて少々不愉快だった。

実の所、ヒナタもナルトと一緒になってネジに触れたそうにしていたが、恥ずかしくて一歩踏み出せずにいる。


「……俺は、ここに在るべきではないようだ。還り方など知らないが、お前達の前からは去るべきだろう」

 ネジはそう言って立ち上がりかけたが、足元がフラついて前のめった拍子にヒナタが上体を咄嗟に抱き支えた。


「行かないで……、行っちゃだめだよ」


 耳元のヒナタの声は、微かに震えていた。


「心配、しなくていい……。俺が居なくなっても、この先の未来は────きっと守られる。ヒナタは……ナルト達と共に、その先の未来を生きてくれ」

 ネジは、そう述べるのがもう精一杯で、今にも意識がどこかへと強制的に追いやられそうだった。


「ふざけんなよ、ネジ」

 ナルトがつと、怒った表情を向けてくる。

「オマエのいない未来なんて、オレが認めねぇ。───生きろよ、死んでも生きろッ」


「おいナルト、...未来の俺が何で死ぬかはともかく、俺自身が納得しているなら潔く逝かせてやれ」

 過去の自分は肯定するが、ナルトは納得しない。


「気合いで生き返れ! オマエはまだ、死んでねぇッ。触れることが出来るってことは、生きてんだよぜってぇッ!」

「無茶を、言うな……。死んだあとに逝くはずの場所を、何故だか間違えただけだろう……。それに、触れられるといっても……感覚が、もう無いんだ」


「────ネジ兄さん」

 ネジの身体の輪郭が薄れていくのを感じながら、ヒナタはネジの両頬に手を添え、瞳に涙を溜めつつも真剣な眼差しを向ける。

「どうか、生きて。みんなと一緒に……あなたともっと先の未来を見たいから」


( ヒナ...タ…… )


 ───霞んできたネジの眼が最後に捉えたのは、過去の自分だった。

「俺は、未来の自分がどんな死に様をしようが知った事じゃない。……だが、満足して死んだつもりで未練がましくこんな所に戻って来る暇があったら、さっさと元の自分に還れ。───まだ間に合うなら、生きろ。自分自身の未来を。ヒナタ様や、ナルト達と共に」


 その言葉を聴き届けたように瞳を閉ざし、微笑みを浮かべたネジは、幾つかの小さな光の粒となって上空へと運ばれて行った。



「ネジ……、大丈夫だよな、あいつ」

 ああは言ったものの、ナルトは心配してネジに同意を求める。


「俺は父上に……父様に、言われているんだ。『お前は生きろ』と。───だから、まだあいつに死なれては困る。俺には、生きて見届けたい未来がある。そう簡単には、死ねないさ」

 どこまでも続く蒼い空を仰ぎ見、微笑するネジ。


(きっと……、生きていてくれる。ネジ兄さんなら────)


 今しがたまで触れていた未来の存在を愛おしむように両手を胸の前に添え、ヒナタは祈りを込めて瞳を閉ざし、微笑んだ。





「────さん...兄さん……ネジ兄さん!」


「────・・・・・・!」


 自分を何度も呼ぶ声を辿ってゆくと、そこにはヒナタが、瞳に涙を浮かべこちらをのぞき込むように見つめていた。

もう1人……憔悴した様子のナルトも居る。

「やっと……やっと、目ぇ覚ましたなネジ。お前、どんだけ寝過ごしてんだ…ッ!」

 今にも泣き出しそうに、ナルトは笑った。


「目を覚ましそうな気配だったから、さっきから何度も呼び掛けていたの。良かった……本当に、良かった...! お帰り、ネジ兄さん」

「ヒナタとオレを庇って、意識だけどっか行っちまったままになりやがって……。お前の居場所は、ここなんだ。ネジ...、もう勝手にどっか行ったりすんなってばよッ」


 かなりの間、病室のベッドで意識が無かったらしく声をうまく出せなかったが、その代わりネジはヒナタとナルトを安心させるように微笑んで見せた。

(そうだ……、俺にはまだ、役目がある。この二人や、仲間達の未来を……俺は生きている上で、見届けなければ)




《終》
 
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