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提督がワンピースの世界に着任しました

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第26話 母娘の再会

 ニコ・ロビンはオハラで海軍のクザン中将から強引に小舟に乗せられて島から脱出した後、行く当てもなく適当に目についた商船に忍び込んで、幾つかの船を乗り継いでオハラからは遠く離れた島へとたどり着いていた。

 オハラから脱出した時から、彼女は着の身着のままで逃げてきたので、当然お金も持っていなかったので、商船の積荷を幾つかを無断で拝借して生き延びた。
 そして島に降りてから今は、食糧を確保するに町に設置されていたゴミ箱の中から、食べ物を漁って食いつなごうとしていた。
 
 ところが運が悪い事に、ゴミ箱を漁っているところを町民に見つかってしまい、逃亡生活で疲弊しきっていたロビンの残りの体力では逃げ切れずに、あっさりと捕まってしまった。

 町の人達は、ロビンの身元について調べてみたけれど、どうやら島の人間じゃ無い、という事が分かって扱いに困ってしまった。

 本来ならば身元不明のロビンは、町の駐在が一旦身柄を確保しておいて、親元へと返すために海軍に引き渡される筈だった。

 だがしかし、ロビンが子供という年齢であったという事と、彼女の語った少々脚色された暮らしについて、両親がすでに居ない孤児で、オハラ出身という事を隠して語られた今までの暮らし、そして逃亡生活をしていたという境遇に、町の人達が同情して、話を聞いていた一人のお婆さんがロビンの身柄を引き取る事を決めて、彼女はその日から逃げて来てたどり着いた見知らぬ町で暮らすことになった。

 オハラでの生活や、最近の逃亡生活に比べれば、朝、昼、晩の毎日三回の食事が食べられるし、夜は安心して寝れる。
 生活を続ける為には、お婆さんの生活を補助するために少しの家事をこなせば、残りは自由な時間として与えられていた。

 1つ不満を言えば、その島にある本の数は少なくて、その中でもロビンの興味を引くような事が書かれた書物は、残念ながら一冊も無かった事ぐらいだ。
 ロビンにとって非常に快適で、しばらく島でお婆さんとの二人暮らしの生活が続いた。

 けれど彼女は、オハラから脱出する時に、海軍の将兵であったクザンから”隠れてひっそりと暮らすように”という事を忠告されていたが、言う事を聞くつもりは一切無くて、この島もしばらく経てば黙って出ていこうと考えていた。

 ロビンの生活は、引き取ってくれた同居人であるお婆さんの顔色を伺いながら機嫌を取って、指示された家事をしっかりこなして、残りの自由な時間でハナハナの実の能力を使った戦い方の修行や研究等、今後の逃亡生活の為に訓練を続ける毎日だった。


 結局その島で生活したのは、数ヶ月だった。

 生活に慣れてきた頃、ロビンは町の人達の異変に気づていた。その異変とは、露骨に監視が付くようになった事。

 以前は自由奔放に島のあちこちを歩いて回るロビンを、町の人達は微笑ましい顔で眺めるだけだった。けれど、ある時から町民たちはロビンに気づかれないように隠れながら、コソコソと後を付いて歩いたり、訓練のために森の中の訓練場に向かおうとすると、森の中は危ないから入ってはいけないと忠告のような事を言って、彼らの目の付く範囲だけに行動を制限されるようになった。


 ロビンも、町の人達に隠していた悪魔の実の能力を使って、ハナハナの実で可能な眼や耳などの感覚器だけを生やし遠くから町の様子を探ってみると、オハラから逃げて来た事がいつの間にか知られていて、しかも自分が賞金首として捜索されている事を知った。

 その情報を知ったロビンは、数ヶ月は過ごした島の生活を捨てることを決心して、逃げ出すための計画を立て、準備に入った。そして同時期に、ロビンを引き取って世話をしていたお婆さんは、ロビンの身柄を引き渡そうと海軍に連絡を入れて、彼女に関する情報を包み隠さず提供をしていた。

 逃げ出す機会を伺っていたロビンの行動は一歩遅く、町民が海軍を島に呼び込んだのが一歩早かった。その結果、オハラの生存者であるロビンの居場所を知った海軍は、すぐに情報提供者の住んでいて、ロビンが現在も住んでいるらしい島へと捕獲部隊を向かわせていた。


***


 それは、ロビンが毎朝日課にしている玄関前の掃き掃除をしている時だった
「ごはんの前に、あんたにお客さんだよ」

 不気味な笑顔で呼びかけて来たお婆さんに、ロビンは内心で逃げ出すのが遅かったと後悔した。そして、お婆さんの後ろに居る黒服を見た瞬間に、手に持っていた箒を放り捨てて身体を反転させて逃げ出した。



「ロビン、伏せて!」
「ッ!!」

 黒服から逃げている最中にロビンは、誰かが大きな声で自分の名前を呼んだのが聞こえた。

 走って逃げている為に荒れる呼吸音と、後ろから怒鳴って追ってくる黒服達の捕まえようとしている叫び声が聞こえる中で、その女性の声が何故かロビンの耳にはハッキリと聞き取れた。

 そして声を聞いたロビンは、何かを考えるよりも先に声の指示に従って身体が反応し、倒れるように、うつ伏せで地面にすぐ転がった。

 地面に倒れた後、銃声が三発が聞こえるのをロビンは耳にした。そして頭上すぐ間近を、弾丸が空気の層を切り裂いて飛んでいくヒュンヒュンヒュン、という鋭い音を立てて飛んでいくのを聞きながら、今の女性の声の正体を悟っていた。

 まさか、そんな。この島に居るはずのない人、そもそも既に死んだと思っていた人の声。

 ロビンの頭の中では否定の言葉が溢れたけれど、今の短い言葉だけを聞いた声でも、ハッキリと聞き覚えがあった。

「お、お母さん」
「話は後、今のうちに逃げるわ」

 倒れていた地面からオルビアに引き起こされたロビンは、困惑しながらも手で引かれるまま森の方へ走っていった。そして走っている途中に、後ろを何度も振り返って気にしながら走っているオルビアの顔を目にしながら、ロビンは一生懸命に走った。


***


 森の中に入ってしばらく進んでから、ようやく二人は立ち止まって、荒くなっていた息を整えた。ようやく落ち着いた頃になっても、ロビンはオルビアの顔をじっと見つめるだけで、何も言えなかった。

 自分の顔をジッと見つめているだけのロビンに気づいたオルビアは、自分の娘に向かい合う為に地面に座り込んで同じ目線の高さにしてから、その一言を言った。

「ごめんなさい」

 言い訳も何も一切せずに、オルビアはその一言に万感の思いを込めて放った。

 それを聞いたロビンの心のなかには、数ヶ月前に起こった出来事の、オハラで無理やり引き離され、捨てられたという苦しみや悲しみ、そして恨みに近い感情が心の中にはあったけれど、それ以上に再び出会えた喜びが大きかった。

「ごめんなさい、ロビン。今度は、絶対に離さない」
「うっ、うっっっ!」

 その言葉を聞いて、ロビンの心がざわついて制御できなるなり、そのまま泣き出してしまった。何も言わず泣いたまま抱きついてきた娘を、オルビアも無言のまま後悔と謝罪の気持ちを込めて抱き返していた。



 母娘が再会を果たして、しばらくの時間が経った頃。

「ロビンちゃんと再会できて、本当によかったですオルビア」
「っ!?」
「えぇ、何とか無事に助けることが出来たわ。ありがとう、妙高」

 急に現れた、ロビンにとっては見知らぬ大人の女性、妙高の登場にロビンは飛び上がるように驚いて、オルビアに抱き着くのを止めた。

 オルビアは立ち上がってからロビンの頭を撫でつつ、妙高と向き合った。
 そして撫でられているロビンは、自分の母親から初めて頭を撫でられるという体験を感じながら、オルビアの着ているコートにしがみついて、妙高の視線から隠れてた。

 妙高は、そのロビンの様子を微笑ましく思いながら、安心して落ち着くのはまだ早いと気を引き締め直して、オルビアと会話を続けた。

「黒服達は、何とか全員気絶させることが出来て逃げてきましたが、他に彼らの仲間が追って来るかもしれません。町の人達もロビンちゃんを狙って、後を追ってくる事も考えられます。すぐに、この島から脱出して離れましょう」
「分かったわ。急いで海へ出ましょう」

 妙高にとって先程の黒服レベルの敵の強さでは脅威でなかったけれど、数で攻められたら面倒だし、ロビンという子供を守っての戦いになるのは避けたいと、すぐに島から出ていくことを提案し、オルビアも同意した。

「ロビン、今の私が住んでいる島に、一緒に来てくれる?」
「うんっ!」

 二度も酷い行いをしたのにも関わらず、即答で付いて来てくれると言ってくれた娘の答えに、先程の言葉で伝えた通りに、今度こそ絶対に離さないとオルビアは心でも誓っていた。 
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