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HUNTER×HUNTER 六つの食作法

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007話

「しっかし(モグモグモグ)ストレス溜まるぜ。キルアの野郎、俺の睡眠時間を何時間削っただが(バリバリバリバリ)」
「まあ奴も子供だ、少しは大目に見てやったら如何だ?」
「(ガツガツガツ)しかしなぁクラピカ」
「まずは食べ終わってから話しをしよう、幾らでも聞く」

第4次試験合格者は再び飛行船へと乗船し最終試験へと駒を進めた。残るは最終試験、これまで過酷だったハンター試験。その際後の関門もきっと負けず劣らずの難問の筈、そんなラストに備えて一同は到着した会場となるホテルの部屋で休みを取っていた。シャネルも例外では無くクラピカと共に食事をしつつ雑談をしていた。傍から見ると大喰らいの彼氏の食べっぷりを見て笑っている彼女の図が食堂の一角に出来ていた。

「それにしても……かなり食べるんだな」
「ああ、俺は燃費悪いからな。結構な量食わねえともたねえんだ」
「しかし気持ちのいい食べっぷりだな、見ている私も食欲が出てくるというものだ」
「んっそうか?」

周囲に積み重なっている大量の皿、どれもソースの一滴すら綺麗に完食され料理人冥利に尽きる。が既に50人分異常の料理を完食している、今度は作り手としては料理人泣かせである。それと比べたら些細のものだがクラピカも一般人としてはそれなりにお代わりしている方だった。

「ふぅ……あぁ~食った食った俺幸せ♪」
「私もだ、少々食べ過ぎたな」

結果。クラピカは2.3人分、シャネルに至っては67人前の料理を完食していた。厨房からは料理人たちの疲れの声が聞こえて来そうだ。食後は互いに紅茶を飲みつつ雑談に華を咲かせていた。

「それだけだっつってんのによキルアの野郎しつこく聞いてくんだよ他にコツがあんだろ?!ってマジで無いのに」
「悔しいんだろうな、まあ気持ちは解らなくは無い」
「だからって夜中俺が寝てる間ずっと言ってくるんだぜ……?ストレス溜まりまくりだ」

コーヒーを啜りつつ荒れそうになる内心を押さえ込む、一度ストレスを抱えるそれを引きずってしまうというのは悪い癖だ。一度受けた屈辱を絶対に忘れずに報復するという物に近いそれは元々持っていた気質、故に元々生きていた世界では執拗に相手を付け狙う猟犬と揶揄されていた。何とかもう抑えられているが多分その内仕返しをすると思われる。同じ位の仕返しを。

「なあクラピカ俺も聞いて良いか、お前が何でハンターになりてぇのか」
「……ああ。話したくないだろう事を聞いたのだから私も語った方がフェアだな、すまない今になるまで気付きもしなかった」
「否そこまでは考えて無かったんだけどな……純粋に気になっただけで」

その言葉に嘘は無く本心、このハンター試験に何故参加したのかが気になっただけだった。そんな思惑とは裏腹に若干険しげな表情を浮かべたクラピカは口を開いた。

「私がハンターを志望したのは幻影旅団を捕まえる為だ」
「幻影、旅団……。蜘蛛か」

幻影旅団、通称「蜘蛛」。盗みと殺しを主な活動とする盗賊集団。上位の賞金首としてA級として手配されている盗賊集団、一流のハンターでさえ手を出すのを躊躇し出来る事ならばそいつらは相手にしたく無いと思うほど。とどのつまり、クラピカの目的は復讐と言う事になる。

「ほう……?随分と大物を狙うんだな、それでか六式の話しを聞いてきたのは。それなら別に教えてやっても構わないけどな、ハンター試験終わったら早速指導いるか?」

虚を突かれたかのように驚いた顔をするクラピカ、彼の発言に驚いたのだ。彼は復讐の為に手を貸してやっても良いと言っているのだ、普通なら復讐と聞けば誰もが止めるだろう。だがシャネルはしない、寧ろその逆をしている。

「……意外だな、正直止めると思っていたが」
「他人の目的を他人がどうこう言って良い資格なんて無いだろ、仮に俺が止めたとしてもそれを聞くか?」
「話し自体は聞くが止めないだろうな」
「だろ?俺は復讐(それ)を否定も肯定もしない。だがクラピカ俺はお前を肯定する」
「……何故だ?」

醜い行為をしようとしている自分を肯定する。ある意味狂っている理論にクラピカは少し混乱している。

「復讐が正しいか間違ってるなんてくだらない口論だと俺は思う、結局は自分の感情と生き方に打つ楔だ。だけどな自分だけは否定しちゃいけねぇ、自分を信じ続けろクラピカ。お前を信じる俺を信じろ、そうすればお前はお前でいられる」
「………フッ」

思わずクラピカは小さく笑った、そしてそれから大きな声で笑い声を上げた。実に清々しい笑みを浮かべての笑いだ。

「私を信じるシャネルを信じろか!なんだそれはカッコ付けているのか、はははは!!!」
「そ、そんなに可笑しいか……?」

結局の所彼が言いたい事は自分を見失うなっと言う事だろう、自分が自分を見失えば色んな物を失っていく。復讐を誓った時の感情も、ここまで生きてきた思いも消え去ってしまうと。

「キャラに合っていないっと言う感じだったぞハハハハッ!!」
「ああもうそんな笑うなって!!ったく今更になって恥ずかしくなってきやがった!!」
「すまないすまない!」

涙も流しクラピカは改めて席に着きむくれているシャネルをなだめるように言葉を出した。

「ここまで笑ったのは久しぶりだ、心から笑えた」
「ひ、ひでぇそこまで言うか……?」
「晴れたような気分だ……有難う、シャネル。出来れば私を支えて貰えないだろうか、強くなるために」
「……まっいいか、おう!」

互いに浮かべたのは弾けたかのような笑顔、見ていてくすぐったくなるがどこかずっと見て居たくかのような笑みだった。

「あっクラピカ、さっきの言葉ってちょっとプロポーズっぽくね?」
「えっ……ッ!!?い、いいいいや違うぞそ、そう言う意味なわけが無くてああでも支えてほしいというのは本心だが意味が違うぞ!?支えてほしいというのはその家庭的な意味では無く心の支えという意味でだな!!?」
「うーむこれが天然キャラか……」


『受験番号405番の方。405番の方、会議室へおこし下さい』
「もう来てるんだけどね、失礼しまーす」

雑談中に響いたアナウンス、必死に弁解しようとしているクラピカの声を中和するように聞こえてきたのはこれから会長が面談を行うという物だった。番号順に呼ばれるということでシャネルは一番最後、取りあえずそれまでは顔を赤くしそっぽを向いているクラピカをニヤケながら見つつコーヒーを啜っていた。そしてやってきた自分の順番、扉を開けると和室の中に一人で会長が待っていた。

「まあ座りなされ」
「んじゃ失礼してっと」

ネテロに促され向かい合うように座り込む、間には机が置かれその上には写真があった。受験者全員文の写真だ。

「まず、どうしてハンターになりたいのかな?」
「身分証明の為だな、俺ってば戸籍が無いみたいなんだわ。んでこのままだと就職とかいろいろ大変でしょ?ライセンスあれば仕事に困らないし、漸く一般人らしい生活ができると思ってさ」
「ふむなるほど、結構苦労してるのぉ」
「まあね。でもまあ割と楽しい人生だったと思う」

ほう?とネテロが興味深そうに呟いた。嘘は言っていないと感じる、間違いなしの本心からの言葉だがそれで自分を捨てたであろう親を恨んだり苦しく辛い人生だったといわず、思わないのだろうか。

「まあ苦しいと思える時もあったけど今充実してるからさ、ダチも出来たし」
「そうかそうか」

今が充実していると言った時のシャネルの笑みは素晴らしかった。それに思わずネテロも嬉しそうに言葉を漏らす、まるで学校が本当に楽しいと語る孫の話を聞いている祖父のように。

「では今一番注目しておるのは誰かの?」
「ふ~ん……嫌な意味で44番のヒソカかな、鳥肌立つ」
「では一番戦いたくないのは?」

そう質問されるとシャネルは腕を組んで頭を抱え始めた。

「あ~……う~ん……」
「別に複数でもかまわんが?」
「え~……ゴン、キルア、レオリオ、クラピカかなぁ。ダチだし、でもなぁゴンとキルアには何処か戦ってみたい!って衝動があるんだよなぁ」
「成程成程、因みに聞くが何故その二人と戦いのかな?」
「ほぼ何となく何だけどなぁ……強いて言うならゴンはなんか楽しそうだし、キルアにはちょっとした借りがあるから、かな」
「あい解った、では面接は終わりじゃ」

一度礼をしてからシャネルは部屋から出て行くとネテロは思った以上に受験者の意見が偏っている事とこれをどのように整理していこうか考える。

「ふむぅ……考え甲斐があるのぉ」 
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