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「藍い帽子(Dark blue belet)」

作者:7仔
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7月21日夜-1

 
前書き
米花町の子供達にとって、その年の、その日も、夏休みへの期待が高まる日となるはずだった。
だが、彼らの心中に残されたのは、恐怖とも、悲しみとも違う、奇妙な思い出だった。
どこか、暖かささえも感じた奇妙な時間を彼らは送ったのである。
かつて、藍帽子を誇らしげにかぶり、町民に笑顔を送っていた者達と共に・・・。 

 
「・・・司令室より、各移動へ。
機動隊の車両を奪って逃走中の容疑者は、警ら戦術隊112分隊所属・栗戸東樹(くりど・とうき)、真久井拾雄(まくい・ひろお)両巡査部長、及び安藤醸三(あんどう・じょうぞう)、富良野半次(ふらの・はんじ)、三島遥(みしま・よう)、各巡査と判明。いづれも特殊作戦服を着用、拳銃を所持。充分に警戒されたし。
5名は14:15、晴洲大橋手前の封鎖を強行突破。現在、晴洲近辺に潜伏していると思われる。
発見しだい、確保・不可能な場合は制圧せよ。
繰り返す。発見しだい、確保・不可能な場合は制圧せよ。
いづれも特殊作戦服を着用、拳銃を所持・・・。」

高木「拳銃?それを言うなら"機関”拳銃。マシンガンでしょうが・・・。」
捜査一課・高木渉刑事はため息をつく。

佐藤「ただでさえ警察無線を傍受して、マスコミに売り込もうとする馬鹿が多いのよ。」
同じく捜査一課・佐藤美和子刑事が返す。

佐藤「警官隊の反乱。小学校への立てこもり。その時点で散々マスコミに叩かれている。その上、彼らがマシンガンまで装備していたなんて知れたら・・・。」





ここは晴洲にある某所。本来は新世代の大型水産市場として機能するはずが、土壌汚染や建設ミスなど、度重なる不良の発覚により使用計画は中止。
後には空っぽの施設だけが残された。
ここまで作ったことだし、警察の訓練施設にしてみないか?という案が出ていたが、現実化のめどは立っていない。


高木や佐藤、その仲間達は今、三人組に分かれてここを偵察していた。
胴体にはボディアーマー、そして手にはショットガン、或いはMP5サブマシンガンが握られていた。



厳しい訓練で身についた能力と、地道な徒歩巡回で米花町の平和を守ってきたにも関わらず、一部隊員による教官殺害事件を機に、解散へ追い込まれることになった〈米花町分遣特殊警ら戦術隊/J-PTU〉。

その解散に反発した隊員7人が、装備を持ち出し脱走。機動隊などに追われ、帝丹小学校に逃げ込み、篭城。
長いにらみ合いの末、追跡側は第六機動隊強襲隊・SATによる突入を決行した。
銃撃戦で、立てこもっていた隊員の1人が死亡、もう1人も確保されたが、残る5名は再び逃走した。しかも大胆な手段によって・・・。




高木「まさか、SATに化けて逃亡するなんて。」

佐藤「哀ちゃんやコナン君はうすうす何かあるとは思っていたでしょうね・・・。」

立てこもった隊員たちは、いづれも私服姿。持っていたのもリボルバーが1挺ずつ。

この他に大きなトランクケースを持ち込んでいた。

実はこのトランクケースの中身こそ、彼らの最終兵器だった。


高木「トランクケースを持った5人は手ごろな場所に隠れ、中身・・・すなわち特殊部隊の服装と武装を身につけた。」


佐藤「そして残る二名がひきつけている間、SATに紛れ込んでまんまと脱出したわけね。」

脱走した隊員たちは、特殊部隊用のアサルトスーツ、ボディーアーマー、そしてMP5を持ち出していた。
これらはJ-PTUが試験的に導入していた装備品だったが、解散と共に機動隊に送り返される予定だった。


高木「だけど・・・それだけの装備を持っていながら、どうしてSATの突入時にそれで応戦しなかったんですかね。」

佐藤「最初は応戦するはずだった。でも・・・考えが変わったのよ。きっと・・・。」

佐藤は表情を崩さずに言葉を続ける。

佐藤「解散に反発して、脱走して小学校に立てこもり。その上・・・重武装で応戦なんかしたら、世論はどうなると思う?」

高木「・・・。」

佐藤「おそらく、J-PTUだけじゃないわ。他の特殊部隊・・・SATや自衛隊、海保のSSTまで、とばっちりを受けることになる。下手をすれば、日本の警察は普通の機動隊さえも満足に動かせなくなるわ。彼らは、自分達の仲間を、そこまで追い詰めたくなかった・・・。」

高木「だから人質・・・コナン君たちや先生達には、親切に接した。」

佐藤「突入が決定的になったと見るや、コナン君たちを体育館に避難させ、自分達は拳銃だけでSATに応戦した・・・。」

高木「・・・彼らは追い詰められ、道を誤ってでも、持ち続けた誇りだけは守ろうとしたんだ・・・。」

翔「だからどうだって言うんです。」

二人と一緒にいたもう1人が言い捨てた。

篠崎 (カケル)。彼は刑事ではなく、J-PTUの人間。それも112分隊・・・脱走した7人が所属していた隊の指揮官だった。
部下7人の追跡に加わること自体が異例だった。当然、部下への愛着・同情から逃走を幇助しかねないかという声はあったが、彼は公正平な警察官だった。
人間としての同情があっても、部下が起こした反乱を許したりはしない。

翔「それとも・・・それで情状酌量を得た連中が英雄として崇められ、世の中が警察や特殊部隊を理解してくれるとでも言うんですか?
・・・香港警察を参考に、日本の警察部隊を改良する。最初から無理があると気づけばよかった。それを俺達は・・・俺は・・・。」

高木「・・・。」

佐藤「・・・!」

佐藤は急に身構えた。

高木「どうしたんですか?」

佐藤「シッ・・・。」

高木「・・・。」

翔「・・・。」

三人とも神経を尖らせる・・・。

高木たちがいたのは、商店が立ち並ぶことになっていたと思われる場所だ。

佐藤と翔が、防護楯を手にした・・・と。

ドドドッダダダッ・・・。

佐藤「!今のは・・・。」

高木「・・・銃声ですか?」

翔「・・・。」


チキ・・・ガラガラガラ。

佐藤「!」



ダダッ!ダダッ!!バキューン!!! 
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