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雪の進軍

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第五章

「止めよな」
「一体何時止むんだ」
「今年の十勝は大雪だな」
「こんな時だけ止んでくれよ」
「地震だっていうのに」
 彼等はその雪を忌々しげに見つつ思った、被災者の人達のことを思いつつ。
 マスコミは自衛隊の活動を殆ど報道しなかった、だがネットでは。
「あんな大雪の中頑張ってくれたんだな」
「やっぱり自衛隊の人達は凄いな」
「雪の中進んでいって活動して」
「凄いな」
「被災者の人達も感謝してるぞ」
「死んだ人がいなかったんだ」
 大きな広い範囲で起こった地震であったがだ。
「よくやってくれた」
「現代の雪の進軍だな」
「雪の中での戦いだった」
「それをやってくれたんだ」
 そして多くの人達を救ったというのだ、ネットではこの活動が讃えられていた。
 山中はそのことを聞いてだ、笑顔になって言った。
「見てくれている人は見てくれているな」
「そうですね」
「マスコミは相変わらずですが」
 相変わらず自衛隊には批判的だ、意図的に報道することもない。
「しかしです」
「国民の人達は見てくれています」
「しっかりと伝えてくれています」
「有り難いことです」
「何よりも心強いです」
「本当にそうだな、是非彼等に伝えよう」
 出動した彼等にというのだ。
「このことをな」
「雪の中でのことは無駄ではありませんでした」
「大きな勝利と言えますね」
「被災者の人達も感謝してくれていますし」
 その声も伝わっていた、ネットから。
「こんなにいいことはありません」
「我々の行動は無駄ではありませんでした」
「全くだな」
 笑顔でだ、山中は笑顔のまま話した。そしてだった。
 彼は自身の師団の出動した彼等にこのことを伝えた、すると彼等は静かに微笑んで言った。
「よかったな」
「本当にな」
「正直救助出来てる不安だったがな」
「あの人達が助かっているか」
「寒くなかったか」
「心配だったが」
 だがそれがというのだ。
「助かってくれてたんだな」
「あの雪の中でも」
「それならいいさ」
「あの人達が助かっているのなら」
 それで満足だとだ、彼等は思った。その報道を見て。そして彼等の場所でまた何か起こった時に備えるのだった。有事に。雪はもう止んでいたが彼等の戦いは終わらない。国民と日本を守る為のそれは。


雪の進軍   完


                        2016・10・26 
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