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飛び出る

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第三章

「飛んでるの?」
「見えてるよな」
「はっきりとね」
 ヘレナもこう言う。
「私の耳が飛んでるわ」
 今その耳が来た、ヘラクレスの目と同じくふわふわと飛んでいる。その状況を見てだ、ヘレナも言うのだった。
「はっきりとね」
「御前は耳か」
「何なんだ、本当に」
「ええと、目戻れる?」
 ヘレナはあらためてだ、夫の目を見てから彼の身体も見て言った。
「身体に」
「ああ、そうしてみるな」
「私も戻るから」
 その耳をというのだ。
「今からね」
「お互いにそうしような」
 夫婦で話してだ、そしてだった。
 ヘラクレスの目は自分のその元々目があった場所に戻った、ヘレナの耳も同じだった。
 そうするとだ、二人共目や耳が元に戻った、だが。
 二人は元に戻ってからだ、キッチンでコーヒーを淹れてから話した。話す内容はもう言うまでもなかった。
「何でなんだ」
「おかしいわよね」
「ああ、起きたら目や耳が出たとか」
「何、これ」
「こんなことがあるのか」
「普通はないでしょ」
「そうだよな」
 夫は妻のその言葉に頷いた、そして。
 ここでだ、ヘラクレスは試しにだった。
 目に出ろと念じてみた、すると。
 実際にまた顔から出てふわふわと飛びだした、その夫を見てだった。 
 ヘレナは口に出ろと念じてみた、耳にしなかったのは若しかしたらと思ってだ。するとその口が実際にだった。
 出た、そして。
 やはりふわふわと宙を飛ぶ、その状況をお互いに見てだ。
 ヘラクレスはヘレナにだ、こう言った。
「出るな」
「そうね」
「口がないとな」
「どんな感じ?今の私」
「日本の妖怪でいたな」
 アジアのこの国から言うのだった。
「のっぺらぼうな」
「それどんな妖怪なの?」
「何か目も鼻も口もなくて顔に何もない」
「私のお口のところがそうなってるの」
「ああ、口が消えてな」
 顎がそのままある感じになっている、実際に。
「多分俺の目もだな」
「ええ、そうなってるわ」
 ヘレナもヘラクレスの目を見て言う、実際にそうなっていた。先程は気付かなかったがそうなっていたのだ。
「目のところがのっぺりとしていて」
「それで目が飛んでる」
「そう、宙にね」
「そうなんだな」
「お鼻もかしら」
「やってみるか」
「ええ、それじゃあね」 
 今度は二人でだった、鼻を飛ばしてみた。すると。
 それぞれの目や口と一緒にふわふわと浮かんでだ、そこで匂いを嗅げた。ヘレナの口は動けと思えばその通りに動いた。
 その状況を見てだ、ヘラクレスは言った。
「ちゃんと飛んでしかも見たり動いたりして嗅げる」
「聞けるしね」
「ちゃんとそれが出来るな」
「それは確かね」
「けれどどうしてなんだ」
 ここで二人共目や口、鼻に戻れと念じた。すると無事にそうなった。そのうえでヘラクレスはまた言うのだった。 
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